公述 節水型のまちづくりこそが大事

公聴会で公述した20組中、11組(11人)が石木ダム建設に公益性がないことを訴えました。

うち3人は、半世紀にわたって反対運動を続けてきた地権者です。

絶対反対です。

 

うち、2人は、関東からわざわざ公述に来てくださった、専門家の方々で、

利水、治水、また土地収用法や憲法の観点からも、客観的科学的に論じてくださいました。

 

残る6人は、川棚町民2人、波佐見町民1人、長崎市民1人、そして佐世保市民2人で、

それぞれ治水、利水、環境などの視点で、関係住民として県民としての思いを語りました。

 

佐世保からは、私ともう一人M・Yさんが公述しました。

Yさんは過去の実績を丹念に調べ、まとめ、提示してくれました。

数字は嘘は言いません。説得力があります。

誰もが納得する素晴らしい公述でした。

ここに、その原稿を掲載します。

同じ「石木川まもり隊」の仲間として、誇りに思います。

 

        ☆公聴会のための「公述」☆

                                                2013年3月23日

 私は、いまお話になった方と同じように、佐世保市で生まれ育った人間ですが、佐世保市民は生活用水には少しも困ってはいないし、石木ダムを建設するよりも節水型の街づくりに力を入れるべきだと思っています。

 本日、このように公述の機会をいただきましたので、ただいまの方とは全く反対の立場から、佐世保市民のひとりとして、また主婦のひとりとして、

・佐世保の水は足りていて、石木ダムは必要がないこと。

・少子高齢化と人口減少が急速に進むことから、今後も佐世保市民の水の使用量は減少すること。

・大渇水を経験した佐世保市は、福岡市のような節水型街づくりを目指すべきであること。

などについて意見を述べたいと思います。

たくさんの数字が出てきて、お聞き苦しいかと思いますが、ご容赦いただきたいと思います。

 

佐世保市水道局は、「佐世保市は慢性的な水不足であり、安定的に取水できる水源は日量77,000トンしかない。今後、水の需要が伸び、一日最大給水量が117,000トンになる。その差の40,000トンが不足する。不足する水源を求めるには石木ダム建設しかない」と言っています。

しかし、40,000トンの水が不足することは絶対にありません。

水道局は、佐世保市には安定水源が77,000トンしかないと言い、危機意識を煽りますが、実は、これは真っ赤なウソです。

水道局は「不安定水源」という名称で、取水できないかのような印象を与えていますが、岡本湧水1,000トンや、四条橋取水場の18,000トン、三本木取水場の4,500トン、合計すると23,500トンの水源を有しています。。これは、れっきとした水源です。

加えて、川棚川には暫定豊水水利権5,000トンもあるのです。

石木ダムを建設したいがために、不安定水源と称して、現にそこに有る、確かな水源を、存在しない水源であるかのように誤魔化しているのが佐世保市水道局なのです。

これに関しては、昨日、3人の公述人の方が詳しく述べられたとおりです。

 

では現在、佐世保市民は毎日何トンの水を使用しているのでしょうか。

直近の平成23年度及び24年度の給水量について実績値をもとに述べることにします。

  

まず、平成23年度です。

一日平均給水量は71,153トンで、一日最大給水量は80,240トンです。

通常、水の使用量は暑い夏場が最大になりますが、23年度の8月の一日平均給水量は75,262トンです。ちなみに、最も低かった月は平成24年3月で、一日平均給水量は69,335トンです。

私たちは、毎月の給水量を水道局にお聞きして記録をしていますが、あと10日ほど残した平成24年度については、3月20日すなわち一昨日までの実績値をお聞きしています。

そこで平成24年度の3月20日現在では、一日平均給水量は71,482トンで、一日最大給水量81,070トンです。

平成24年度の8月の一日平均給水量は75,762トンです。

24年度の実績値は、23年度のそれをわずかに上回りそうですが、先月・2月の一日平均給水量が68,735トンであり、3月は20日現在で68,339トンと、70,000トンを切りました。今後とも、水使用量が右肩上がりに伸びるとは到底考えられませんし、人口減少に見合って減少していくと考えるのが自然です。

強調したいのは、平成23年度の一日平均給水量71,153トンと、24年度の71,482トンの中には、この間の水道局の漏水対策の結果、若干の改善が見られるようになったとはいうものの、なお、7,000トン前後の漏水量が含まれているということです。つまり、現在の佐世保市の実際の水使用量は、一日平均で65,000トンを切っているのです。安定水源77,000トンでも十分過ぎるほど足りているのです。

佐世保市の水使用量は、給水人口が23万3,000人台であった平成4年度以降の一日平均給水量の実績値でみてみると、ずっと微減傾向が続いています。増加傾向を示したことは一度もありません。そして、平成19年度以降、減少傾向は顕著になってきました。平成23年度と24年度の実績値については先ほど示したとおりですが、佐世保市水道局は、相変わらず今後も、水使用量は右肩上がりで伸びていくと予測しています。はたしてそうなるでしょうか。今後は、少子高齢化・人口減少に見合って減少していく、このように考えるのが常識ある市民の感覚として自然だと思います。

佐世保市水道局は、将来的に一日最大給水量は117,000トンまで伸びる。安定水源は77,000トンしかない。不足する40,000トンを石木ダムで確保する。このように言い続けています。

 

専門家でない素人の私が、この「117,000トン」という数字について考えていることを述べてみたいと思います。

117,000トンの根拠について、佐世保市水道局は、平成11年12月31日に記録した一日最大給水量101,510トンをもとに説明してきました。すなわち、101,510トンを利用量率95%で割り戻した数字だという説明です。つまり、過去最大の一日最大給水量を記録した平成11年12月31日は、117,000トンの原水量が必要だったというのです。

ここで私が疑問に思うのは、ある年のある一日が、原水量で117,000トン必要だったからと言って、どうして77,000トンのほかに毎日40,000トンの水が必要になるのかということです。

水道局発行の資料で、平成11年度の一日の給水量を見てみると、平成11年度は、一日の給水量が10万トンを超えたのは12月31日だけです。9万トンを超えた日ですらたったの7日間にすぎません。しかも、平成11年度の漏水量は毎日10,000トンを超えていました。12月31日の一日最大給水量101,510トンのうちには、実に13,000トン強の漏水が含まれていたのです。

近年の一日の給水量をみると、80,000トンを超える日が極端に減少してきました。平成20年度は55日。21年度は19日。22年度は9日。そして23年度と24年度はたったの1日です。

ごく近い将来に、一日最大給水量ですら、77,000トンを切ることになるのではないでしょうか。

 

事業認定申請書に関して1点だけ述べます。

 

事業認定申請書の中の「事業の施行を必要とする公益上の理由」の「水道用水効果」の項に、「昭和53年、同57年、同59年から同61年まで、同63年、平成元年、同5年から同11年まで、同15年から同17年まで及び同19年から同20年までの過去の渇水時に渇水調整や地域住民への節水の呼びかけを行うなど、頻繁に渇水対策が強いられてきた」と、誇張された記載があります。

佐世保市水道局も、「2年に一度の頻度で渇水の危機に瀕している」と、負けず劣らず危機を煽っています。、水道事業者の心得としては、もう少し冷静に対応してもらいたいものだと思います。

 

石木ダム建設事業が正式に認可された昭和51年以降、断水があったのは昭和53年の11日間と平成6年から7年にかけての264日間の2回だけです。

平成17年に8日間の減圧による給水制限、平成19年から20年にかけて旧佐世保地区は125日間の減圧による給水制限がありました。

しかし、減圧給水というのは、水道局が誇張して言うほど、市民生活への影響は大きくなく、普段と変わらない生活が出来ました。

 したがって、市民生活に影響のある断水が実施されたのは、昭和53年の11日間と平成6年から7年にかけて264日間の2回だけなのです。

 

佐世保市の南部にある下の原ダムは、平成19年に嵩上げ工事が竣工しました。ところで、平成17年の渇水で、8日間の減圧による給水制限が行われましたが、水道局は、この17年の渇水を総括する文書を公表しています。

この中に、「下の原ダムの嵩上げが完成していたら、結果的に給水制限に入ることもなかった。一日も早い嵩上げの完成が待たれる」との記述があります。

つまり、下の原ダムの嵩上げ完成後であったら、平成17年の減圧による給水制限はなかったと言っているわけです。

水道局は強調して、「2年に1度の頻度で渇水の危機に瀕している」と言いますが、折からの降雨で解消された水道局が言う2年に一度の渇水の危機も、下の原ダムの嵩上げが竣工した今日、文字どおり過去のものであって、これからはもうありません、と言っているわけです。

 

ここで私は、素人らしく物事を考えてみようと思います。

 

長崎県の県都である長崎市の水の使用量はどのくらいかHPで調べてみました。平成22年度の給水人口は428,472人で、一日平均給水量は127,121トンとなっています。

ところで、佐世保市水道局が今年度実施した「石木ダム建設事業に係る再評価」で、水道局は平成36年を目標年度として新水需要予測を示しました。

これによると、平成36年の給水人口は209,119人に減少しますが、おかしなことに一日平均給水量は増加して84,685トンなるにとしています。

 

長崎市の平成22年度の数値と、水道局が予測した平成36年度の数値を比較してみます。素人なりに、的を射た見方だと思います。

 

佐世保市の給水人口は長崎市の半分以下なのですから、一日平均給水量は127,121トンの半分である63,561トン以下となります。それなのにどうして、水道局が予測するような84,685トンという大きな数字になるのでしょうか。全くあり得ない数字だと思います。

 

県庁所在地である長崎市には公的機関や民間会社の支店の多くが集中し、佐世保市と比較するとはるかに、生産活動や経済活動が活発です。その長崎市の給水人口と一日平均給水量をもとに比較した平成36年の佐世保市の一日平均給水量は63、561トン以下にしかならない、これは極めて妥当な数字ではないでしょうか。

 

 次に「節水型街づくり」に関連して述べたいと思います。  

 

確かに、平成6年から7年にかけての渇水は大変でした。

水道局は、このときの渇水を、日本一厳しい264日間といいます。厳しくなかったと言うつもりは毛頭ありません。しかし、この年の大渇水は西日本から関東地方までの広い地域で起こったもので、何も佐世保市だけではありませんでした。広島県福山市では、佐世保市を上回る290日間、福岡市ではさらに上回る295日間の制限給水でした。

 

この厳しい渇水を経験して、佐世保市民は水を大切にすることを学びました。我が家でも、散水や掃除には井戸水を使いますし、洗濯には風呂の残り湯を活用しています。多くの市民は、普通に節水をしています。

佐世保市長は、よく「佐世保市民はシビアな生活をしている」と言われますが、私たち市民は、節水することが辛いだとか、苦しいだとか誰も思っていません。節水に心がけることは、生活していくうえで、当たり前のことではないでしょうか?

 

同じように、渇水で苦しんだ他の都市では、その後どのような取り組みをされているでしょうか。

295日間という長期の制限給水に苦しんだ福岡市では、天候に左右されず水を供給できる海水淡水化の導入に向けた研究会が、平成7年9月に設置され、10年後の平成17年6月より水の供用が開始されています。

それだけではありません。平成15年には、「福岡市節水推進条例」が制定され、「雑用水道の設置」「節水機器の奨励」などが決められています。

 

同じように渇水に苦しんだ香川県高松市では、平成13年に「高松市節水・循環型水利用に関する要綱」を定め、「水は限りある資源であると言う視点から、市・市民及び事業者の協働により、全市をあげて節水・循環型水利用を推進する」こととし、「渇水に強い街づくり」をめざすとしています。

さらに「高松市・再生水利用下水道事業実施要綱」をも定めて、トイレや散水など飲料水以外の用途に再生水を使用していくことをめざしています。

また、愛媛県松山市では、平成17年に「大規模建築物の節水対策に関する条例」を定め、大規模な建築物の新築、増築には節水機器、雨水タンクの設置を義務付けています。

 

これらの節水に取り組んでいる都市では、雨水タンクへの助成も行なわれています。九州では福岡市、長崎市、熊本市、鹿児島市、飯塚市など多くの自治体が雨水タンクへの助成を行なっています。

 

 では、佐世保市ではどうでしょうか。

10年ほど前、佐世保駅周辺に大きなマンションが建ち始めたころですが、知り合いの市議会議員の方を通して「大きな建築物には節水機器を取り付けるべきではないか?」と質問をしてもらいました。これに対する回答は、「そういうことを義務付ければ、業者が佐世保に進出してこなくなる」というものでした。あきれた話だと思います。

 

あれほどの渇水を経験したにもかかわらず、節水条例を制定する動きはなく、雨水タンクへの助成すら検討されていません。ただ、「石木ダム建設」があるのみなのです。

 

 昨日、公述人のお一人で石木ダム建設促進佐世保市民の会の方が、平成6年の渇水時の辛さを述べ、「市民の中には水が足りていると言う者がいるが、あの渇水を経験したのだろうか」と疑問を呈され、石木ダムの必要性を訴えられました。私は冒頭に述べたように、佐世保生まれの佐世保育ちで、もちろん平成6年の渇水も経験しています。しかし、ダムは要らないと思っています。

 

ダム建設には時間がかかります。促進市民の会の方々は、それほどまでに水が必要だと考えられるのなら、なぜ今まで、ダムよりも安価で手軽に設置できる雨水タンクの奨励や中水の活用を言ってこられなかったのでしょうか? 私にとってはそれこそが疑問に思えます。

 

 佐世保市内には、共同使用されているものも含めて多くの井戸があります。

私は、佐世保駅から少し南の稲荷町というところに住んでいますが、この一帯は、ほとんどのお宅に昔ながらの井戸があります。あの渇水のときには大いに役立ちました。保健所で水質検査をしてもらいましたが、「沸かせば飲める」と言われました。我が家周辺の地下には良い水脈が走っているのかも知れません。佐世保市は家庭用の井戸など1度も調査をしていません。きちんと調査をして、活用すべきです。

 

最後に、下水の「一次処理水」について述べます。

下水の一次処理水は、日量35.000トンも捨てられています。

このことは、平成20年の3月議会で、石木ダム建設推進の立場であられるN議員が取り上げられ、『提案だが、中部下水処理場において処理している中水の活用を崎辺、倉島、米海軍佐世保基地及び佐世保地方総監部までのラインで施行をしていただければ、また、西部下水処理場における中水は陸上自衛隊の相浦駐屯地で再利用していただければと考えている。中部下水処理場における日量3万トンの処理水は余りにももったいない。このことができるとすれば、そのライン周辺の公共施設にとどまらず、民間施設への活用もできることから、貯水池への負担が相当に軽減できるものと思われるし、水源確保と同様の効果として評価できるものと考えている。』と発言されました。

実に納得のいくご提案でした。

N議員がおっしゃるように、もっと一次処理水の有効活用を考えるべきではないでしょうか?

 

しかし、佐世保市の対応は鈍いというほかありません。

やはり、石木ダム建設推進しか頭にないのだと思います。残念なことです。

 

佐世保の市民たちは、平成6年の渇水時に石木ダムがあったら、あのような制限給水はなかったと思い込まされていますが、それは違います。日照りが続けばダムも干上がるのです。「平成6年の渇水時に、石木ダムがあっても制限給水は避けられなかった。」といったのは、水道局自身です。

 

これまで、いろいろと述べてまいりましたが、これらのことを総合して考えると新たに「石木ダム」を建設する必要はまったく無いことが、ますます確信できました。みなさま方にも、「石木ダム」を建設する必要がないことがお分かりいただけたと思います。

 

ご清聴ありがとうございました。

 

 

 

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石木ダム建設は説明不足。長崎県は一度立ち止まり、
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