証人尋問に反対する国、そのわけは…

7月31日午後1時半、石木ダム事業認定取消訴訟の第7回口頭弁論を膨張するために集まった人の列。久々に大人数です。それは、いま工事が中断されているから。地権者をはじめ支援者の多くも、今日は安心して傍聴できると、暑い中喜んで駆けつけました。

法廷では今日も当方代理人弁護士2名が意見陳述をおこないました。

利水面については高橋弁護士(下の写真は報告集会での画像)が、

佐世保市がおこなった水需要予測のでたらめさや慣行水利権を排除する不合理さを指摘し、その事実を明らかにするために、佐世保市水道局の水需要予測の担当者(当時)、佐世保市長、SSK社長らの証人尋問を申請したいと述べました。

治水面では田篭弁護士が、

計画規模の不合理性(それまでの1/30から石木ダム計画が持ち上がったら急に1/100に変更)や基本高水流量算出のまやかし(基本高水流量が1400㎥/秒となるのは、100年に1度ではなく、500年~1000年に一度の確率)などを指摘し、それらの点を明らかにするために、川棚川水系河川整備基本方針・整備計画策定の各担当者や事業認定庁の責任者の証人申請を考えていると述べました。

ところが、これらの証人尋問について、被告(国)側は必要性がないと反対しましたが、具体的な根拠は語らなかったので、次回期日1週間前までにこの件に関する意見書を提出するよう裁判長が求め、被告代理人は応じました。

また、被告側からの証人尋問について裁判長から問われると、今のところその予定はないと答えました。

なぜ国は証人尋問に反対するのかな?~なぜ自分たちも証人を立てようとしないのかな?~と思っていましたが、その疑問は報告集会のときに謎が解けました。

馬奈木弁護士によると、



行政訴訟において、教科書では政策の正しさは行政が立証しなければならないとなっているのに、現実の裁判はそうではない。
行政は正しいという推定の下でおこなわれている。(推定無罪)
だから、その間違いは原告の我々が検察官の立場で立証しなければならない。
そうしないと勝てない。だから立証の手段を尽くさなければならない。

ところが立証しようとして証人を求めても、行政側が必要ないと言い、それを裁判所も認め、調べないまま終わってしまい、判決の時になって立証不十分で負ける場合がある。我々が負ける裁判というのはそういう場合である。

刑事事件で被告人が黙秘権を行使するように、国側は今、自ら何も語らない、何も与えない、何も明らかにしようとしない、そいう態度を貫いている。
けしからん!

国会と同じ。資料は何も残っていません。何も記憶にありません。安倍内閣がやっていることを司法の場でもやろうとしている。こんなことは許されない。我々は徹底的に闘う。資料をちゃんと出せと言う。出させなさいと裁判所に迫る。

(‘◇’)ゞ

なるほどー。そういうことだったんですねー。
奥が深い。というか、私たちが何も知らなかっただけかもしれませんが。
これから1つずつ学びながら、弁護団と共に、しっかり闘っていきたいものです。

知事と話したい!

8月1日(火)午前10時。石木ダム建設事務所2階。地権者の皆さんと県職員が久しぶりに話し合いのテーブルに着きました。

でも、話し合いは堂々巡り。

この日決まったことはただ1つ。地権者の要望を県に伝え、できるだけ要望に沿えるよう努力し、その結果を7日(月)に伝える。そのための再協議を10時からおこなう。ただそれだけ。それだけの結論を得るのに3時間半もの時が費やされました。

地権者の要望とは、「知事と直接話し合いたい。それが実現するまで工事は中断してほしい」ということ。

それに対する県の主張は「持ち帰って報告し、相談して判断する。今は何とも答えられない」の一点張り。

県と言っても、所長をはじめ石木ダム建設事務所職員と、本庁からやってきた県職員とでは発言内容が微妙に違います。

所長は、「地権者と会うことは知事も望んでいる。そうなるよう私も願っているが、それが16日までに実現できるかどうか、今は全くわからない。そんな中で実現できるまで中断せよと言われても私には、その権限はない」との趣旨でしたが、

本庁の役人(土木部の吉田次長や河川課の浦瀬企画監など)は、「話し合いと言っても、その中身、内容が重要。かつてのように、ゼロベースでとか白紙に戻して話し合おうと言われても、それは無理。条件次第で知事の判断も変わるだろう」「県としては地域を守るために必要な事業と位置付けているので、工事は進めたい」など、初めから自分たちの考えや立場を主張し、住民の願いに耳を貸そうとはしなかったので、地権者の怒りを買ってしまいました。

「私たちは工事を進める責任がある。この前も日田や朝倉では甚大な被害が起きているし…」と吉田次長が語り出したときは、慌てて河川課の二人が肩をたたいて制止しましたが、それは共謀罪についての国会審議の時よく見た光景を思い出させ、笑いをこらえるのに苦労しました。

本庁のお役人も、自分たちの発言が話し合いにマイナスとなることに気づき、途中からはほとんど自発的な発言はなくなり、地権者もそれぞれの思いを冷静にぶつけていきました。

Aさん:県はそうやって住民の同意無しに、何が何でも進めようとする。だから重機や燃料など夜に搬入しようとして、既に負傷者が出ている。これ以上怪我人を出さないためにはどうしたらいいか知事と話し合いをしようとしているんです。知事も応じたいと言っているのだから、その邪魔をしないでもらいたい。

Bさん:あなたたちは重機を入れたら工事が進むと思っているのですか?私たちは逮捕されてもかまわない。中に入って重機の前に座り込みます。話し合いに応じてもらえないまま17日以降は工事すると言うなら、そうするしかない。

Cさん:私たちはまず知事に現状を伝えたい。知事は政治生命を懸けてダムを造ろうとしているのかもしれないが、私たちは命を懸けてふるさとを守ろうとしている。絶対出ていかない。その思いを直接知事に伝えたい。伝えた上で、知事の考えを聞きたい。(後ろから「そうだ」「そうだ」の声)

Dさん:あなたたちに決定権はない。決定権があるのは知事だけ。(頷く職員たち)だから私たちは知事と会って話したいのです。

地権者の声が出尽くしたところで、有吉所長はこう言いました。



いま現場はたいへん危険な状況だと感じている。このような現状を打開するためには地権者の皆さんと話し合いをすることが必要であるし、また工事の延期も選択肢の1つとすることも含めて知事に伝えたい。約束はできないが、実現できるよう努力します。

所長の「努力する」の言葉を聞いて、みんなやっと納得の表情。
そして、その答えは、7日に説明しますので再びここで話し合いましょうということで合意。散会となりました。

事務所の外へ出ると猛烈な暑さ。
この炎天下で3時間半も待っていたマスコミの皆さんが一斉に地権者に駆け寄り、マイクを向けていました。

仕事とはいえ、本当にご苦労様でした。

その記事の1つを掲載させて頂きます。