百聞は一見に如かず!

意見書の提出を終えた嶋津先生(ダム検証のあり方を問う科学者の会)と共に、佐世保市水道施設の見学ツアーに、いざ出発!

といっても、午前中は、嶋津先生のご希望により、相浦川の取水場を外から見て回るだけ。相浦川には3つの取水場があり、1つ(相浦取水場)だけが安定水源で、2つ(四条橋取水場と三本木取水場)は不安定水源と位置付けられているけれど、その違いを実際に見てみたい!ということで・・・

まずやってきたのは、最下流の相浦取水場。安定水源と言うだけあって、たっぷり水はあるようですね。

続いてこちらは、四条橋取水場。四角く囲ったところから取水しているのですが、こちらも下流にザーザー流れているので、十分取水できているはず。

それからしばらく上流に車を走らせ、たどり着いた三本木取水場は、周囲が木立に覆われ、対岸の茂みから垣間見ることしかできませんが、

こちらも取水量はたっぷりあるようです。取水口全体が水で覆われていますから。嶋津先生も、水量は大丈夫そうですね~と。

その後、満水の川谷ダムを道路から確認し、柚木浄水場も遠めに見て、午後からの見学地である、山の田浄水場へ。見学は1時からですが、その前にここでお弁当を食べさせて頂きました。
2015年に完成した山の田浄水場です。

100年の歴史があった旧山の田浄水場と大野浄水場を統合させた新山の田浄水場で、セラミックの膜ろ過方式を採用した最新設備の浄水場。厚労省だけでなく、防衛省の補助金も頂いて建設されたようです。

佐世保市水道局の施設ですが、運営するのは佐世保アクアソリューション(メタウォーター関連会社)だそうで、説明には、水道局職員とアクアソリューションの社員のお2人が!

どちらもとても親切で感じが良く、嶋津先生だけでなく私たちからも次々に質問が飛び出しましたが、どんな質問にも丁寧にわかりやすく説明していただき、たいへん勉強になりました。

これは、以前の山の田浄水場のろ過方式の説明模型です。緩速ろ過と言って、煉瓦や砂利を何層にも重ねて微生物の力でゆっくりろ過する浄水システムです。薬品を多用する急速ろ過と違って美味しそうですが、浄水速度が遅いので、広い敷地が必要です。

一転してこちらは今の山の田浄水場のろ過システム。

ここには800本もの円筒形のものが並んでいますが、この中にセラミック膜でできたろ過装置が詰まっているのです。

この太い管の中には原水が入っており、

こんな水!

その原水をこの装置に通過させます。

中はこのようになっています。この小さな丸い穴(セル)を通った原水はセラミック膜でろ過され、四角い穴から浄水となって吹き出し、浄水池へ送られていきます。

ほら、こんなにきれいに!

浄水は浄水池へ送られ、そこから各地へ配水されていきます。

一方、セルの内部に着いた不純物は逆洗工程によって剥がされ、それを圧縮空気でブローして濃縮槽に送られます。不純物は下に沈むので、上澄水はまた浄水工程に戻されろ過されます。

その結果、原水の99.9%が水道水になるのだそうです!素晴らしい!

そうして集められた0.1%の真っ黒な汚泥。それを天日干しすると、浄水ケーキと呼ばれる土の塊ができ、それは野菜の苗を育てる土として利用されるのだそうです。

99.9%という利用量率=安全率の高さ!これは注目に値しますね。

必要な水源量の算出にあたっては、一日最大給水量を、この安全率で割って計算するのですが、安全率が高ければ高いほど必要な原水量は少なくてすみます。

例えば、一日最大給水量が10万㌧の場合。

安全率が90%なら、10万÷0.9=11万1千㌧ですが、

安全率が99%なら、10万÷0.99=10万1千㌧となり、1万㌧も少なくなります。

佐世保市水道局は水需要予測の計算においては、安全率を90%として計算しています。ここでも実績を無視しているようです。

もちろん、他の浄水場(広田と柚木)は、ここより低い安全率ですが、それでも全体で97%ほどだと聞いています。正しいデータを使って算出してほしいものです。

このようなモニターを見ながら、ここでは常に現状を把握しながらろ過が無駄なく安全におこなわれているようです。

おや?こちらのモニターは何でしょう?

こちらは、いま、この山の田浄水場へどこからどのくらい水が送られてきているかを把握するモニターだそうです。

ん!これは? やっぱり・・・。

三本木取水場からの導水量は、1時間に180㌧ですが、

なんと、四条橋も相浦川取水場も、ゼロ!です。

取水されていないのです。

私たちは先ほど見てきたばかりです。一番水がたっぷりに見えた相浦川からは取水せず、一番少なく見えた三本木からだけ取水してます。

WHY? 質問したところ、お答えはこうでした。

三本木からは自然流下でこちらに入ってきますのでコストがかかりません。相浦川や四条橋はポンプアップの電気代や水質の問題があるので、通常は三本木からの水を使います。足りない時だけ相浦川や四条橋も・・・。

やはり!

佐世保市水道局は、慣行水利権を有する三本木や四条橋は水量が不安定な不安定水源として、保有水源とは認めていません。今回の再評価でも、「慣行水利権22,500㎥/日を保有していますが、いずれも不安定水源であることから、安定的な取水が望めません」と書かれていますが、それはマチガイ?嘘?ですね。

慣行水利権の三本木からは毎日安定的に取水しているではありませんか!

安定水源の相浦の方が取水していないではありませんか!

また、取水していない相浦や四条橋は水量が少なくて取水しなかったのではなく、三本木の水で足りていたから取水しなかっただけのこと。



帰るときに気付きました。1階の床のタイルに貼られた佐世保の地図。そこに印されたダムや浄水場など。

海と山に囲まれた自然豊かな佐世保市。この自然に育まれた川の流れと、昔からそこで取水されていた慣行水利権こそ大事にすべき水源では?この水利権を放棄して、石木ダムから水を持ってこようだなんて・・・将来に禍根を残す愚策です!

真の再評価を!科学者の会&市民団体

3月2日8:30、「ダム検証のあり方を問う科学者の会」の嶋津暉之氏は、佐世保市水道局を訪ねました。



手にしているのは、意見書です。

佐世保市の水需要予測は科学性が欠如している、やり直すべきだとして先月意見書を提出したばかりですが、今回は、費用対効果の算出が虚構であるとして、再検証を求め、再び意見書の提出です。
佐世保市水道の事業債評価に関する意見書その2 

前回は私たちが代理で渡しましたが、今回は、科学者の会のメンバーであるご本人が直接渡されたのですから、水道局は、その重みをしっかり感じてほしいものです。



嶋津先生は何度も回答をいただけますか?と質しましたが、川野水源対策・企画課長は「検討する」としか答えませんでした。情けないです。。



私たち市民団体からも、公正な再評価委員会を設置して審議をやり直してほしいという申し入れをおこないました。
公正な再評価委員会設置の申し入れ書2020.3.2

また、前日の、3.1緊急市民集会の集会宣言も合わせて提出しました。
3.1緊急集会宣言2020.3.1

どの文書にも、「再評価やり直し」の文字がおどっています。科学者からも市民からもおかしい!と批判されるこの再評価をどうかやり直してほしい、その目的に沿った、中立な委員会を新たに設置して、しっかり検討してほしい。

回答を待っています。