『話し合い』をめぐる4つの文書

5月下旬から約1ヶ月、知事と住民との『話し合い』に注目が集まりました。



数年前から、どちらも相手と「話し合いたい」と言い続けているのに、何故か実現しない、不思議な膠着状態に陥っていました。ところが、ここにきて、ようやく県の方から正式な申し入れがあり、いよいよか?とマスコミの記者さん達は取材に大忙し。新聞・テレビのニュースで度々報道されました。

が、ひと月経っても、まだ『話し合い』の目途はたっていません。
それは何故か?
県と住民の間で交わされた4つの文書をよく読めば、その理由は見えてきます。

1つ目の文書がこちら。5月21日付、「長崎県土木部」から「川原地区にお住いの13世帯の皆様」へ宛てたものです。

これは、知事と住民との話し合いを実現させるための事前協議の申し入れですが、
書かれていることを要点整理すると、

①皆様に心労をおかけしていて心苦しい
②石木ダムは喫緊に必要不可欠の事業である
➂事業推進、生活再建、工事の進め方について話を聞いてほしい
➃6月上旬、川棚町中央公民館で行いたい
⑤互いに5名程度集まってやりたい
⑥6月4日までに石木ダム建設事務所長まで連絡してほしい

ということです。
「心苦しい」と言いながら、自分達の主張を聴いてほしい。
そのための話し合いだと言う。あまりにも一方的な内容ですね。
話し合いというのは、双方に、相手の話にも耳を傾ける気持ちがなければ成り立ちません。自分たちの言いたいことだけ聞いてくれと言われて、誰が応じるでしょう?

そこで、2つ目の文書です。6月4日付、「石木ダム建設絶対反対同盟」(13世帯)から「長崎県知事」に宛てたもの。

こちらも要点整理すると、

①私たちは工事を中断すれば、いつでも話し合いに応じる
②そのことは土木部長にも河川課長にも伝えていたが工事は強行されてきた
➂今回の事前協議を求める文書提出後も、新たな工事が強行された
➃知事が本当に話し合いを望むなら、工事を即時中断し、話し合いのできる環境を作ってほしい

ということでした。
土木部からきた文書への返事を、土木部にではなく知事に郵送したことに住民の意思が現れています。

話し合い実現のための事前協議をしましょうと言いながら、新たな工事を強行した土木部。工事中断が話し合いの条件だと分かっていながら、中断しないどころか、新たな工事を始めた土木部。それは、「どうぞ事前協議は断ってください」という意思表示以外のなにものでもない。

そんな言行不一致の土木部とは交渉などできない。ということで、知事に直接返信されたのです。

さて、知事からどんな返事が来るか・・・私たちも期待していましたが、届いた文書の差出人は、またもや土木部!

その3つ目の文書がこちらです。

今回の要点は、

①工事中断等の条件整備の考え方などについて聞きたい
②6月19日午後2時~川棚町中央公民館講堂にて
➂6月16日までに石木ダム建設事務所長まで連絡してほしい

やっと住民の意向を聞きたいとの言葉が出てきましたが、工事中断の意思があるのか無いのか何も書かれてはいません。そこで、住民の方は16日、現場にやって来た石木ダム建設事務所長に確認をしたところ、事前協議に指定した日時にも工事は続けるとのことでした。

そこで、4つ目の文書(6月17日付)が、再び知事宛に送られました。

ここに書かれてあることは、まさに直訴そのものです。

①知事の本当の考えが知りたい
②知事と穏やかな環境の中で話し合いたい
➂話し合い実現のため工事を即時中断してほしい

この文書を受け取っても知事が動かないとしたら、知事の「13世帯と話し合いたい」という言葉は建前?それとも嘘?本心ではないということでしょう。

本気で話し合いたいのなら、土木部を介さず、ご自身でアプローチすればいいのです。
昔から賢明なお殿様は、自ら城を出てお忍びで領地を周り、自分の目で領民の暮らしを確かめていたようです。

長崎県政にも、空港建設のため箕島へ日参して、島民と語り合った久保知事の例もあります。

中村知事、そろそろ貴方の本気を見せてください。
工事を中断するくらい、貴方の一声で可能なのですから。
貴方が本当に話し合いを望むのなら。