佐世保市民が446億円を負担するダムの建設計画が進んでいます。

長崎県・川棚川の下流にある小さな支流、石木川にダムを作る建設計画があります。石木ダムの総事業費は建設費285億円と関連事業費346億円を合わせて合計631億円です。その内、県の負担分を差し引いた約446億円がダムの水を利用することになる佐世保市民の負担となります。

どこに造るの?

長崎県東彼杆郡川棚町川原を流れる長崎県の二級河川である川棚川の支流・石木川です。

誰が造ろうとしているの?

長崎県と佐世保市の共同事業です。

どうして造るの?

石木ダム建設の目的は、大きく2つあります。

  1. 佐世保市の水の確保
  2. 川棚川の洪水の防止

佐世保市の水が足りていないの?

佐世保市の主張

佐世保地区の1日の最大給水量・実績と市予測
佐世保市水道局の資料を元に作成(2020年現在)
グラフ提供・水源連

ダムが完成する頃に水の需要が急激に増加し、石木ダムを造らないと佐世保市の水が足りなくなる。

専門家らの主張

1日の最大給水量が2003年以降減少中にも関わらず、2013年予測と同様に最新の2020年予測でも大幅に需要が伸びるという市の主張は、ダムを造るための過大な需要予測。

ダムがあれば洪水は止まるの?

佐世保市の主張

専門家らの主張

ダムの建設予定地は川棚川流域の11%しかなく、洪水防止に役立つとは言い難い。2014年7月に長崎県知事が「河道整備が完成すれば、過去と同規模の洪水は石木ダムなしで対処できる」と明言。洪水対策は建設理由として根拠に乏しい。

これは、ムダな公共事業の典型的な例です。

石木ダムの建設計画は、約50年前に生まれた昭和的な発想の計画で、今の時代に全く合っていません。計画に客観的な根拠もありません。

でも、残念ながら佐世保市民の多くは、この問題のことをよく知りません。ダムが作られる場所が、佐世保市から離れた小さな町の話なので、しょうがないのかもしれません。でも、これは佐世保市が計画を進め、佐世保市民が446億円(国庫補助金を含)という莫大な借金を背負うことになる話です。
今私たちが下す判断が、次の世代への大きな影響を与えます。必要な漏水対策を怠り、必然性に乏しいダム計画を押し進めるべき客観的な理由は、どこにもありません。

建設計画を見直すべき理由

  • 建設の大きな理由とされている 「水の確保」と 「洪水の防止」が客観的根拠に乏しい
  • 膨大な総工費と維持費を支払い続けるのは、子育てをしている世代とその子供たち
  • 佐世保市の人口は年々減少→税収も年々減少→次の世代の負担が大きくなる
  • ダム建設予定地に暮らす、13世帯の住民の土地や家屋が強制的に奪われる
  • 自然の生態系が破壊され、ホタルをはじめ100種類以上の生物の生息が危ぶまれている
  • ダムを作る石木川は、川幅が5~10mほどしかない小さな小さな小川
    (現場を見た人は皆びっくり!こんなところにダムが造れるの?と…)

ダムの前に、漏水対策が必要です

1日あたり、約4万4千人分の生活用水が地中に漏れています。

実は、佐世保市の水道管は老朽化が進んでおり、2018年度の漏水量は年間約308万トンで、山の田ダム5.6個分に匹敵しました。

また、その水はタダではありません。
2018年度の佐世保市の給水原価(1トンの水道水をつくるのに要するコスト)は約208円なので、308万㌧×208円=6億4000万円のお金を無駄にしてることになります。

その漏水率は、給水人口20万人以上の水道事業体100件中ワースト10位でした。(2017年度実績)

水が地中に漏れ出すと地盤が弱くなり、道路の陥没など、重大問題に発展していきます。
佐世保市は「水が足りないから」との理由でダム建設を進めていますが、その前にしなければならないのは、まずは漏水対策ではないでしょうか。

佐世保市における水道管の老朽化による事故

  • 2015年1月潮見町 160世帯断水
  • 2015年4月天神町 2500世帯断水
  • 2015年12月藤原町 500世帯断水 市民生活に大きな被害が及びました。

川原地区の土地収用に関する進捗状況

(1) 4世帯農地(畑・田んぼ)5500平米:所有権国に移転

1.裁決日      2015(平成27)年 5月21日

2.所有権移転日   2015(平成27)年 8月24日

3.明渡しの期限   2015(平成27)年 8月24日 1世帯の畑
2015(平成27)年10月30日 3世帯の田

(2)反対住民13世帯約50人の宅地を含む全ての未買収地約12万平方㍍:所有権国に移転

1.裁決日       2019(令和元)年 5月21日

2.所有権移転日   2019(令和元)年 9月19日

3.明渡しの期限    2019(令和元)年11月18日

所有権は国に移転したが、地権者は買収には応じていないので補償金は法務局に供託されました。
いわゆる強制収用です。
お金を受け取っていないにもかかわらず所得税、町県民税、国民健康保険税、後期高齢者医療保険料、介護保険料が増額課税され、地権者の皆さんを苦しめています。

「水問題を考える会」と「石木川まもり隊」では共同でニュース「滴(ひとしずく)」を発行中です。
こちらからバックナンバーがご覧いただけます。
https://drive.google.com/drive/folders/0B6JtHJfYBzavbEVRTkZjUGhrb2M

また、石木川まもり隊が佐世保市民向けに作成したとてもわかりやすいチラシがあります。
こちらのPDFデータも自由に使ってください。