雨の中、透明傘をさし、黒っぽいスーツ姿の男性ばかり15,6人がぞろぞろと歩いていく光景はちょっと異様な感じでした。
このうち裁判官は3人だけ。他は書記官や、地権者、双方の代理人弁護士など。
こうばる広場やこうばる公民館、江川橋(平成2年洪水の真相を知るポイント地点)などでは10分以上の説明時間が取られましたが、地権者の各家々での説明時間はわずか2分と制限されたものでした。
地権者の皆さんは、家に上がって頂く時間も惜しいので、雨のかからない駐車場や作業場などで対面し、家族の紹介、現在の生活状況、そしてここに住み続けたい思いを短く訴えるだけでした。
それでも、わかってほしいことは事前に文書でしっかり伝えてあったので、ただここで顔を合わせて直接訴えることができた、それだけでも大きな意味があったと、皆さん笑顔でした。
この視察は非公開の進行協議ですから、マスコミも同行はできません。
私はたまたま、1軒のお宅でのやり取りを目撃していたのですが、
「この家は126年前の建物です。私の家族の歴史が詰まった家です」
「ここの米は、なしてか美味しかとです。私も…に2回出しましたが、2回とも1番になりました」
最後尾で聞いていたので、何に出品?されたのか、町内で1位なのか、県内で1位なのかわかりませんでしたが、この方が言おうとしていたことは十分伝わってきました。
どうして美味しいのか、言わなくても、皆わかったはずです。
そして、彼の奥さんは「ずっとここで暮らしたいです。ただそれだけが私のねがいです」と言葉少なに言って、深々と頭を下げました。
鼻の奥がツーンとしました。
裁判官の方々もきっとそうだったでしょう。
そうであってほしい