石木ダム事業認定取消訴訟 第1回口頭弁論

いよいよ、事業認定取消訴訟の裁判がスタートしました。

(正式名称は「石木ダム事業認定処分取消請求事件」と言います)

今日は、その第1回口頭弁論の日です。

裁判は2時開始ですが、1時10分からの門前集会には80人ほどが長崎地裁前に集まりました。

馬奈木弁護団長は「石木ダム建設は、地域の営みを破壊し、人の尊厳を奪うもの。

今日の裁判は、決して奪われてはならないものを守り抜く戦いの第一歩です」と訴えました。

 

待つこと数十分、厳かな雰囲気の中、開廷です。

被告は国(事業認定をしたのは国土交通省の認定庁なので)ですが、被告席には県職員の姿も。

意見陳述のトップバッターは水没地権者の岩下和雄さん。

このスケッチは支援者のNさんによるもの。

元美術教師のNさんは、開廷中ずーっと鉛筆を走らせていました。

岩下さんは54年前の測量調査の頃からの石木ダム計画の歴史を振り返り、

県の不誠実(覚書を反故にした)で、強権的(機動隊を導入しての強制測量)なやり方を紹介、

そして、「不要なダムのために故郷を売ることは有り得ない」と断言しました。

岩下さんの陳述の全文はこちらです。

 

次に陳述したのは、水没住民の松本好央さん。

好央さんは、四季折々のこうばるの美しい自然を紹介し、

4世代9人の大家族が、この地で暮らす幸せを語りました。そして、

「あの強制測量から30年以上経ちましたが、石木ダムがなくても何も困らなかった」

「ということは、ダムの必要性がそもそも無い、ということではないですか?」

「国は何の利益も無いダムのために、私たちに犠牲になれというのですか?」

「私たちが愛するふるさとで住み続ける権利よりも、ダム工事をする行政や業者の権利の方が価値があるというのですか?」

そして、その後も、胸を打つ言葉が続きます。

会場のあちこちから感動の、鼻水をすする音が聞こえてきました。

(かく言う私も・・・)

陳述書全文をぜひお読みください。

松本好央さんの意見陳述書はこちらです。

 

続いて、代理人の3名による意見陳述がありました。

鍋島弁護士の意見陳述書はこちら

平山弁護士の意見陳述書はこちら

馬奈木弁護士の意見陳述書はこちら

 

鍋島弁護士は、土地収用制度において認められている強制収用は、財産権のみであり、

それ以外の権利・利益の強制収用は認められていない。

石木ダム事業が奪おうとしているのは、人格権の侵害そのものであり、

それを憲法は認めていない。

このことの重大性・残虐性を起業者らは理解しているのか?と訴えました。

(写真は報告集会の時のもの)

 

それをさらに深く、広い視野から陳述された馬奈木先生の話は興味深いものでした。

ロシアの大地に侵攻したナチス・ヒトラーの無法を許さず闘おうと、

国民や世界に呼びかけたイギリスのチャーチル首相の演説をなぜ紹介したのか?

報告集会ではその解説が聞けました。

 

チャーチルは、共産主義国のロシアが大嫌いだった。

でもナチスの侵攻は許せなかった。なぜか?

チャーチルは、ロシアの大地を先祖代々耕してきた農民の姿を思い描いた。

少女たちが笑い、子どもたちが遊んでいる、住民の生活が破壊されることを思い描いた。

国を治めるトップとして、他国の庶民の上にも思いを馳せた。

それに比べて、長崎県を治める中村知事はどうか?

県民である川原地区住民の生活や文化を自ら水底に沈め破壊しようとしている。

国も同じ。

今回の答弁書を読むと、失われるのは「環境の一部」という程度の認識。

県民、国民の暮らしを何とも思わない。

あまりにも恥ずかしい。

それを問うためにチャーチルを引き合いに出したのだそうです。

そして、そんな日本に民主主義はあるのか?と。

 

平山弁護士は、どんなに客観的に見ても石木ダムは不要である、という点に絞って陳述。

石木ダムは50年以上にわたって完成していない、

世論の理解が得られていない、

起業者自身が合理的な説明ができず、住民の疑問に対する回答を拒否している、

などの事実を単純明快に指摘されました。

 

次回の期日は、7月19日 15:00〜15:30

地権者の心からの叫び、代理人の法と理に叶った主張を、

生の声を、あなたも聴きにきませんか? 

 

工事差止仮処分申し立て、505名!

道路を挟んで左右の歩道に人が溢れています。

長崎地裁佐世保支部前で門前集会が始まるところです。

 

馬奈木弁護団長の挨拶:不必要な全く意味の無い工事に大金を使うな!

無駄な事業のために市民・県民、とりわけ現地住民の生活が犠牲になろうとしている。

私たちの生活を守り抜くために、全国民の力を結集して闘い抜こう!

地権者の岩下さんの挨拶:予想をはるかに上回る505名の申立人が集まりました。

支援者の皆さんのおかげです。今日から新たな闘いが始まります。よろしくお願いします。

見守る地権者や支援者の表情も真剣そのもの。共に闘う決意が伝わってきます。

 

提訴終了後は、中部地区公民館に移動して、報告集会をおこないました。

馬奈木弁護団長からこの訴訟の意味が、平山弁護士からは申し立ての中身について説明がありました。

その後会場からたくさんの質問が出され、熱気あふれる集会となりました。

 

馬奈木団長:

差し止め裁判で勝つ条件は2つある。

1つは、行政が侵害しようとしている権利はたいへんな権利なんだということ。

この石木ダムはまさにそうである。

奪ってはならないものを奪おうとしている。

県が奪おうとしているものは土地・建物だけではない。

川原の地には何世紀にもわたって営々と築かれてきた人としての営みがあった。

その上に今の生活があり、それを未来に手渡したいと願う人々の暮らしがある。

受け継がれていく文化がある。

それを知事が奪おうとしている。破壊しようとしている。

破壊していいのか?いいわけがない。

このことをしっかり伝えよう。

もう1つの条件。それは実際に事業ができていないこと。進んでいないこと。

裁判所は皆さんの闘いをじっと見ている。

皆さんが権利を守るためにどれだけ本気で闘っているかを見ている。

皆さんが守ろうとしているものはそんなに大切なものなんだね、

と、裁判官が理解した時、共感が生まれた時、裁判所は止める気になる。

私たちは裁判所にお願いするのではない。

地権者をはじめ、佐世保市民、長崎県民、ひいては国民が、

こんな権力の横暴は許さないという決意を示すのだ。

50年経ってもできていない=必要のない無駄な事業のために失うものがいかに大きいか、

市民県民のために本当に役に立つ行政、お金の使い方を確立していこう。

私たちの税金は本当に役に立つところに使ってほしい、この思いを全国に広げよう。

そして、全国の皆さんと共に闘って行こう。

 

質疑応答

Q:今回申し立てに参加できなかった人からの問い合わせがきてるのですが・・・

A:どんどん受け付けてください。次の申立がいつになるかは未定ですが。

Q:勝利したらどうなるのか?止まるのは工事だけか?手続きは止まらないのか?

A:たぶん工事だけ。収用手続きは進む。

  また、県側が不服として高裁に持ち込むだろう。

  工事差止では事業は止まらないが、大きな武器にはなるだろう。

Q:負けたら県はもっと強硬に推し進めてくるのではないか?

A:そのような心配をしても意味がない。我々は裁判だけで解決するとは思っていない。

  裁判で勝っても諫早湾の開門ができなかったように。

  裁判をテコにして世論を盛り上げることが大事。

Q:どのくらいで処分が決まるのか?

A:それは全くわからない。

Q:505名の内訳は?

A:地権者、共有地権者、川棚町民、佐世保市民、その他の長崎県民、県外、

  その6グループに分けて集計しているが、共有地権者の中には県外者もおおい。

  よって、住所で分けた場合、長崎県民は約400名で県外は100名ほど。

 

他にも様々な質問が出され、参加者の真剣度が伝わってきました。

その中には、不安な思いを覗かせる方もいましたが、それを察してか、

地権者としての感想を問われた時、岩下さんはきっぱりと、このように語りました。

 

この仮処分申立は1つの契機。

結果がどうなろうと、

私たちのダム反対の思いは変わりません。

 

最後に7団体による闘争宣言文を貼付します。

 

明日申し立て、石木ダム工事差止仮処分

いよいよ明日提訴です!

無駄なダムは要らない。無駄な工事は止めて。私たちの血税を浪費しないで。

そんな、市民として、納税者として当たり前の要求を、

行政や政治屋は聴く耳を持たないので、司法の場に訴えます。

当初の予想をはるかに超える申立人が集まりました。

申立人になった方はもちろん、そうでない方も、良かったら集会にご参加ください。

場所はこちらです。

 

長崎地裁佐世保支部

〒857-0805 長崎県佐世保市光月町9−4 電話:0956-22-9175
http://www.lawyer-support.jp/map/detail/316/

 

報告集会の会場は、佐世保市中部地区公民館です。

〒857-0805 佐世保市光月町6-17  電話番号:0956-25-2360 
http://www.lawyer-support.jp/map/detail/316/

 

                         

石木ダムの事業認定取消を求め110人が提訴

石木ダム事業認定の取り消しを求め、110人の地権者がついに立ち上がりました。

うち、地元に住んでいる地権者は48名で、残り62名は共有地権者の皆さんです。

15:30に提訴。

その後、記者会見と説明会が開かれ、弁護団がこの裁判の意味を、地権者が今の心境を語りました。

弁護団は、この裁判は「事業で失われるものは何かを問うものだ」と、その意義を強調しました。

弁護団長の馬奈木昭雄代表弁護士は、

 この事業で奪われるものは、単に土地や家といった財産だけではない。
 先祖代々守ってきた自然・文化・人の営みそのものが奪われる。
 人が人として生きる権利、人間の存在そのものが奪われようとしている。

 人の生活を奪うにはそれなりの理由が要る。「みんなのために」なるものでないと。
 公共事業とは本来そういうもの。だけどこのダムにはそれがない。
 「みんなのために」となる「みんな」がいない。

 県はダムの必要性は説明しないで、金の話をして追い出そうとしている。
 それは不動産屋の仕事。知事は不動産屋なのか?

と訴えました。

その奪われようとしているものをより具体的に鍋島弁護士が説明し、

利水の問題点を八木弁護士が、治水については緒方弁護士が説明しました

そして再び馬奈木弁護士が

 しかし、どんなに正しいことを訴えても、それで裁判に勝つわけではない。
 正しいことを言えば裁判所が認めてくれると思うのは幻想。
 仮に裁判に勝っても、知事や市長がすんなり負けを認めるかはわからない。
 これまでは県民市民の声を聞かないできたが、それはおかしい。
 主体は私たちだ。
 県民市民の声が通る社会にしたい。
 そのための裁判だ。

と伝えました。

そして地元地権者として、

石丸さん:最後の手段であるべき強制収用を県はいとも簡単にやってのけた。
     憲法上、許されないことだ。
     私たちは長いものに巻かれたくない。
     正しいことを示していきたい。

岩本さん:利水についても治水についても、県の言ってきたことはおかしい。
     我々が調べたことを訴え、人事を尽くして天命を待つ。
     その結果がどうであろうと、
     それでも県が行政代執行をやるというなら、我々は地獄の底まで付き合う。

岩下さん:この訴訟の結果が出るまで、県は付替え道路などの工事を中断すべきだ。
     この裁判には時間がかかると思われるが、
     その期間が長ければ長いほど、ダムが要らないことが証明されるはず。
     我々はこれからも阻止行動を続ける。温かいご支援をお願いしたい。

と訴え、会場は大きな拍手に包まれました。

その後、記者団からの質疑があり、最後はガンバロー!のシュプレヒコール。

地権者の皆さんは一様に笑顔。

勝利への自信に溢れていました。

これほど強い弁護団が味方についているのだもの。

そして、昨日の伊勢谷友介さん、いとうせいこうさん、小林武史さんたちの訪問も、

大きな希望と力を与えてくれたに違いありません。 

 

※訴状はこちらです。

「工事差止仮処分申立」は自分のためにやる!

蓋を開けてびっくり!

「工事差止仮処分申立」裁判学習会という難しそうな学習会に、約100名もの方がご参加下さいました。

50名も集まれば…と思っていた私たちは、予想以上の関心の高さに正直驚きました。

 

まずはじめに地権者や支援者など3人の方からお話いただきました。

支援者のMYさんは付替え道路阻止行動の様子や県の動向を紹介し、

地権者のIHさんはダムサイトの地質に問題があることなどを指摘し、

「私たちは自分の財産を守りたいという人間の権利としての闘いをやっている」と訴え、

市議の山下さんは、3日前に開かれた収用委員会の様子と、石木ダムがもたらす水道料金値上げについて語りました。

 

そして、いよいよ馬奈木弁護士の登場です。

奪われるものは土地建物ではない。奪われる本質は人間の尊厳である。

資本主義の根幹をなすものは所有権であり、それは何者も侵害してはならない。

国家権力といえども個人の所有地に土足で踏み込んではいけない。

収用が許されるのは、本当にそれがみんなのためになる場合である。

石木ダムはそうではない。

みんなのためにならない事業に莫大な予算が投入されている。

まさに税金がドブに捨てられている。

そのために限られた予算が削られ、必要なところに回ってこない。

だから民事で闘う。

 

誰が裁判を起こすことができるのか?

被害を受けていると思う人は誰でもできる。

自分が必要だと思っていることに自分が出した税金が使われず、

必要のない石木ダムに使われていれば、立派な被害者である。

だから被害者として声を上げることができる。

声を上げることによって、自分の生活を守ることができる。

 

つまりこの仮処分の申立人になることは、地権者を守るためではない。

人助けではない。

自分のためにやるのだ。

私の生活は私で守る。

(その言葉を肝に命じました)

 

終了後提出されたアンケート用紙は42枚、

多くの方が裁判についてよくわかった、馬奈木弁護士の話はわかりやすかったと感想を述べ、

申立人になると答えた人は32人、これから検討するは8人、

既に申立人になっている1人、無記入1人でした。

また、その場で2人の方が委任状と負担金を支払っていかれました。

 

参加者の中には市民団体に所属している方も多く、今後それぞれの団体で集めてくださると思います。

このブログをご覧いただいている方々で、そのような団体には所属していないので個人的に参加したい

とお考えの方は是非メールでご連絡ください。

ishiki-hotaru@buz.bbiq.jp このメールアドレスをコピーして、宛先に貼付し、

申立人になる意志を明記してお送りください。

こちらから、弁護団に送る委任状や負担金の振込先などを添付して返信いたします。

 

よりよい暮らしのために、自分のために、多くの仲間と共に闘えることを願っています。

  

学習会「工事差止仮処分申立」って何?

学習会のお知らせです  

11月7日の当ブログで既にお伝えしましたが、
https://ishikigawa.jp/blog/cat02/1068/

石木ダム対策弁護団は、今月末提訴予定の「事業認定取消訴訟」とは別に、

工事差止仮処分申立て」を長崎地裁佐世保支部へ提訴する予定です。

この仮処分申立ては、地権者でなくても、誰もが申立人になることができます。

「石木ダムは不要!」「無駄な事業だ」「無駄な工事に私たちの血税を使ってほしくない…」

などと思っている市民・県民・国民の誰もが参加することができます。

そして、その申立人の数が多ければ多いほど、申立の意義を裁判官に示すことができます。

ですから、私たちは一人でも多くの皆さんにご協力を呼びかけたいと思っています。

しかし、申立人になるには裁判費用の負担をお願いしなければなりません。

内容や手続きについてしっかり納得した上で参加して頂きたい。

私たちもいい加減な説明はできません。

そう考え、学習会を開くことにしました。

 

この日、弁護団長の馬奈木先生が超ご多忙ななか駆けつけ、じっくり説明してくださいます。

水俣訴訟、じん肺訴訟、有明訴訟など公害・環境・人権問題に深く関わってこられた超ベテラン弁護士。

その馬奈木先生が石木ダム建設をストップさせるために、再び厚い壁に挑もうとするのは何故か?

その展望は?

是非ご一緒に耳を傾けてみませんか?

そして訴訟について、わからないことは何でも聞いてください。

素朴な疑問、大歓迎です。

この機会をお見逃しなく!

 

会場の「佐世保市労働福祉センター」( 長崎県佐世保市稲荷町2-28 TEL:0956-32-8929)は、

こちらです。→ http://www.city.sasebo.lg.jp/benrimap/shisetsu/kanko/241.html

 

お待ちしています。