立入調査2日目。
今日も、午前と午後1回ずつ県職員はやってきました。
「調査をさせて下さい。お願いします」と。
その答えは地権者が手にしたプラカードに書かれています。はっきりと。
我々は、土地も家も売らない。
家屋調査や土地測量、必要なし。
それでも帰ろうとしない県職員に向かって、地権者の言葉は荒くなります。
丁寧にお願いする県と怒鳴り返す地権者の構図は、第三者が見れば一瞬誤解を招くかもしれません。
地権者の人たちって強引で横暴な人たちなの?と。
そうではありません。
どんなに礼儀正しくお願いしても、法律に則っていても、自分の家や田畑を奪いに来る人は、
地権者にとっては「強盗」と同じです。
ここはじいちゃん、ばあちゃん、オヤジ、オフクロから受け継いだ大事な田んぼ。
ここは俺が生まれ育った、たった一つのふる里。かけがえのないふる里。
ここは私が嫁いだ場所。子どもを産み育て、私も育てられた第二のふる里。
家族の幸せがいっぱい詰まった我が家。私の生きる場所。
どうして俺たちが追い出されるんだ?
どうして私たちが犠牲にさせられるの?
私たちにも自分の財産を守る権利はあるはず!
どうして今ダムが必要なんだ?
どうしてここでなくちゃいけないの?
誰か説明してくれ!
私たちにわかるように説明して!
既に説明済みです。事業認定という国のお墨付きも頂いています。
もうこの畑は国のものですよ。この野菜は処分して下さいよ。
二度とここに植えてはなりませんよ。
次は宅地です。家は取り壊します。
その補償額を計算するために測量調査が必要です。
さあさあ、邪魔をしないで調査をさせてください。
と慇懃無礼に迫ってくる者に、どうして応じることができるでしょうか。
土地収用法という為政者にとって都合のいい法律を武器に、どんどん攻めてくる県。
それに対して素手で立ち向かっている地権者。
あまりにも力の差があり過ぎる。
その悔しさ、悲しさ、理不尽さ。。
その心理を新聞記者は見つめ、伝えています。