石木ダム問題の今

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2019.9.19 強制収用直前、知事との面会

 

9月19日、こうばる住民と長崎県知事との面会についての主な新聞記事です。

石木ダム 全用地収用 住民「古里、奪わないで」

©株式会社長崎新聞社

「ダムを造らないでください」と涙ながらに訴える女児=県庁

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、反対住民13世帯の宅地を含む全未買収地が19日、土地収用法に基づく「権利取得の時期」を迎えた。約5年ぶりに実現した中村法道知事との面会で、涙ながらに建設反対を訴えた住民ら。知事は「事業を進めていく必要がある」との考えを改めて示し、両者の溝は埋まる気配がない。13世帯もの宅地を強制収用する事態に、住民の支援者らは反発し、関係首長や推進団体も複雑な心境をのぞかせた。
約5年ぶりに実現した中村法道知事との面会には、水没予定地の川原(こうばる)地区で暮らす13世帯約50人のほとんどが参加。小学生から90代までの約20人がそれぞれの言葉で古里への思いを語った。高ぶる感情をのみ込みながら思いの丈をぶつける住民に対し、知事は目を落とし、淡々とメモを取る姿が目立った。「気持ちは伝わってるのか」。交わらない視線に象徴されるような県との深い隔たりに、住民たちはいら立ちを募らせた。
「川原での思い出が、自然や風景が、私は大好きです」。高校2年生の松本晏奈(はるな)さん(17)は知事へのメッセージを読み上げた。これまで人前でダムについての意見を述べることはあまりなかったが「自分も力になりたい」と勇気を出した。「帰る場所がなくなるなんて考えたくない。川原を奪わないでください」。声を詰まらせながら知事に語り掛け、手紙を渡した。曽祖母のマツさん(92)は「この年になってどこに移れというのか」としわくちゃの手を握り締めた。
3人の子どもを育てる炭谷潤一さん(38)は「県は理解を得る努力をするといいながら、手続き上は強制的に土地を取り上げている。私の家族と川原の人々を全力で守る」と語気を強めた。小学3年生の長女、沙桜(さお)さん(8)が「お家がなくなったらいやです。ダムを造らないでください」と涙ながらに訴えると、周囲からすすり泣きがもれた。
石丸穂澄さん(36)は、川原の自然や生きものを描いたイラストを持参。「知事が奪おうとしている私たちの大切なものです」と掲げた。精神疾患を抱えながら、古里の豊かな自然と生態系の魅力を広めようと描き続けてきた。「住み慣れた環境を離れるのは私にとって酷な要求。この落ち着いた環境がどうしても必要」と声を振り絞った。
最後に、長年運動の中心を担ってきた岩下和雄さん(72)がマイクを握った。10代で父を亡くし、若くしてダム反対運動に参加。歴代知事を舌鋒(ぜっぽう)鋭く追及してきたが、この日は「知事しかいません。どうかダム建設を取りやめてください」と深々と頭を下げた。他の住民がそれにならうと、知事も立ち上がって応じた。
知事は質問に答える以外はほぼ発言しなかったが「佐世保市の水不足は解消されていない」と事業への理解を求めた。「膝を交えてお話しする機会が持てるならありがたい」と今後の面会にも含みを持たせた。
面会を終えた住民は、一様にすっきりしない表情を浮かべた。川原伸也さん(48)は「知事が目を合わせてくれず、無難に仕事をこなしているように見えた」と不満をあらわにした。松本好央さん(43)は「知事が考えを変えることを期待する。面会はこれで終わりとは思っていない」と望みをつないだ。

石木ダム 全用地収用 知事と住民面会 行政代執行が焦点

©株式会社長崎新聞社

宅地を含む全ての未買収地が収用された石木ダムの建設予定地=川棚町

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、反対住民13世帯約50人の宅地を含む全ての未買収地約12万平方メートルは20日午前0時、土地収用法に基づき県と同市が所有権を取得した。一部の土地の明け渡し期限となった19日、建設予定地の住民らが中村法道知事と約5年ぶりに県庁で面会し、建設反対を訴えた。終了後、知事は報道陣に事業を推進していく姿勢を改めて示し、今後は行政代執行を巡る動きが焦点となる。

 石木ダムを巡っては、県収用委員会が5月、地権者に未買収地約12万平方メートルの明け渡しを求める裁決を出し、19日を「権利取得の時期」とした。これまでに取得した約64万3千平方メートルに続き、県と同市は20日午前零時に約12万平方メートルの権利を取得。住民の権利は消滅した。今後、登記はいったん住民側から国に移していく。県と同市はダム建設に必要な全用地を取得したことになる。
約12万平方メートルのうち、19日は家屋など物件を含まない土地(約1万5千平方メートル)の明け渡し期限で、物件を含む残りの土地については11月18日が期限。住民側が期限までに明け渡しに応じなければ、県と同市は知事に家屋の撤去や住民の排除といった行政代執行を請求でき、知事が対応を判断することになる。
面会は住民側が要請し、幼児や高齢者を含む約50人が午前10時から約2時間半、中村知事と面会。古里への思いや県の手法へ不満をぶつけ、「古里を奪わないで」「ダム計画を見直して」などと訴えた。中村知事はメモを取りながら耳を傾け、質問に答えた。
面会後、住民の岩下和雄さん(72)は「思いは伝えられた。本当にダムが必要なら、自分たちのやったことが間違っていないか見直してほしい。私たちは(土地の)名義が変わろうが今まで通り畑を耕し、稲を作り、ここで暮らしていく」と言い切った。
一方、中村知事は報道陣に「それぞれの方々の思いを大切にしながら、事業全体を進めていく必要があると改めて感じた。現状では今の方針で進まざるを得ない」と語った。

石木ダム建設予定地

石木ダム全用地収用 反対派市民ら抗議活動 長崎県との溝 埋まらず

©株式会社長崎新聞社

住民(右)から面会の報告を受ける支援者=県庁

 石木ダム建設や強制収用に反対する市民らは県庁や佐世保市内で抗議活動を繰り広げた。
中村法道知事と建設予定地の住民が約5年ぶりに面会した会場では、滋賀県知事時代に県内のダム建設を中止した嘉田由紀子参院議員が支援者の立場で傍聴。超党派で結成した「石木ダム強制収用を許さない議員連盟」メンバーでもある嘉田氏は終了後、取材に「(ダム建設を止める)方法はある。一番必要なのは地方自治の勇気。県民を愛する判断が必要だ」と力を込めた。
県庁前では午前10時半から支援者約40人が「強制収用やめろ」と記されたプラカードなどを手に抗議。長崎市在住の吉島範夫さん(77)は「県がしていることは人権侵害。最も混乱が少ないのは事業認定を取り下げることだ」と語った。
ダムの受益者である佐世保市内でも反対運動があった。市民ら約15人は、午前7時半から市役所前で「水は足りている」「石木ダムいらんばい」と記した幕などを掲げたり、通勤する職員にチラシを配ったりして、土地収用反対を訴えた。呼び掛け人の森田敦子さん(63)は「大好きな佐世保市が(建設予定地の)川原(こうばる)の人々の人権を無視するようなことがあってはならないし、それは恥ずかしいことだ」と述べた。
一方、川棚町のダム建設予定地では県道付け替え道路工事が粛々と進められた。

石木ダム全用地収用 円満解決願っていたが… 推進派、首長ら複雑な表情

©株式会社長崎新聞社

 石木ダム建設事業で関係自治体の首長や推進団体関係者は、円満ではない「強制収用」に複雑な心境をのぞかせた。ダム建設を求めつつも、行政代執行で住民を排除するような事態は避けてほしいと望む声も聞かれた。
川棚町の山口文夫町長は「円満な話し合いでの解決を願っていたので、(一部の)明け渡し期限を迎えたことは残念」とした上で、「古里に住み続けたいという思いは理解できるが、事業に協力し、移転していただいている8割の地権者の思いも大切にしなければならない」とコメント。移転した元住民の一人は「強制収用は自分が泣く泣く土地を出て行った当時に、想像していた最悪の事態。本当に何と言っていいのか」と言葉少なに語った。
全用地収用について「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長(81)は、「水不足を解消するため私たちは建設をお願いするだけ」と冷静に受け止めつつも、「行政代執行は望まない。最後は(両者が)納得いく形に向かってほしい」と求めた。中村法道知事と反対住民が約5年ぶりに面会したことについて、佐世保市の朝長則男市長は「内容を把握していないのでコメントできない。県と足並みをそろえ進める」と述べるにとどめた。

石木ダム埋まらぬ溝 知事5年ぶり住民と面会

西日本新聞 長崎・佐世保版

知事に思いを訴え、そろって頭を下げる住民たち拡大

知事に思いを訴え、そろって頭を下げる住民たち

中村知事はダムの必要性を説明した

 県と佐世保市が川棚町川原(こうばる)地区で計画する石木ダム事業を巡り、19日、予定地の住民らと中村法道知事が県庁で5年ぶりに面会した。この日は一部土地の明け渡し期限ということもあり、張り詰めた空気の中での面会。両者の主張は最後まで平行線をたどった。 (野村大輔、岡部由佳里、平山成美)

■古里に住み続けたい 住民

「知事のお願いを聞きに来たのではなく、思いを伝えるために来た」。面会は川原地区に暮らす松本好央さん(44)が発言の口火を切った。家族4世代で知事に向き合い「生まれ育った古里に住み続けるのは悪いことか」と問い掛けた。

面会場所の大会議室に詰め掛けたのは4歳から92歳までの五十数人。このうち20人がマイクを握り、思いのたけを語った。

石木小3年の炭谷沙桜さん(8)は学校を早退して参加した。「私は家がなくなるのは嫌です。私は川原が好きです」。涙ながらに手紙を読み上げると、周りの大人たちがハンカチで目元をぬぐった。

40年以上、ダム建設反対の声を上げ続ける松本マツさん(92)は「川原のきれいな住みよか所に、なんでダムのできるとかな。ブルドーザーががらがらして、山が削れていくのがダム小屋から見えて悲しかです。この年になって、どこへ出て行けと言うのですか」と声を振り絞った。

川原の住民の似顔絵や、石木川の希少な水生生物の絵が掲げられる場面もあった。どちらも生活の場が奪われる危機にある。「この絵を見てどう思いますか」と作者の石丸穂積さん(36)は訴えた。

予定時間を超す約2時間半の面会を終えると、出席者は全員が十数秒にわたって深々と頭を下げた。

岩下和雄さん(72)は県庁ロビーで待機していた支援者に内容を報告。「住み続けたいという思いを中村知事に発信してきた。強行は間違っていると訴え続けたい」。帰途に就く岩永正さん(67)は「伝えた思いが少しでも知事に伝わってくれれば」と祈るようにつぶやいた。県庁前では支援者ら約30人が「強制収用やめろ!」と書いたプラカードなどを手に、面会の行方を見守った。佐世保市の松本美智恵さん(67)は「知事の方向転換は甘くないと思うが、5年間互いの気持ちを伝える場がなかったので、ここをスタートとしてほしい」と期待した。

■代執行は慎重に検討 知事

5年ぶりに住民と面会した中村知事は、「今日は知事に思いを伝える場だ」とする住民側が進行役を務めたため、聞き役に徹した。住民一人一人の訴えをメモしながら、時折、発言を求められた。

住民の一人、川棚町議の炭谷猛さん(68)から「話し合いを(これから)1カ月後、2カ月後にも設定しようと思うが、どうか」と水を向けられると、中村知事は「皆さんと地域の将来を話す機会をいただければ大変ありがたい」と応じた。だが、ダム計画の見直しを求める住民と、治水・利水を目的にダムの必要性を主張する知事との溝は最後まで埋まらなかった。

県は面会に際し「静穏な環境と円滑な進行」(河川課)にこだわった。5年前の前回、ダム予定地の川原公民館で行った面会は紛糾、知事や執行部が「十分に説明させてもらえなかった」(同)という苦々しい経験があるためだ。

面会が行われた大会議室の場所が報道陣に発表されたのは、この日の朝。住民以外の支援者が入ってこられないようにする目的で、面会場所へ通じる廊下をついたてで遮り、別室を通過させて廊下に戻る-まるで迷路のような仕掛けを施す念の入れようだった。マイクが用意されておらず、住民の抗議を受けて職員が準備する一幕もあった。

面会後、中村知事は報道陣に対し、これまでに事業に賛同して予定地を離れた住民がいることにも触れ「ダムの必要性はいささかも変わっておらず、先延ばしは許されない」と説明。行政代執行の可能性について「解決策がなくなった段階で総合的、慎重に検討する」と述べた

「古里を奪わないで」 長崎・石木ダム事業一部明け渡し期限 住民、知事に訴え

西日本新聞 社会面

中村法道知事(左)に手紙を渡す、石木ダム予定地に暮らす女児と父親=19日午前10時半ごろ、長崎県庁拡大

中村法道知事(左)に手紙を渡す、石木ダム予定地に暮らす女児と父親=19日午前10時半ごろ、長崎県庁

 長崎県と佐世保市が同県川棚町で進める石木ダム建設事業は19日、予定地の一部の土地について県収用委員会が定めた明け渡し期限を迎えた。この日は、反対運動を続けてきた住民と中村法道知事が5年ぶりに面会。子どもや高齢者を含む約50人が古里への思いを訴えた。国の事業採択から44年。ダムの必要性を主張する県側との議論はなお、平行線をたどっている。

石木ダム予定地は約79万3千平方メートル。これまでに54世帯が事業に同意し、移転した。一方、13世帯はダムの必要性に疑義を唱え、予定地に暮らし続けている。

2014年7月以来となる県と住民の面会は約2時間半に及んだ。川棚高2年の松本晏奈(はるな)さん(17)は「思い出が詰まった古里を奪われるのは絶対に嫌です。どうか私たちの思いを受け取ってください」と涙ながらに手紙を読み上げた。

中村知事は面会後、報道陣に「渇水で不自由した人もいる。用地を提供して協力した人も多く、そうした思いも大切に事業を進める必要がある」と述べ、話し合いを続ける意向を示した。

収用委は今年5月、この13世帯や、反対住民を支援する「一坪地主」が所有する約12万平方メートルを明け渡すよう命じる裁決を出した。一坪地主の所有山林を中心とする約1万5千平方メートルの明け渡し期限が19日、住民所有の宅地や田畑は11月18日。住民が立ち退かなければ、一定の手続きを経て強制的に家屋を撤去する行政代執行が可能になる。 (野村大輔、平山成美)

【ワードBOX】石木ダム

長崎県の川棚川の治水と佐世保市の水源確保を目的に、1975年度に国から事業採択された。総貯水量548万トン(東京ドーム4・4杯分相当)。現在の完成目標は2022年度で、総事業費285億円に対する18年度末の進捗(しんちょく)率は約55%。県収用委員会は5月の裁決で県に対し、一坪地主を含む地権者376人に補償額計約11億8325万円を支払うよう命じた。土地所有権は20日午前0時に消滅し、国が取得する。

長崎)石木ダム反対地権者、知事に思いの丈ぶつける

原口晋也、小川直樹 

 石木ダム計画を巡り、水没予定地の長崎県川棚町の反対地権者らが19日、中村法道知事と5年ぶりの面会を果たした。愛着のある土地の所有権が、県収用委員会の裁決により失われる最後の日だった。1962年に計画が持ち上がってから世代を継いで続く戦い。静穏を奪われ、怒り、泣いてきた住民たちが、行政代執行の権限をもつ知事に、整然と思いの丈をぶつけた。

川原(こうばる)地区の13世帯を中心に水没予定地に土地をもつ計16世帯の4歳~90代の計約50人が午前10時過ぎ、県庁3階会議室に入った。まず若い世代の家族が、強制収用しないよう訴えた。

最多の9人家族の松本好央(よしお)さん(44)は、4世代そろって面会に臨んだ。

口火を切った松本さんが語ったのは、県が強制測量をした1982年5月、機動隊の前に立ちふさがった小学2年の時の恐怖心だ。「あれは、長崎県の汚点だ。今度は前代未聞の暴挙をしようとしている。だが我々はこの先も住み続ける。勇気ある決断を」と計画断念を求めた。

長女で川棚高2年の晏奈(はるな)さんが父の話を継いだ。「ひいばあちゃんと畑で野菜を作り、食べ、田植えもやってきた。兄弟とホタルや魚を捕まえてきた」とふるさとの日常を紹介。「帰る場所がなくなるなんて考えたくもありません」と話し、声を詰まらせた。会場から、あちこちですすり泣きが漏れた。晏奈さんは思いをしたためた便箋(びんせん)を中村知事に手渡した。

松本さんの祖母マツさん(92)は、工事の監視を兼ねる通称「ダム小屋」に週2日こもる。「山が崩れ、ブルドーザーが動き回るのを見るのは悲しい。この年になってどこへ行けと言うのか? 一日も早くやめて下さい」と嘆願した。

3世代7人で暮らす炭谷潤一さん(38)は「強制的に土地を奪おうというのはおかしい。ダムの必要性の問題ではなく人道上の問題だ」と指摘。「私は家族と川原の人たち、コミュニティーを守る。絶対に手を触れさせない」と決然と述べた。長女で石木小3年の沙桜(さお)ちゃん(8)が「家がなくなるなんていや。川原が大好きです」と書いた便箋を読もうとしたが、嗚咽(おえつ)で言葉にならない。潤一さんに肩を抱かれながら、それでも最後まで読み上げた。

この間、地権者たちと目を合わせることはほとんどなかった中村知事を、石丸キム子さん(69)は「知事、顔をあげて下さい」と柔らかい口調でたしなめた。炎天下の現場に来ている県職員を気遣い、「本来の県民のための仕事をさせてあげて」と求めた。

1972年に当時の川原の総代や県知事らが交わした覚書を取り上げた地権者もいた。「建設の必要が生じたときは、協議の上、同意を受けた後着手する」などという覚書の取り決めを「県は簡単に破棄した」と地権者は批判。知事は「司法の場で明らかに」などとして回答を避けた。

面会後、中村知事は取材に対し、「ふるさとへの熱い思いは大切にしなければならない」と述べながらも、「(利水や治水の)対策の必要性はいささかも変わっていない」と、事業推進の姿勢は変えなかった。

面会を傍聴した前滋賀県知事嘉田由紀子参院議員は、地権者らを前に「法にも理にも情にもかなっていない事業。今日が(戦いの)新たな始まりです」と声を上げた。

川原地区の地権者13世帯は土地の補償金の受け取りの拒否を続けたため、補償金は19日までに法務局に供託された。(原口晋也、小川直樹)

 

17歳「故郷奪われるのは絶対嫌」ダム建設進める知事に

小川直樹 

 長崎県佐世保市が川棚町で建設を進める石木ダムを巡り、水没予定地の川原(こうばる)地区に住む13世帯の地権者らが19日、県庁で中村法道知事と面会した。居住地の明け渡し期限が11月18日に迫る中、ふるさとに住み続ける決意を知事に伝え、強制収用に踏み切らないよう求めた。

面会に臨んだ住民は4歳~90代までの約50人。「知事、どれだけ弱い者いじめをするのですか?」。川原地区に4世代で住む自営業松本好央さん(44)が口火を切った。長女の晏奈(はるな)さん(17)は「ふるさとが奪われるのは絶対嫌です」と思いをしたためた手紙を読み上げ、知事に手渡した。

1975年に建設が決まった石木ダムは水没予定地の用地買収が進まず、県収用委員会は5月の裁決で、川原地区を含む約12万平方メートルの明け渡しを命じた。地権者の土地所有権は9月20日午前0時に国へ移り、11月18日までに居住地から立ち退かなければ、県は行政代執行による強制収用が可能になる。実際にこの手続きに踏み切るかどうかは知事の判断だ。

知事が立ち退きを拒む地権者と会うのは5年ぶりだったが、ダムの必要性を積極的に訴えることはせず、約2時間半の間、聞き役に回った。今後も面会の場を求める声には「機会を頂ければありがたい」と応じた。

ただ、面会後に取材に応じた知事は「事業全体を進めていく必要があると改めて感じた」と強調。代執行については「しかるべきタイミングで、決断をしなければならない」と述べた。(小川直樹)

石木ダム反対地権者5年ぶりの知事面会

https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20190919/5030005402.html

 

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