いつものように、第3日曜日は石木ダム勉強会。今月は石木ダムの地質問題の第3弾。今回も地質の専門家の中山先生にお話をうかがいました。
お時間と関心のある方は、こちらをご覧ください。
中山先生のお話の記録動画です。
https://www.youtube.com/watch?v=_xMjwhPSvg4
これまでのボーリング調査結果で、ダムサイト周辺には、透水性の高い箇所があることはわかっていましたが、前回、ダム下流に隣接する採石場の採掘跡の埋立地の存在に中山先生は大きな懸念を抱かれ、今回は、その問題について詳しく解説していただきました。
これが、その砕石跡の窪地。完全な円形ではありませんが、直径は長いところで200m、深さは最大で50mほどもある巨大な穴で、平成2年豪雨の時には、石木川から溢れた雨がここに流れ込み、約100万㌧も溜まったそうです。貯水量100万㌧と言えば、長崎県内では、もう立派なダムと言えます。
こちらはダムサイト周辺でおこなったボーリング調査の図面で、赤い点線より上に「採石場跡地」と記されています。中ほどの山形の細い赤線がダムサイト予定地で、跡地まではこの図では約100mほどに見えます。
しかし、図面をよくよく見ると、青い点線で囲ったところにも崖地形が見られ、それが採石場跡地に繋がっていれば、ますます心配だということです。
一応100m離れていると仮定して断面図を描いてみると、
埋立地には約9気圧の圧がかかり、ダム湖の水が吸い寄せられるように漏水する危険性が懸念されるのです。
ということで、「ダム建設は避けた方がよいのでは?」というのが、中山先生の見解ですが、建設そのものは「技術的には可能かもしれない」ともおっしゃっています。
ただ、それには、かなりの工費が必要となり、現在の予算ではとても追いつかない。「事業費は当初算定額よりもかなり高くなるだろう」とのことです。
そんな例は沢山あります。
※訂正 石木ダムの当初見積額が353億円と書かれていますが、これは間違いです。353億円というのは石木ダムに関連する佐世保水道の施設設備費を含めた佐世保市の事業費で、石木ダム建設費そのものは285億円です。
当初予算の15.8倍にもなった奈良県の大滝ダムは、完成直前に地滑りを起こして、対策に10年近い時間と莫大な費用がかかりました。
九州には漏水ダムとして名高い大蘇ダムがあります。こちらも完成直前に漏水が発覚して、その対策工事が、続き供用開始は15年後になってしまいました。
この連休中に阿蘇を訪れた際たまたま出会ったのですが・・・熊本県産山村のヒゴタイ大橋。その下を流れているのが大蘇川なのですが、
このように、右を見ても
左を見ても、川の両岸は真っ白なコンクリートの壁が続き、
遥か向こうにダムのゲートが見えるので、まちがいなくダムですが、気の遠くなるようなコンクリートの壁に覆われた姿が痛々しく・・・この工事のために5.5倍に膨れ上がった事業費。それでもまだ漏水は止まらないという。それは、ここがダムの適地ではなかったという証だと思います。
また、設楽ダムも5月17日、国土交通省は、設計段階では想定できなかった地すべり対策等のため、工期の8年延長と建設費の800億円増を公表しました。https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20220517/3000022537.html
何百億というコスト増になっても、結局は税金だから、一般企業の場合と違って、国も県も平気なのでしょうか。当初は分からなかったのだから仕方ないでしょ?と。誰も責任を感じず、責任を取らず、ツケは国民に。それが公共事業?
石木ダムの場合は決してそれは許されない。なぜなら、お金では解決できない、住民の暮らしそのものを犠牲にする事業なのだから。