2015年度に激増した1日最大給水量の謎

昨日のブログ記事を読んで下さった方から、ご質問を頂きました。

図1「佐世保市の1日最大給水量、1日平均給水量」のグラフですが、これを見ると、2015年かなあ、いきなり一日最大給水量が跳ね上がっているように見えますが、これはどういう理由なのでしょうか? あまりにも不自然に、予測値もはるかに上回ってしまっています。
記事内に解説があるのかもしれないのですが、画像が小さくて読むことができず、…今後も継続するのか、一時的なものなのか?など、いろいろ理由を考えていますが、…もし、おわかりでしたら、教えていただければ幸いです。

そう。誰でも不思議に思いますよね。説明不足でした。申し訳ありません。
新聞には、このように書かれていました。赤線を引いたところです。

2015年度(2015年4月〜2016年3月)の1月というのは、つまり今年の1月ですが、長崎県内を記録的な大寒波が襲いました。
零下という寒さに慣れていない本県では各家庭の給水管に布を巻くなどの対策もせず、給水管が凍結。ひびが入ったり破裂したり…大寒波が遠のくと同時に、凍っていた中の水が溶けてあちこちから噴水のように漏れ出したのです。
これが当時の給水量の記録です。

23日=67,377m3

24日=61,715m3

25日=107,790m3

26日=99,679m3

27日=91,786m3

データが示すように、それまで1日の給水量は6万台だったのに、膨大な漏水によって、一気に4万㌧も増えました。
しかし、この水は使用されたわけではありません。ただ、漏れ出したのです。無駄になったのです。
使用されるどころか一気に漏れて配水池が空っぽになったために断水した家が7200世帯にもおよびました。

最高で1週間も断水が続いた地域もありました。お風呂も入れず、トイレの水も苦労して川から運んできたりしたところもあったようです。

一方、ダム湖の貯水率は当時80%を超えていました。

このとき私たちは学んだのです。いくら水源を確保していても、水を運ぶ水道管が壊れていては水は使えないってことを。

やっぱりダムよりも漏水対策が大事!

漏水対策を優先すべし!

ということで、「ダムよりメンテ」が私たちの合言葉となりました〜 

 

長崎新聞がまとめた石木ダム利水問題

今日の長崎新聞はほぼ1ページを使って、石木ダムの利水問題を取り上げていました。

 

まず右側の記事は水需要予測について。実績と予測の乖離をどう見るか?

市と反対派の間にある深い溝とは・・・。

近年はずっと1日最大給水量も1日平均給水量も右肩下がりなのに、予測は右肩上がりという事実。

これをどう見るか?

あなたはどう見ますか?

どう見ても予測が過大で、実績を無視している。

しかもダム完成予定年度に合わせるように急増している。

石木ダムの必要性を示すための数字合わせであり、つじつま合わせ…と私たちには見えます。

しかし、市の主張はこうです。

安定供給を第一に考えれば、予測と実績は離れて当然。

へー!ずいぶん居直っていますねー。

実績と離れていいのであれば、それは予測値とは言わないでしょう?

計画値とか希望値とか名称を改めた方がいいのでは?

 

生活用水も、同じ。実績は減っているのに、予測は増えるって?

ダムを造って水の供給が増えれば、使用量も増えるはずという考え方。

なぜ今のままじゃいけないのでしょう?

消費は美徳?

足るを知る生活がこれからは求められるのに…

なんだか逆行しています。

 

左側には水源についての意見がまとめられていました。

 

この中で、利水計画について市はこのように述べています。

現在安定水源は7万7千㌧あるけれど、あと4万トンを石木ダムで補うと。

でも、先ほどのグラフで見たように、近年の使用量は平均で7万トン前後。

安定水源でおつりがきます。

1日最大使用量でも7万7千㌧くらい。

それなのになぜ、4万トンも新たな水源が必要なのか?

 

厚生労働省の厚生科学審議会 (水道事業の維持・向上に関する専門委員会)は、「給水需要に見合った施設規模への見直し」を提言しています。

人口減少と共に給水需要が減っているのに、施設を大きくするのはおかしいと。

このような提言にきちんと耳を傾けるべきです。

 

まさにその通り。

今年1月の大寒波による水道管凍結破裂による漏水の被害は記憶に新しいところ。

菅が漏れていては、水源の水が家庭まで届かないことを私たちは実感しました。

新たな水源よりも漏水対策。

新たな施設を増やすよりも、今有る施設のメンテナンスをしっかりして有効活用する。

 

それこそが、今求められている持続可能な社会への道だと思います。

 

 

 

「差し迫った状況にない」?

今日の長崎新聞「論説」を読んで、思わず大きく頷きました。

小出久論説委員は、
県は「工事再開に司法のお墨付きを得た」ことになるが、「決して強引にことを進めてはならない」「今ここで立ち止まり、事業の進め方を再検討すべきだ」
と釘をさしています。

裁判所に対しては、
仮処分という措置には、「著しい損害」や「緊急の必要性」が求められるが、地権者等の暮らしが「平穏」といえる状況か?決してそうではない、むしろ「長期間にわたって平穏な生活を奪われている」
と指摘しています。

全くその通りです。

毎日毎日、家事や農作業もそっちのけで阻止行動に出ていかなければならない。
真夏の炎天下でも、マスクやサングラスで顔を隠して立たねばならない。
雨の日も雪の日も休むわけにはいかない。
土日には、全国各地から励ましに来てくれる支援者を手料理で饗さねばならない。
地域には、しょっちゅうマスコミがやってきて、カメラがまわっている。
物理的にも精神的にも休む暇のない、「平穏」にはほど遠い状況、
それがここ数年の川原の日常です。
そういうことを地裁佐世保支部は、あまりにも知ら無さ過ぎる!
知ろうとしなかった…。

 

「差し迫った状況にない」という判断が、これまで様々な不幸を招いてきました。

ストーカー被害者の訴えを、「差し迫った状況にない」と判断して保護しなかったために殺された女性たちが何人もいます。

いじめの状況を「差し迫った状況にない」と感じて教師が真剣に対応しなかった結果、いじめがエスカレートし、自殺に追い込まれた子どもたちがたくさんいます。

超長時間労働による肉体的・精神的疲労が「差し迫った状況」だと誰かが気づいて、むりやり会社を休ませていたら、過労死せずに済んだケースは沢山あると思います。

当事者にとって本当に差し迫った状況かどうかを他人が理解するには、書類だけじゃダメなんです。

地裁の裁判官のように、現地に来て、自分の目で見て、耳で聴くのが一番です。

それができなければ、せめて地権者本人の訴えを聞いてほしかった。

たぶん仮処分という裁判の仕組みの中では、そんなことはできないのでしょうが。

裁判制度を何も知らない者の戯言かもしれません。

でも、「差し迫った状況にはない」との言葉に唖然として、黙って通り過ぎることはできませんでした。

 

地権者の内の4世帯の農地は既に強制収用されてしまったのです。

明け渡しを命じられているのです。

そこで米を作り野菜を作るのが、心身ともに生きる糧となっている人々の土地が書類上は既に奪われたのです。

次は住んでいる家を奪われようとしているのです。

それを知っていて「差し迫った状況にない」と判断されたのかと、叫びたくなりました。

 

でも、長崎新聞の論説を読んで、少しだけクールダウンできました。 

 

裁判官 雨の中 現地視察

雨の中、透明傘をさし、黒っぽいスーツ姿の男性ばかり15,6人がぞろぞろと歩いていく光景はちょっと異様な感じでした。

このうち裁判官は3人だけ。他は書記官や、地権者、双方の代理人弁護士など。

こうばる広場やこうばる公民館、江川橋(平成2年洪水の真相を知るポイント地点)などでは10分以上の説明時間が取られましたが、地権者の各家々での説明時間はわずか2分と制限されたものでした。

地権者の皆さんは、家に上がって頂く時間も惜しいので、雨のかからない駐車場や作業場などで対面し、家族の紹介、現在の生活状況、そしてここに住み続けたい思いを短く訴えるだけでした。

それでも、わかってほしいことは事前に文書でしっかり伝えてあったので、ただここで顔を合わせて直接訴えることができた、それだけでも大きな意味があったと、皆さん笑顔でした。

この視察は非公開の進行協議ですから、マスコミも同行はできません。

私はたまたま、1軒のお宅でのやり取りを目撃していたのですが、

「この家は126年前の建物です。私の家族の歴史が詰まった家です」

「ここの米は、なしてか美味しかとです。私も…に2回出しましたが、2回とも1番になりました」

最後尾で聞いていたので、何に出品?されたのか、町内で1位なのか、県内で1位なのかわかりませんでしたが、この方が言おうとしていたことは十分伝わってきました。

どうして美味しいのか、言わなくても、皆わかったはずです。

そして、彼の奥さんは「ずっとここで暮らしたいです。ただそれだけが私のねがいです」と言葉少なに言って、深々と頭を下げました。

鼻の奥がツーンとしました。

裁判官の方々もきっとそうだったでしょう。

そうであってほしい

 

新聞が伝えた 石木ダム工事差止め却下

工事差止却下の決定について、翌日の新聞には全紙に掲載されました。

中でも、長崎新聞は、1面トップ。

まず、決定内容の要点を紹介。

*「工事続行を禁じる緊急の必要性がない」として却下した。

*「平穏に生きる権利などが侵害される」という反対派の主張は退けられた。

*生命・身体の安全、人格権などの被保全権利については、存在するかどうかの判断を回避した。

*税金が有効、適切に利用される権利については、認めなかった。

*工事の必要性についての言及もなかった。

これを受けて、両者のコメントを紹介。

*中村法道知事「県の立場が認められたものと考えている。スムーズに推進できるよう引き続き努力をしていく」

*石木ダム対策弁護団「決定の内容を精査して、今後の対応を検討する」(福岡高裁への抗告を検討)

 

その上で、この決定に対する「解説」を掲載。

とてもわかりやすい!

特に「この決定は工事が止まっている「今」だけを切り取ったもの」

「将来、住民の暮らしや自然がが奪われる本質には目を向けていない」

「住み慣れた地で生きる権利は、被保全権利に当たらないのか?」など。

 

社会面にもトップで大きく掲載。

反対派の思いは…

*なぜ分かってくれないのか!

*期待はしてなかった

*ダムのことを考えないでいい暮らしがしたい

*納得できない!高裁で改めて無駄な事業であることを訴えていく

 

一方、推進派は…

 

「工事を続行して良いとの判断が明確に示された」?

 確かに。

工事差止を却下したということは、工事を続けて良いということ。

 

でも、実際問題として、明日から工事は進むでしょうか?

たぶん、現地の状況は、おそらく何も変わらないでしょう。

昨日と同じ光景が明日も明後日も続くことでしょう。

 

この決定が問題解決に繋がるものではないことは明らかです。

 

 

毎日新聞

 

朝日新聞

読売新聞

 

西日本新聞

小沢一郎さんからの手紙

もう?

さすが!大物政治家!やることが早い!

と絶賛する人あり。

早過ぎない?ちゃんと調べてくれたのかなぁ・・

と不安視する人あり。

 

ともあれ、末次精一さんによる「小沢一郎の国交省ヒアリング報告会」が18日午後、急きょ開かれることになりました。

 

小沢さんが川原を訪ねたのは、今月6日(火)のことでした。

 

報告書の日付は12日(月)だったので、ヒアリングされたのは8日(木)か9日(金)でしょうか?

6日の夜は佐世保にいらしたので、帰京は早くても7日…。

ということは、帰京した翌日か翌々日?

やはり即、行動される方なんですね〜

末次さんが読み上げて下さったその報告書がこちら。

添付資料は4枚。

1.石木ダム建設事業〜事業概要、事業費、ダム検証結果など

2.石木ダム建設事業について〜事業の経緯、必要性、今後の対応方針

3.石木ダムの位置(航空写真)

4.過去の主な洪水・渇水〜写真と新聞記事

 

内容は、ほとんど、県のHP(「石木ダム建設事業」)や、これまでの説明会資料に書かれていたことばかりでした。

目新しいことと言えば、事業費のところだけ。

〇平成27年度まで 167.3億円

と記載されていました。

つまり、これまでに必要のない事業のために167億円も使ってしまったということですね。

あと118億円ほどで道路を造り、転流工事をし、ダム本体を造ろうというのでしょうか?それだけで済むとはとても思えません。

他ダムの例が示すように、工事が始まってから、補正、補正で予算を積み増していくのでしょう。

 

もう1つ、確認できたこととして注目したいのは「今後の対応方針」です。

・長崎県からは、石木ダムは治水・利水両面から効果が期待されることから、今後も地元住民のご意見を伺いながら丁寧に事業を進めていく意向と聞いている。

つまり、長崎県は「地元住民のご意見を伺いながら」やっていくと国には伝えているのです。

実際には意見に耳を傾けるどころか、質問にも答えない。

公開質問状を提出しても、国が認定したことだから説明する必要は無いと住民には門前払いです。

この現状を小沢さんから国にしっかり伝え、糾してもらいたいものです。

・国としては、事業者である長崎県の意向を尊重しつつ、引き続き技術面、財政面から必要な支援を実施していく。

やはり国は県と二人三脚で公共事業を推し進めたいようです。

不要な事業でも…。

県(行政)の意向だけを尊重し、県民(国民)の意向は無視してもいいのか?

県民、特に地域住民が半世紀も反対を続ける事業を強行して良い結果を生むはずがない。

イサカンの轍を踏まないよう、小沢さんには再度国交省に意見してもらいたい。

公共事業を熟知している小沢さんの言葉は、きっと重く伝わるはず…。

 

工事差止仮処分申し立て、却下!

ついに長崎地裁佐世保支部の判断が示されました。

石木ダム工事差止仮処分申し立ては却下されました。

私たちの敗訴です。

なぜ、どういう理由で、そのような判断に至ったのか、私たちはまだ何も知りません。

仮処分の裁判は一般の裁判の判決と違って法廷の場で明らかにされるわけではありません。

その決定書は弁護団に渡されます。

今頃は弁護団で精査、分析、今後の対応について検討がなされていることでしょう。

私たちはその報告を待つしかありません。

 

今はとりあえず、マスコミ報道に注目してみましょう。

まず、NHK長崎のTVニュースによると…

石木ダム自体が不要なので、それに伴う工事は全て不要であり,
その不要な工事によって,地権者の権利が侵害されようとしている,
として,私たちは工事の差し止めを求めたのですが…

長崎地裁佐世保支部の渡邊英夫裁判長は、「権利侵害の緊急性もない」として、申し立てを却下したようですが…全く現状誤認です。

工事は道路工事だけではありません。

ダム本体工事も含みます。

ダム工事をするということは、地権者の土地を奪うことであり、財産権や生活権、居住権など様々な権利が奪われることです。権利の侵害そのものです。

工事を認めるということは、ダム建設を認める事であり、現在進行形の強制収用の手続きを進めることであり、緊急性は大いにあります。

4世帯の家屋については、審理は既に終わっており、いつ収用裁決が出てもおかしくない時期に来ています。

今日の決定で、司法のお墨付きを得たとして採決が出されたら、それでも「権利侵害の緊急性もない」と言うのでしょうか?

 

中村知事のコメント:
県の主張が認められたものと思っている石木ダムは必要不可欠だという考えは変わらず、事業がスムーズに進むよう、地権者の方々などに理解していただきたい。

佐世保市長のコメント:
この判断が、今後事業の着実な進展に繋がっていくものと期待しております。

 

この裁判は、石木ダム事業そのものについて必要性の議論はしないままでした。

当方は要求したのですが、県側は避けて通りました。

なのに、知事も市長も石木ダムにお墨付きが与えられたかのような錯覚に陥っている?

それとも敢えてすり替えているのでしょうか?

 

ダムの必要性についてはまだまだこれからです。

事業認定取消訴訟。

私たちは、こちらでしっかり闘います。

県の皆さん、逃げないでくださいね。

 

パタゴニア日本支社長、佐世保市議会で陳述 

今日、佐世保市議会石木ダム建設促進特別委員会での請願趣旨説明を傍聴しました。

石木ダムについて公開で議論する場を求める請願。

県議会で不採択となったあの請願。

佐世保市にも提出されていました。

そして今回は、WTK実行委員の一人である辻井隆行さんが趣旨説明をされました。

そう。あのパタゴニア日本支社長の辻井隆行氏。

自然保護を社是とするアウトドア衣料メーカー「パタゴニア」の辻井さんです。

佐世保ではかなり有名になっているかもしれません。ダム反対者として。

でも、それは少し誤解があるようです。

その誤解を解くためにも、あえて佐世保市議会で陳述しようと思われたのでしょうか。

 

その発言の全てをここでお伝えできないのが残念です。

議会傍聴者には録音録画が禁じられていますから。

私の読み辛いメモとおぼろげな記憶を駆使して、そのエッセンスをご紹介します。

 

*私たちはダムに反対しに来たのではありません。

*私はグローバル企業の一員として、世界や日本で、一度決められた事業が、多角的な議論によって方向を転換した結果、市民も、行政も幸せになり、より持続可能な地域発展に繋がった事例を学んできました。そのような経験から立場を超えたオープンで透明性のある議論が行われることを切に願っているのです。

*長崎県や佐世保市が説明を重ねてきたのは知っています。しかし、現実として石木ダムのことをよく知らない、わからないと思っている若い方々が多いのも事実です。

そして、同じような例として昨年の安保法案に関する話をされました。

*首相も与党議員も十分説明を尽くした。国民の理解も進んだ。と言っていましたが、新聞各社の世論調査では、大多数が議論は不十分と答えました。
朝日新聞74%、毎日新聞78%、読売新聞82%、日経新聞78%、共同通信81.6%

そうなんですよね。
当局は説明したと思っても、市民国民に伝わっていないことはよくある話!

*もし、佐世保市民に対する世論調査が実施され、8割、9割の方々が「説明は十分」「議論はしつくした」と答えられ、その上で「ダムが必要」と言うのであれば、それは佐世保市民が本当に望んでいることになるのだろうと思います。現時点ではどうでしょうか?

*事業者が「十分な説明をした」と認識されている一方で、「不十分だ」と感じている方が多いのはなぜか?その理由の1つは、お互いの話に耳を傾ける「対話」が行われてこなかったからだと思います。

そうですよね!
私自身の反省も含めて、私たちは互いに主張し合うばかりでした。
相手の話に耳を傾け、対話すること無しに合意形成は絶対に生まれません。

*石木ダムが作られるのか、作られないかに関わらず、今回の請願書が国民・県民・市民の願いとして正当に扱われ、賛成、中立、反対の立場を超えたオープンで公正な議論が深まる、そうした公開議論の場が実現することを切に願っております。

 

委員の皆さんは、ある種の緊張感を持って、時に頷き、時に真剣な眼差しで聴いていました。しかし、質疑はそれほど活発ではありませんでした。出された質問は2つだけ。

橋之口委員:請願事項で「公開の場で議論する」とありますが、これは佐世保市が設置して市民に呼びかけることを求めているのですか?

辻井さん:市がそういう場を設けて頂くのを願っていますが、民間もしくは市民サイドがそういう場を設定して、市の関係者もそこに参加して議論するという形でも良いと思います。

林委員:様々な立場の人が公開の場で議論をと求められたが、事業認定を含めこれまで様々な公開の場での説明議論等があり、その時の対象者は限られた人々ではなかったはずですが。今までの場ではそれが十分ではなかったということですか?

辻井さん:これまでそのような場を持たれてきたことは私も理解していますが、当時十代だった方が20代になり社会を担う立場になっています。知らなかった、知りたいという若い方々と私はこの2年間でたくさん出会いました。禍根が残らないよう、より多くの方が納得した形で物事が進められることが大事ではないかと考えています。

 

そして、30分の休憩後、委員会再開。討論の後採決となり、今回もと言うべきか…全会一致で請願は否決されました。反対の理由はこうでした。

 

市民クラブ:
これまで長い間、県と市は地権者や市民に対し説明や意見交換を重ね、その中で事業認定がなされた。地権者の理解が得られていないのは残念だが、県としても必要性は十分説明されてきたし、今後も県自らが?なされると思う。よって賛同できない。

緑政クラブ:
これまで長い時間をかけて様々な立場から議論されてきた。すでに議論は尽くされているので、あらためてやる必要は無い。

市政クラブ:
市民の何故に真摯に答えるのは事業者として当然のことだと思う。今後も真摯な対応をするよう市に申し添えたいと思う。ただ、市は県と共同で事業を進めるという立場なので、市が主体として呼びかけの場を設けるというのは適当ではない。信頼関係が無い中で市当局が主体となって話し合いの場を作っていくということはなかなか理解が得られないだろう。

自民党:
県は推進する立場で討論を進めてきた。いま老若男女で議論するのは望ましくない。県も度々説明の場をもってきた。県の立場を重視したい。平成6年渇水の時のような思いは絶対に後世にさせてはいけない。

公明党:
長い歳月をかけて議論されてきた経過があるし、今は法廷の場にも及んでいる。時間軸の中で安易に時を重ねることはできない。議論は大いに結構だが、公開の場に差し戻すというのは、これまでの経緯や法的手続きを軽視することになるので、不採択。

林(緑政クラブ補足):
緑成会としては請願が出されて以後、会派で議論を重ねてきた。また、辻井さんの説明を会派に持ち帰り、さらに議論した。その結果は永安委員の報告の通りだが、少し補足したい。賛成・中立・反対の立場での公開議論の場は当然必要。しかし、一定の時期を経て、この時期にあらためて公開の場での議論というのは、時期的に遅い状況になっている。

草津(自民党・個人的な意見):
時間軸を後ろに戻すわけにはいかないというのはわかるが、市当局が市民に対して情報発信を少し怠けていたということは認めざるを得ない。しかしこの委員会は石木ダム建設促進委員会。何回討論を重ねていけば新たな結論が導き出されるのか私には理解できない。

 

まとめてみると、反対理由はこういうことのようです。

①公開の場での議論は何度も重ねてきた。議論は尽くした。

②佐世保市は共同事業者であり、市が主体となって議論の場を呼びかけるのは適当ではない。

③信頼関係が無い中で市当局が主体となってやるのは難しい。

④今は法廷の場に及んでいる。議論を差し戻すのは、法的手続きを軽視することになる。

 

いずれも言い訳にしか聞こえません。やらなくていい言い訳探し。 

①については重々理解した上で、でも現実がそうではない、そう思っていない若い世代がたくさんいる、だから、もう一度やりませんか?禍根を残さないために。と辻井さんは言ってるのに、全然わかっていない。それともわからないふり?

②はヘンです。市民と市の水問題について話し合うのに、どうして県に遠慮するのでしょう?

③も言い訳になりません。市が主体でなくてもいいと辻井さんはおっしゃっていましたよ。民間とか市民団体が主催してもいいって。

④言い訳の常套句。隠れ蓑。逃げないでください。

 

結果はいつもと同じ、全会一致の不採択でしたが、特筆すべき嬉しいことがありました。
会派の意見とは別に個人的な見解を述べた委員が2人もいたこと。
特に草津委員の発言には驚きました。

市当局が市民に対して情報発信を少し怠けていたということは認めざるを得ない。

この委員会は石木ダム建設促進委員会。
 何回討論を重ねていけば新たな結論が導き出されるのか私には理解できない。

 

議員としての良心&苦悩?

辻井氏の真意が、きっと少しだけ届いたのでしょう。 

 

 

なぜ反対なの?「公開の場で議論」

石木ダム問題で県議会への請願はたぶん初めてのこと。

その請願の内容は「石木ダムについて公開の場で議論すること」。

賛成・中立・反対、様々な立場の人、様々な世代の人が議論する場を設けてください、というもの。

この請願には209筆の署名が添えられました。

石木ダム建設予定地「こうばる」で開催された音楽イベント『WTK』に参加した人たちが署名した請願です。

その『WTK』を企画制作したプロデューサーの谷川氏は、209名の思いを代弁するために、ご多忙ななか時間をやりくりして駆けつけてくださいました。

谷川氏の趣旨説明をお聴きください。 じゃなくて、お読みください。

 

石木ダムについて、賛成、中立、反対の立場での公開議論を求めます。
その理由について説明いたします。

一言でいうと、ダム建設の必要性がわからないでいる市民、県民が多くいらっしゃるようだ。ということです。そして色々な立場・お考えを持った方々のお話、それぞれの主張を聞いてもっともっとよく知りたいと考える方々が急速に増えています。私もその一人です。 

とりわけダム建設費用を負担していくことになる若者世代ほど理解が不十分である、それどころか建設の是非を考えたこともないというのが実情だと感じたため、あらゆる立場の方々が等しく参加した形で、透明性のある議論が開かれることが今まさに必要だと考えます。そういった活発な議論が生まれるきっかけになればと、気持ちを同じくしたミュージシャンやその他多くの有志の方々と共に、去る10/30 WTKというイベントをダム建設予定地にて開催するに至りました。 

申し遅れましたが、私は8才から13才まで佐世保市民でした。そして20歳までは長崎県民でした。現在も本籍は長崎です。ですが、この石木ダム問題に関心を寄せている理由は、長崎県民だったからというだけではありません。

大分県湯布院にて自ら営んでいた小売店を今年4月に発生した熊本地震により失いました。突如として大切な場所を奪われた自身の体験と、かけがえのない故郷を失われるかもしれない状況にあるこうばるの方々の思いとが重なって感じられたからです。 

私が体験した被災は、地震という形である時突然に起こりました。言うまでもなく抗いようもありません。ですが、こうばるの方々が奪われようとしているものは、佐世保市民や長崎県民の皆さんの判断如何によっては失われずに済むかもしれません。こうばるに流れる時間、人と自然が共生するそこにある営みは、日本の原風景と言っても過言ではありません。そんな貴重な原風景とも言える場所をダムの底に沈めてしまって本当に良いのか、その理解と議論が不十分であると感じた方々からの請願をここにお持ちいたしました。

イベントの準備、開催をする中で、石木ダム建設をよく知らなかった2つの異なる立場からの特に注目すべき声をご紹介します。

<今回のイベントに参加した、あるいは関心を寄せた佐世保市民・特に若い世代の声>

これまでダム建設は当たり前のことと捉えてきて特に問題とも感じでいなかったが、巨額のダム建設費を、今後自分たち若い世代の佐世保市民が負担していく以上、ダム建設の必要性を詳しく知りたい。仮にダム建設による「利水」「治水」の効果が期待できないとするならば、不要である望まないダム建設によって、誰かの大切な故郷を奪いたくなんてない。最も多かった声です。

<イベントに関心を寄せた長崎県外/国民視点の声>

こうばる地区という場所は長崎県だけのものではなく、日本の宝といっても過言ではない原風景のように思えます。だからこそ、そこが失われるかもしれないという問題は、長崎県の事業とはいえ、日本国民にも知る権利はあるはずだし、何より納得のいく建設根拠が、そこを故郷とする地権者や奪う側になるかもしれない佐世保市民にしっかりと示されることを望む。という声です。

こういった声の背景には、東日本大震災、熊本地震をはじめ、列島で起こった様々な大災害により、暮らしの根幹を突如として奪われた方々が、全国各地に数多くいらっしゃるということ。つまり、いま日本は「失われる」ということに大変敏感な時代に入っていることが挙げられると思います。日本のどこかで局地的に起こった痛みに対して、それを自分ごとと捉え、日本全体で寄り添い支援しようというこの素晴らしい波が、石木ダム建設にも注目をし始めています。

失うという体験は、それが愛する人の命であれ、かけがえのない故郷であれ、なんでもない日々の営みであれ、置き換えのきかない物事を失うという体験は、哀しみ、苦しみそのものであり、その後、生きていく希望を根こそぎ奪われるまさに失望であります。

石木ダム建設によって希望が生まれるのか、あるいは失望を生んでしまうのか。ダム建設の必要性がわからないでいる佐世保市民、知りたいと思っている長崎県民そして全国の方々に分かりやすく示していただきたいと思います。 

以上の理由から、石木ダム建設について、賛成、中立、反対の立場での公開議論を求めます。

WTK実行委員会
谷川 義行

 

この至極真っ当な請願に対して、委員たちは全会一致で否決。

不採択となりました。

なぜ?

主な理由
・石木ダムについては利水治水両面から既に議論が尽くされている。
・県も十分説明してきたし、国も賛成反対両方の意見を聞いた上で事業認定をした。
・さらに事業認定取り消し訴訟が進行中でもあり、司法の場で議論されている。
 
しかし、
・現実問題として、多くの市民県民が納得していない。疑問を持っている。
・だから、国も公共事業評価監視委員会も、県に説明努力を求めたはず。
・しかし、県はその付帯意見を忘れてしまった?or無視?
 
そんな県に対し、事業者としての説明責任を思い起こさせ、説明や議論の場を促すのが議会の役目だと思うのですが、長崎県議会は真逆でした。
 
委員Aは、
・佐世保市は度々水不足に陥っている。そういう事情を知って請願しているのか?
と請願者の無知を問い詰めるような口調。
(実情を知らなかったのは委員の方なのに…)
 
そこで、もう一人の請願者B(佐世保市民)は、
・佐世保市が水不足で苦しんでいたのは20年も前の事。
・平成6〜7年の大渇水から20年以上、断水は一度も起きていない。
・今夏の猛暑続きの時も佐世保市のダムの平均貯水率は80%を超えていた。
・ここ20年、佐世保市の一日最大給水量は2万トンも減っている。
・これからも人口減少でさらに水の使用量が減るだろう。
と佐世保市の実情を伝えたのですが、
 
それを無視して、委員Aは新たな質問を土木部に向けました。
河川課企画監には、利水面での必要性を語らせ、
河川課長には、これまでに説明を尽くしたということを具体的に語らせ、
土木部次長には、事業認定取り消し訴訟を口実に今は議論できないと語らせた。
 
こんなふうに行政と議会のシナリオに沿って審査は進み、
副委員長による反対討論の後、全会一致で不採択となったのです。

その結果は予想通りでしたが…
県議会の有りようそのものには本当に驚きました。
県議会では請願者の趣旨説明は議事録に載りません。
形としては休憩時間にするのだそうです。

委員長:請願者の趣旨説明を認めますか?
委員:異議無し
委員長:では休憩に入ります。請願者どうぞ。
請願者:発言
委員長:委員会を再開します。質疑に入ります。
委員:質問
委員長:休憩に入ります。請願者どうぞ。
請願者:発言(質問への回答)
委員長:委員会を再開します。

といった具合。
請願者の発言の度に「休憩に入ります」と宣言。
委員の発言の前に「再開します」と言わねばなりません。
こんな面倒なことをしてまで、請願者の発言を議事録から消したいのでしょうか?
それはなぜ?

また、もう1つ、こんなことがありました。
紹介議員のY県議が発言を求めたとき、委員長はいったん発言を許可したのに、すぐに「却下します」と訂正しました。
自民党のベテラン議員が首を横に振ったからです。
唖然としました。

11人の委員会の中に委員長の権限を無視した力関係があるように、
議会全体も、県庁全体も、ルールや正義よりも力関係が大事で、
それによって物事が決まっていくのでしょうか?

だとすれば、石木ダムも、誰かの大きな力が全てを決めている?
必要性だの住民の思いだのどうでもいい?

それが長崎県政の実態なのでしょうか。

小沢一郎、こうばる住民と約束

12月6日夕方、久々に川原公民館にマスコミのカメラが集結。

地権者の皆さんが揃って見つめ、訴えている相手は・・・

そう、自由党共同代表の小沢一郎さんです。

長崎空港から講演会場の佐世保に向かう途中、こうばるに足を運び、住民の声に耳を傾けたのです。

今回も末次元県議が、この貴重な機会を作ってくれました。

(末次さん、ありがとう!)

 

小沢さんが一段高いところから皆さんを見下ろしているような構図になってますが、決してそうではありません。

最近ぎっくり腰をやっちゃったそうで、「椅子を…」と言われ、急いで用意。

座卓に椅子という奇妙な組み合わせになってしまいました。

でも、それがラッキーだったかも?

一行が到着する少し前、急きょ思いついて、強制測量時の写真をひな壇の前に並べておいたのですが、それがうまく目に入る結果となり、「これは何時のことですか?」との質問を受け、

地権者の皆さんはそれに答えるとともに、この強制測量という権力者の蛮行を含む半世紀にわたる闘いについて伝えることができました。

その話を真剣な眼差しで聴く小沢一郎さん。

かつて政権の中枢にいた小沢さんも多くの公共事業に関わっていたことでしょう…。

確か胆沢ダムの関連工事をめぐり秘書とゼネコンとの関係が話題になった時期もありました。

ことの真相は私には何もわかりませんが、大事なのは今。

小泉元首相もかつては原発推進派だったけれど、今は脱原発派。

真実を知ったら、環境も未来も破壊する原発は止めなくては…に変わった!

小沢さんも、公共事業の闇を知っているからこそ、

犠牲を強いられている川原地区住民の怒りと悲しみが理解できるのかもしれない。

私の地元にもダムはできました。

でも、地域の人が納得して、そこに造ることになった。

公共事業は理解されることが必要。

こんなに長い間、地元の人が反対しているダムは聞いたことがない。

県は皆さんに丁寧に説明しなければならない。

予算を出している国交省にも、必要性を質したいと思う。

その結果は、ここにいる末次君を通して皆さんにお伝えします。

と明言。

それまで硬かった地権者の皆さんの表情がパッと明るくなりました。

ただ聞いて終わりではない。

ほんの短い時間でも会えて良かった、話して良かった。

そんな思いが伝わってきました。

 

帰りかけた小沢さんに、S子さんが声をかけました。

私たちは、ずーっとここで暮らしたいんです!

助けてください!

一瞬驚き、そして優しい表情で、小沢さんは答えました。

お気持ちはわかりました。

必ず、国交省と話してみます。

山田君の話も聞いてみます。

(元農水相の山田正彦さんは、民主党県連代表のころから、県連の方針に反して石木ダム不要を明言していた方で、そういえば、初当選は小沢さん率いる新生党からでしたっけ)

 

S子さんは小沢さんの印象を、後日こう語っていました。

ニュースで見る小沢さんは怖そうな感じだったけど、全然違ってた。

ニュースに出るのはいつも何かもめ事がある時ばかりだから。

私たちと同じだと思った。私たちもニュースに出るのは怒ってる顔ばかり。

本当の小沢さんは優しくて大きな人だと思った。

そして、聴く耳を持っている人。

政治家として一番大事なことだねと言うと、

そう。でも、聴く耳持ってる議員はほとんどおらんもんねー

とバッサリ。

 

この日、アルカスSASEBOでの小沢さんの講演の中で、私の中に残った言葉は

「真の自由」。

 

自由は大事だが、放任すれば、権力も富も一部の者に集中し、

一般国民の自由は失われていく。

真に自由な社会を維持するためには、公平公正な仕組みが必要であり、

オープンな社会、情報をみんなが共有できる社会でなければならない

 

この言葉を石木ダム問題に当てはめれば、

権力は県に集中し、

川原住民の生活の自由が奪われようとしている。

情報は共有されず、公平公正な議論もできない。

個人の自由を守ろうとするとスラップ訴訟をおこされる。

ますます閉ざされた社会に向かっている。

それが今の長崎県です。

 

そして、それを、嘆いても愚痴っても何も解決しない。

そういう政治家を選んだのは私たちだから。

不満があるなら、

選挙で変えるしかない。

選挙で変えることができる。