「今日はスカッとした。よくわからんけど、なんかスカッとした」
今日の報告集会で傍聴者の1人が発した感想です。
ドッと笑いが起こり、と同時に皆さんの表情は「同感!」
本日10:20から長崎地裁401号法廷では、当裁判のクライマックスとも言うべき証人尋問が繰り広げられました。証人は、田中英隆氏(佐世保市元水道局事業部長)、平成24年度石木ダム事業再評価における水需要予測作成の責任者です。
石木ダムの必要性は、治水面でも利水面でも根拠が乏しく合理性に欠けるのですが、特に佐世保の平成24年度水需要予測はムリヤリorデタラメorデッチアゲ感満載で、それをどう正当化するのか、みんな興味津々でした。
でも、優秀なお役人はわざと論点をずらして答えたり、持論を滔々と述べて時間稼ぎをしたり…今回もそうなるのかな~
しかし、今日は違った!
証人がスラスラ答えたのは、被告側尋問の時だけ。
原告側の尋問に入ってからは、「・・・」「覚えていません」「その頃は水道局にはいなかったので」「今は別の部署なので」などと、無言や逃げ。
当方の弁護士が「困りましたね。貴方では答えられないんですね」「貴方は責任者だったのでしょう?」「誰に聞いたらわかりますか?名前を教えてください」と尋ねる場面も。
もちろんそれに応じることはなく、「いえ、この予測は水道局全体で作成したものなので…」と拒否。
部下に責任を押し付けたくなかったのか、部下が出てきて答えたら不利になると思ったのか…?最後まで、その姿勢を貫きました。
何をそんなに窮していたのかと言いますと…
<生活用水について> 八木弁護士
委員会資料の中で、「渇水年は減少しているが、その他の期間は明らかに増加傾向を示している」と記載されていることについて八木弁護士は実績値を提示し、
H18年=193 19年(渇水年)=191 20年=188 21年=189 22年=190 23年=189
本当にそう言えるのか?と問うたのですが、「・・・」
また、「(佐世保市民は生活のための水使用を)我慢をしており一般的な受忍限界を超えている」と書かれていることについて、何を根拠にそう言えるのか?アンケート調査でもしたのか?との質問に、「調査はしていないが、市民の会からそのような声をたくさん聞いていたから」と返答。「一市民団体の声だけで貴方はそのように判断されたのですね」と指摘され「…」。
実は、その「市民の会」は一団体などではなく、JAやPTAや、医師会、町内会連合会など29団体が加盟する大組織なのですが、証人がそのように反論しなかったのは、その「市民の会」が官製市民の会である(運営費は100%市の助成金(税金)で賄われ、事務局は市役所内にある)ということを指摘されるかもしれない、藪蛇になりそうなので止めておこう~との判断だったのではないかと思いました。
<業務営業用水について> 毛利弁護士
H24年度予測でもこれまで同様、米軍と自衛隊だけは大口需要に分類しているが、その予測値は過去の手法と違って過去の最大値を採用している。自衛隊に至っては昭和時代の実績値。その根拠を問われ、防衛省からの文書に「十分な水量の確保が必要」とあったことを紹介したが、「具体的な数量は書かれていなかったんですよね?なぜ過去最大値を取らなければならなかったのですか?」と追及され「…」。
<SSKの工場用水について> 毛利弁護士
SSKの工場用水はわずか4年で4.88倍になると予測されているが、その要因は経営方針の転換(修繕船事業の強化)による水需要の増加によるもので、その根拠はSSKからの文書「水需要の将来見通し」だと主張する証人に、その見通しについて水道局として裏付けは取ったのか?との問いには「取っていない」。
さらに、この「見通し」は佐世保市の方から問いかけて出されたものであり、SSK側からこれだけの水が欲しいと言ってきたことはないですよね?との問いには、しばらく考えて、聞き取れないほどの小さな声「記憶にはありません」でした。
<負荷率について> 高橋弁護士
(負荷率とは給水量の最大と平均の関係を示すもので、負荷率が小さいほどが最大給水量は多くなる)
H16年予測では過去10年の平均値、H19年では過去10年の最低値を取っているが、H24予測では過去20年の最低値を取っているのは何故か?「ハウステンボスの再生、リーマンショック、2回の渇水などから過去10年ではデータの信頼性が乏しかったので20年に延ばした」との回答に、平成6年からの負荷率の推移を表したグラフを示し過去10年の最低値で良かったのではないかと迫ると、「原告側の見方も一理あると思うが、渇水のリスクを減らすためには…」「つまり80.3という負荷率が欲しかったのですね?」「…」
<保有水源について> 高橋弁護士
不安定水源とは何か?
水道法上の認可を受けていない水源
認可を受けられる条件は何か?
確実な取水ができること。取水量が安定していること。
水道法上本当にその様に定義されているのか?
……
慣行水利権は水道法上、認可の対象にならないのか?
わかりません
佐世保市はかつて三本木の慣行水利権を保有水源として認めていたが知っているか?
知りません
佐世保市の慣行水利権は許可水利権に切り替えられるのではないか?
できない。取水量に問題があり、届け出水量に達していないから。
では、安定水源のほうはいつも届け出水量に達していたのか?
(許可水利権と慣行水利権の取水実績のグラフを示し、どちらも取水量は一定ではなく取水率は似たようなものであることを確認)
渇水時に取れるかどうかも要件となる。
(H19渇水時の許可水利権と慣行水利権の取水量のグラフを示し、慣行水利権の取水量の方が大きいことを確認)
渇水時に不安定水源からの方が多く取水してるではないか?
どんなに実績を示してもその事実を認めようとしない元水道局事業部長への怒りがついにプチン!
そのようないい加減なことで4万tもの水が足りなくなるという予測を立て、地権者を追い出そうとしたのか?当時の責任者として、取水量が安定していなかったというデータを示せないのか?探せば出てくると言えないのか?
わかりません。
終わります!
次回は来年1月9日、東京で開かれる小泉教授への証人尋問。
そして、3月20日(火)に結審する予定です。
事業認定されたことで石木ダムの必要性については「決着済み」と長崎県は言っていましたが、尋問の内容を見ると、「決着済み」どころか治水や利水について行政の担当者がまともな説明ができないことが露呈されてしまいました。石木ダム建設先にありきで、それを正当化するための理屈や数値をあとからひねり出してくっつけるから答弁に窮することになるのです。
よくこんなものが事業認定されたものだと思います。尋問で原告側弁護士が行った質問はそもそも認定庁である国土交通省九州地方整備局(九地整)が起業者(長崎県、佐世保市)に対して行わなければならなかった質問ではないでしょうか。いかに認定庁の審査がいい加減だったかということです。
事業認定の際の公聴会では、ダム建設に反対する意見の方が推進の意見よりはるかに説得力がありました。その正しさは破綻した佐世保市の水需要予測の推移などをみればあきらかです。ではなぜ事業認定されたのか。それは、公聴会は単なるセレモニーで、もう結論は決まっていたからです。ダムを造りたい国公省が事業認定申請を却下するはずがありません。公聴会の会場で私の後ろに座っていたダム建設推進派の集団の一人が、「やっとここまでこぎつけた。あとは粛々と進んでいくだけだ」と万感の思いを込めて(?)話していました。公聴会がすめば事業認定は確実という認識があったのでしょう。公聴会は「結論ありきの茶番」だったのです。
1月には、水需要予測にお墨付きを与えた二人の学者の尋問が予定されていますが一人は敵前逃亡(尋問拒否)、もう一人は長崎地裁の法廷に出ることを避け、東京に関係者が行って非公開の場でしぶしぶ尋問に応じる模様。こうばるでは自分たちのお墨付きによる事業認定で地権者が苦しめられているというのになんという無責任な態度でしょう。
必要性をまともに説明できない事業であるにもかかわらず、強制収容の手続きが着々と進められ、付け替え道路の建設が住民の反対を押し切って強行されています。まさにダムを造ることそのものが目的なのだといわんばかりです。異常です。
こんなでたらめな事業認定は取り消されてしかるべきです。
国、県、佐世保市はグルです。裁判所までグルでないことを信じたい。