今日の西日本新聞 長崎・佐世保版に「石木ダム 論点溝深く」という見出しの記事が掲載されました。
深い溝とは、行政と識者の見解の相違のことです。
著作権の関係で記事そのものは転載できませんが、
先月、佐世保市で開催された石木ダムについての講演会。その講師(元国交省河川局防災課長・宮本博司氏)が示した石木ダム計画に関する様々な疑問点の中から、4つの論点について、記者が行政に取材し、両者の見解をまとめてくれました。
講演を聴いた私たち県民の多くが知りたかった内容です。
その一部を紹介すると、
例えば、雨量計の存在の有無です。
川棚川治水計画の前提要件となる平均雨量を算定するのに、なぜ県は川棚川流域の雨量ではなく、遠く離れた佐世保市内のデータを使ったのか?
裁判のとき「昭和22~60年、川棚川流域に雨量計がなかった」からと説明していたが、実際は有った!こんな嘘は治水計画の根幹に関わることで許されない。
というのが、元国交省で全国のダムの査定をしていた専門家の見解ですが、それに対する県の見解はこうです。
裁判で確かにそう説明したが、これは表現が適切ではなかった。
はあ?! 有るものを無いと言ったのは「不適切」だったので済むのですか?
いやいや、真っ赤な「嘘」でしょ?
ものは言い様、ですね?
いやいや、盗っ人猛々しい!なんて声さえ聞こえてきます。
上波佐見と川棚の雨量観測資料の存在については裁判所に証拠として提出している。「うそをついた」というのは当たらない。
これも県の見解ですが、この説明は藪蛇でしたね。観測資料を提出していなければ、雨量計の存在は知らなかった。嘘をつくつもりはなかった、と言い逃れることもできたかもしれませんが、資料提出している以上、知っていたのは明白。
「有ったのは知っていた」のに「なかった」と説明したのは「嘘」以外の何ものでもありません。
また、ダムを建設する場所として、専門家の宮本氏は、
石木川は川棚川の下流部の支流で、こういう位置にダムを造ると、本流のピーク水位を高める恐れがあるので、反って危険。なぜなら、ダムが無ければ、下流部の支流は本流の水位がピークになる前に海に流れていくが、ダムで流れを止めていると、本流がピークになるころ、支流でもダムで止めきれなくなって大量の水が流れてくることによって、本流の水位がより上がってしまう。ダム建設場所の選定が根本的に間違っている。
と指摘。これに対する県の見解は、
本流が溢れないように河川を改修し、支流から流れ込む量を調節するためにダムを設ける。流域全体でさまざまな治水の手法を考え、石木ダムと河川改修の組み合わせが最適だと判断した。
と、説明。前段の流域治水は一般論としていいと思いますが、その後の「石木ダムと…が最適」という判断は何の答にもなっていません。
川棚川の河川改修とダムの組み合わせが最適だと判断したとしても、なぜ石木川のような下流の支流にダムを造ろうとするのか、それが間違っていると指摘されたのだから、なぜ石木川を選んだのかの説明が必要なのに、それには全く答えていない。
もしかしたら、答えられなかった?間違っていたと認めたくはないけど、でも、正当だと主張する根拠も見当たらないので、一般論で逃げようとした?
そんな邪推をされたくなかったら、やはり、堂々と県民や専門家の前で、しっかり説明してくださいね。河川課のみなさま!