佐世保市による石木ダム再評価2回目の委員会審議が2月14日に行なわれました。
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今回の注目点は「代替案」と「費用対効果」でしたが、どちらも5年前の再評価と同様に、「石木ダムに代わる代替案は無い」「B/C(費用対便益比)=5.5」として、その結果、石木ダム事業継続という市の対応方針案を妥当と結論づけました。
多くの委員が50年経ってもできない石木ダム、10回も工期延長してきた石木ダム、それを「異常な公共事業」だと指摘しながら、それでも継続するという。その論理が理解できません。
まとめ役の委員長(横山均:県立大教授)は、「茶番」とか「やること自体が無駄」とか「川棚町民がかわいそう」とか・・ところどころ聞こえてくるのですが、声が小さくて全体としては意味不明でした。
内容について少し記しておきます。
資料は、水道局のHPにアップされています。
saihyouka214.pdf
まず、代替案について、市は今回も「石木ダム以外のダム建設、地下水取水、海水淡水化など14項目について検討したが、結果はいずれも不適」という結果。その理由は法的に無理、地形的に無理、コスト的に無理等々。ですが、本当にそうでしょうか?
「⑪既得水利権の合理化・転用」のところで、「改めて河川管理者に確認したところ、前回再評価以降に、新たな遊休水利権等は生じていません」とありますが、この認識は間違っています。
2022年12月5日の県議会議事録には、奥田土木部長が答弁でこう述べています。
「去る11月24日、佐世保市内の4団体の皆様から、東部かんぱいの水利権日量2万トンに対して、取水実績は22年間で72日、一日最大取水量は7,000トンであること、また、九州電力相浦発電所の廃止に伴う一日4,800トンの水利権廃止などで流量に余裕があるとのご指摘がありました。事実を確認したところ、…東部かんぱいの取水実績については、4団体の皆様が述べられたとおりでした」と。
つまり、県は東部かんぱい水利権が遊休水利権化している事実を認めているのに、佐世保市がそれを否定するのはおかしな話です。本当に県が「新たな遊休水利権は生じていません」と言ったなら、県の二枚舌ですし、佐世保市が確認していなかったのなら、佐世保委の再評価のいい加減さの証です。形だけの帳面消しをやり、石木ダムしか無いという結論有りきの再評価に他なりません。
次に、費用対効果=費用対便益=B/Cについてですが、今回も現実を無視した机上の計算により、便益=渇水被害額がめちゃくちゃ大きく算定されています。
C=コスト=ダム建設費+供用開始後50年間の維持管理費=1060億円
B=ベネフィット=石木ダムで回避する50年間の渇水被害額=5868億円
故に、B/C=5.5
石木ダムが無ければ、50年間に5868億円もの被害が起きる?
1年間に平均117億円の被害が毎年起きる!!
信じられます? 確か昨年度の佐世保市水道事業の事業収入は約61億円でしたが、その倍近い被害が発生するなんて?!
その計算式も根拠となるデータも示されていないのに、委員の方々はそれをスルーしてしまわれました。
なぜ、このように被害額が大きくなるのか?
今回の算出根拠となるデータは公開されていないので、過去のデータで見てみましょう。前回のB/C=5.4で、今回とほぼ同じなので参考になるはずです。その資料
https://www.city.sasebo.lg.jp/suidokyoku/suikik/documents/siryouhenn_151-200.pdf
こちらの31p「表-5.10被害額の集計」を見ると、
令和8年度の被害額合計は134億円となっています。
その根拠は、21pの「表-5.1生活用水の被害額」に示されています。つまり市は、
この1年間に293日間も給水制限があるという想定の下に被害額を計算していたのです。
給水制限率5%の日が87日、10%の日が100日、15%が66日、20%が27日、25%が10日、30%が3日、トータルで293日と。
そして、その年だけでなく、毎年、毎年、300日前後の給水制限が続くのです。
これではホテルも美容院も銭湯も営業できず被害額が膨れ上がるのは当然ですね。
このようなあり得ない虚構の給水制限率を設定することが大間違いであり、オオボラフキもいいとこですが、なぜそんなことになるのか?
それは、①水需要予測が過大で②保有水源は過小に見積もっているからです。
前回再評価時における予測では、
令和8年度の一日最大給水量=10万2千㌧、
一日平均給水量=7万5千㌧、
保有水源=7万7千㌧
と算定しているので、これでは給水制限が度々発生することになります。
でも、直近の一日最大給水量=7万㌧
一日平均給水量=6万4千㌧
保有水源=9万㌧以上
なので、実際には何も渇水被害は起きていません。
このように、全ての根源はデタラメな水需要予測に有り!
水増しに次ぐ水増しで巨大に水ぶくれした需要予測を基に、どんな代替案を検討しても、どんな費用対効果を計算しても、全ては無駄で無意味です。
改めて、まともな水需要予測をやり直してほしい!と強く願っています。
「過ちては改むるに憚ること勿れ」「過ちて改めざる、これを過ちという」