死者29人となった今回の「九州北部豪雨」。
今日のTVニュースで、視察に行った自民党の谷垣禎一総裁のコメントが流れていた。
「大分県竹田市の災害現場ではダム建設済みの河川は氾濫していない。
一方、民主党の事業仕分けによってダム建設が延期になっている場所が氾濫している」と。
「国土強靱(きょうじん)化基本法」なるものをまとめ、
10年間に200兆円規模のインフラ整備への集中投資を目指している自民党の親分だもの、
言うと思ってました。
土砂に押しつぶされた家、暴れ狂う濁流に呑まれて亡くなった人、
たくさんの悲しみが散乱している現場に行っても、
公共事業を増やすことしか頭にないのだろうか…
ダムがないから河川が氾濫するのではない。
森を守っていないから、
保水力を失った大地が地滑りをおこし、里の部落を襲うのです。
大地に沁み込む量が少ないから、地表を流れ、一気に川へ押し寄せるのです。
その水嵩が激増した川の護岸対策が遅れているから、氾濫するのです。
ダムがあっても、想定以上の雨が降れば氾濫します。
谷垣さんが訪れた場所とは違うかもしれませんが、
熊本県の白川について、地元の市民団体が、今回の洪水の実態を早くも調査分析しています。
「立野ダムによらない自然と生活を守る会」の報告です。
最後の2点だけご紹介します。
全文はこちらです。 → http://stopdam.aso3.org/ 是非ご覧ください。
7.立野ダムによる治水の限界
「想定外の災害のためにも立野ダムが必要だ」という意見がある。
しかし、立野ダムの洪水を貯める容量は、想定した洪水を調節する分しかない。
今回の洪水のような想定以上の洪水ではダム湖は満水になり、洪水調節不能となる。
ダム湖に流入した水をそのままダム上部の8つの穴から非常放流することになり、
「洪水調節ダム」として機能しなくなる。
8.まとめ
今回の洪水で浸水被害を受けた箇所は、河川改修が未完成の地区ばかりである。
特に、河川整備計画で架け替えることになっている明午橋、竜神橋、吉原橋で川幅が狭まるなどして、洪水水位を押し上げている。
国交省の直轄区間から外れている小磧橋より上流は、改修はほとんど手つかずの状況である。
さらに驚くことに、改修工事のもととなる「河川整備計画」が、大津町や菊陽町の白川では策定されていない。中流域でも、河川整備計画を早急に策定し、河川改修を進めるべきである。
ダム計画があると、下流の河川改修がおろそかになることは明らかである。
今回の洪水で、もし立野ダムが存在し、国交省の想定通りに機能したとしても、被害を防ぐことができなかったことは明らかである。
黒川橋の流失により、今回の洪水は「過去最大」と言われてきた昭和28年の6・26洪水を上回る可能性があることが明らかになった。それでも6・26洪水と比べ被害が大幅に少なかったのは、これまでの河川改修の結果である。
今回の災害では避難情報が遅れるなど、行政の危機管理体制の在り方が問われている。
同じ白川で、国の直轄区間と、県の管理する区間があり、ハザードマップも別々になっている。
これらも、情報伝達がうまく行われない一因になっていると思われる。危機管理とりわけ避難対策の充実が急がれる。
今回の洪水で、阿蘇市を中心に多くの方々が亡くなられたが、いずれも土砂災害が原因である。
ご冥福をお祈りする。
今後は河川改修を進めるとともに、土砂災害の要因となっている放置人工林の整備(間伐)や、阿蘇の草原の保全を進めるなど、流域全体を見据えた災害対策を進めていくべきである。