9月13日市議会本会議において、23年度佐世保市水道事業決算に関する議案はすべて承認されました。
採決の前におこなわれた山下市議の反対討論は、たいへん素晴らしい内容でした。
結果は賛成多数で承認されましたが、その内容を多くの市民にも知ってもらいたいと思い、
ご本人の許可を頂き、ここに、その討論原稿を転載致します。
反対理由を申しあげます。
第一に、平成23年度決算は、約20%の水道料金値上げが年間通して市民に圧迫をもたらし続けました。また、この値上げにともない、一般会計から2億の財政投入、1億の借り入れがおこなわれ、水道事業会計を支えなければいけないというものでした。
第二に、これほど厳しい水道事業経営なのに、必要性もなく実現性もない、石木ダム建設事業推進に財政投入した決算になっています。
第三に、これほど値上げで市民負担、一般会計から年間3億の支援を受けなければならないのに、100億を超える北部浄水場統合事業に着手し、23年度本格的施設建設に踏み切った決算になっています。大手巨大企業に儲け口を提供するためではなかったのか、その疑惑の声が広がっているのも当然です。
9月議会冒頭議案質疑を行いました。明らかになったことはほんとうにひどいものでした。
石木ダムを必要とする水需要予測値は、一日平均配水量は、日量8万4901トンとされていました。決算値(実績値)はどうだったのか。日量7万1153トン、その差1万3748トン、約2割の見込み違いです。
では一日最大配水量はどうか。予測値は、日量10万5730トンでした。その予測に対し、決算値8万240トンにすぎませんでした。その差日量2万5490トンにまで拡大。25%の見込み違い。
有収水量は予測値は7万2336トンに対し、決算値6万2345トンにしかなっていません。その差9991トン、14%の見込み違い。給水収益額に換算すると、8億3千万円もの損失です。正しい予測値であれば、59億6400万円の給水収益があがっているはずなのに、決算における給水収益は51億3000万円にとどまっています。8億3000万円の大きな違いです。
この事実の前に、たまらず水道局長は「単年度、単年度の予測値が正しいとはいっていない」ととうとう石木ダム必要性の土台になる水需要論の誤りを部分的ではあっても認めることになりました。それでも水道局長は「将来的には必ず予測値は正しいものと確信している」となお、土俵際で踏ん張る見解を表明しました。将来的な予測値、それは平成29年度が最後の予測値です。その数値が正しいと言い切ったのですが、それが検証される時は、刻一刻と迫ってきます。
もうひとつ、決算が明らかにしたもの、渇水対策がきわめて意図的に行われ、「いかに佐世保の水不足が慢性的構造的なものかと世論誘導行ってきたものか、明らかになりました。
昨年8月10日、少雨により、川棚川からの安定水利権1万5000トン取水できない日が何日もあるということで、渇水危機の記者会見を行いました。
① 川棚川からの取水実績を聞くと、平均日量1万2000トン、1万3000トンもあること。
② 8月10日の下の原ダムの貯水率87%、貯水量191万トンあったこと。
③ 南部水系で市民の使用する水量は、日量2万7000トンであること。
これらの事実を確認しました。それでは川棚川からの取水を一滴も行わない、雨も全くふらなかったとしても下の原ダム貯水量でもって、71日間、2カ月以上も持ちこたえることができる。
現実には、少なくとも川棚川から1万2000トンは取水できているわけだから、これも考慮すれば、何と120日を超えて余裕がある、4カ月も余裕があるのに、なぜ渇水危機をあおらなくてはならないのか。
電力が足りないといって、原発再稼働を迫ってきた構図と同じように、水が不足してたいへんとあおって石木ダム建設促進をはかる行政のゆがみは極限に達したといっても過言ではありません。
誤った情報発信が多くの人に重大な影響を与えています。
たとえば、9月6日「水の日」パレードが行われました。その時の出発式で、議会代表は次のようなあいさつをされました。
① 確保できている水源は日量77,000トンであるが、その中の15,000トンは河川から取水しなければならないという不安定水源である。
② したがって、安定的な水源という観点に立ったときに、本市の水の実力は77,000トンをはるかに下回る状況にある。
③ 市民が使っている水量は、今の時期、一日約8,000トンである。
④ したがって、日々、水不足という状況で推移していると言わざるを得ない。
なぜこんなでたらめ発言が堂々とまかり通るのか不思議でなりません。
第一に安定水源7万7000トン以外に、水道局が不安定水源とネイミングしている水源日量2万8500トンもあり、どんなに渇水のときだって、日量1万5000トンは実際に取水している、したがって、佐世保市の実力は、控えめにみても最低でも日量9万2000トンはあるという事実を、水道局が公表しないからです。公表したら、石木ダム建設必要論の根拠が失われるからです。
第二に、決算が示したように市民が毎日使っている水の量は7万1150トンでしかありません。議会代表の発言8万トンという数字は、水道局が予測値であげている8万4000トンという数字、しかも「この予測値は正しい、正しい」と水道局が言い続けているから「7万トンしか使っていないのに、8万も使っている」という錯覚につながっていると、思われます。ここでも真実を隠さないと石木ダム建設の根拠を失うからです。
「石木ダムは市民総意だ」とか、いってのけるために、促進市民の会をつくりあげたり、通常業務をやめさせてまで、市職員を組織動員しての市民総決起集会を行うなど、常軌を逸したことを行ってきました。
問題の根源は、何が何でも石木ダム建設ありきという市長の態度です。任命権者の市長に追随する水道局長の責任も重大です。あなたがたが事実を発信しないから、惑わされた市民がまた不名誉な態度をとってしまうという罪つくりになっていることを、明らかにしたのが第93号、94号議案です。9月11日付長崎新聞コラム欄は「水道局が試算する将来の水需要は、近年の水使用量と比べて大きい。『水を大切にする日』ぐらい派手なパレードでなく、佐世保の現状を冷静に見つめなおしてもいい」と論評を行いました。全く市民目線の率直な指摘であることを申し添え、反対討論を終わります。