生まれたばかりのなつきちゃんを愛おしそうにだっこしているのは、さおちゃん。
お姉ちゃんになった嬉しさと自覚が、混じり合ったような可憐な笑顔。
その横で不思議なポーズをしてるのは、お兄ちゃんのえいじ君。
撮影したのはカメラマンの村山嘉昭さん。
この子たちが住んでいるのは、石木ダム建設予定地「川原=こうばる」
なつきちゃんが生まれた日も、川原のオジサンやオバサンたちは猛暑の中、座り込みを続けていた。
この子たちに、この豊かな地「川原」を残したくて。
この素晴らしいふる里「川原」を水の底に沈めないために。
この子たちのおじいちゃんは、ダム建設を推し進める県と40年以上闘ってきた。
この子たちのお父さんは、その父の後ろ姿を見ながら育ってきた。
先日の県による立ち入り測量調査の時は仕事を休んで阻止行動に参加した。
この子たちの未来を守るために。
この子たちのお母さんは、出産の1ヵ月ほど前、大きなお腹を抱えて佐世保の繁華街に立っていた。
石木ダム建設のための強制収用反対!の署名活動に参加するために。
なぜだろう?
土地を売って出ていけば、もっと便利な場所で暮らせるのに。
病院や学校やスーパーが近くにあって、若い夫婦が働く場や保育園もあって、
子どもたちの友達もたくさんできる・・・そんな暮らしを若い親たちは選択しそうな気がするのだけれど。
他所から嫁いできたのに。ここは彼女のふる里でもないのに。
でも、彼女だけではない。
川原で、川原を守るために今、先頭になって闘っているのは女たち。
彼女にとってはお姑さん世代。元お嫁さんたち。
自分の生まれ育った場所でもないのに、必死になって守っている。
女には2つのふる里があるのかもしれない。
自分が生まれ育った場所と、子どもを産み育てた場所と。
いのちを産み出す苦しみ、いのちを育てる楽しみ、それを知っている女たちはやがて気づいていく。
そこがいのちをはぐくむのに相応しい場所かどうか。
そして川原の女たちは「認定」した。
川原こそ、その場所だと。
川原の自然はゆりかごそのもの。
ここで子育てをしたい!
そう直観したら、女たちは強い。
怯まない。迷わない。自分の命に代えても守ろうとする。
だから、川原のおばあちゃんたちはいつも言う。
「そんなにダムが造りたかったら、うちたちば殺してから造れ!」と。
中村知事、朝長市長、もう諦めてください。
川原に、また一つ大きな守るべきいのちが増えたのですから。
13世帯のみんなの宝です。
みんなの希望です。
近所に住むはるちゃんも、自分の妹のように、しっかりと抱きしめています。
この子らが育ちゆくはずの場所を、どうか奪わないでください!
この子らのふる里を、水に沈めないでください!