「ながさきたより」12月号に掲載された記事をご紹介します。
6ページにわたるカラー刷りで「マナビさん」と「ハカセくん」がQ&A式で、わかりやすく説明しています。
まず石木ダムの概要が書かれています。
80%以上の地権者が同意して出て行ったんだよー、残り2割の住民のために進められないんだ!
と言いたいようですが、
事業着手から40年もの間、なぜ事業が進まなかったのか?
なぜ40年もの間、残り2割の人は反対を続けているのか?
そのことが何も書かれていません。
そして、40年間ダムがなくても私たちは普通に過ごしてきました。
「現在おこなっている河川の改修が終われば、戦後最大の雨には対応できる」と県も認めています。
でも、それだけでは心配だから「100年に1度の大雨に対応できるように石木ダムを造らねば」と言いますが、
石木川と合流地点より上流の川棚川流域では30年に1度の大雨に対応できる計画のままなんですよ。
同じ川棚町民なのに、おかしいですね、この差別。というより、
石木ダムの目的を産み出すために、わざとこのような差別的な計画をしているのでは?と勘ぐってしまいます。
危機管理は確かに大切です。
でも、自然の威力は人間の浅知恵をはるかに超えるものです。
100年に1回の大雨に対応できるダムを造っても、200年に1回の大雨が降れば、石木ダムでは対応できません。
同じ100年に1回の雨でも、石木川流域ではなく川棚川本流の上流に降れば、石木ダムは役に立ちません。
近年の豪雨はまさにピンポイントで、どこに降るかわかりません。
ダムができてから水害がひどくなったという話はよく聞きます。
想定以上の雨が降れば、溜まっているダム湖の水を放流しますから、一気にどっと流れ出ます。
それは、ダムがないときの徐々に流量が増えていく時の場合とはまるで違う勢いです。
しかも、ダム湖に溜まっていたヘドロのような泥も一緒に流れ出ますから、被害は甚大です。
いま話題の日本初のダム撤去、荒瀬ダムの場合、そんな水害被害が大きな要因になっているのです。
これが不思議なんですねー。
ダムの2倍ものコストがかかるなんて!
河川工学の専門家(今本博健 京都大学名誉教授)は、河道掘削なら石木ダムよりはるかに少ない経費ですむ、
と断言しています。
県が示した案では、掘削は1.2mで経費は161億円でしたが、
今本先生は「掘削は0.5m程度で大丈夫、パラペットを併用すればもっと少なくてすむ」とおっしゃいます。
そして、ある興味深い記事を教えてくださいました。
それは、2001年7月25日の日経 BPネットで、中部ダムを中止した片山善博鳥取県知事の話を報じたものです。
1999年4月に就任した片山善博知事が治水、利水両面で効果が期待できないとして中部ダム建設の中止を決断した。計画を精査した結果、下流域の自治体に水需要がなくなっていたうえ、治水に関しても河川改修の方がダム建設よりもはるかに安い費用で実現できることが分かったためだ。
これまで県は「ダム建設の方が費用は安い」と強調していたが、実際には河川改修費用を過大に見積もったうえ、ダム建設費用を100億円近く少なく説明していた。片山知事が「今ならば間違った説明をしたことに関して責任を追及しないが、将来、嘘が明らかになれば責任を問う」と担当職員に迫ったところ、こうした事実を認めた。
う〜ん、こんな現実がいたるところであるのでしょうね〜
石木ダムもその1つです。
そして利水に関しては
こんな表を使って「ほぼ2年に1度は渇水の危機!」と市民の不安を煽っています。
どうして過去39年間という変な振り返り方をするのでしょうか?
平成になってからの25年間(4半世紀)とか、過去20年間とか、キリのいい検証をしないのでしょうか?
それは、かつての渇水被害の多かった時代のデータを取り込むためです。
時代は変わり、人口減少と節水機器の普及に伴い近年ではほとんど渇水危機は訪れていません。
平成6年の大渇水から、断水は一度もありません。
平成17年と19年に減圧給水をやっていますが、市民生活への影響はほとんどありませんでした。
「渇水警戒」と言っても、どの時点で警戒するかは主観的なものです。
ダムの貯水率が80%を切ると大騒ぎする佐世保市水道局は、少し日照りが続くとすぐに警戒態勢に入ります。
平成6年の大渇水がよほどこたえて、羹に懲りて膾を吹く状態に陥っているのか、
はたまたこちらも石木ダムの必要性作りのためなのか…
問題はこちら!
現在不安定な水源が、0〜28,500㎥あると書かれていますが、0の日なんてありません。
平成19年の減圧給水したときも、この不安定水源と呼ばれる水を平均で21,000㎥取水していました。
最低でも15,000㎥ほど取っていました。
ということは、安定水源と合わせると、92,000〜98,000㎥あるってことですよね!
さて、それでは現在、佐世保地区ではどれだけ水が使われているかと言うと…、
平均で、71,085㎥/日
最大で、79,930㎥/日
なのです。これは昨年度、つまり2013年度の実績です。水道局から得たデータです。
どうですか?これでも足りないと言うのでしょうか?
そりゃあ何でも多いに越したことはないでしょう。
水でも電気でもお金でも・・
でも欲を言えばキリがない、限られた資源は大切に皆で分かち合っていくべきですよね。
ここでも大事な情報が隠されています。
佐世保市の隣、佐々町を流れる佐々川の水利権も実は一日5,000㎥持っています。
ただし、それは渇水で水不足になったときに佐々川から菰田ダムに導水してもよいという権利なのですが、
それが全く使われていません。
ということは?
そう、それほど水に困っていないということです。
他にも佐世保市内には大きな溜池がたくさんあって、長崎県内でもダントツの1位です。
この中のいくつかの溜池の管理者とも、渇水の時は緊急に使わせてくださいとの約束を交わしていますが、
こちらも、一度も実行されたことはありません。
やっぱり、それほどの水不足ではないということになります。
それなのに、
「石木ダムの建設はなくてはならないもの」と結論づけるのは、どう考えても納得ができません。
これは、地元地権者の皆さんが一番強く感じているところです。
必要のないと思われるダムのために、どうしてもふる里を明け渡す気にはなれないのです。
だから納得のいく説明をしてくれと、何度も頼んでいるのに、
知事や佐世保市長がそれに応じたのはたった1回だけ、あとは部下任せ。
その部下(土木部長や水道局長)たちも、夏以降、話し合いには応じません。
なのに、「これからも、地権者の皆さんのご理解を得るため…最大限の努力を続けていきます」と結んでいます。
地権者の理解を得るための最大限の努力をする気があるなら、まず知事が出てきて、地権者と対話すべきです。
それ以外のどんな努力があると言うのでしょう。
知事が話したいのは「生活再建のための説明」であり、それは地権者がダム建設を納得してからの話です!
私たちの税金を使って、こんな手前勝手な記事を載せないでほしい!
そんなに石木ダムの必要性を県民に訴えたいのなら、公開討論会に応じてください。
私たちは何度も要望してきました。
そのたびに、もう国の結論が出ている、その話をする段階は過ぎたと突っぱねたではありませんか。
それなのに、私たちが反論できないところで、都合のいい説明をして県民世論を納得させようなんて…
とてもフェアとはいえませんね。
よほど県は自信がないのでしょうか?