佐世保市議会 “ 強制収用中止 ” 求める請願不採択

今回で6回目となる「強制収用中止を求める請願」は、またも不採択となりました。

佐世保市議会 “ 強制収用中止 ” 求める請願不採択

 

請願文書は以下の通りです。

                                        平成27年6月18日 

佐世保市議会議長 市岡 博道 様 

                         (請願者)石木川まもり隊 代表 松本美智恵

                              水問題を考える市民の会 代表  篠正人

                         (紹介議員) 早稲田矩子

                                 山下千秋

 

    石木ダム建設について強制収用手続き中止と地権者等との協議を求める請願

 

(請願の趣旨)

 県営石木ダム建設計画の一部である付替え県道工事について、長崎県当局が、地元住民の永年にわたる強い反対意見を踏み躙って6月12日に着手しました。

これは石木ダム建設の突破口だとして、地元住民等は身を挺した抗議行動を続けています。

 石木ダム建設計画に対して、地元住民はふる里に住み続けたい、美しい自然を壊してはならないと強く反対しました。現在も13世帯約60人の住民が半世紀に亘って反対し、 ダム用地としての提供を拒んでいます。

 県当局は、石木ダムの目的を佐世保市の利水と川棚町の 治水としていますが、その内容は度々変遷しています。利水並びに治水の専門家は、既に無用なものだと指摘しています。しかし県当局は、専門家の批判には耳を傾けず、計画に固執し、土地収用法を援用して反対地権者所有地等の 強制収用を行おうとしています。

 石木ダム建設計画を提起したときの県知事は、住民の理解が得られなければダムは造らないと約束しています。しかし、その後の知事は、ダム建設ありきの強行姿勢です。

 しかも、反対地権者等が建設計画の問題点を指摘して、その解明のための話合いを求めても、中村県知事は一度のみ応じましたが、それも建設ありきの主張を述べるにとどまり、問題解決の姿勢がありません。民主社会ではありえない態度です。

 このまま県当局が建設を強行すれば、不測の事態を招く ことが心配されます。

 利水については、佐世保市当局も共同事業者です。石木ダムが建設された場合を想定して、専門家は、市水道局が発表した資料に基づいて、建設費とその後の維持費をあわせると1173億円にものぼると試算しています。

 石木ダム建設は、佐世保市民も自らの問題として真剣に考える必要があります。佐世保市民を代弁する立場にある市議会としても、真摯に検討されるよう要望します。

 

(請願事項)

1.長崎県知事ならびに佐世保市長へ、強制収用手続きは中止することを求めてください。

2.長崎県知事ならびに佐世保市長へ、石木ダム建設計画について地元地権者等が提出している公開質問書等に基づく検討を行い、当該地権者等と真摯に協議することを 求めてください。

 

以上、請願いたします。

 

追加趣旨説明として、次の文書を読み上げました。

 

石木川まもり隊の松本です。補足説明致します。

私たちは強制収用だけは止めて下さいという趣旨の請願を、過去5回やってきました。いずれも委員会では全会一致で不採択でした。

理由は、<まだ強制収用すると決まったわけではない。県は話し合いによる任意の解決を目指して努力しているところである。「任意での解決ができない場合に」という仮定のことを採択はできない>というものでした。

しかし、そう言い続けたこの3年の間に強制収用の手続きは粛々と進められてしまいました。

先月22日、ついに4世帯の農地約5,500㎡について収用裁決が出され、明渡し期限も通告されました。畑の場合は8月24日まで、水田の場合は10月30日までです。

川原のおばあちゃんたちは畑仕事が生きがいです。歳はとっても畑に出て安心安全の美味しい野菜を作り、家族に喜んでもらう、その野菜で美味しい漬物を作り遠くで暮らす子や孫にも送って喜んでもらう、それが生きがいで、元気に過ごしておられます。その生きがいがまもなく奪われようとしています。

また、新たな土地約3万㎡の収用裁決申請がまもなく出されようとしています。そこには4世帯の宅地が入っています。4軒の家があり、4つの家族が今そこで幸せに暮らしています。その家も数か月後には裁決されるでしょう。そして、そのまた数か月後には明渡し期限が来て出て行けと言われるでしょう。県はそのための手続きを進めています。させぼ市議会はそれを認めるのですか?

 

昨年9月議会で請願した時に、川原の地権者のお一人がここにきて意見陳述されました。

その方は「もしも私の家が取り壊されそうになったら、私は家の柱に自分の体を鎖でくくりつけて抵抗したい。家を壊されたら、戻って来て、そこに小屋を建てて住みつく。その小屋を壊されたら、また新たな小屋を建てて住む。その繰り返しになるだろう」とおっしゃいました。そんな犠牲を強いてまで水が欲しいと、佐世保市民は思っているでしょうか?

石木川まもり隊は過去5回ほどアンケート調査をやってきましたが、強制収用だけはしてほしくないと答える人がほとんどです。中には「そんなことまでして造ったダムの水は飲めませんよ」と言う人もいました。

 行政は一度決めた事業はなかなか見直そうとしませんが、議会はそうではないはずです。市議さんは私たち市民の代表で、私たちの声を議会に届け、行政をチェックするのがお役目のはずです。最近は新聞の声の欄などを見ていると強制収用に反対する意見ばかりです。

 このような現状に危機感を感じている方々がいます。先日(6/29)県議会環境生活委員会の審議の様子をインターネット中継で見ていたのですが、その委員会の委員のほとんどが「最近は反対派の声ばかり聞こえてくる。推進派ももっと声をあげてもらわねば。どうなっているんだ」と河川課長に苦言を呈していました。ほんとにおかしなことを言う方々だと思いました。県民の声を届けるのではなく、県の方針を県民に押し付けようとするなんて、県議としての資質を疑いたくなりました。佐世保市議の皆さんはそのようなことはないと思っています。 

 一昨日4日(土)私たちはアルカスSASEBOで石木ダム問題の集会を開きました。生憎の雨天でしたが、イベントホールがほぼ満席となりました。

講師のお一人の板井弁護士がおっしゃっていたのは、大型公共事業の必要性を決めるのは地域の住民であるということでした。なぜなら、その事業には莫大な費用が必要で、それだけのお金を負担しても必要かどうか判断できるのはその地域の人だからです。石木ダムで言えば、莫大な税金と水道料金の負担に変えてもダムの水が欲しいと佐世保市民が判断するかどうかということです。4日の参加者の多くは、ダムを造るお金があれば老朽管の更新に取り組むべきだとアンケートの感想の中でのべていましたが、とにかくこれ以上無駄な公共事業はしてほしくないという趣旨のものばかりでした。

 長崎市や諫早市は水需要予測を見直した結果、本明川ダムから撤退しました。諫早市長は「予測が甘かったが、今の時点で中止する方が将来の負担が軽くなる」と語っていました。佐世保市も是非見直す勇気を持ってほしいです。

 皆さんは石木ダム建設促進を目的とした委員会だから、見直しはできないと言われるでしょうが、少なくとも強制収用まで目的にはなっていないはずです。

地権者の意思は絶対変わりません。登記簿上強制収用されても、皆さんは絶対にふる里を出て行かれません。そうすると、強権発動しかありません。警察を使って強制排除し、ブルドーザーを使って13軒の家を壊すしかありません。そのような野蛮な人権侵害を、今の日本で実際にできると思われているのでしょうか? 

 4月の市議選の直前に40人の候補者の方に石木ダムに関するアンケートをお送りしましたが、回答が帰ってきたのは6人の方だけでした。あとの方は有権者を無視しているのか、石木ダムに関するものは答えたくないのか、わかりませんが、たいへん残念でした。

 強制収用に関する質問では6人中4人が「反対する」で、1人が「わからない」、もう1人はどれも選択せず「熟慮が必要と思われるが、個人としては、強制的な収用については疑問を持っている」と書かれていました。つまり「強制収用に反対しない」に丸を付けた人は1人もいませんでした。その回答者6人の中のお2人はこの委員会のメンバーです。 

 どうか、この強制収用についてだけは、皆様の良識と良心に従って中止を求めていただけますようによろしくお願い致します。

 

しかし、この訴えも、何の効果もありませんでした。それぞれの会派を代表して述べられた意見は、

 

・小野寺委員(民主市民クラブ)

13世帯の郷土への思いは理解できるが、出て行かれた54世帯の思いも受け止めねばならない。

本市は過去にも渇水で辛い経験がある。近年の異常気象を考えるとダムは不可欠。

この事業は公平公正な機関で認められたもの。今後も県と一体となって粛々と手続きを進めてほしい。

 

・橋之口委員(市政クラブ)

憲法25条の2項には、国は国民の生存権保障義務があり、公衆衛生の向上及び増進に努めなければならないとしている。

本市の水資源不足は深刻な状況であり、生存権を守っていくためにダムは必要だと思われる。

40年かけてもまだできていないということは、それだけ慎重に対応しているということでもある。

 

・萩原委員(自民党市民会議)

平成6年の渇水のとき私は酪農を営んでいた。水不足の辛さ、もらうことの難しさを経験している。

石木の皆さんには心からお願いしたい。

 

林委員(緑政クラブ)

協議を求めることは大事であるが、そのスタンスの隔たりが広がっている。

知事の態度が民主的でないとされるのは残念。精一杯の努力が行われていると思う。

 

森田(公明党)

双方とも話し合いを望んでいる。強制収用に反対するのは今の段階ではない。

 

以上のような意見表明の後、裁決に入り、賛成者無し。

よって今回も全会一致で不採択となりました。

 

それにしても、残念です。

この8人の委員の中には、ダム有りきではない、建設的な意見交換ができるに違いないと勝手に思い込んでいた方々が数名います。

しかし、この委員会の委員になられたということは、委員会の設置目的が「石木ダム建設の促進」とされていますから、推進派になられたということですね。

8人中2人はかつて「強制収用には反対」とおっしゃっていたのに・・・

どこで思いが変わられたのでしょうか?

なぜ変わられたのでしょうか?

切に、知りたい!と思いました。