4月16日、「濁る水」佐世保公演、無事に終了しました。
熊本地震の余震の余波が、ここ佐世保でも伝わる中で、不安を抱いての公演でした。
開演前、劇団ステレオアートの団長さんのご挨拶。
地震警報が鳴った際の脱出についても、丁寧に伝えられました。
これは最後の、19時開演の時(3回目の上演)の写真です。
雨も降りだし、一番観客が少なかった時です。
2回目(15時開演)の時は満席で、
1回目(11時開演)の時は立ち見も出て、それでも入りきらず、
入場制限せざるを得ない事態となりました。
2〜3名の方は午後の部に出直して来て下さいましたが、
この時間しか空いてないからと観られなかった方もいました。
本当に申し訳ありませんでした! m(__)m
そのような方々のために、劇のシーンを少しだけお伝えします。
当日はもちろん撮影禁止ですが、
私たち実行委員の特権?で、前日のゲネプロの際、写真を撮らせていただきました。
(公演後の公開はOKと劇団の了解も得ています)
では、はじまり、はじまり〜
ここは、とある大学のダム研究会の部室。
部長が住みついているアパートの1室です。
新入部員はたった2人。
ダムオタクっぽい女性の中崎さんは黒四ダムに憧れ、行きたいと言う。
男性の金本君は、遊び半分で、中崎さんに興味がありくっついてきた感じ。
でも、実は、ここは、石木ダムに反対するための学生サークルだった。
部長の説明を聞いて、
中崎:私、石木ダムのこと全然知らなかった。勉強したい!
部長:これから現地を見に行かないか?
中崎:え!これから?でも、行政側の意見も聞かなければ客観的な判断はできないし…
部長:こんなイメージ写真じゃ現地のことはわからないと思うよ。
金本:サークルなんだから楽しくやりましょうよ。過激な抵抗運動なんてイヤですからね。
部長:それは個人の自由。強制はしない。
結局、部長と中崎さんの2人だけで「こうばる」に向かう。
誰も居なくなった部室にやってきた女性は石川さん。
サークルのOBで、「こうばる」を出て行った女性。
夫と別れ、小さな子どもを育てながら、ダム反対運動を続けている。
そこに、漏水調査を装って、ダム建設推進室の職員が上がりこむ。
職員:やっと見つけましたよ、アジト。
いいんですか?保護をもらっておきながら、反対運動なんかして。
こどもさん、小学生になったようですね?ゆうた君でしたっけ?
大きくなったら子供にもさせるんですか?反対運動。
石川:息子は関係ないんです!お願いします!
(行政にたてつくような態度を続けるなら生活保護や子ども手当を打ち切るとの脅し?)
こうばるから戻った部長と中崎さんは部室で語り合う。
中崎:私に何ができるんですか? 法律のことも何も知らないけど、おかしいと思う。
部長:思ってることをありのままに誰かに伝えることかな・・
中崎:誰に?
部長:例えば、金本君とか。
中崎:わかってくれませんよ。
部長:雨が降ると石木川はすぐに濁る。でも、すぐ元通りになる。
水には自浄作用があるから。流れがあるからきれいになる。
でも、ダムができると流れが止まる。濁った水は元には戻らない。
中崎:流れがあるからきれいなんですよね。
このサークルも…。
そこに石川さんがやってくる。サークルを抜けたいと言う。
部長は狼狽するが、現地を見てきた中崎さんは、反対運動に取り組みたいと言う。
「私に何ができるかわからないけど、何かしたい!」
遊び半分だった金本君も戻ってきた。
外には建設推進室の職員が監視カメラを持って立っていた。
4人は初めて心を1つにして、こうばるの法被とマスクと帽子で身を包み、
両手にはプラカード、地権者と同じ格好で、職員のカメラに向かって無言で立った。
職員:黙ってないで何か話してくださいよ〜
皆さん、家賃、滞納してますね〜
私、家を探してたんですよ〜こんな風情のある一軒家を。
大家さんも喜んでくれましてね〜
ということで、出て行ってください。3日だけ待ちます。
4人は最後まで無言で立ち尽くす。
職員:また来ます。明日も明後日も。
数日後、4人は部屋中をピカピカに掃除して、最後にもう一度、輪になって語り合う。
金本:移転した人たちがいるじゃないですか。その人たちの方が多いじゃないですか。
その人たちの為にもダムを作りましょう、
っていうのは、なんか筋が通ってる気がするんですけど・・・
石川:私も出て行った一人だけどさ、
ダムを造るってことになったから立ち退いたんであって、
ダムを造るという話がなければ、ずっとそこに住んでいたんだよ。
立ち退いた私たちを、ダムを造るための理由にしてほしくないの!
私たちの集落は、ダムのためにズタズタにされちゃったんだよ…
部屋を後にする時、石川さんは部屋に一礼して呟いた。
守ってあげられなくてごめんなさい。でも、
こうばるは、しっかり守っていくからね!
ラストシーン。ホタルが飛ぶ。
部長は、遠くに住む元仲間で元彼女に語りかける。
(それは心の中の会話なのか手紙なのかわからないけど、蛍が同期するように、二人も同期する)
部長:そちらでの生活はどうですか?
僕はまだここにいます。
石木ダム問題のこと忘れてませんか?
心のどこかにまだありますか?
彼女:私の中でもこうばるは生きているよ。
これからも。
部長:これからもずっと。
彼女:それは未来の話。
部長:そう遠くない未来、現実になるかもしれない話。
彼女:石木ダム建設事業、中止決定!
エンディングの音楽と共に、会場は拍手の嵐に包まれました。
その長さが感動の証だったと思います。
ご来場のみなさま、いかがでしたか?
まだこうばるを訪れたことがない方は、いつかきっと足を運んでくださいね。
「ふるさとを想う狼煙は今も上がっています」
ステレオアートの皆様、素晴らしい作品を、本当にありがとうございました!
いつかまた県内のどこかで再演されますように。。。