事業認定取消訴訟、結審


2018年3月20日、石木ダム事業認定の取消を求める裁判が結審しました。


2015年11月30日に提訴し、2016年4月25日に第1回口頭弁論以来2年間の時を費やし、13回目でようやく結審です。

この間、県は、裁判中を理由に地権者や県民との話し合いを拒否し続け、一方では裁判中であるにも関わらず工事を強行し、私たちは理不尽な思いを抱き続けてきました。

そんな思いをしっかり詰め込んだ最後の意見陳述書を、2人の原告と3人の代理人弁護士が読み上げました。

満席の傍聴者はもちろん、裁判長や裁判官も全身で聴き入っていました。
ぜひ、これらの陳述書をご覧ください。
そして、よかったら拡散してください。

原告:岩下和雄さんの陳述 意見陳述:岩下和雄さん


私は,今月23日で71歳になります」ここで岩下さんの言葉が途切れました。
なぜだろう?やっと声を発したとき、その声には涙が混じっていました。
なぜこんなところで?との疑問はすぐに解けました。

続く一文「石木ダム建設計画が持ち上がってから50年あまり,人生の大半をダム問題に翻弄されてまいりました」を読もうとして、きっと書き尽くせない翻弄された記憶が走馬灯のように蘇ってこられたのでしょう。
その後の文章を目で追いながら、傍聴席には鼻水をすする音が広がっていました。

原告:岩本宏之さんの陳述 意見陳述:岩本宏之さん


岩本さんは冷静に淡々と読まれましたが、そこには、私たちが知らなかった様々なご苦労が記されていました。

このように、私が住むこうばる地域は長い間、石木ダム計画があるために、差別的な取り扱いを受け続けています。 それでも、私は、必要のないダムを造るために、これまで先祖代々、長年住んできたこうばるの地を離れることを絶対に受け入れることはできません」「この問題を私たちの世代で終わらせて、次の世代に安心してこうばるで暮らすことができる機会を与えてください」と訴え、「それを実現するためには、事業認定を取り消すという方法しかありません」と結ばれました。

板井弁護士の陳述 意見陳述:板井弁護士


副団長の板井弁護士は、玄海原発再稼働差し止めを求める裁判の関係(この日、佐賀地裁は仮処分申し立てを却下)で、こちらには来られず、平山弁護士が代読。

板井弁護士は川辺川ダム訴訟等豊富な経験と知識に基づき、治水の本質や他ダムの事例も述べた上で「私たちは、ダム一般について建設反対を申し上げているのではありません。かように問題点が多い石木ダム建設計画の事業認定は取り消されるべきであり、行政の行き過ぎを規制することが司法である裁判所のやるべきことだと思うからです」と述べ、「裁判所が取り消し判決をだして頂ければ、あとは私達が石木ダム建設中止に向けて力一杯努力いたします。それが、判決を出して頂いた裁判所の努力に報いる道であり、この事件に関与した者としての責任だと思うからです」と結ばれました。私たち傍聴者も身の引き締まる思いで聴き入りました。

毛利弁護士の陳述 意見陳述:毛利弁護士


毛利弁護士は、石木ダムの具体的な必要性は,利水面,治水面いずれも存在しないことが証拠上明白になったことを指摘し、「結局,石木ダムの必要性とは,水はたくさんあればそのほうがいい,防災対策はあるにこしたことはないというレベルにすぎない」「具体的な必要性もないのに,13世帯の地権者を強制的に排除してまで,不要な石木ダムを建設するなどあり得ないことであり,また多くの長崎県民,佐世保市民も,そのような暴挙を望んではいません」「この違法不要なダム建設事業の事業認定を取り消すことは裁判所の責務です」と断言されました。

馬奈木弁護士の陳述 意見陳述:馬奈木弁護士

事実をありのまま見て下さい

それが馬奈木弁護士がもっとも訴えたいことでした。
原告みんなの思いでもあります。

行政の広範な裁量権」まるで黄門様の印籠のよう。
科学的な視点や合理的な判断を要することでも、『裁量』という言葉がそれを吹き飛ばしてしまいそう。そうであってはいけない。

現地で毎日生活している原告たちが、本件事業によって奪われてしまうものが、一体何なのか、ということも、澄んだ目で見つめて欲しい」

本件事業は、行政の「裁量権」の範囲を超えています

判決は7月9日15:00です。

公正な判決が出されることを、私たちは信じています!