事業認定取消訴訟、106人が控訴

7月23日、事業認定取消訴訟の控訴手続きがようやく完了しました。

控訴人は106名です。

一審の判決で原告の資格さえないと切って捨てられた住民等地権者のご家族の皆さんも、もちろん、今回も原告として名前を連ねています。

よその町から川原にお嫁に来て、夫やその家族を愛し愛され、子を産み育て、誰よりも川原に根を張り、川原を守ろうと闘ってきた肝っ玉母さんたち。

その子どもたちも成人し、結婚し、親となり、ここで子育てをしたいと住み続けている逞しい若者たち。

みんな門前払いされた結果、ますます闘志に火が付いた感じです。

同じ日のコラム「記者の目」です。

六倉記者はこう結んでいます。

司法判断に情を持ち出すのは適切ではないかもしれない。だが、判決がほとんど考慮せず、切り捨てた部分にこそ、反対地権者らが大切にし、守りたいものがあるのも確かだ。

西日本豪雨と石木ダム

7月18日、「石木ダム建設促進川棚町民の会」が県庁を訪れ、

石木ダムの早期完成を求める要望書を知事に手渡したそうです。

反対派の市民団体が訪ねる時は何故かいつも不在なのですが、推進派の団体が行くときは在庁していて、必ず直接受け取るんですよねー

なぜ今要望したかと言うと、死者200人を超える甚大な被害をもたらした今夏の西日本豪雨などを目の当たりにすると川棚川もいつ氾濫するかわからないからということのようで・・・

中村知事も同じ発想のようで、一刻も早くダムを完成させたいと応じたと言う。

お二人は、こんな記事は読まれていないのでしょうか?

ダムからの放流により一気に増水し、逃げる時間もなく亡くなった人たちがいるのをご存知ない?ってことはないでしょうが・・・

治水にはダムはかえってマイナスとまで書かれていますが・・

一方、こんな投稿記事もありました。

ダム建設よりも、河道整備や森林や水田の保全が大事だと言う投稿者の意見に大賛成です。

ダムは計画された貯水容量しか溜められないし、想定外の大雨には無力です。想定外の大雨が降っても、大地の保水力を高めたり、安全な地域にあふれるようにしたりして被害を最小限度にもっていく、そんな治水こそがこれから取るべき対策です。

異常気象が異常でなくなってきた現実を受け止め、自然をねじ伏せようなどという傲慢な発想は改めたいものです。

7.18東京行動レポ

事業認定取消訴訟判決直後の要請行動(長崎県・佐世保市・九地整へ)に続き、原告団と弁護団は7月18日、本省にまで出かけ、担当者に直接訴えました。その後、院内集会も開かれました。この日の一連の行動について、報告します。

主催:公共事業改革市民会議
協力:公共事業チェック議員の会
要請者:石木ダム対策弁護団3名(馬奈木昭雄弁護団長、利水担当高橋弁護士、治水担当緒方弁護士)、原告団等10名(こうばる住民6名、川棚町民1名、佐世保市民1名、長崎市民1名、神奈川県民1名)
議員:公共事業チェック議員の会4名(初鹿明博事務局長、大河原まさこ事務局次長、堀越啓仁、山添拓)

国土交通省 土地収用管理室への要請(13:00~14:05)
対応:課長補佐や係長など4名



住民
あなた方は長崎県や佐世保市の言い分を丸飲みして事業認定をした。
その結果、我々は追い出されようとしている。
しかし我々は出て行かない。なぜなら必要性のないダムだから。

住民
川原に住んでいるのはじいちゃん、ばあちゃんばかりではない。
私は35歳だが、川原には同世代の人が何人もいる。その子どもたちもいる。
皆出て行かないと言っている。
長崎新聞社が今年1月に行ったアンケートによると、佐世保市民の約5割が石木ダムは要らないと答えている。
パタゴニアが行ったアンケートでは県民の5割が分からないと答え、8割が説明不足だと言っている。
そんな中で既に強制収用まで進めている。行政代執行までするのか?

土地収用管理室
事業認定をしたのは九州地方整備局が、強制収用や行政代執行をするかどうかは県の判断。

弁護団
このあり得ない水需要予測を認めて、あなた方は事業認定した。


計算方法が間違ってなければそれでいいと?
結果が非常識であってもそれでいいのか?
これが正しいと判断したのか?

土地収用管理室
土地収用法20条に基づいて、得られる利益と失われる利益を比較考量して得られる利益が大きいと「九州地方整備局」が判断し、認定した。

住民
しかし、それに対する我々の不服審査請求を受け付けているのはあなた方だ。
こちらの意見や疑問を受け止めて精査すべきだ。
また、現地を見てみなければわからないことがたくさんある。
現地に来てほしいと何度も要請したがあなた方は応じない。何故だ?

土地収用管理室
不服審査請求は書面で受け付けており、現地に行くことにはなっていない。

弁護団
現地へ来てはいけないという法律はない。
廃棄物問題でも初めは現地視察を拒んでいたが、結局は見に来た。
その結果まともな判断を示した。
あなた方もやる気を出して見に来てほしい。
4年半も経過しているが、審査請求の結果はいつになるのか?
認定をしたのは九地整であっても審査結果を出すのはあなた方の責任だ。
認定庁と同じように、決められた計算方法でやっていればそれでいい、などという結論はくれぐれも出さないように。

住民
13世帯の行政代執行など前代未聞だと思う。
土地は収用できても住民を収用できると思うか?

土地収用管理室
コメントは差し控えたい

住民
人が住んでいるところを代執行したダム事業の事例がいくつあるのか、そこに何人澄んでいたのか教えてほしい

土地収用管理室
今ここですぐにはわからない。
国会議員を通じて質問なり資料請求して頂きたい。

というところで、タイムリミット(既に5分ほどオーバー)となり、終了。続いては、

国土交通省 治水課への要請(14:05~14:40)
対応:補助ダム担当の2名


住民
100年に1度の大雨が降った時、合流地点より上流はどうなるのか?
県が言っている洪水被害はほとんど内水氾濫であり、石木ダムでは防げない。

治水課
石木ダム事業は長崎県の事業であり、全体の治水計画も県が取り組んでいるものである。
また5年に1回県の方で再評価をやり、その結果を見て、国は補助を付けている。

弁護団
これまでの河道整備により既に1130㎥/秒は流される状態になっている。
それを1320㎥/秒まで流せるようにするためだけに石木ダムを造るなら、費用対効果はわずか0.1とか0.2の話。
ダムによらない治水対策はいろいろ有る。
そういうことをわかっていて補助事業として採用しているのか?

治水課
・・・・・。石木ダム建設事業というのは川棚川の治水対策と佐世保市の水源不足の解消ということで、この事業は必要不可欠だと聞いている。
今後も県のご意向を聞きながら国交省として対応していきたいと思っている。

住民
この計画ができた当初、40数年前、県の職員は私たちにこう言った。
「このダムの本当の目的は利水だが、補助金を多くもらうために治水を付け足しました」と。
この発言をどう思うか?

治水課
40年前の発言については私はわからないが、現在では必要な事業だと県は言っている。

住民
県の言うことばかり聞かないで私たちの言うことも聞いてほしい。
そして現地を見て、その上で補助を付けるかどうかの判断をしてほしい。
それを言うためにやってきた。

ここで時間切れとなりました。
ここでも担当者は、最後まで現地に来るとは言いませんでした。
あくまでも県の資料と県の言い分だけを参考に補助を付ける考えなのでしょうか?
であるなら、公共事業は公共の福祉のためではなく、行政のためにやるってことになりますね~

厚生労働省 水道課への要請(14:40~15:40)
対応:補助事業担当者2名(課長補佐、上水道係長)


佐世保市民
市からいろんな資料や情報が届いていると思うが、皆さんが知らされていないだろうと思われる現状、市民の生の声を伝えたくてやってきた。

1.佐世保市の水不足は過去のこと。市は慢性的な水不足と言い続けているが、平成6年大渇水以降、水不足による断水は一度もない。その要因は・・・(省略)
2.市の水需要予測はいつも過大だが、平成24年度の予測は酷かった。特に工場用水においては、わずか4年後に3.5倍になるとするあり得ないもので、4年後は増えるどころか減ってしまった。
3.新聞社の調査では市民の約5割が不要と答え、必要は3割ほど。市自身が行ったアンケート調査では「水の安定供給」にたいする満足度はかなり高く、必要な施策は水源確保よりも「水道施設の更新整備」と答えている。
4.佐世保市の水道管の老朽化率は高く、一日平均漏水量は市民5万人分の生活用水! 漏水対策こそ今すぐ真剣に取り組まねばならない深刻な課題。

水道課
確かに漏水を減らすことは大事。水源確保も漏水対策もどちらも大切であり、限られた財源の中でどう優先順位をつけるかだと思う。
水需要予測については、我々はやり方を示している。それに則ってやって頂き、その後予測よりも大きく差が開いてくるようであれば、見直しは当然必要だと思うが、今直ちに必要だという認識ではない。
27年度には予測を上回るような実績があったと聞いている。

佐世保市民
27年度の実績として一日最大給水量が10万tを超えたと聞かれていると思うが、それは使用された水量ではない。大寒波により凍結した管にヒビが入り一日に4万tもの水が漏れてしまった。その時の事故の記録だ。この年度の本当の最大給水量は8万tを切っていた。

水道課
寒波による漏水事故による配水量をそのまま最大給水量として記録することは確かに問題があると思う。我々もデータをしっかりチェックしていく必要がある。そのために事業評価をやって頂いており、その評価とその後の実績との大きな乖離があれば、今のままでいいんでしょうか?という投げかけをして見直しを提案させて頂くことも有り得る。
チェックの仕組みとしては、再評価の時期に今後の水需要予測を出して頂き、我々だけでなく地元の委員会でも検討された上で提出して頂いている。

弁護団
確かに地元の委員会にもかけられている。
事業者も委員会もこの予測を認めた。

だからあなた方も認めると言うのか?
このグラフを見て、あなた自身はおかしいと思わないのか?
急カーブを描いて予測値が増えている。

SSKの需要予測の計算根拠をあなたは確認したのか?確認すればきっと驚くだろう。
また、前回の予測から5年が過ぎている。次の予測は前回時点から10年後と聞いているが、それは本当なのか?

水道課
厚生労働省の再評価の実施要領では、本体着手前の評価を行った場合には10年を要しない。ただ大幅な社会情勢の変化がある場合には必要に応じて行うことになっている。

弁護団
佐世保市は何をもって本体工事等の着手前の再評価だと言っているのか?

水道課
当時の担当者によると、長崎県が本体関連工事(付け替え道路工事)の予算付けをしたことによって着手前だと判断したようだ。

弁護団
仮にそれが着手前に当たるとしても、「社会経済情勢の急激な変化等により事業の見直しの必要性が生じ」た場合は再評価をやるべきはずである。
今日現在、地権者は出て行くことはあり得ないと言っており、県は行政代執行をする判断はしていないという状況下で事業が本当に進められるのか?
進められないまま34年になって石木ダムができてなかったら?
やはり必要なかったねで済むのか?

逆に34年にダムはできていて、しかし水需要の減少でダムの水は使われていなかったとしたら誰が責任を取るのか?
あなた方は誰も責任を取らないし取れない。
だからこそ、今まさに再評価をすべき時ではないか。

補助金適正化法第5条に「…事業を遂行するために必要な土地その他の手段を使用することができない」場合は補助を取り消すことができると書かれている。石木ダムでは残りの土地が取得できる可能性はほとんどないのだから、取り消すしかないのでは?

行政訴訟を起こしたダム事業において、住民側はほとんど負けている。しかし、結果はどうなったか?力づくで異論を排除してダムを造っても水需要が伸びなくて困りきっているところばかり。

今のままのやり方で押し通せば、佐世保水道はいずれやって行けなくなるだろう。
あなた方は水道事業体が健全な運営をしていくにはどうしたらいいんだろうと、真剣に考えてください。

住民
あなた方は補助をつけることによって、佐世保市民を苦しめているし、川棚町民をも苦しめている。地元はもちろん一番苦しめられている、
しかし、あなた方は止めることもできる。期待しています。

(会場、拍手)

気がつくと、院内集会が始まる時間に近づき、会場(衆議院第2議員会館第1会議室)には参加者がぼちぼち集まってきていました。

住民
私は嫁、息子夫婦、3人の孫の7人家族で住んでいます。二十歳の時から45年間ダム反対運動を続けている。当時から佐世保市は過大な水需要予測のもとにダムが必要と言い続けていた。そのおかしさを我々はずっと見てきている。知っている。だからダム反対を続けている。これからますます人口は減り、必要性はますますなくなっていく。私たちは絶対出て行かない!

ちょうど時間となり、拍手と共に終了。
これで今回の国への要請行動は全て終わりました。
短い時間の中で、伝えられたことはほんのわずかですし、伝わったかどうかも定かではありませんが、でも、長崎からはるばる9人もの県民がやってきたという事実そのものに大きな意味があったと思います。

裁判に負けようが、事業認定が認められようが、地権者の意思は変わらず、住民が自ら出て行く可能性は全くない。その意思表示を目の前で生の声で伝えることができました。
長崎県や佐世保市からの報告書では住民の本気度など伝わるはずありませんから。

そして、厚労省に対しては、市民自らが「水は足りています」と証言することに意義があったと思います。

院内集会(16:00~18:00)

予想以上の参加者で、会場はほぼ満席でした!

開会の挨拶は公共事業改革市民会議代表の橋本良仁さんが述べられましたが、内容の半分は映画「ほたるの川のまもりびと」の大絶賛でした。(会場にいた鎌仲監督から「ありがとうー!」の声あり)

続いて、地元住民が前に出て自己紹介とそれぞれ今の思いを伝えました。

岩下さん:地元では今日もこの暑さの中、抗議の座り込みを続けている。国は石木ダムが必要という県の主張をそのまま受け入れ自分たちで検証しようとしない。今後は皆さんの力を借りて国を動かしていきたい。

ほーちゃん:地元には私世代の若い人が何人も暮らしているし子どもたちもいる。先ほど国交省の人につい怒ってしまったが、炎天下の中で頑張っている人たちのことを思うと怒ってもよかったかなと思う。

炭谷さん:川棚町で学習会を15回やってきたが、地元でありながら無関心な人が多い。しかし、「ほたるの川のまもりびと」の上映会や、加藤登紀子さんや嘉田由紀子さんを招いての集会には多くの人が集まってくれた。これからも、この問題を全国の皆さんに知ってもらえるよう広げていきたい。

石丸さん:先日、事業認定取消訴訟の第一審で負けてしまった。行政訴訟で勝ったことはないと聞いていたが、かなりショックを受けている。今日は皆さんの元気をもらって帰りたい。

岩本さん:「ほたるの川のまもりびと」の映画を観た方はご存知だと思うが、私はマムシ捕りをやっている。(会場爆笑)今年すでに25~6匹捕まえているのでマムシ焼酎にしたい。私は自然が大好きで、川ではウナギ、海では魚、山ではイノシシを捕って暮らしている。一審の判決が出たことによって県は勢いづいて強制収用にむかうかもしれないが、私たちはどこに行く気もない。ここで骨を埋めるつもり。もし県が代執行しても柱に体を鎖で縛りつけて抵抗する覚悟だ。皆さんのお力添えをお願いしたい。

岩永さん:30年ほど前、強制測量をやられたが、それ以上のことを今やられている。昨年夏頃から重機の下に座って抵抗していたが、県職員は両足を引っ張って引きずり出した。今では工事を止めきれず少しずつ進んでいるが私たちは最後まで闘い抜く。

山口さん:必要のないダムを認めた裁判所の判決はおかしいと思う。これからも反対していきたい。応援よろしくお願いします。

続いて、本日の国への要請行動の報告(主催者)や、石木ダム事業認定取消訴訟判決についての説明(馬奈木弁護団長)がありました。
馬奈木弁護士のお話はこれまでの弁護活動の貴重な事例や体験が随所に出てくるので、参加者はしっかり耳を傾けペンを走らせていました。

今回の判決で我々は負けた。しかし勝っていたとしても国がその判決にひれ伏すことはない。私は弁護士生活50年になるが、水俣病事件から諫早湾開門をめぐる事件まで、国は裁判所の判決に従ったことは一度もない。判決に幻想を持ってはいけない。

「行政判断と司法判断は違う」という言葉を官僚はよく使う。
かつて三木武夫環境庁長官に水俣病未認定患者の救済を訴えた時、「わかった。取り組む」と言ったが、三木さんが退室するや担当課長がやってきて、「あれは環境庁長官三木武夫の発言ではない。政治家三木武夫の発言です。なぜなら環境庁にそういう方針は無いから」と言った。

官僚は被害者を黙らせることで物事が解決すると思っている。
私たちは絶対に黙らない。声をあげていく。
被害は徹底的に明らかにする。
私たちが守ろうとしているものは何なのか?
私たちの闘いは国民主権の闘いである。
力を結集しよう。

その後、国会議員の皆さんとの意見交換をおこないました。

初鹿明博議員
ダム建設計画のあるところの水需要予測はどこでも右肩上がりで、実績との乖離がある。佐世保も同じ。水が足りていることがわかればB/Cも変わってくる。
加えて佐世保の場合は漏水が多い。攻めどころはまだまだ多い。
また、今回の西日本豪雨災害をみて、多目的ダムの危険性をより強く感じたので、次の裁判ではそのあたりも追及してほしい。
私も国会でこの点は問題にしていきたいと思うので、力を合わせていきましょう。

山添拓議員
不当判決何するものぞ。
今の河川行政は命を大事にする政策を取っていない。
週末に岡山の被災地に行ってきたが氾濫した川の上流にはいくつもダムがあった。ダムを過信し河道整備が遅れていた。
氾濫をおこした小田川は堤防に立っても川が見えない。河川敷がジャングルのようになっていた。
治水についての抜本的な見直しをしなければならない大事な時に、国土交通大臣は今、カジノ解禁の先頭に立って頑張っている状況である。
政治そのものを変えなければならない。

堀越啓仁議員
1時から国交省や厚労省とのやりとりを聞いていたが、石木ダムは百害あって一利無しだと実感した。利益を得るのは大手ゼネコンと腐った政治家だけ。
このままでは子どもたちに自然環境は残せない、借金ばかり残すことになる。石木ダムを止めることは、こういう政治を変えるその象徴となるのではないか。
石木ダムがいかに無駄であるかを多くの人に知って頂くことが必要だと思い、TwitterやFacebookなどでもフォローしているが、どのくらい広がっていると地元では受け止めているのか教えてほしい。

ほーちゃん
最近では「#石木ダム」で多くの人が発信している。
ほとんどが不要という意見ばかりで、中には反対してることを批判する人もいるが、それに対して反論していったら彼らは何一つ言い返せなかった。
県内では石木ダムは古いテーマだったが、全国的に認知度がぐんぐん上がっている。
関東の方からこの話題が返ってきて、新たに気づく人も出始めている。

鎌仲監督
「ほたるの川のまもりびと」が渋谷のユーロスペースで公開中がだ、毎回ゲストもお呼びして、一般の人に急速に広まっている。
長崎県内では44ヶ所で試写会を行い、4700人が観たが、1つの県内でこれほど観られたドキュメンタリーはない。そのせいで長崎県内の劇場での公開が難しかったが、やっと8月17日からセントラル劇場での公開が決まって、今日は山田監督が現地で記者会見をおこなっている。ぜひ多くの県民に観てほしいし、これは他の公共事業に苦しんできた人たちにも共有できるものがあると思うので、日本中の人に観てほしい。

初鹿議員
国の主張の問題点はいろいろあると思うが、もっとも問題にすべきことは何か

住民
石木ダムに限ったことではないが、ダムでは想定内の大雨にしか対応できない。ダムがあればそれで安心して他の対策を取らない。その結果想定外の雨が降れば放流し、被害がよけい大きくなる。日頃の河川整備が大事。

山添議員
まさに今回、愛媛の肘川ではダムからの放流によって人命が奪われた。しかもその経過を検証する前に大臣がすぐにあの操作は適切だったと発表したことに怒りを覚える。
それでもなお、治水のためにダムは必要だという声もある。石木ダムの場合、下流域の皆さんはどのようにお考えなのか知りたい。

住民
川棚町は近隣の町よりも経済活動が活発でなく、公共事業に期待する人たちは確かに居る。が、石木ダムが洪水被害を止めると思っている人はほとんどいないのではないかと思っている。

弁護団
ダムは住民の命や財産を守るために造られるわけだが、実際にはダムを守るために放流した。その結果人命が犠牲になった。
石木ダムの場合はどうなるのか?川棚川流域の皆さんともしっかり議論して、川辺川のような住民合意を作り上げなければならない。そのための正確なデータやしっかりした資料作成を、専門家のご協力を得て準備したいと考えている。

会場から
今回の議論を聞いていて欠けている視点が1つあるので指摘したい。京都の鴨川に計画されたダムを止めたのは、あの梅原猛だった。彼はダム反対運動ではなく文化運動をおこした。オオサンショウウオの命を守りたいという流域住民と共に立ち上がり、結果としてダムを止めた。そういう視点も必要だと思う。

最後に集会宣言案文をこうばる郷総代の炭谷猛さんが読み上げ、大きな拍手で採択されました。


その勢いに乗って団結頑張ろう!を三唱し、5時間の長丁場を終えました。

喉がカラッカラだったので、懇親会のビールの美味しかったこと!
溜池山王駅そばの中華料理店で、主催者の皆さんやパタゴニアの皆さん、新たな応援団も加わって大いに盛り上がりました。
お腹はビールと美味しい料理でギューギュー詰め、胸のあたりは元気、勇気、希望など沢山の「き」を詰め込んでパンパン!

一晩寝たらお腹もへこみ、胸のあたりも軽くなりましたが、私たちはみんな、往路よりも明らかに元気な足取りで帰途に就きました。

(‘◇’)ゞ

負けてますます意気軒昂!?

前日の県庁行動に続いて10日は、佐世保市役所と九州地方整備局へ出かけました。

まず佐世保市役所です。
前日と同じ声明文を、ここでは原告代表の岩下さんが読み上げ、佐世保市水道局長の谷本薫治氏に手渡しました。

その後およそ1時間半にわたって意見交換することができました。
と言っても、双方のスタンスは明らかにほぼ平行線を辿っており、交わることはほとんどありませんでしたが。

水道局長:
この裁判についての被告は国であり、私どもはそのやり取りの全てを把握しているわけではない。
また、差し止め訴訟はまだ続いており、そちらにおいては、私たちは被告の立場であり皆様は原告である。よって司法に判断を委ねるべきであり、議論をするつもりはない。

弁護団:
局長のお考えはある程度理解しているつもりである。
しかし判決には、水需要の予測についても、慣行水利権についても「佐世保市の判断が不合理であるとは言えない」と書いてあり、石木ダムが絶対必要だとは書かれていない。
一方、現地居住者はこの判決を受けても住み続けるという意思は何ら変わらない。
そういう状況の中で、佐世保市はこれからも本当にこの事業を遂行するのか?考え直す余地はないか?それを聞きたくてやってきた。

水道局長:
「不合理であるとは言えない」というような表現は裁判の中では一般的なものだと思う。
石木ダムの必要性に関して、司法の一定理解は得られたと受け止めている。

弁護団:
普通だと言われたが、不合理でなければ何をしてもいいのか?
13世帯の生活を奪うには、石木ダムがどうしても必要だという合理性が無ければならない。
あくまでも強制収用するつもりか?

水道局長:
土地の取得の仕方については、当初から佐世保市は県に委託をしているので、強制収用について私が言及するのは相応しくない。

弁護団:
それは無責任では?
受益者である佐世保市が13世帯を犠牲にしてでも不可欠と考えるのか、それほど利水の必要性があるのか、という判断は佐世保市がすべきことではないのか?

支援者:
2009年に県と佐世保市は、事業認定申請しましたよね?
あの当時、13世帯をどかしてでも石木ダムを造って水源開発をしなければダメなんだという水道局の判断がなければ、市長や知事が認定申請をするはずがないでしょう?

弁護団:
少なくとも当時は追い出す意思はあったということでしょう。
あれから数年たっています。佐世保の水事情も変わっています。市民の意識も変わっている。
そして住民の意志の強さも示された。
その中で市は、今もその意思は変わらないのかということを知りたいのだ。

地権者:
50年前に佐世保市は何と言ったか知ってますか?
佐世保市には10万5千tの水が有るが、10年後には16万5千t必要になる。6万tも足りない。だから石木ダムが必要だと言っていた。
今は11万7千t必要になると言っている。必要量が5万tも減った!
もう必要ないということだ。

また、2045年までに佐世保市の人口は21%減ると言われている。
水道の使用量も比例して減っていく。
すると市民の負担が大きくなる。
その上、耐用年数を過ぎている水道管がたくさんある。その更新にお金がかかる。
ダムを造るだんじゃない。
その費用がどのくらかかるのか、市民に知らせているのか?

そして、平成19年の地質調査で、石木ダムの予定地には深さ50m幅20mにわたって透水性のある軟弱な地盤があり、対策が必要だとの結果が出ている。
しかし、その対策費は未だに盛り込まれていない。
石木ダム建設のコストは大きく増えるはず。
それを計算して水道料金がどのくらい上がるのか、市民に知らせるべきではないか?

本明川ダムは石木ダムと同じ規模だが、500億かかる。
石木ダムが285億で済むはずがない。

佐世保市民:
私たち佐世保市民の多くは石木ダムを望んではいません。
先ほど局長は市民の代表は市議だと言われたが、市議会と市民の意識には乖離がある。
2年前の佐世保市によるアンケート調査で、市民が水道局に求めるのは水源開発よりも老朽化対策だということが明らかになった。
なんと63%もの人が最も重要なのは老朽化対策だと答えた。
古い施設を抱えた水道局の皆さんが漏水を減らすために苦労されていることは私たちも知っている。皆さんのおかげで今私たちは水に不自由しない暮らしができている。
この生活を維持するために、限られた財源をどう使っていくか、水道局と市民が対立するのではなく、一緒に考えていきたいと願っている。

地権者:
ダムには大きなお金がかかるので歴代の市長はあまり前向きではなかった。
ダムに代わる対策を模索していたが、やろうとすると県から止められた。そういうことをしたら石木ダムができなくなると。
しかし、今の市長は本気で造りたがっている。なぜだろう?

佐世保市民:
先日の講演会で講師が示した数字では、石木ダム建設と関連事業費で339億円、そしてダム建設後50年間にかかる維持管理・施設更新費は294億円、合計633億円にのぼり、1世帯当たりの負担額は約60万円になるとのことだった。この数字は間違っているのか?

水道局長:
昨日、知事や市長も言っていたが、石木ダムは必要なダムである。そして厚労省等でも認められている。それ以上のことは私どもからは言えない。

地権者:
佐世保市の関連事業はいつ着工するのか?

水道局長:
具体的なロードマップはここで示せないが、既に取りかかっているものもある。
これまでに125億円も投資しながら取水場や新しい浄水場の用地確保などにお金をかけてきた。

支援者:
石木ダムができなければ、他ダムの浚渫ができないと広報にあるが、水道局長は本当にそう思っているのか?
「市長、それはちょっと言い過ぎですよ」と、市長を諫めるのが現場の責任ではないのか。

弁護団:
いろんな話が出たが、大事なのは今後のこと。
これからどうするのが一番いいのか、佐世保市民と地権者と有識者などを含めて意見交換しませんか。
それは佐世保市にとっても有意義なことだと思う。
そういう申し入れをしますので、ご検討いただきたいと市長に伝えてください。

水道局長:
伝えますが、もう1つの裁判が進行中なので、被告と原告という立場上、土俵の外で何かやるのは難しいと思う。

まだまだたくさんの質問や意見が出たし、水道局長は、それに対し答えられるものはできるだけ答えようとしていました。そのことには率直に有難いと思いました。

判決後に協議を行いたいという私たちの要請に対し、当初は「対応は難しい」と文書で回答してこられました。
その水道局が、180度方針を変え、水道局長自らが対応してくださったのは、やはり「勝った」という安心感と余裕だったのでしょう。

 

私たちは裁判(一審)には負けたけれど、みんな何故か明るく元気!
貸し切りバスの車内はお菓子があちこちから回ってきて、なんだか旅行気分で、次の目的地「国土交通省 九州地方整備局」(略して九地整)へ向かいました。

九地整でも部屋を用意して対応してくれましたが、しかし、こちらは酷かった・・・
担当者(事業認定調査官の渡辺氏)は不在とのことで、本件について全く無関係の総務の職員が3名「居た」だけでした。
この方が発した言葉は「30分だけ」と「伝えます」

まずは、これまで通り、声明の読み上げ。
ここでは総代の炭谷さんが朗読し、手渡しました。

弁護団:
判決は「認定庁の判断が不合理だったとは言えない」というもの。
その判断とはあの時点でのこと。今現在はどうなのか?
国として今どのようにお考えか知りたくてやってきた。

九地整:
私が今この場で言うことは何もない。
皆様のご意見を録音させて頂き、声明文と共に上司に伝える。

地権者:
私たちは認定される前も、ここに来ていろいろ意見を述べたが、その時も担当者ではなく総務の方が対応した。伝えると言ったけれど、伝わったかどうかもわからないままだった。

県や佐世保市が提出した資料には間違いがあったので、正しい資料を私たちは送ったが、その時は、もう認定の方針が決まっていた。

特に事業費については大きな問題がある。
その数字は平成16年に出された数字で、その後19年に長崎県が委託した地質調査会社から地盤の問題性が指摘されたにも関わらず、その対策費が加算されていない。
国は県の資料を鵜呑みにしないで、事業費の算出をやり直させるべき。
あるいは、認定庁自身が調査をしてほしい。
認定前も現地に足を運んでほしいと何度もお願いしたが、来なかった。

などなど、何を言っても「伝えます」の返事しか返ってこない。

「担当者を呼んでほしい」「いつなら担当者と話せるのか、それを聞いてほしい」「今ここで電話して確認してほしい」
何をお願いしてもダンマリ。

しびれを切らした地権者と支援者の2人が、渡辺さんを探しに部屋を出ていきましたが、結局、渡辺さん以外の認定調査官にも会うことはできず、私たちは帰途に就きました。

国の対応とはこういうものなのですね。

たとえ、そちらには意味のない(認定庁が出した判断は違法ではなかったと司法も認めたのだからこれで決着。今さらこの件で原告らと話し合う意味はない)ことであっても、その認定によって家を、生活を奪われようとしている人たちの声に耳を傾けようとする、血の通った役人はいないのでしょうか。

まさに問答無用。
下々の者は下がれ居れ!という感じ。

でもね、こうばるの皆さんも私たちも、そんなことで意気消沈したりはしませんぞ!
18日には国交省本庁に乗り込みます。
もちろん厚労省にもね。

負けてますます戦意高揚!
雑草の底力を甘く見ちゃダメよ。 (‘◇’)

長崎地裁、不当判決!認定取消請求を棄却

2018年7月9日、長崎地方裁判所(武田瑞佳裁判長)は、石木ダム事業認定取消訴訟の判決を言い渡しました。

主文
  1 原告目録の番号2ないし5,7,8,10,13,14,16、
    18,20,22,26,27,29,33,36,37,42,
    43,45ないし48の原告らの訴えをいずれも却下する。
  2 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。
  3 訴訟費用は原告らの負担とする

理由も何もわからず、私たちは唖然!
とりあえず、門前にダダーっと走り、旗出しです。

お決まりの文句「不当判決!」だけでなく、「いしきをかえよう!」の旗も3本出しました。
こんな不当判決を下す裁判所は意識を変えるべき!だし、
県や佐世保市も、お墨付きを得たと喜ぶのではなく、より良い未来のために、やはり意識を変えてほしい!ということで。

では、何がどう不当だったのか?
それは、こちらの判決書面を読めばわかるのですが、

石木第一審

長いので、とても全部は読めませんよね。

簡単に説明すると、

主文1は、
原告番号がいくつも書かれているのは、地権者のご家族の方々。
地権者(=土地の所有者)以外は原告にはなれません、という意味です。

例えば、、所有者が一家のおじいちゃんであった場合、その妻(おばあちゃん)や子ども(一家の生活を担っているお父さん)たちが、自分もここで暮らす権利があると思うので、事業認定を取り消してほしいと思っても、訴えをおこすことはできないってこと。
家族は付属物扱い?

主文2は、こういうこと。
原告の請求(石木ダム事業認定を取り消してくださいという訴え)を棄却する、つまり、石木ダム事業認定は取り消しません。被告(国)の主張を認めますってこと。

その理由は?
判決書の第3章「当裁判所の判断」p59~に詳しく記述されています。

そこでは争点を3つに分けて説明しています。

(1) 原告適格の有無(本案前の争点)p59~p63
(2) 本件事業が法20条3号の要件を充足するか。p63~131
(3) 本件事業が法20条4号の要件を充足するか。p131~134

争点(1) 原告適格の有無とは?
原告になる資格が有るのか無いのかということ。

原告の主張~私たち現地居住者は石木ダム建設によって現地に住み続けることができなくなるのだから、自分の権利を守るため、原告となる資格は当然あるはず。

被告の主張~原告居住者らは土地建物の所有権者に従属し、その下で占有している者にすぎず・・・ 所有権者から独立した個別の権利は認められない

そして、裁判所の判断は、

原告居住者らが本件事業により不利益を被ること(現在住んでいる建物に居住することができなくなること)は否定できない。
でも、その不利益は、土地収用法上は原告所有者の損失に含めて評価されるべきで、別個に評価することはできない
よって、原告居住者らに原告となる資格はない

というものでした。

判決後、住民のお母さんの1人はつぶやきました。
「私たちは虫けら扱いやね」

争点(2)の「法20条3号の要件」とは?
「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」

つまり、原告が一番問い続けた石木ダムの必要性そのものです。
得られる公共の利益と、失われる利益と、いったいどっちが大きいのか
前者が後者より大きい場合に限り石木ダム事業の必要性が認められるわけですが・・・

裁判所の判断は、

「佐世保市の水需要予測の内容に不合理な点があるとは言えない」
「川棚川の治水計画も技術基準などに沿った一般的なものであり、合理性を欠くとは言えない」
よって、
「本件事業は水道用水の確保、流水の正常な機能の維持および洪水調整のための必要性がある。本件事業によって得られる公益の利益は、これによって失われる利益に優越している

というものでした。

裁判官は資料をきちんと読み込んだのでしょうか?

工場用水に関するあんなでたらめな水需要予測(わずか4年後に3.5倍にもなるという予測)も、市の言い訳を全てコピペすることによって正当化していますが、4年後の結果は増えるどころか減っているのです。

それでも市の予測に「合理性がないとは言えない」のなら、「合理性のない予測」など、この世に存在しないのではないでしょうか?

利水を担当した高橋弁護士は、「無茶苦茶な論理」「事実を捻じ曲げた判決」と呆れていました。

治水を担当した緒方弁護士は、いつも穏やかな方ですが、この日はかなり本気で怒っていました。


「被告の言い分をオウム返しにしただけ」
「形式論だけで、内容についてはロクに検討していない」
「中身のない判決で、こんな判決に従う必要性は全く無い!」

お怒りはごもっともです。
基本高水など専門的なことを弁護団は必死に勉強し知識を獲得し、県の算定がめちゃくちゃ過大であることを突き止め、科学的に指摘したのです。
それについて国側は何ら反論できなかった。ということは、原告側の主張を認めたに等しいのに、裁判所は、それについては検証しようとせず、スルーしてしまった。ただ河川管理者の「広範な裁量権の範囲内」として片づけてしまったのですから。

例えば、川棚川の計画規模を決める際の指標を、河道状況だけは昭和50年頃の古いもの(整備前のデータ)を使い、他の指標はみな直近のものを使って県は計算しているのですが、それも問題ないと判断したわけです。

治水のことはよくわからない私ですが、それでも、洪水被害を予測するとき、人口や宅地面積や資産などを直近のデータでみるなら、河道状況も直近のデータを使うべきだということくらい、わかります。

なぜなら、河道状況も住宅数や店舗数も現時点の数値を使えば、より正確な被害額が試算されますが、河道だけ整備する前の古いデータを使えば、当然、氾濫面積は広くなり、直近の住宅数や店舗数で算出すると被害額は大きく水増しされ、とても信用できる数字ではなくなります。

しかし、長崎地裁は「河川整備基本方針及び河川整備計画の策定に当たっては,高度に技術的かつ専門的な事項を含む上,河川整備の時期やその範囲については,当該河川整備の 費用を負担する地方公共団体の財政状況等と密接に関係する政策的な事項であることから, 河川管理者の広範な裁量に委ねるべき」と考え、河川管理者=県の言い分を丸々採用してしまったのです。

争点(3)の「法 2 0 条 4 号の要件」とは?
それは、「土地を収用し、又は使用する公益上の必要があるもの」でなけれなならないということ。

「覚書」を無視したことは、手続き上、この4号要件に違反するとして、こうばるの皆さんが強く訴えていたことです。
地域住民はダムなど誰も求めていなかった、しかし、当時の知事や川棚町長が「調査の結果ダム建設の必要が生じたときは改めて協議をし、書面による同意を得た後に着手する」と固く約束したので、覚書を交わし予備調査に同意しただけだったのです。
その約束を破って、住民の同意も得ずに事業を強行することは許されるはずがない!と。

しかし、裁判所の判断は、

「私法上の権利義務関係の存否については,事業の認定の要件とはされていないので、覚書は本件事業認定の適法性に影響を与えない」

として、これも棄却したのです。

この判決を受け、私たちはすぐに県庁へ移動しました。
そして、弁護団が用意した声明文を読み上げ、浦瀬河川課長に手渡し、福岡高裁に控訴する方針を伝えました。

180709「石木ダム事業認定取消訴訟」判決に対する声明

その後、対応した浦瀬河川課長と約1時間にわたって交渉の時間が得られましたが、いつものように、「知事に伝えます」の言葉しかありませんでした。

馬奈木弁護団長:
地権者の意思はこのように不当判決を受けても何ら変わらないんですよ。ということは、行政代執行をしない限りダムはできない。その覚悟はできているのか?

浦瀬課長:
現時点で,行政代執行を行うとも,行わないとも決まっていない。
石木ダムは必要不可欠な事業であるので中止することはない。
一昨日も大雨による大きな被害が起きたばかりで・・・

との言葉が終わらないうちに、会場は反論の嵐。

「何?ダムを造ったら被害がなくなるって?」
「肘川の氾濫はダムのせいやっかー」
「ダムの放流のせいで人が亡くなっとるのを知らんとかー」などなど。

馬奈木団長:
現実に代執行がなされた場合,どのような事態になるかを想像してほしい。
おばあさんが仏壇に取りすがって離れようとしなかったらどうするのか?
仏壇を壊すのですか?そのまま家を潰すのか?
想像力を精一杯働かせ、代執行の光景を思い描き、具体的に検討の上,
判断してください。

そして、最後に地権者の岩下さんが締めくくりました。

私たちは収用されても、代執行されても闘っていきます。
これは今日ここに来ているみんなの考えです。

私たちは10年でも20年でも反対し続けて行きます。
死ぬまで反対します。
私が死んでも子どもたちが後を継いで反対を続けます。
そのうちに佐世保の人口は減り、水余りになります。
ダムに代わる治水対策もいろいろあります。
あなたたちはこれまで石木ダムだけに固執してきましたが、
考えを改め、
少しでも早い時期に、ダムに代わる方法を選択すべきです。

この言葉が全てです。
一審判決など、県にとって、決して追い風にはならないのです。

人権を守る闘いは延々と続き、
嘘で固めたダムの必要性は、時間の経過と共に、どんどん剥がれていくでしょう。

#いしきをかえよう!

6.30講演会で納得!石木ダムは無用の長物

6月30日は朝から雨。弱まったり強まったり・・・前日は列車に運休が出るほどの大雨だったので心配しましたが、予報通り午後になると雨は止み、ほっ。💛

満席とはなりませんでしたが、会場には沢山の方が…(^^)

会場は佐世保市民文化ホール。
旧佐世保鎮守府凱旋記念館で、国の文化財に登録されているクラシックな建物です。

https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/62615/

というわけで、椅子並べや上映機器の準備がたいへんでした。300席の椅子を並べるために早くから集まって下さったサポーターの皆様、本当にありがとうございました!

さて、今回の講演会は、このタイトルが示すように、

石木ダム訴訟の判決はどうなるのかな~

原告(地元住民など)が勝ったら、石木ダムは中止になるの?

それとも負けたら、石木ダムは建設されるの?

いやいや、裁判で全てが決まるわけではない。

公共事業はみんなのためにやるのだから、

みんなが、それぞれ考えなくっちゃ!

石木ダム、どうする?造るの?造らないの?

決めるのは私たち。決めるのはあなた。一緒に考えよう~

そのための講演会でした。

今回お招きした講師は、ダム問題の専門家であり、石木ダムの専門家と言っても過言ではないお二人です。

まず初めに登壇されたのは、今本博健先生。
河川工学と防災工学がご専門。京都大学防災研究所の所長も務められた方で、治水の基本は人命を守り壊滅的な被害を避けることだとおっしゃっています。

実は、今本先生はもともとは土木・河川工学のスペシャリストとしてダムを造る側にいた方です。ところがダムを知り尽くしてみると、ダムには様々な欠点(想定以上の洪水は防げない、住民を危険に晒す、自然環境を破壊する、地域社会を分断する、土砂をせき止め地形や生態系のバランスを崩す等々)があるのに気づき、立場を180度変えてしまった勇気ある学者です。

もちろん、すべてのダムを否定するつもりはない。過去には必要なダムもあった。しかし、これ以上新たなダムは必要ない。その1つが、いや、最たるものが石木ダムだと断言されています。

今本先生の講演内容はこちらです。

180630佐世保講演会(治水)

専門的な用語やグラフが多くて、難しいな~と感じた方も多かったことでしょう。でも、これだけは理解できたのではないでしょうか?

治水対策はダムだけじゃない、全部で8つの対策案があったんだってこと。

県は「そのどれも、石木ダムよりお金がかかる。石木ダムが一番安くできる。いわゆる費用対効果が高い」と言った。ところが、そのデータがおかしい。

ダム案の経費は必要以上に低く抑え、ダム案以外の経費は必要以上に高く設定していた。

残念ながらそれはよくある話で、その例として鳥取県の中部ダムの場合が紹介されました。

当時の片山知事が職員に見直しを命じたところ、それまでは河川改修より安かったダム案が、見直し後は河川改修の3倍近いコストがかかることが判明したそうです。それで、無駄なダムの建設は回避でき、税金の無駄遣いを減らすことができたというわけ。

長崎県の知事も、このような賢明な方であればいいのですが・・・

そして、今本先生が一番伝えたかったのは、こちらでしょう。

なぜ「石木ダムがつくられれば、川棚町民が洪水に怯え続ける」のか?

ダムは想定内の洪水にしか対応できません。100年に1回の大雨が降ったら川棚川の下流にはこのくらいの水量が流れ込むと予測し、それが溢れないよう堰き止めて流量を調節しようとするのがダム計画。

でも、計画以上の雨が降ったら?ダムは破堤する前に放流します。
すると、大雨でいっぱいいっぱいの川に、どどーっと大量の水が流れ込み、堤防の決壊や人災に繋がります。
ダムが無ければ、流量は徐々に増えるので、避難する時間もあるのですが。

 

では、なぜ「石木ダムがつくられれば、佐世保市民が困窮する」のでしょう?

それは、嶋津氏の講演で明らかとなりました。

嶋津氏の講演内容はこちらです。

 

講演のタイトルは「佐世保市民にとって石木ダムは無用の長物


なんと大胆で、そして、わかりやすいタイトル!

配布資料:http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2018/07/ccfbd37d2a349bf49c35de9158767947.pdf

スライド:http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2018/07/89d535239715c3aaca07660fb9c09c95.pdf

スライドには目次もついています。

Ⅰ 縮小社会の進行で水余りが進む時代

Ⅱ 佐世保の水需給計画の虚構

Ⅲ 過去の渇水が再来したらどうなるのか

Ⅳ 既設ダムの老朽化への対策に石木ダムは必要か

Ⅴ 佐世保市民は石木ダムのためにいくら負担するのか

以上、論点が一目瞭然なので、それぞれが知りたかったところだけを読んで頂くことができます。もちろん、全部大事なことだらけですが。

今本先生ご指摘の「石木ダムは佐世保市民を困窮させる」とは、Ⅴの「佐世保市民は石木ダムのためにいくら負担するのか」を見れば明らかです。

スライド58以降に詳しく解説されていますので、是非開いていただきたいのですが、簡単にまとめると、

佐世保市の負担額は、

ダム建設負担金+関連水道施設整備費―国庫補助金=299億円

その財源の大半は地方債で賄い、その利息=40億円

合計=339億円 (A)

それを佐世保市の現世帯数で割ると1世帯あたり=32万円にもなるそうです。

しかも、それだけじゃない。

完成後50年間の石木ダム維持管理費+施設更新費負担分=3億円

完成後50年間の水道施設の維持管理費+施設更新費=291億円

合計=294億円 (B)

A+B=633億円

つまり私たち佐世保市民は633億円ものお金を石木ダム事業に注ぎ込むこととなり、世帯数で割ると約60万円だそうです。

ダムができて50年後というと、私などとっくにこの世にはいないので、
やはり子や孫の世代にその負担を押し付けることになります。

平成28年度決算時点ですでに122億6千万円支出済みとのことでしたが、
まだこれから520億円ほど支払いが残っているわけです。

いま石木ダム計画を止めれば、520億円もの無駄遣いが防げます。

そのお金で漏水対策に力を入れれば、水を無駄にすることも減るし、
漏水事故による断水も防げます。

それでも石木ダム造りますか?

 

続いて、石木ダム対策弁護団団長の馬奈木昭雄弁護士から「今後のたたかいの展望」と題してのお話がありました。

両講師の話を聞きながら、私はワイツゼッカーが東西ドイツ統一の時に言った言葉を思い出していた。

嘘無しではやっていけない政治体制の中では、書類もまた嘘をつく

中央官庁をはじめとして今の日本全体が陥っている姿だが、長崎県と佐世保市も同じだ。

50年間弁護士をやってきたが、これほどでたらめな資料を使ってでたらめなことをやろうとしている事業はない。裁判の中で我々はそれを明らかにしてきた。だから100%勝てる!と言いたいが、残念ながら、そうは言い切れない。

どれだけ筋の通ったことを言っても、国の方針通りにやろうとする裁判官は多い。裁判所が国と一体化している。それは諫早湾干拓の裁判結果を見れば明らか。

その結果を出した同じ長崎地裁で石木ダムの裁判もやっている。
仮に勝てたとしても、その判決に県が従うだろうか?

自分の運命を他人(裁判官)に委ねるわけにはいかない。自分の運命は自分で決める。それを身をもって示してきたのがこうばるの皆さんの闘いである。

日本国憲法の基本原則は、国民主権。
地域のことは地域で決める。地域住民の合意形成が必要。

合意の前提は正しいデータである。
正しいデータを示し、住民が判断する。それがあるべき姿。

石木ダムは要らないという合意を作ろうではありませんか。

 

最後に、原告団を代表して、また地元住民を代表して、岩下和雄さんからご挨拶がありました。

石木ダムは計画から50年近く経っている。なぜ私たちが反対してきたか。

当時佐世保市は、「現在は9万6千トンの水を使っているが、将来は16万トンの水が必要になる。それには石木ダムを造るしかない」と言っていた。

私たちはそんなに増えることが信じられず、県に対し話し合いを求めてきたが、県はそれに応じず計画を進めてきた。

今では当初の予測の半分も使っていない。この必要のないダムのために、私たちの家や自然豊かな地域を湖底に沈めることは許されない。

一昨年こうばるにやってきた佐世保市長は「佐世保市民の豊かな生活のために有り余る水を確保する必要がある。だから石木ダムが必要なのだ」と言った。

我々の生活圏を奪ってまで佐世保市民は石木ダムを望んでいるのか?

今ある水を上手に使って、生活できるのでは?

多額の借金をしてまでダムを造る必要はないのでは?

私たちはたとえ裁判に負けてもそこに住み続ける。

ふる里を守っていく。

佐世保市民、県民の皆さんと共に、石木ダムが必要なのか?と問い続けて行きたい。

 

以上、講演会の全容をお伝えしました。

参加する機会のなかった方にも是非その内容を知ってほしかったからです。

特に佐世保市民の皆さん、嶋津氏の講演資料をクリックして目を通してみてください。

佐世保市の説明とのギャップに驚かれたことでしょう。

佐世保市は広報でこれからも石木ダムが必要だと主張し続けるでしょう。

それを見た時、この資料を思い出してください。

そして、両方の主張を理解した上で、あなたご自身で考えてみてください。

 

わからないことがあれば、このブログにコメントをください。

嶋津氏に伝え、お返事を頂きます。

 

さあ、地域のことは地域で決めましょう~

長崎県のダム建設は、長崎県民で考えましょう。

正しいデータを使って!