6月30日は朝から雨。弱まったり強まったり・・・前日は列車に運休が出るほどの大雨だったので心配しましたが、予報通り午後になると雨は止み、ほっ。💛
満席とはなりませんでしたが、会場には沢山の方が…(^^)
会場は佐世保市民文化ホール。
旧佐世保鎮守府凱旋記念館で、国の文化財に登録されているクラシックな建物です。
https://www.nagasaki-tabinet.com/guide/62615/
というわけで、椅子並べや上映機器の準備がたいへんでした。300席の椅子を並べるために早くから集まって下さったサポーターの皆様、本当にありがとうございました!
さて、今回の講演会は、このタイトルが示すように、
石木ダム訴訟の判決はどうなるのかな~
原告(地元住民など)が勝ったら、石木ダムは中止になるの?
それとも負けたら、石木ダムは建設されるの?
いやいや、裁判で全てが決まるわけではない。
公共事業はみんなのためにやるのだから、
みんなが、それぞれ考えなくっちゃ!
石木ダム、どうする?造るの?造らないの?
決めるのは私たち。決めるのはあなた。一緒に考えよう~
そのための講演会でした。
今回お招きした講師は、ダム問題の専門家であり、石木ダムの専門家と言っても過言ではないお二人です。
まず初めに登壇されたのは、今本博健先生。
河川工学と防災工学がご専門。京都大学防災研究所の所長も務められた方で、治水の基本は人命を守り壊滅的な被害を避けることだとおっしゃっています。
実は、今本先生はもともとは土木・河川工学のスペシャリストとしてダムを造る側にいた方です。ところがダムを知り尽くしてみると、ダムには様々な欠点(想定以上の洪水は防げない、住民を危険に晒す、自然環境を破壊する、地域社会を分断する、土砂をせき止め地形や生態系のバランスを崩す等々)があるのに気づき、立場を180度変えてしまった勇気ある学者です。
もちろん、すべてのダムを否定するつもりはない。過去には必要なダムもあった。しかし、これ以上新たなダムは必要ない。その1つが、いや、最たるものが石木ダムだと断言されています。
今本先生の講演内容はこちらです。
専門的な用語やグラフが多くて、難しいな~と感じた方も多かったことでしょう。でも、これだけは理解できたのではないでしょうか?
治水対策はダムだけじゃない、全部で8つの対策案があったんだってこと。
県は「そのどれも、石木ダムよりお金がかかる。石木ダムが一番安くできる。いわゆる費用対効果が高い」と言った。ところが、そのデータがおかしい。
ダム案の経費は必要以上に低く抑え、ダム案以外の経費は必要以上に高く設定していた。
残念ながらそれはよくある話で、その例として鳥取県の中部ダムの場合が紹介されました。
当時の片山知事が職員に見直しを命じたところ、それまでは河川改修より安かったダム案が、見直し後は河川改修の3倍近いコストがかかることが判明したそうです。それで、無駄なダムの建設は回避でき、税金の無駄遣いを減らすことができたというわけ。
長崎県の知事も、このような賢明な方であればいいのですが・・・
そして、今本先生が一番伝えたかったのは、こちらでしょう。
なぜ「石木ダムがつくられれば、川棚町民が洪水に怯え続ける」のか?
ダムは想定内の洪水にしか対応できません。100年に1回の大雨が降ったら川棚川の下流にはこのくらいの水量が流れ込むと予測し、それが溢れないよう堰き止めて流量を調節しようとするのがダム計画。
でも、計画以上の雨が降ったら?ダムは破堤する前に放流します。
すると、大雨でいっぱいいっぱいの川に、どどーっと大量の水が流れ込み、堤防の決壊や人災に繋がります。
ダムが無ければ、流量は徐々に増えるので、避難する時間もあるのですが。
では、なぜ「石木ダムがつくられれば、佐世保市民が困窮する」のでしょう?
それは、嶋津氏の講演で明らかとなりました。
嶋津氏の講演内容はこちらです。
講演のタイトルは「佐世保市民にとって石木ダムは無用の長物」
配布資料:http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2018/07/ccfbd37d2a349bf49c35de9158767947.pdf
スライド:http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2018/07/89d535239715c3aaca07660fb9c09c95.pdf
スライドには目次もついています。
Ⅰ 縮小社会の進行で水余りが進む時代
Ⅱ 佐世保の水需給計画の虚構
Ⅲ 過去の渇水が再来したらどうなるのか
Ⅳ 既設ダムの老朽化への対策に石木ダムは必要か
Ⅴ 佐世保市民は石木ダムのためにいくら負担するのか
以上、論点が一目瞭然なので、それぞれが知りたかったところだけを読んで頂くことができます。もちろん、全部大事なことだらけですが。
今本先生ご指摘の「石木ダムは佐世保市民を困窮させる」とは、Ⅴの「佐世保市民は石木ダムのためにいくら負担するのか」を見れば明らかです。
スライド58以降に詳しく解説されていますので、是非開いていただきたいのですが、簡単にまとめると、
佐世保市の負担額は、
ダム建設負担金+関連水道施設整備費―国庫補助金=299億円
その財源の大半は地方債で賄い、その利息=40億円
合計=339億円 (A)
それを佐世保市の現世帯数で割ると1世帯あたり=32万円にもなるそうです。
しかも、それだけじゃない。
完成後50年間の石木ダム維持管理費+施設更新費負担分=3億円
完成後50年間の水道施設の維持管理費+施設更新費=291億円
合計=294億円 (B)
A+B=633億円
つまり私たち佐世保市民は633億円ものお金を石木ダム事業に注ぎ込むこととなり、世帯数で割ると約60万円だそうです。
ダムができて50年後というと、私などとっくにこの世にはいないので、
やはり子や孫の世代にその負担を押し付けることになります。
平成28年度決算時点ですでに122億6千万円支出済みとのことでしたが、
まだこれから520億円ほど支払いが残っているわけです。
いま石木ダム計画を止めれば、520億円もの無駄遣いが防げます。
そのお金で漏水対策に力を入れれば、水を無駄にすることも減るし、
漏水事故による断水も防げます。
それでも石木ダム造りますか?
続いて、石木ダム対策弁護団団長の馬奈木昭雄弁護士から「今後のたたかいの展望」と題してのお話がありました。
両講師の話を聞きながら、私はワイツゼッカーが東西ドイツ統一の時に言った言葉を思い出していた。
「嘘無しではやっていけない政治体制の中では、書類もまた嘘をつく」
中央官庁をはじめとして今の日本全体が陥っている姿だが、長崎県と佐世保市も同じだ。
50年間弁護士をやってきたが、これほどでたらめな資料を使ってでたらめなことをやろうとしている事業はない。裁判の中で我々はそれを明らかにしてきた。だから100%勝てる!と言いたいが、残念ながら、そうは言い切れない。
どれだけ筋の通ったことを言っても、国の方針通りにやろうとする裁判官は多い。裁判所が国と一体化している。それは諫早湾干拓の裁判結果を見れば明らか。
その結果を出した同じ長崎地裁で石木ダムの裁判もやっている。
仮に勝てたとしても、その判決に県が従うだろうか?
自分の運命を他人(裁判官)に委ねるわけにはいかない。自分の運命は自分で決める。それを身をもって示してきたのがこうばるの皆さんの闘いである。
日本国憲法の基本原則は、国民主権。
地域のことは地域で決める。地域住民の合意形成が必要。
合意の前提は正しいデータである。
正しいデータを示し、住民が判断する。それがあるべき姿。
石木ダムは要らないという合意を作ろうではありませんか。
最後に、原告団を代表して、また地元住民を代表して、岩下和雄さんからご挨拶がありました。
石木ダムは計画から50年近く経っている。なぜ私たちが反対してきたか。
当時佐世保市は、「現在は9万6千トンの水を使っているが、将来は16万トンの水が必要になる。それには石木ダムを造るしかない」と言っていた。
私たちはそんなに増えることが信じられず、県に対し話し合いを求めてきたが、県はそれに応じず計画を進めてきた。
今では当初の予測の半分も使っていない。この必要のないダムのために、私たちの家や自然豊かな地域を湖底に沈めることは許されない。
一昨年こうばるにやってきた佐世保市長は「佐世保市民の豊かな生活のために有り余る水を確保する必要がある。だから石木ダムが必要なのだ」と言った。
我々の生活圏を奪ってまで佐世保市民は石木ダムを望んでいるのか?
今ある水を上手に使って、生活できるのでは?
多額の借金をしてまでダムを造る必要はないのでは?
私たちはたとえ裁判に負けてもそこに住み続ける。
ふる里を守っていく。
佐世保市民、県民の皆さんと共に、石木ダムが必要なのか?と問い続けて行きたい。
以上、講演会の全容をお伝えしました。
参加する機会のなかった方にも是非その内容を知ってほしかったからです。
特に佐世保市民の皆さん、嶋津氏の講演資料をクリックして目を通してみてください。
佐世保市の説明とのギャップに驚かれたことでしょう。
佐世保市は広報でこれからも石木ダムが必要だと主張し続けるでしょう。
それを見た時、この資料を思い出してください。
そして、両方の主張を理解した上で、あなたご自身で考えてみてください。
わからないことがあれば、このブログにコメントをください。
嶋津氏に伝え、お返事を頂きます。
さあ、地域のことは地域で決めましょう~
長崎県のダム建設は、長崎県民で考えましょう。
正しいデータを使って!