負けてますます意気軒昂!?

前日の県庁行動に続いて10日は、佐世保市役所と九州地方整備局へ出かけました。

まず佐世保市役所です。
前日と同じ声明文を、ここでは原告代表の岩下さんが読み上げ、佐世保市水道局長の谷本薫治氏に手渡しました。

その後およそ1時間半にわたって意見交換することができました。
と言っても、双方のスタンスは明らかにほぼ平行線を辿っており、交わることはほとんどありませんでしたが。

水道局長:
この裁判についての被告は国であり、私どもはそのやり取りの全てを把握しているわけではない。
また、差し止め訴訟はまだ続いており、そちらにおいては、私たちは被告の立場であり皆様は原告である。よって司法に判断を委ねるべきであり、議論をするつもりはない。

弁護団:
局長のお考えはある程度理解しているつもりである。
しかし判決には、水需要の予測についても、慣行水利権についても「佐世保市の判断が不合理であるとは言えない」と書いてあり、石木ダムが絶対必要だとは書かれていない。
一方、現地居住者はこの判決を受けても住み続けるという意思は何ら変わらない。
そういう状況の中で、佐世保市はこれからも本当にこの事業を遂行するのか?考え直す余地はないか?それを聞きたくてやってきた。

水道局長:
「不合理であるとは言えない」というような表現は裁判の中では一般的なものだと思う。
石木ダムの必要性に関して、司法の一定理解は得られたと受け止めている。

弁護団:
普通だと言われたが、不合理でなければ何をしてもいいのか?
13世帯の生活を奪うには、石木ダムがどうしても必要だという合理性が無ければならない。
あくまでも強制収用するつもりか?

水道局長:
土地の取得の仕方については、当初から佐世保市は県に委託をしているので、強制収用について私が言及するのは相応しくない。

弁護団:
それは無責任では?
受益者である佐世保市が13世帯を犠牲にしてでも不可欠と考えるのか、それほど利水の必要性があるのか、という判断は佐世保市がすべきことではないのか?

支援者:
2009年に県と佐世保市は、事業認定申請しましたよね?
あの当時、13世帯をどかしてでも石木ダムを造って水源開発をしなければダメなんだという水道局の判断がなければ、市長や知事が認定申請をするはずがないでしょう?

弁護団:
少なくとも当時は追い出す意思はあったということでしょう。
あれから数年たっています。佐世保の水事情も変わっています。市民の意識も変わっている。
そして住民の意志の強さも示された。
その中で市は、今もその意思は変わらないのかということを知りたいのだ。

地権者:
50年前に佐世保市は何と言ったか知ってますか?
佐世保市には10万5千tの水が有るが、10年後には16万5千t必要になる。6万tも足りない。だから石木ダムが必要だと言っていた。
今は11万7千t必要になると言っている。必要量が5万tも減った!
もう必要ないということだ。

また、2045年までに佐世保市の人口は21%減ると言われている。
水道の使用量も比例して減っていく。
すると市民の負担が大きくなる。
その上、耐用年数を過ぎている水道管がたくさんある。その更新にお金がかかる。
ダムを造るだんじゃない。
その費用がどのくらかかるのか、市民に知らせているのか?

そして、平成19年の地質調査で、石木ダムの予定地には深さ50m幅20mにわたって透水性のある軟弱な地盤があり、対策が必要だとの結果が出ている。
しかし、その対策費は未だに盛り込まれていない。
石木ダム建設のコストは大きく増えるはず。
それを計算して水道料金がどのくらい上がるのか、市民に知らせるべきではないか?

本明川ダムは石木ダムと同じ規模だが、500億かかる。
石木ダムが285億で済むはずがない。

佐世保市民:
私たち佐世保市民の多くは石木ダムを望んではいません。
先ほど局長は市民の代表は市議だと言われたが、市議会と市民の意識には乖離がある。
2年前の佐世保市によるアンケート調査で、市民が水道局に求めるのは水源開発よりも老朽化対策だということが明らかになった。
なんと63%もの人が最も重要なのは老朽化対策だと答えた。
古い施設を抱えた水道局の皆さんが漏水を減らすために苦労されていることは私たちも知っている。皆さんのおかげで今私たちは水に不自由しない暮らしができている。
この生活を維持するために、限られた財源をどう使っていくか、水道局と市民が対立するのではなく、一緒に考えていきたいと願っている。

地権者:
ダムには大きなお金がかかるので歴代の市長はあまり前向きではなかった。
ダムに代わる対策を模索していたが、やろうとすると県から止められた。そういうことをしたら石木ダムができなくなると。
しかし、今の市長は本気で造りたがっている。なぜだろう?

佐世保市民:
先日の講演会で講師が示した数字では、石木ダム建設と関連事業費で339億円、そしてダム建設後50年間にかかる維持管理・施設更新費は294億円、合計633億円にのぼり、1世帯当たりの負担額は約60万円になるとのことだった。この数字は間違っているのか?

水道局長:
昨日、知事や市長も言っていたが、石木ダムは必要なダムである。そして厚労省等でも認められている。それ以上のことは私どもからは言えない。

地権者:
佐世保市の関連事業はいつ着工するのか?

水道局長:
具体的なロードマップはここで示せないが、既に取りかかっているものもある。
これまでに125億円も投資しながら取水場や新しい浄水場の用地確保などにお金をかけてきた。

支援者:
石木ダムができなければ、他ダムの浚渫ができないと広報にあるが、水道局長は本当にそう思っているのか?
「市長、それはちょっと言い過ぎですよ」と、市長を諫めるのが現場の責任ではないのか。

弁護団:
いろんな話が出たが、大事なのは今後のこと。
これからどうするのが一番いいのか、佐世保市民と地権者と有識者などを含めて意見交換しませんか。
それは佐世保市にとっても有意義なことだと思う。
そういう申し入れをしますので、ご検討いただきたいと市長に伝えてください。

水道局長:
伝えますが、もう1つの裁判が進行中なので、被告と原告という立場上、土俵の外で何かやるのは難しいと思う。

まだまだたくさんの質問や意見が出たし、水道局長は、それに対し答えられるものはできるだけ答えようとしていました。そのことには率直に有難いと思いました。

判決後に協議を行いたいという私たちの要請に対し、当初は「対応は難しい」と文書で回答してこられました。
その水道局が、180度方針を変え、水道局長自らが対応してくださったのは、やはり「勝った」という安心感と余裕だったのでしょう。

 

私たちは裁判(一審)には負けたけれど、みんな何故か明るく元気!
貸し切りバスの車内はお菓子があちこちから回ってきて、なんだか旅行気分で、次の目的地「国土交通省 九州地方整備局」(略して九地整)へ向かいました。

九地整でも部屋を用意して対応してくれましたが、しかし、こちらは酷かった・・・
担当者(事業認定調査官の渡辺氏)は不在とのことで、本件について全く無関係の総務の職員が3名「居た」だけでした。
この方が発した言葉は「30分だけ」と「伝えます」

まずは、これまで通り、声明の読み上げ。
ここでは総代の炭谷さんが朗読し、手渡しました。

弁護団:
判決は「認定庁の判断が不合理だったとは言えない」というもの。
その判断とはあの時点でのこと。今現在はどうなのか?
国として今どのようにお考えか知りたくてやってきた。

九地整:
私が今この場で言うことは何もない。
皆様のご意見を録音させて頂き、声明文と共に上司に伝える。

地権者:
私たちは認定される前も、ここに来ていろいろ意見を述べたが、その時も担当者ではなく総務の方が対応した。伝えると言ったけれど、伝わったかどうかもわからないままだった。

県や佐世保市が提出した資料には間違いがあったので、正しい資料を私たちは送ったが、その時は、もう認定の方針が決まっていた。

特に事業費については大きな問題がある。
その数字は平成16年に出された数字で、その後19年に長崎県が委託した地質調査会社から地盤の問題性が指摘されたにも関わらず、その対策費が加算されていない。
国は県の資料を鵜呑みにしないで、事業費の算出をやり直させるべき。
あるいは、認定庁自身が調査をしてほしい。
認定前も現地に足を運んでほしいと何度もお願いしたが、来なかった。

などなど、何を言っても「伝えます」の返事しか返ってこない。

「担当者を呼んでほしい」「いつなら担当者と話せるのか、それを聞いてほしい」「今ここで電話して確認してほしい」
何をお願いしてもダンマリ。

しびれを切らした地権者と支援者の2人が、渡辺さんを探しに部屋を出ていきましたが、結局、渡辺さん以外の認定調査官にも会うことはできず、私たちは帰途に就きました。

国の対応とはこういうものなのですね。

たとえ、そちらには意味のない(認定庁が出した判断は違法ではなかったと司法も認めたのだからこれで決着。今さらこの件で原告らと話し合う意味はない)ことであっても、その認定によって家を、生活を奪われようとしている人たちの声に耳を傾けようとする、血の通った役人はいないのでしょうか。

まさに問答無用。
下々の者は下がれ居れ!という感じ。

でもね、こうばるの皆さんも私たちも、そんなことで意気消沈したりはしませんぞ!
18日には国交省本庁に乗り込みます。
もちろん厚労省にもね。

負けてますます戦意高揚!
雑草の底力を甘く見ちゃダメよ。 (‘◇’)