12月11日長崎新聞の記事です。
水源地域って何でしょう?その指定を申し出るってどういうこと?
ご存知ですか?調べてみました。
それは、『水源地域特別措置法』という法律にでてきます。国土交通省の説明によると、 http://www.mlit.go.jp/mizukokudo/mizsei/tochimizushigen_mizsei_tk3_000012.html
「国が指定する水源地域において、… 関係住民の生活の安定と福祉の向上を図り、もつてダム等の建設を促進し、水資源の開発と国土の保全に寄与することを目的とする制度」で、「具体的には、…水源地域整備計画に基づいて、土地改良事業、治山事業、治水事業、道路、簡易水道、下水道、公営住宅、公民館等24分野にわたる事業を実施」するようです。
平たく言えば、ダムの犠牲になる地域の住民のために、道路や住宅、公園や公民館を整備してあげますよ。その際、国も補助しますし、受益地の自治体からも援助しますよ、ということでしょうか。
原発立地自治体に国や電力会社から多額の交付金や寄付がバラまかれ、りっぱな道路や公園、公民館や博物館など様々なハコ物が造られていくのと同じ論理なのでしょうか。
でも、不思議なのは、なぜ今?ということ。
石木ダムが、この特措法のダムに指定されたのは1982年。今から36年も前のこと。
このダムに指定されていながら、水源地域整備計画を策定していないのは、97ダム中たった4つだけです。http://www.mlit.go.jp/common/001053043.pdf
しかも他の3つについて見てみると、
夕張シューパロダムは平成26年度に完成し、武庫川ダムは24年度に中止しています。本明川ダムはダム指定を受けたのが最近(平成28年度)なので、これから申請するそうで、不思議はありません。
なぜ、石木ダムだけが長年水源地域に指定されなかったのか=指定申請してこなかったのか?
それはやはり、そこに13家族もの人々が住み続け、ダム反対を訴え続けてきたという現実があったからでしょう。
しかし、その現実は今も何ら変わるものではありません。農地の一部は既に強制収用されても、出ていくどころか、そこで米を作り野菜を育て続けている。ダム反対の抗議行動は今も毎日続いている。それが実態です。
ではなぜいま申請をしようと決めたのか?県は堀江県議の質問にこう答えたそうです。
「反対住民の声を無視しているわけではない。司法の判断も出た。川棚町との協議が整った」と。
また、新聞記者の質問には「付け替え道路工事が、先月も新たな工区を発注するなど、大体順調に進んでいるから」と答えたそうです。
無視していないと言っても、それはやっぱり無視していることになりますよね。司法と行政、行政と行政の馴れあいの中で物事を決めていく…民の声は無視。沖縄を見ても福島を見ても、そんな政治が続いていますね。長崎も例にもれず…ってわけでしょうか。
行政同士の結びつきと言えば、馴れ合いというより支配関係のほうがより大きな問題かもしれません。
ここ長崎では、国土交通省からの出向職員がたいへん多いということです。12月5日の衆議院国土交通委員会で、質問に立った初鹿明博議員が指摘をしていました。
後日、資料を入手したところ、現時点で、副知事、企画振興部次長、土木部長、総務部参事監、土木部建設企画課長補佐、土木部監理課主任主事、土木部砂防課技師、以上7名もの出向者の存在が判明しました。
この数字を全職員数で割ると、0.17%です。これは、奈良県、京都府に続く全国3位の高率であることがわかりました。
国交省からの出向者の多さが石木ダム建設を諦めさせないのかどうか、関係があるのかどうか、私にはわかりません。
ただ、昔の佐世保市議会議事録にこんな記録が残っています。
元長崎県議「織田長」さん(公明党)が佐世保市議の頃の、平成7年3月定例会(3月14日)の議事録より。
建設省は白紙撤回というのは今までやったことがないんですよ、ダムの建設ということで。非常に強硬な圧力でもって話を通してきますね、残念ながら。私たち佐世保の実情というのは全然わかってもらっていません。本当に県の当局者もその流れをくまなきゃいけないんでしょうが、非常に残念な、私たち市民の思いには立ってくれておりません。
現在の公明党佐世保市議の皆さんに、熟読して頂きたい議事録ですね。
織田長さんの発言から読み取れるのは、市民はそんなにダムを望んでいるわけではないけれど、佐世保の実情など何も知らない国が県に圧力をかけてダム建設を強行しようとしている。それに対して県は市民の方を向かず、国に忖度して国の言いなりになっている…というふうに理解したのですが、この解釈間違っていますか?
さて、話が横道にそれましたので、「水源地域」に戻します。
新聞記事に書かれているように、水源地域に指定されると川棚町は国の補助を得て道路や公園などを整備できるし、これには佐世保も受益地として負担しなければならないわけです。
佐世保市民の皆さん、大変ですよ!また負担が増えるんです。今でも私たち佐世保市民の負担は353億円と言われているのに、これ以上、石木ダムに垂れ流し、しますか?
それに、よくよく考えると、似たような負担、既にしてますよね?
県のウエブサイトの資料によると、平成7年に(財)石木ダム地域振興対策基金なるものを設立しています。http://www.pref.nagasaki.jp/bunrui/machidukuri/kasen-sabo/ishiki/situmon/80701.html
これは何かというと、ダム周辺地域における地域振興と水没地権者の生活再建を図る為に、県や佐世保市と地元の自治体同士が補助金を出し合ったものでした。(県5億円+佐世保市5億円+川棚町6千万円=10億6千万円)
しかし、平成25年11月30日をもって、この財団法人は解散となりました。この件も佐世保市議会の議事録から見てみましょう。
平成25年10月2日の石木ダム建設促進特別委員会の記録です。
一瀬水道事業部長: この基金においては、水源地域対策特別措置法で整備した施設の維持管理を今後ずっと続けていくことにしていたが、今回の公益法人の改革により、11月30日をもって解散することが決定している。… 現在、基本財産が10億6,000万円であるが、運用財産を含めると13億円の資金がある。…この基金について、佐世保市は出損ということになっており、その管理とか、関与することはできないので、取り崩し等をするかどうかについては理事会で決定されることになる。
川久保水道局長: 基本財産は処分できない。ただし、…いわゆるその基金の寄附行為の中で処分については定められている。既に…生活再建等特別助成金を支給し始めている。これについては、かなりの費用が要るということで、これに充てるため、既に基金の取り崩しを行っている状況である。
山下千秋市議: その協力感謝金についてであるが、川棚町議会においては、家屋移転世帯67世帯に約3億600万円、土地譲渡のみ56世帯に約3,800万円、上流残存自治会、--これは木場だと思うが、1件当たりに約1,000万円という内訳についての話も既に町議会で明らかにされている。家屋移転世帯について言えば、1世帯当たり250万円から500万円、土地譲渡のみの場合は、12万円から100万円の見込みであるという形で、これだけ明らかにされている。それにもかかわらず、出損金を5億円も出している佐世保市の議会に対して、そのような報告を現時点でされないという点について言えば、やはり透明性に欠けるやり方だと思う。
つまり佐世保市民の血税から5億円が石木ダム周辺地域の振興のためという名目で支出され、31年後には何故かそのお金は増えていた。それまでにどんな事業に活用されたのだろう?
そして基金解散に際して、移転世帯には250~500万円が、木場郷の自治会には1件あたり1000万円がバラまかれたという。それが地域振興だろうか?
残りのお金はどうなっているのだろう?その残金で川棚町は道路や公園を造る事業費に充てればいいのではないか等々、私の頭の中は疑問符がいっぱいです。
皆さんは疑問に思いませんか?