水道の未来

3月16日(土)午後、アルカスSASEBOにはたくさんの佐世保市民が集まり、水ジャーナリスト橋本淳司さんの講演に耳を傾けました。

講演のタイトルは「佐世保の水事情と水道民営化を考える」で、やや硬いタイトル。にもかかわらず、約130人もの方々が参加されたことは、私たち実行委員(佐世保市民有志)にとって予想以上の結果でした。

中には、嘉田由紀子さん(水行政に詳しい元滋賀県知事)の話が聴きたくてやってきたのに、突然の体調不良(インフルエンザの疑い)によるキャンセルでがっかり!という方もおられましたが、そんな方でさえ、「橋本さんの話は予想以上に素晴らしかった。来て良かった!」と喜んで帰っていかれました。

まぁ!そんなに良い講演だったの?聴けなくて残念!とお思いの皆さん、ご安心ください。近々、実行委員の1人がYouTubeにアップする予定ですので、アップされたら、石木川まもり隊ブログでも公開します!ぜひ、お楽しみに!

こちらの新聞記事が、その内容を的確に伝えていますが、

橋本さんの講演のテーマは、まさに人口減少!

人口減少→水道料金収入の減少→施設の維持管理費の不足→施設の老朽化→自治体にとってはお荷物。

そんな中で出てきた水道の民営化案。

政府はコンセッション方式なるものを推奨していますが、それにはデメリットも多いんですよね。

これまでの業務委託の場合、私たちの水道料金は市水道局に支払ってきましたので、それは100%水道事業のために使われましたが、コンセッションの場合、契約した民間企業に支払うので、その料金収入から役員報酬や株主への配当金、法人税などが支払われます。その分、当然、水道事業の質やサービスの低下が予想されるし、経営状態も民間は不透明になるので心配です。

そのようなことから、民営化した海外のケースでは、水道料金の高騰や水質の悪化を招き、再公営化がどんどん進んでいます。

そこで、橋本さんは、水道を持続させるには、ダウンサイジングこそ大事だと力説。

人口減少社会において水道事業を持続させるには、発想の転換が必要。

新たな施設を造って投資する時代の考え方から脱却し、今あるものを補修し更新して持続させる。大規模化ではなく、縮小化、ダウンサイジングこそ大事。

水道から水点へ。遠くから導水するのではなく、地元の地下水、伏流水、雨水を活用。山間地域など。

そのような話を、第2部のトークセッション(橋本淳司×辻井隆行パタゴニア日本支社長)では、さらに広げたり、深めたり。

中でも、会場の関心を集めたのは、水道料金の話。

前述のような老朽化対策やダウンサイジングをせずに、旧態依然のままの運営を続けていると、2040年には水道料金をこんなにも上げざるを得なくなるという予測の表が紹介されました。

これは橋本さんが作られた資料ではありません。「新日本有限責任監査法人 水の安全保障戦略機構事務局」の作成によるものです。新日本有限責任監査法人とは、国内4大大手監査法人の1つです。

そこがまとめた資料「人口減少時代の水道料金  全国推計 推計結果」(2018年3月29日)https://www.shinnihon.or.jp/about-us/news-releases/2018/pdf/2018-03-29-02.pdfの中の1ページを取り出したものが上の写真です。

この推計によると、2040年の時点では、長崎市よりも佐世保市の方が水道料金は高くなっています。(20㎥あたり)

2015年=佐世保市4,119円、長崎市4,433

2040年=佐世保市5,827円、長崎市5,770

何故でしょう?それは老朽化対策にどれだけ取り組んでいるか、将来のツケを減らす努力をどのくらいしているかの差と言えるでしょう?

ところで、この表を見て皆がギョッとしたのは、川棚町のデータでした。
値上げ率248%!?全国トップ9位の値上げという予測。
う~ん、この要因は何でしょうねー
人口減少だけではなさそうです。

最後に会場からの質問を受け付けると沢山の手が上がりました。

Q:雨水や再生水の利用が大事だと思う。それを広めるにはどうしたらいいか?

A:雨水を溜めることは水源確保だけでなく、下水の負荷を軽くしオーバーフローを防ぐ。また、ヒートアイランド現象対策にもなり、温暖化への対応としても有効。個人と行政の間に水道サポーターのようなものを作ったらどうか?水道局と市民がもっと近づいて意見交換できるような仕組みが必要。岩手県矢巾町のような。

Q:周りには石木ダムが必要と言う人もいるが、人口減少社会への危機感が足りないと思う。私は不便を感じていない。足りないと思うなら工夫して暮せば良い。ナンバーワンではなくオンリーワンの佐世保を目指すような社会にするには、どうしたらいいのか?

A:水についての教育も大事。こどもたちに情報を発信し、考えさせる。先生が教えるのではなく、子どもに考えさせる。子どもは未来を切り開く力を持っている。

その他にも、漏水率についてや、地域格差をなくすには、水道事業はなぜ独立採算制を取るのか等々の質問が出されました。

最後に、辻井さんが「昭和」という言葉を投げかけ、それがキーワードとなって、橋本さんは素晴らしいメッセージで締めてくださいました。

辻井:最近、高校生が「昭和時代」と言ってるのを耳にした。僕らが明治時代と言うように、若者にとっては過去の時代なんですね。この春には新しい年号が生まれる。1ヶ所に大きなものを造って遠くに届けるという昭和の発想は、もう古い。切り替えなければならないですよね。

橋本:過去を振り返るタイミングは年号が2つ変わった時のようです。江戸時代を振り返れたのは大正時代。明治時代を振り返ったのは昭和のとき。私たちもまもなく昭和の呪縛を俯瞰して見られる時代に突入しようとしています。

橋本:これから我々は気候変動に悩まされるだろう。それは水となって表れる。水が無くなったり、大雨が降ったり。そのとき人間の力には限界がある。生きものや、森や土に守ってもらうしかない。新しい時代を機に、これからは水の循環に目を向けてみませんか?川の流れを追いかけたり、さかのぼったり。水版ブラタモリをやって、自然を大切にしてもらいたいと思います。

という提案に、笑いや拍手が巻き起こり、皆さん、笑顔で会場を後にしていかれました。

難しい話を分かりやすく語って頂いただけでなく、佐世保水道に関する私たちの悩み(漏水や石木ダム)に風穴を開けて頂いたような気がします。

佐世保市民の皆さん、佐世保市水道の未来のために、私たちにできることは何か?発想を切り替え、新たな視点で、一緒に考えていきませんか~

    (^^)/