「ほたるの川のまもりびと」法廷での上映却下

工事差止訴訟第11回口頭弁論が、6月4日、長崎地裁佐世保支部で開かれました。

(法廷スケッチ=中島三代治さん)

4月から裁判長が変わったので、平井健一郎新裁判長に直接思いを伝えるために、原告側から4人が意見陳述を行いました。

 

トップバッターは、原告代表の岩下和雄さん

「先日、長崎県収用委員会が収用裁決を行い、県より土地家屋を11月18日までに明け渡すようにと一通の命令書が届きましたが、私達は不要なダムの為立ち退くことも土地家屋を明け渡すことも絶対にありえません」と断言し、もしも知事が「行政代執行を行えば、長崎県の恥、後世まで悔いを残すことになるだろう」「裁判官の皆様には、石木ダム工事の差止めを命じることによって、ダム建設にこだわらない、治水・利水の見直しを行うよう長崎県に指導いただければ幸いです」と陳述しました。

 

続いて陳述したのは、利水担当の毛利倫弁護士

佐世保の水需要予測の不可解さを指摘し、だからこそ、「佐世保市水道局の責任者である谷本薫治局長を直接尋問すること」が不可欠であり、「谷本局長の証人尋問を採用されるよう改めて強く要望いたします」と結びました。

 

三番手は治水担当の田篭亮博弁護士

石木ダム計画における治水の問題点、①計画規模、②基本高水、③治水方法、④費用便益比の4つについて、いずれも結論ありきで数字合わせをしていると指摘、特に費用便益については、次回、証人として出廷予定の嶋津暉之氏が明らかにしてくれるだろうと述べました。

 

最後は鍋島典子弁護士

「石木ダム建設工事は、13世帯もの人々の生活とそこで築かれてきた一つの地域社会を消滅させるという点で、人々の人格権の侵害」であると述べ、それは5人の本人尋問であきらかになるだろう、「原告らがなぜこうばるの土地を離れないのか、心からの言葉を真摯に聞いていただきたい」と訴えました。

以上、4名による意見陳述書はこちらです。

工事差止訴訟第11回口頭弁論-意見陳述集

 

その後、提出された書面や書証の確認がありました。

原告側が提出した「ほたるの川のまもりびと」を法廷で上映することに対して、裁判長が被告側の意見を聞くと、県も市も「法廷で上映する必要はない」と述べ、裁判長は「検証を却下」しました。

一方、尋問については、前回の進行協議や原告側の上申書の通り行うことが決定されました。その順番と時間は、以下の通り。

1.嶋津暉之氏(水源開発問題全国連絡会 共同代表)
主尋問90分+反対尋問30分

2.岩本宏之さん(こうばる地権者)

3.石丸勇さん(こうばる地権者)

4.岩下すみ子さん(こうばるの主婦)

5.松本好央さん(こうばるの若者)

6.石丸穂澄さん(こうばるの若者)

7.松本美智恵さん(佐世保市民)

2~7については、主尋問20~25分、反対尋問5~10分。

 

以上の尋問は、次回7月17日(水)の10時から、ほぼ一日かけておこなわれます。

次々回の期日は、9月18日(水)の予定です。

 

報告集会では、これらの内容について平山弁護士から報告があり、その後いつものように、質疑や意見交換となりましたが、参加者の関心は、前日に届いたばかりの収用裁決書についてです。

こうばるの地権者以外にも、共有地権者が200名以上もいます。書類が届いた人の多くが怒りだけでなく、戸惑いも感じているはずです。いま自分は何をすべきか、何ができるのかと。

報告集会には、地権者の皆さん、弁護団、共有地権者、支援者などそれぞれの立場の人たちが揃っているので、ちょうどいい機会です。意見を出し合い、大方の方針が決まりました。

まずは、30日以内という期限に間に合うよう、不服審査請求をみんなでまとめて提出する、ということです。これを急がねばなりません。

さらに具体的なことが決まったら、関係者の皆さんにはお知らせしますので、今しばらくお待ちくださいね。

その他のことでは、

〇法廷で「ほたるの川のまもりびと」を上映し検証することはできなくなったが、証拠として扱われるのなら、裁判官や被告はちゃんと見るのか?との質問に、弁護団は「被告側が観るかどうかはわからないが、裁判官は観るでしょうね。まともな裁判官なら」と答えました。

〇毛利弁護士の意見陳述も空しく、谷本水道局長は、やはり証人を却下されました。(水道局長が尋問されると、よほどマズイことがあるのかな?と勘繰りたくなりますね~)

〇共有地権者だけでなく、立木トラスト運動に参加し、地権者の敷地の立木を買い取って所有している人たちがいる。この人たちの所有権はどうなっているのか?との質問があり、これについては所有者リストと状況など把握して弁護団で検討することになりました。

〇9月19日の強制収用の前に、強制収用させない運動、世論づくりが重要、という点で全会一致。具体的な行動案は7団体による連絡会議で話し合うことになりました。

 

いま、こうばるはまさに「ほたるの里」です。ほたる祭りが終わっても、ホタルを見に来る人がたくさんいるそうです。

先日、友人(佐世保市民で若いお母さん)も子どもと一緒に見に行ったのですが、そのとき小学1年生の息子さんが「 市長さんも見に来たら、意見が変わるかな」と言ったそうです。

きっとN君は闇に舞うホタルの光に圧倒され「すごい!」と思ったのでしょう。ここがダムになったら、もうこのホタルは見られない。市長さんはきっと、ここのホタルを知らないんだ。見たことないんだ。見たら考えが変わるかもしれない。きっと!

と、思ったのかな~
私も同じことを思いましたよ~

裁判官の皆さん!こうばるのホタルを見に来ませんか?

忙しくてその時間が無い?
それなら、せめて、あのDVDを見てほしい!

ほたるの川のまもりびと

それを観れば、こうばるの人々のありのままの暮らしが伝わってきます。

どの家庭も、ホタルのように、優しく、温かく、懐かしい光を放っていることに、きっと気づいてくれるはず…。

それが、本当にかけがえのないものであることに。

気付いてほしい! (‘◇’)