署名提出、高校生も参加

8月28日、長崎県内は記録的な豪雨に見舞われ、避難情報も流れる中、石木ダムをめぐる5万筆の署名提出のニュースが報道されました。

午前10時半、市民団体「いしきをかえよう」のメンバーのごく一部が、50,947人分の署名を、長崎県土木部河川課の浦瀬課長に手渡しました。

署名者の思いの詰まった重い箱がいくつも、いくつも・・・

この重みを、本当は中村知事に感じて欲しかったのですが…

いつものように、知事も副知事も対応して頂くことは叶わず、河川課長に託しました。

このように、この署名の宛先は、長崎県知事 中村法道 様と長崎県議会議員の皆様です。

県民の8割が説明不足だと思っているのですから、いったん立ち止まり、石木ダム計画について公開の場でしっかり討論してください。だって、その建設費用538億円は県民が負担するのですから。

という内容の署名です。

この求めに、2019年8月27日現在50,947人が賛同し、当初の目標の5万人を超えたので、いったん提出することになりました。

この署名活動は、主に若者が頑張りました。みなそれぞれの思いや、県民から託された言葉などを語りました。

石木ダムには賛成だけど、説明や議論は必要だと言って署名した方々もいるそうです。

提出者の1人に映画「ほたるの川のまもりびと」の山田英治監督の姿も。

「映画を観て、こうばるの自然や人々の暮らしを残したいと感じ、せめて本当にダムが必要なのか討論してから決めてほしいと、多くの人が署名していた。ダム有りきではなく、いったん立ち止まり、あらゆる手段を検討すべきではないか?」と。

それに対して、河川課長の浦瀬氏は、

と答えました。

なぜ?そう言い切っていいんでしょうか?この署名は知事宛なので、お返事は知事がすべきですよね?

知事に断りもなく課長さんがお答えになったら、後日、本当に知事の答えが提示されても、それが今日の発言内容と同様のものであれば、「これはホントに知事の考えなのかな?」などと疑われるかも。。

他にも課長さんは、いろいろおっしゃっていました。

a. これまでもダム検証などであらゆるケースを検討し、その結果ダムが一番有利という結論になった。

b. 平成28年11月にも公開討論会を求める請願が県議会に出され不採択になっている。

c. 去年も佐世保は渇水対策本部を置くなど水不足だった。

等々…。だから?もう議論の必要はないとお考えなのでしょうか?

a. そのダム検証の場に参加していたのは、県の土木部河川課と佐世保市長と川棚町長など、ダム推進の立場の方々ばかりでしたよね。ダム案がベストという結果になるのは当然では?

b. その請願を提出した当時の県議会は、石木ダム反対議員は1名だけで、大多数が推進派なのですから、それも当然の結果でしょう。しかし、県民アンケートでは全く状況が違います。新聞社がやっても、一般リサーチ会社がやっても、賛成より反対の方が多いのです。また、それ以上に、「どちらでもない」とか「わからない」とかが多いのです。だから、公開の場での議論が必要だと私たちは思うのです。

c. 確かに昨年も佐世保市は長期間渇水対策本部を置きましたね。佐世保市は貯水率が80%を切ると、すぐに渇水対策本部を置くのです。でも、こちらのグラフをご覧ください。(県のHPより)

見辛いと思いますが、水道用ダム貯水率の推移。直近までの過去1年分です。

黄色い線の佐世保市は、他のどこ(長崎市、平戸市、大村市、県全体)よりも貯水率が安定していますよね。これで渇水状態が続いていたと言われても…納得できます?

そんなことを心の中でモヤモヤ思っていたら…

最年少参加者の高校生(佐世保市在住のA.Rさん)が、勇気を出して発言してくれました。

石木ダムは、私が生まれる何十年も前の計画で、今もできていません。私たちは特に水に困っているわけでもないし、これから人口も減っていくので、これ以上水源が必要なのかな?って本当に思います。

行政の方は、本当のことを、私たちにも分かるように説明してほしいです。

この場にいた全ての大人たち(河川課職員の皆さんを除いて)が、「うん、うん。だよなー」といった顔つきでRさんに注目していました。

 

その後、11時半から、県政記者室で記者会見があり、署名提出メンバーが、記者さんたちの質問に答え、補足の説明などおこないました。

パタゴニア日本支社長の辻井さんは、ここで初めて発言されました。

辻井さんはじめパタゴニアの皆さんは、決して賛成派と反対派の対立を望んではいないし、勝ち負けを求めてもいない。SDGsの理念を踏まえた対話を求めているのです。

SDGsとは、国連で採択された持続可能な開発目標で、

例えば、「貧困をなくそう」とか、「質の高い教育をみんなに」、「安全な水とトイレを世界中に」、「人や国の不平等をなくそう」、「住み続けられるまちづくりを」、「気候変動に具体的な対策を」等々17の目標を掲げていますが、その理念とは、「誰一人取り残さない」です。

石木ダム賛成の人も反対の人も、その根拠を出し合って、冷静に検討し、どちらの結果になっても、その結果を望んでいなかった人に対してはその原因に対する別の解決策を用意するということです。

例えば、石木ダム建設が中止になったら、仕事がなくなって困るという人がいるとしたら、漏水対策の工事や河川改修の工事などを増やすことで解決できるかもしれません。

あるいは、(ここから以下は私の考えですが)新たなダム建設ではないけれど、ダム再生事業を用意するとかできないでしょうか。

佐世保のダムは老朽化しているので、補修が必要ですが、補修だけでなく、補修のついでにダムの嵩上げをするとか、ダム建設技術を必要とするような事業も考えられるわけです。改修工事はいずれ必ず必要になるし、その際わずかな嵩上げで、ダムの貯水量は大きく増加するので、より多くの水源を望んでいる人たちにも安心してもらえるでしょう。

など、とにかく議論や討論といっても、目指すのは対立ではなく、対話から生まれる理解です。理解の先に初めて「誰一人取り残さない」解決策が見えてくるのだと思います。

説明責任を有する行政は、何よりも県民の理解を大事にしなければならないはず。理解を求めず強行するなら、その事業は必ず失敗するでしょう。既にその轍は踏んでいるのですから、その経験に学んでほしいと強く願っています。