今こそ「ダムに寄らない治水」を本気で!


今回の九州豪雨のニュースを見て、たくさんの方からお問い合せやお見舞いのメールや電話をいただきました。心からお礼申し上げます。

と同時に、遠くにお住いの支援者の皆様や最近のテレビ報道で関心を寄せてくださっていた皆様にはご心配をお掛けしてしまい、発信が遅れたことを深くお詫びいたします。こうばるも石木川も何の被害もなかったので、どうぞご安心ください。

先ほど石木川まもり隊のフェイスブックページに、地元の石丸穂澄さんからの発信がありました。
https://www.facebook.com/ishikigawamamoritai/posts/1385011171697426?comment_id=1385089771689566

具体的なデータと写真を元にしっかり解説!

私もNKSS(長崎県河川砂防情報システム)で河川水位をリアルタイムで見ていたので、あまり心配はしていませんでしたが、当日、地元のTさんに電話すると、「大雨のおかげで工事も休み、座り込みも休み。おかげで溜まっていた片付けをしてるとこよ~」と明るい声が返ってきて、さらに安心しました。

一方、諫早市を流れる一級河川本明川では氾濫危険水位を超え、緊張が走りました。
大村市では5つの河川が氾濫し、田植えを終えたばかりの田んぼが土砂に埋没したり、ビニールハウスが押し流されたり、農家の方に大きな被害が出ました。それでも、県内には人的被害は1件もなく、不幸中の幸いでした。

今回の豪雨で、九州全体では死者57人、心肺停止4人、行方不明16人の犠牲者が出ています。(7月8日23時現在)心からお悔やみ申し上げます。

熊本県人吉市:7月4日11時49分(毎日新聞)

中でも、55人の死者が出ている熊本県では、知事への批判の声も上がっているようです。

<関東学院大学名誉教授(河川工学)の宮村忠氏は今回の氾濫で『ダムがあれば』と考えた人は当時の反対派にも少なくないのではないか。問題は記録的な豪雨だけでなく、豪雨に備える体制にもあったと指摘する。>

しかし蒲島知事は、「ダムに寄らない治水をさらに検討する」と述べたそうです。
https://digital.asahi.com/articles/photo/AS20200706004850.html

心から応援し、期待したいと思います。

理由はダムのメリットはあまりにも小さく、デメリットは大きいから。

〇近年の豪雨災害をもたらしているものは線状降水帯です。その帯が発生する位置により雨量が全く違います。今回の豪雨で私たちは実感しました。
例えば、ダムの上流でたくさん降れば堰き止めて下流の氾濫防止に役立ちますが、ダムの下流で豪雨となってもその水量を減らすことはできません。

これは雨雲の動きを記録した図で、一時的なものですが、地図の「川棚町」の文字の辺りが、川棚川の支流の石木川が流れているところで、「町」の字の右側辺りが石木ダム建設予定地で、この時の雨量は5mm/h前後。ということはそれほどの雨ではありません。
そして、その上の波佐見町のオレンジの部分が川棚川の上流になりますが、こちらは50mm/h前後で、土砂降りの大雨です。仮に、この位置に雨雲がずっと停滞したらどうなるか?石木ダムができていたとしても、川棚川本流の洪水を防ぐことはできません。

〇逆にダムの上流で大雨が続くとダムの決壊を防ぐため緊急放流せざるを得ず、その結果下流域にさらに多くの水量が押し寄せ被害が甚大になる可能性があります。2年前の愛媛県の場合がそうでした。肱川の野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流により、ダム下流で凄まじい氾濫が起き、8人が死亡しました。あの教訓を忘れないで!と遺族は訴えています。

〇また、ダムで防げる水の量は限られています。「異常気象」が異常でなくなり、「想定外」の現象が頻発している現実を直視すべきです。自然の猛威を人間が抑え込めるなどという勘違いは改め、自然に寄り添った対策に転換すべきです。地形や水の流れを見れば、どこが危険なのか専門家は一目瞭然です。だから、ハザードマップと被害は一致しています。そんな危険なところには昔は人は住まなかったのに、いつのまにか住宅が立ち並び、老人ホームやホテルができたり…そういうことを見直すだけで被害はずいぶん減るはずです。

〇そして、自然と共存する道こそ、自然災害を減らすのです。ダムは山を削り森を破壊して建設されます。里山を守ってきた人々を追い出せば、里山は荒れ、保水力を失います。治水対策としてダムを建設しても、長い目で見れば、水害の要因になってしまうのです。
山形県のホームページには、このような投稿が紹介されていました。http://www.pref.yamagata.jp/pickup/opinion/search/publicfolder201402181771135805/publicfolder201406193848637201/12170001.html

「治山と治水は、非常に大切です。なぜなら、水を守ることは、生命を維持し、農業を営むために欠かせない事業だからです。山の崩壊による土砂災害や川の氾濫を防ぐためには、自然森林の再生しかありません。自然の保水力にかなわないからです。人間は、山と川は生命の源であると一時も忘れてはならないと思います」

小さな小さな石木川ですが、どんなに大雨が降ってもこれまで家屋への被害など一度もなかったそうです。それはきっと川のすぐそばに家を建てなかったこと、そして、先祖代々受け継いだ田んぼを守り大切に耕してこられたからではないでしょうか。

長崎県も、本物の治水対策とはなにか、そろそろ「いしきをかえ」ませんか?
そして、本気で「ダムに寄らない治水」を、こうばる住民や県民と共に考えていきましょう!