石木ダム工事差止控訴審の3回目。
門前集会で、控訴人を代表して挨拶したのは、「こうばる」住民の岩本宏之さん。
いつも挨拶する岩下和雄さんの姿はありません。岩下さんだけでなく、この裁判の当事者である「こうばる」の皆さんの顔が見えない・・。皆さんは今頃、石木ダム工事の現場で抗議行動の真最中だから。
岩本さん:いつものように貸切バスで皆と来る予定でしたが、今日は私1人でやってきました。最近、工事のやり方が強引になってきたので、抗議を休むわけにはいかないのです。
以前は夕方業者が帰るのを確認して自分たちも引き上げていましたが、それを監視カメラで確認して、業者が戻ってきてまた作業するようになったので、最近は三交代で朝から晩まで抗議を続けています。
昨日も早朝の6時から工事を始めていました。
今日は意見陳述の機会を頂きましたので、この苦しい現状を訴えたいと思います。
皆様のご支援よろしくお願いします。
大きな拍手の後、皆で集合写真を撮りました。
今日も福岡市民の皆さんがたくさん集まって下さいました!
さて今回は3回目の審理ですが、裁判長が交代したので、こちらからあらためて意見陳述をおこないました。
・権利性について鍋島弁護士の意見陳述 陳述要旨(鍋島弁護士)
・利水について高橋弁護士の意見陳述 陳述要旨(高橋弁護士)
・治水について緒方弁護士の意見陳述 陳述要旨(緒方弁護士)
・住民の想いについて岩本さんの意見陳述 陳述要旨(岩本宏之さん)
・裁判所に求めることについて平山弁護士の意見陳述 陳述要旨(平山弁護士)
その後、裁判長は今後の予定について検討。まずは控訴人に意見を求めました。
高橋弁護士:私たちは県と佐世保市の反論を待って、さらなる反論をしたいと思っていたが、締め切りをかなり過ぎて提出されたため、できなかった。反論の機会を与えて頂きたい。
県の代理人弁護士:控訴人の主張はこれまでに十分尽くされている。前回私たちが出した反論も特に新しい内容ではない。反論の必要はない。今日で結審して頂きたい。
佐世保市の代理人弁護士:県と同じである。結審して頂きたい。
しかし、新裁判長(これまでの矢尾渉裁判長から、森富義明裁判長に交代)は、「提出が遅れたことは事実なので、1回だけ控訴人に反論の機会を与える」と述べ、協議の結果、次回期日は、6月18日14時半~となりました。
今回の報告集会会場は、福岡高裁から2~3分の場所にある福岡市科学館6階のサイエンスホールです。
たいへん広いのでソーシャルディスタンスが十分確保でき、コロナ禍でも安心でした。
初めに、これまでの経過と今日の法廷でのやり取りについて、いつものように平山弁護士からの報告があり、その後、陳述された5人の方からのコメントが続きました。
鍋島弁護士:土地収用法自体に問題がある。同法で保障するのは財産的価値だけであり、平穏生活権や人格権など憲法で保障されている基本的人権が保障されていない。一審では権利性が無いとして棄却されているので、控訴審では、この権利性について丁寧に訴えていきたい。
高橋弁護士:私が強調したかったのは、佐世保市の水需要予測が万が一の災害に備えて過大に設定されていること。いつ起きるかわからない天災に備えて13世帯を追い出すというのはおかしいでしょう?ということ。裁判官以外の皆さんにも、そこをしっかり伝えたい。
緒方弁護士:石木ダムがあっても治水効果は少ないだけでなく、想定外の雨が降ったときのリスクを控訴審では訴えてきた。貯水量には限りがあるので、それ以上の雨量の場合は、一気に4倍以上の水を下流に流すことになる。
治水をダムに頼るのは、もう古い考え方ではないか。欧米ではダムの撤去が進んでいるが、日本ではまだ1つしか実現していない。今後の目指すべき方向として皆さんにも共有して頂けたら嬉しい。
平山弁護士:この訴訟の取りまとめ的な話をさせてもらった。せっかくの機会なので裁判官の心に何か爪痕のようなものを残したかった。
1つは、取消訴訟との違い。事業認定取消訴訟で最高裁の判断が示されたが、それとこの工事差止訴訟は無関係であることを訴えた。
もう1つは、住民の想い。先日の人権交流集会での発言や記録映像を通して、半世紀に亘る闘いの重みをあらためて知った。今この時も説明要求運動のため、自分達が起こした裁判の場に出てくることもできなくなっている。この現実を裁判官にしっかり伝えたかった。少しでも裁判官の心に残っていることを願う。
岩本宏之さん:昭和37年(1962年)に県が町にも地元にも断りなく、業者に委託して測量調査を実施した。その時私はアルバイトとして働いたが、バイト料は1日500円だった。当時の相場は300円だったので、よく覚えているが、このように私は60年近くも石木ダム問題に関わってきている。
昭和46年12月、予備調査の説明会のとき、県は石木ダムの目的は利水であり、治水は国から補助金をもらうために加えたと説明。なぜ水が必要なのかとの問いには、「針尾の工業団地(約150ha)を造成したが水が無いので企業が来ない。企業が集まれば一日22,000㌧の水が必要になる。また、人口が増えれば市民の水需要も増える」と説明した。しかし、そこは今ハウステンボスとなり、一日3,000㌧もあれば十分。人口も当時の予測よりずいぶん減っている。石木ダムはもう必要ないはず。
いまの現地の状況だが、付け替え道路の第1工区を完成させようと県は工事を強行している。我々が座りこんでいる140m区間もだんだん狭められてきている。
そして、この区間が終わったら、付け替え道路工事はまだたくさん残っているのに、県は本体工事に着工すると言う。我々への脅しだと思う。しかし、私たちが出て行くことは無い。行政代執行されるまで頑張って住み続ける。
毎日30~40名が座りこんで頑張っている。県内だけでなく、佐賀や福岡からも応援に来てもらって、本当に助かっている。今後ともご支援をよろしくお願いしたい。(会場から大きな拍手)
質疑と意見交換
福岡市民:石木ダムの治水面で受益者となる川棚川下流域の町民の声が聞こえてこないが、皆さんはどう思っておられるのか?
岩本さん:栄町など過去に被害のあったところは堤防より低い地域で、大雨が降ると水が溜まる。その水で浸水被害が起きている。いわゆる内水被害であり、川の水が溢れてということではないので石木ダムとは関係ない。行政は内水対策を進めるべき。しかし、町民の多くは口を開こうとしない。推進団体もあるが自主的に動いているようには見えない。
N新聞社のM記者:私も下流域に住んでいるが、周りの方に石木ダムについて聞いても皆さん遠慮する。こうばるに知り合いもいるし、とてもじゃないけどダム造ってくれとは言えないが、水害対策はしてほしい、と言われる。
大雨が降った時に川の水位は低いのに、下水がボコボコ溢れそうになっていることはよくある。内水対策はやってほしいと私も思う。それは石木ダムでは防げないのだが、町民の方の中にはダムができたらそれも防げると思っている人は多くいるようだ。
佐賀県民:国土交通省は流域治水などまともなプロジェクトもやっているのに、なぜここでは石木ダムに拘るのか?佐世保に米軍施設があるからではないか?
福岡市民:米軍基地はあるが、それほど使うわけではないだろう。国交省の治水対策は、ダムなど建造物を造ることが主流。田んぼダムは農水省がやっていること。省庁横断で治水を考えることが大事。またダムの危険性を下流域の人にもっと伝えるべきではないか。
緒方弁護士:石木ダムの危険性については、この問題に関わっている人の共通認識には至っていないので、今そこを強調するべきではないだろう。また、国交省の言う流域治水はダムを除外するものではない。ダムだけでなく他の方法も考えましょうという程度。彼らがやりたいのは土木工事。総合治水は形だけだと思う。
佐世保市民:佐世保の過大な水需要予測の要因は様々あげられるが、その中で米軍の水需要がことさら大きな要因となってはいない。予測値として、過去の最大値を持ってきたりしてはいるが、全体から見れば要因としては小さい。
福岡市民:裁判長が代わったことにより、新たな証人申請や現地視察などができないか?
高橋弁護士:難しいと思う。裁判長の経歴から考えても、また、次回が結審と聞こえるような言い方だったので、実現は中々難しい。
馬奈木弁護団長:確かに可能性は少ないが、証人や現地視察などを求める努力はすべきと思う。裁判界全体の流れを見ると必ずしも全てが悪いわけではない。原発訴訟では、国を負けさせた判決も有り、しかも、その裁判官が栄転した事例もある。
ダムをなぜ造るのか。金儲けのためである。長崎県や佐世保市は誰を儲けさせたいのか?我々はそこも見ていかねばならない。
とんでもない話ですねー
誰かの金儲けのために13世帯を犠牲にするなんて!
13世帯の家も田畑も取り上げて、人々を追い出し、
先祖の汗と涙が浸み込んだ豊かな大地を水底へ沈める・・・
それは同時に、集落の歴史や文化も水泡に帰してしまうこと。
エリートと評判の新裁判長。
彼が本物のエリートなら、そのような大罪を長崎県や佐世保市に犯させないでほしい。弱い民を救ってほしい。(‘◇’)ゞ