いつもより少ない座り込みの現場 雨の中、反対住民が記者会見
石木川沿いの工事現場で報道陣の取材に応じる住民たち
雨の中、傘を差しての記者会見が開かれた。18日午前、長崎県川棚町の石木ダム建設工事現場。
「工事を即時中断し、穏やかな話し合いのできる環境をつくってほしい」。水没予定地に暮らす岩下和雄さん(74)ら反対住民はこの日、知事との話し合いに向けた事前協議を求める県に対し、こう回答した。岩下さんは集まった報道陣を前に「住民が協議を拒否したと受け取られるのは不本意。環境が整えば話し合いに応じたい」と、住民側の思いを丁寧に説明した。
事前協議は5月下旬に県が申し入れたが、住民側は「工事の中断」を要求した。県は今月11日に改めて協議開催を提案する文書を住民側に送っていた。
住民側の回答を受け、県は19日に開催を予定していた協議の見送りを決定。今後の対応については早急に検討するという。
かつて県は住民との話し合いに入るため、工事を中断したことがある。県道付け替え工事の進行を住民が阻止していた2017年8月、県は工事を止めて協議する場を設けた。
協議の場で、住民側は知事との面談を要望した。県は応じる姿勢を示したものの「工事の再開」も明言した。住民側は反発し、協議は物別れに終わった。協議のために工事が中断されたのは、わずか2週間あまりだった。
18日、福岡高裁に向かう住民や支援者もいた。県などを相手取った工事差し止め訴訟の控訴審で、意見陳述に臨んだのだ。
いつもより人数の少ない座り込みの現場。雨はしとしとと降り続いた。 (岩佐遼介)
反対住民 改めて「工事中断を」 長崎県、石木ダム事前協議見送り
https://nordot.app/778798665581264896
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没予定地の反対住民13世帯でつくる「石木ダム絶対反対同盟」は18日、建設予定地などで続ける抗議の座り込み現場で記者会見を開いた。中村法道知事との対話に向けて県が求めている19日の事前協議開催について「現状では穏やかな話し合いはできない」として先に工事を中断するよう改めて訴えた。これを受けて県は事前協議をいったん見送ることを決めた。
住民は現在、ダム建設に伴う付け替え県道の工事現場とダム本体建設予定地近くの2カ所で、月曜-土曜の早朝から午後6時ごろまで抗議活動を続けている。
県は5月下旬、対話の実現に向け条件面を詰める事前協議を提案したが、住民側は工事の即時中断を要求。これに対し県は6月19日の事前協議を求める一方で、工事は中断しない考えを伝えていた。
住民側は会見で、17日に県に送った文書について説明。それによると、住民側が(事前協議で)抗議現場を離れた場合も県が「工事は粛々と進める」姿勢を示したといい、「話し合いを求める言動と思えず、怒りと不信感が増すばかりだ」と主張。その上で「工事を即時中断して穏やかな環境を作り、知事と直接話し合いができるようにお願いします」と求めた。
会見に出席した岩下和雄さん(74)は「私たちは話し合いを拒否していない。一時的にでも工事をストップして話し合いをしたい」と強調した。2017年8月にも、知事との対話に向けた協議を開いたが、県が付け替え県道の工事再開を譲らず決裂した経緯に触れ「県側が住民に無理な条件を提示し、話し合いができない状況をつくるのが理解できない」と訴えた。
一方、県は事前協議で工事の中断期間や場所などの条件面を詰めたい考え。県河川課は「穏やかな環境で知事との話し合いを行うためにも、反対住民の方々に条件面の協議に応じていただきたい」としている。
住民との「事前協議」、隔たり埋まらず断念 石木ダム
(朝日新聞2021年6月19日 9時00分)https://digital.asahi.com/articles/ASP6L71R6P6LTOLB004.html
石木ダム本体が築かれる予定の現場で記者会見し、長崎県の対応を批判する住民たち=2021年6月18日午前10時10分、長崎県川棚町
長崎県川棚町で石木ダム建設を進める県と、予定地住民との間の「事前協議」は、双方の主張の隔たりが埋まらず、開催しないことになった。中村法道知事と住民との対話に向けて県が19日開催を住民に申し入れていたが、18日になって「調整がつかない」と判断し、見送りを発表した。2019年9月以来の中村知事と住民との直接対話は実現しなかった。
県は住民側と、19日に町内で双方5人程度による協議を模索してきた。だが、この間も建設現場には重機が搬入されるなどし、交渉に来た県の関係者は、協議予定の19日の工事についても「粛々と進める」と住民に説明。県の対応に不信感を募らせた住民は15日、全13戸で対応を協議し、事前協議よりも「静穏な環境での知事との直接協議」を求める方針を確認していた。
18日午前、住民は抗議の座りこみを続ける現地で記者会見した。「県は協議当日でさえ工事を中断できないと言う。それでは我々はここを離れられない」と批判し、逆に知事との直接の話し合いを求めた。(原口晋也、安斎耕一)
石木ダム反対住民 工事の即時中断を 改めて知事に要請 /長崎
(毎日新聞長崎版 2021/6/19)https://mainichi.jp/articles/20210619/ddl/k42/040/442000c
県と佐世保市が川棚町に建設を計画する石木ダムを巡り、水没予定地の住民でつくる「石木ダム建設絶対反対同盟」は18日、工事を即時中断して穏やかな話し合いができる環境を作るよう改めて求める文書を、中村法道知事宛てに送ったと明らかにした。
県は住民側に、知事と住民の事前協議の場を設けるよう再提案していたが、住民側の意向を受け、19日の実施を目指していた事前協議を見送ることを決めた。
同町川原地区で記者会見した住民の岩下和雄さん(74)は、工事現場でのやり取りで、県職員が「事前協議に参加して座り込む住民がいなくなれば、その間に工事を進める」と発言したことを問題視し、「不信感が募るばかりで話し合いをする気持ちになっていない」と説明した。【綿貫洋】
〔長崎版〕
石木ダム建設計画 工事差し止め高裁結審 判決は10月21日 /長崎
(毎日新聞長崎版 2021/6/19)https://mainichi.jp/articles/20210619/ddl/k42/040/449000c
川棚町で建設計画が進む石木ダムを巡り、水没予定地の住民らが建設主体の県と佐世保市に工事差し止めを求めた控訴審の弁論が18日、福岡高裁(森冨義明裁判長)で開かれ、住民側が「重大な人権侵害となるダム建設は不要」と改めて訴えて結審した。県と市側は控訴棄却を求めており、判決は10月21日に言い渡される。
原告で住民の石丸勇さんは、1972年に県が住民らと交わした覚書は、建設に地元の同意が必要となっていると意見陳述。これを無視して手続きが進められ、「封建時代のような県政が13戸を水没させようとしている」と批判した。
住民側は故郷を奪われ人格権の侵害だと主張しているが、1審の長崎地裁佐世保支部は2020年3月、「差し止めを求めうる明確な実態を有しない」として請求を棄却した。【平塚雄太】
〔長崎版〕