3つの『声』

これは6月18日付、長崎新聞『声』欄に掲載された投稿記事です。

石木ダム事業について、「容認派と反対派の専門家を公開で議論させ、県民の判断を求めてはどうか」と提言し、さらに、
そのためには「工事をいったん中止」することを県に提案しておられます。

投稿されたのは、京都大学名誉教授の今本博健氏。河川工学の専門家です。
今本先生は、この提案の前に、2つの投稿記事に対するご自身の見解を述べられています。その2つの記事とはこちらです。

5月21日付、石木ダム建設予定地のある川棚町にお住いの医師の方からの投稿です。

6月10日付、石木ダム建設事業者である長崎県の河川課長からの投稿(お答え)です。

私はどちらの記事も掲載された日に読んでいましたが、
河川課長の「お答え」を読んだ時は、なんだか国会における政府答弁を聞いているような、モヤモヤした気分になりました。

川棚町民として石木ダムに深い関心を持っている方の、素朴で的を射た疑問に対し、河川課長は肝心なことは答えず、石木ダムの必要性を強調しています。

羽田野氏の声
・石木川と川棚川の水量の差にびっくり!
・こんなに水量の少ない石木川にダムを造っても、川棚川の治水効果は小さいのでは?
・それなら川棚川の堤防を嵩上げした方が、治水効果も経済効果も大きいのでは?
・専門家のご意見を伺いたい

河川課長の声(お答え)
・計画以上の大雨が降ると、堤防の嵩上げした分、被害が大きくなる。
・大雨の時、ダムは川に流す水の量を調節できるので洪水被害を軽減する。
・川棚川の治水対策としては、石木ダムと河川改修の組み合わせが経済的にも有効。
・気候変動で自然災害が増えている。一日も早く石木ダムを完成させねば・・。

このように要点をまとめてみると、河川課長の「お答え」がいかに不誠実な答えであるかがよくわかります。

・羽田野氏の疑問(川棚川と石木川の水量の差、石木ダムの治水効果、堤防の嵩上げとの比較など)について、正面から答えていない。
・「計画以上の大雨」が降った場合の堤防嵩上げの被害を述べながら、ダムの場合は「大雨の時」のことしか述べていない。ダムも「計画以上の大雨」が降れば大きなリスクを伴う。ダムからの放流により何人もの命が奪われた事例さえあるのに。

そもそも羽田野氏は「専門家」の意見を聞きたいと書かれていました。
事業者である県に回答を求めていたわけではありません。
県の主張は、広報誌や石木ダム建設事務所が発行している「水のわ」で、川棚町民は熟知しておられるはずです。

そう思っていたところに、まさに専門家の方からの投稿が掲載され、びっくりしました。
投稿された今本先生は河川工学の専門家として有名な方です。

今本先生の声
・嵩上げは決壊した場合の被害が大きいが、補強すれば避けることができる。
・ダムは計画を超える雨には役に立たず、地域社会や自然環境を破壊する。
・川棚川水系の治水計画は30年に1度が妥当であり、ダムは不要。
・県は容認派と反対派の専門家を公開で議論させ、県民の判断を求めては?

ということで、今本先生も石木ダムは不要とのお考えですが、ここでは不要と決めつけるのではなく、議論することを提案されました。

それはとても大事なことだし、実現されることを私も願っています。

なぜなら、羽田野氏のように石木ダムについて、いろいろ疑問を持っている川棚町民、佐世保市民、長崎県民も多いはず。
事業費を負担する県民の理解は何より大切です。
地元住民はもちろん、それ以外の県民の理解も得るためにも、公開の場での専門家の議論は必要です。
専門家の方には、なるべく素人にもわかるような説明をお願いして・・・

政策は合意のもとに進められるべきものです。
公共事業とは名ばかりで、住民や県民が望まない公共事業なら、それは見直されるべきです。
そのような事業に税金を注ぎ込めるほど長崎県の財政は豊かではありません。

振り返ってみると、私たちは河川課の方からの説明(石木ダムの必要性)はたくさん聴いてきましたが、専門家による石木ダムの必要論を直接聴いたことがありません。
専門家といえば、不要論ばかりでした。
もしかしたら、私たちの情報も偏っているかもしれませんね。
石木ダムが必要という専門家の説明を聞けば納得できるかも?

ですから、県は県民の理解を得るために、ぜひ、専門家によるダムの必要性についての討論会を開いてください!