「清流をまもる 未来をまもる」報告 第2弾

3.23「清流をまもる 未来をまもる」集会報告、第2弾。

この集会、そもそもは国会議員連盟「公共事業チェックとグリーンインフラを進める会」の企画によるものでした。

同議連は、公共事業の問題点をチェックすると同時に、グリーンインフラを強化しようと、昨年12月に誕生しました。最初の視察地として、選ばれたのが石木ダムと川辺川ダムです。

先日は講演会についてのみ報告しましたが、今日は、議員の皆さんからのお話や、地元からのメッセージ、記者団からの質疑応答等について、ご報告します。

 

プログラム順にいくと、オープニングは、6年前こうばるを訪れた加藤登紀子さんからのメッセージでした。

戦後の日本は、大きなお金と何十年という時間をかけて、出来上がったときにはもう無用の長物になってるようなものをたくさん作ってきました。しかも、それを作ることによって失うものはとても大きい。そういうダムを作っていいのかということを、石木ダムを通して、日本中の人に訴えほしい。気候変動などいろんな角度から地球の状況を受け止めながら、一緒に、いい未来を築いていくための議論を進めていただきたい。

また機会がありましたら、こうばる地区で皆さん一緒に楽しい語らいができるように、そしてホタルも一緒に見られるように願っています。

 

続いて、地元住民の岩下和雄さん川棚町の道路沿いに「石木ダムは川棚町の礎」(町の発展には石木ダムが必要)という看板が立っています。そうでしょうか?自然を壊してダムを造れば、上流地域は過疎地になり人口減少が加速します。

一方、ダム建設予定地には多くの空き地がある。宅地にも田んぼにも畑にもできる。今の若い人の中には田舎に住みたいという人も多くいる。また、広い空き地を利用して企業を誘致すれば職場も増える。ダムを造らなければ、若者や企業を呼び込むことができるのです。

将来の川棚町の発展と未来の子どもたちのために、豊かな自然を活かすまちづくりを進めてもらいたい。そのためには多くの声が必要です。皆さんの声を県に伝えてもらいたい。よろしくお願いします。

この後3人の講師による講演が続き第1部は終了。

休憩時間には『川原のうた』の歌声が流れ、スクリーンには、こうばるの美しい風景のスライドショーが上映されました。

第2部の最初は、佐世保市民で石木川まもり隊の松本美智恵です。石木ダムの利水問題(佐世保市の水事情)について報告しました。

水需要は減り続けているのに、佐世保市(水道局)は常に渇水の危機を訴えています。昨年の1月もダム貯水率が50%台となり、3月まで渇水対策本部を設置して、市民に節水を呼びかけました。

しかし、調べてみると、50%台だったのは南部だけで、北部は常に80%台でした。

不足しているところに余裕有るところから水を供給できる、そのような融通システムを構築することです。

また、それでも足りないときには佐々川があります。県は、佐々川には水利権が張り付いていて流量に余裕は無いと言うのですが、調べてみると、その水利権の中には、ほとんど使われていないものや、既に返上されているものもあります

このような遊休水利権を水道用水に転用することで、お金も時間もかけずに、佐世保の「水源不足」は解消するのです。新たなダムなど要りません。

 

続いて、議員からの報告。6人の議員が登壇しました。

山田勝彦衆議院議員国交省も環境省もいま重視しているのはグリーンインフラ。人と自然が共生する生き方を尊重した公共事業を目指しています。にもかかわらず、50年以上も石木ダム建設に拘り続けている長崎県と佐世保市、おかしいんじゃないでしょうか。

昨年、国土交通委員会で石木ダム事業費について質問しました。建設費285億円のうち既に203億円が執行済みだと言う。本体工事は全く進んでいないのに、残り82億円でダムができますか?改めて事業費について検証すべきではないでしょうか。

今年は石木ダム再評価の年です。御用学者による一方的な評価に終わらないよう、民主主義の力で一緒にチェックしていこうではありませんか!

嘉田由紀子参議院議員昨日の国土交通委員会で、先ほどの今本先生の資料を使って質問しました。これでも石木ダム造るんですか?と。答は「長崎県が必要と言っているから必要です」と。ホタルやシーボルトの魚と共に、何百年も暮らしてきたこうばるの里を強制収用して、そこで暮らしている人々を追い出してしまっていいんですか?

いま日本の公共事業は四重苦です。1つ、温暖化等による災害の増加。2つ、老朽化。3つ、人口減少。4つ、財政難。佐世保市水道の耐震化率はわずか25%です。ダムを造っている場合ではありません!宮島市長の考えを変えるよう、皆さん、頑張っていきましょう!

野田国義参議院議員政治とお金の元凶は何か?止まらない公共工事にあります。私は国会議員になる前は、福岡県八女市の市長を4期やっていましたが、その前は道路族で有名な古賀誠さんの秘書をやっていた。私にもいろんな誘いがありました。皆さん、公共工事は利権です。いま問題になっているパーティ券、それを買うのは公共工事をしたい人たち。無駄な公共事業がなくならないのは、そこにある。

一方必要な公共工事もある。既に造られたものの維持管理です。老朽化対策にこれからどれくらい必要なのか?200兆円だそうです。それを30年間かけてやるとすれば、1年に約7兆円となる。国交省の予算はいま年間7兆円だ。本来は維持管理費だけで全て使い果たされるということ。無駄な公共事業は一刻も早く止めなければなりません!

堀江ひとみ県議会議員私は5期目で、17年間石木ダム反対を言い続けています。県議会には46名の議員がいますが、反対は17年前は私1人でした。今は3名が反対しています。諦めずに、石木ダムは止めようという声を広げていただきたいと思います。

今年は石木ダム再評価の年です。費用対効果、いわゆるB/Cは再評価の度に下がっています。先ほども山田議員が話されたように、事業費の増額は必至です。再評価の現状は、県が選出した委員により、県が提示する資料によって審議されます。あのようないい加減な資料で認められていくんです。ここをなんとか改革していけないか、皆さんと共に諦めずに頑張っていきたいと思います。

小田徳彰佐世保市議会議員佐世保市議会33名の議員中、私を含む3名が石木ダム予算に反対しています。その他の議員はみな賛成です。昨年末IRが不認定になりました(その結果、将来の水需要が減って石木ダムの必要性はより低くなった)が、「IRが無くなったからこそ石木ダムは是が非でも造らなければならない」と、わけのわからない発言をする議員もいます。(何が何でも石木ダム推進という雰囲気)

佐世保市の人口は毎年3000人ほど減り続けています。節水機器も普及し、水需要は減り続けているのに、水道局はその現実を認めようとしない。今年は石木ダム再評価の年です。石木ダムがいかに不合理な事業であるか、その世論を盛り上げるために微力を尽くしたい。共に頑張りましょう。

炭谷猛川棚町議会議員私は地元こうばる地区の住民で、2期目の町議です。1期目は1人で石木ダム反対を訴えていましたが、昨年の選挙で反対派の議員が1人増え、現在は2人で頑張っています。しかし、昨年は水田への土砂搬入、用水路の破壊など、県のやり方は横暴極まりないものがありました。

今年1月には13世帯の1人であり、同級生でもあった石丸キム子さんが亡くなりました。大事なときには、いつもきちんと発言する人でした。県の職員に対し「説明責任があるでしょ!」と抗議していた姿が今も心に残っています。

川棚町議14名中12名がダム推進ですが、みな不勉強で県の説明を鵜呑みにしているだけです。むしろ町民の方が分っているような気がします。そのような民意を大事にして、皆さんと共に頑張っていきたいと思います。

 

議員の報告が終わると、講師の3人に再び登壇していただき、9人揃ったところで、質問コーナーの時間です。

 

長崎新聞(佐﨑記者):治水について今本先生と宮本先生にお尋ねします。事業者に対して、どういった説明や資料提供を求めているのか教えていただきたい。

今本氏:治水は論理であるべきで、それには客観的なデータが必要です。ところが、長崎県は驚くほど何もしていない。これだけの事業をするには雨量や流量を当然測らなければならないが、それをやっていない。平時の流量観測をやっていた時期はあるようですが、洪水時の流量を測っていません。また、先ほど川棚川を見ましたが、あちこちに土砂が溜まっていた。洪水が来たら溢れてくれというようなものです。ダムを造るよりも川の整備をしなければならない。それを優先すべきです。

宮本氏:事業を始めるときには、まず雨量計を付けねばならない。当初それがなかったからと、他所のデータを使っています。また、ダムを造るような河川計画のときは、ポイントごとの流量観測は必須なんです。モデルを検証するためには、その実測データが必要で、それがないと検証できない。まずは、ちゃんと測るべきです。それをせずに、押し通すようなことはやってはいけない。公共事業においてそういう無茶なことが通るのは恐ろしい。今年は再評価があるとのことなので、最大の山場だと思うし、長崎県はそれに真摯に取り組んでほしい。おそらく県の職員の中にも心に痛みを感じている人がいっぱいいると思う。その人たちが楽になるためにも、堂々と実態を把握した上で、県のトップには英断をくだして欲しいと思います。

次の記者が質問しようとしたとき、その前に、今本先生が宮本氏にマイクを向けた。

今本氏:宮本さんに聞きたい。貴方は若い頃こういうダムの査定をしてきたよね。いま、その立場だったら、このダムをどう査定しますか?

講師からの質問に苦笑いしながらも宮本氏はこう答えた。

宮本氏:私は30代の頃、毎年50~100本のダム計画を審査して、大蔵省に予算要求する、そんな仕事をしていました。だから、そういう計画の作り方は一応分っています。その私が、いま、長崎県から石木ダム計画書を持って来られたら、あの流域雨量の出し方を見ただけで、「長崎に帰ってください」と言いますよ。しかも、流量観測もしていないと言われたら、私ふだんは怒らないタイプなんですけど「いいかげんにしてくれ」「顔を洗って出直してくれ」と言いますよ。

NBC(長):工期があと2年で、事業費が残り82億円というこの状態でできるものでしょうか?また、あの規模のダムの本体工事はどのくらいかかるものでしょうか?

宮本氏:あと何億円かかるなどとは言いにくいが、今日現場を見て感じたのは、左岸は付替道路工事などやってますが、右岸は手つかずの状態です。本来ダム建設は付替道路工事が全部終わってから本体工事に入るんですよ。付替道路自体、あと2年でも終わらないのではないかな?

また、いま本体のダムサイトでボーリング調査をやっている。それは本来ダムの大きさや形を決めるときにやっておくべきことなんですよ。それを今日やっている!地盤に不安がありやっているのかもしれませんが、そうであれば、地盤改良工事の費用も予定より大きくなると思います。

毎日新聞(綿貫):国会議員の3名の方にお尋ねします。石木ダムに関する覚書について、行政だけでなく司法の場でも無視されてきました。こういう状態は今後もずっと続くのか、政権が変われば司法も変わってくるでしょうか?

山田議員:もう変えんば!今の司法は自民党政権に忖度しています。県は、地元の理解無しには進めないと約束した覚書を反故にしたまま工事を進めている。こうばるの皆さんが納得できないのは当然です。知事は、こうばるの皆さんと話し合いたいと思うなら、あの覚書を反故にした反省と謝罪から入るべきです。

嘉田議員:日本は三権分立していない。司法が政権与党に忖度ばかりしています。なぜなら判検交流(裁判官である判事と役人である検察官が、互いの職務を経験しあうために行なっている人事交流)という仕組みがあるからです。定年間近な判事など特別な人を除いては、どうしても行政・政権与党に不利な判決は出せなくなってしまっています。政権が変われば、この制度を廃止して、本当の三権分立を実現したいと思っています。

野田議員:長期政権は腐敗するんです。もう、シャッフルして変えねば。そして、知事や市長を変える。そのことが大事です。

会場から:国会議員の方にお尋ねします。日本は独裁国家ではない、一応民主主義国家なのに、13世帯を強制的に追い出してダムを造っていいのでしょうか?

嘉田議員:国会質問で聞きました。人が住んでいる、耕している、そこから追い出してダムを造った事例はあるのか?と。答は「ありません」。人権侵害なんです。あんないい加減な計画で、そんな非人道的なことをさせてはいけません。国会議員として強く思っています。

会場から:見切り発車してしまった公共事業でも、途中で止めたような事例は、これまでに無いのでしょうか?

嘉田議員:滋賀県知事の時代に6つのダムを止めました。その時の論理を作ってくださったのが今日の講師の今本さんと宮本さんなんです。これはやはりおかしいと、ダムを止めるために泡沫候補として知事選に立候補しました。その私を滋賀県民選んでくれたんです。だから、皆さんもそういう候補を選べばいいのです。ダムを止められるのは首長です。民主主義の力で変えましょう!

と、盛り上がったところで、時間となりました。

最後に集会宣言文案が読み上げられ、満場の拍手をもって採択されました。
3.23集会宣言文

私たちは、この集会で3つの成果を得ました。

石木ダム計画を止めるための鍵🔑(論理)と、仲間(専門家や議員)と、チャンス(再評価)です。

この成果を一人でも多くの人と共有できるよう、よかったら拡散してください。

よろしくお願いします。