2024年度は石木ダム事業再評価の年であり、治水面での再評価は既に終了し、10月には長崎県から国土交通省に結果(事業継続)が報告されましたが、利水面での再評価は、これから佐世保市において始まります。
県の再評価は、あまりにもお座なりなものでした。
長崎県公共事業評価監視委員会(県委員会)は、県から示された対応方針(工期を7年延長し、事業費を1.5倍に増額し事業継続する)を、わずか2時間15分の審議時間(県による説明時間1時間21分+実質審議時間54分)で承認してしまったのです。
公金投入を135億円も増やし、工期延長も10回目という驚くべき方針が提示されたにもかかわらず、ほとんど議論らしい議論はありませんでした。つまり、結果有りき、県にお墨付きを与えるために開かれた委員会だったと言ったら、言い過ぎでしょうか?
佐世保で行なわれる再評価は、このようなものであってはいけない。
佐世保が負担する事業費の多くが水道事業会計から支出されています。これ以上の負担は水道会計を圧迫し、水道料金の値上げか、水道管の更新や施設の維持管理等やるべき対策費が削られる可能性が大であります。
これからの佐世保市にとって石木ダムが本当に必要なのか、あらゆるデータや資料と睨めっこして、じっくり審議してもらいたい。そして、そのデータ等の分析解釈は専門家でなければ難しいでしょう。ぜひ水道事業やダム事業の専門家の意見にも耳を傾けてほしい。形だけでなく、真剣で真摯な議論をしてほしい。
そのような思いから、1月9日、石木川まもり隊など合計7つの団体が、佐世保市や佐世保市上下水道経営検討委員会に対して要請書を提出しました。
要請書は全部で4つあり、宛先も提出団体もいろいろなので、整理しますと・・
A:6つの市民団体から佐世保市長と水道局長へ。要請書
B:6つの市民団体から「佐世保市上下水道経営検討委員会」へ。要請書
C:「市民による石木ダム再評価監視委員会」から「佐世保市上下水道経営検討委員会」へ。要請書
D:「石木ダム勉強会」から「佐世保市上下水道経営検討委員会」へ。要請書
AとBの要請事項は全く同じもので、再評価の審議を完全公開することや、専門家を招いて意見を聴いてほしいといった内容です。なぜ市と委員会と両方に送ったのか。それは・・
水道局長は12月議会で、再評価の審議にあたって専門家の意見を聴く必要は無いと答弁しましたが、審議のあり方を決めるのは委員自身であり、行政の意向で運営されるべきものではありません。それは国が定めた「再評価実施要領」に明記されていますし、また「佐世保市上下水道経営検討委員会条例」の第7条にも「必要に応じ委員以外の者に、会議への出席を求め、その意見若しくは説明を聴き、又は資料の提出を求めることができる」と書かれています。
過去の再評価委員会では委員から「行政側の資料に疑問を感じても、専門家ではない自分には反論が難しい」との意見も出されていました。このような声を参考に、委員会の委員自身がその必要性を感じていただきたいと思い、委員宛に送りました。
一方、委員会が専門家の招聘を求めたとき、実際に段取りをするのは水道局なので、やはり市側にも要請しておくべきだと考え、両方に提出しました。
Cは昨年7月に発足した委員会です。私たちは県に対し、専門家を招いてほしいと再三要請しましたが全く受け入れてもらえず、それならば…と、専門家の皆さんに呼びかけたところ、7名の方々の賛同をいただき、2名の公募委員と合わせて9名からなる委員会です。(プロフィール)
県に対しては、意見書を提出したり、説明を求めたりしていますが、今回、佐世保の再評価審議が始まる前に、経営検討委員会に対して要請書を送ることになりました。内容は水需要予測や保有水源、費用対効果の算出方法について、適切な情報公開と審議を求めています。
Dは、石木ダム勉強会が独自に経営検討委員会に送ったもので、ここには非常に重要な新たな情報が提供されています。(これについては、次回また詳しく報告します)
市長宛の要請書を秘書課長に手渡した後、記者会見を行い、各団体から要請書についての説明等行ないました。市民委員会からは副委員長の宮本博司さんがオンラインで参加してくださいました。
共同通信、長崎新聞、西日本新聞、毎日新聞、NHK、NBC、KTNの7社が参加し、4社が報道。NHKはNEWS WEBでも配信。
石木ダム建設の再評価を 市民団体が佐世保市長らに要望書提出|NHK 長崎県のニュース
記者の皆さんが多数集まってくださったのは良かったのですが、ただ1つ残念なことがありました。記者からの質問の中で、市民委員会の委員について「反対派ですよね」と確認する場面がありました。
それに対し宮本副委員長は「賛成反対以前に、事業の進め方がおかしい、事業計画に疑問点が多い。だから、それについてまずきちんと議論してもらいたい、ということです。反対派という立場で参加しているわけではありません」と明確に回答されました。
全くその通りだと思います。賛成派、反対派とレッテル貼りすることは、分断を生み、話し合いや歩み寄りを妨げることになります。
少なくとも再評価においては、記者の皆さんも先入観を捨て、資料や意見の中見に注目していただくよう、願っています。