こちらは、2018年9月に発行された「水道局だより臨時号」。
この古い取水バルブの写真、佐世保市民の方はご存じでは?広報誌や市政チャンネルで度々紹介されていた山の田ダムの錆び付いたバルブです。
このように佐世保のダムは古い。
→補修工事や堆積土砂の浚渫工事が必要。
→でも、今はできない。なぜなら、戦前のダムは図面が残っていない。
→元の地形が分らないのでダム湖を空にしなければ工事ができない。
→ダム湖を空にすると水源不足となり、給水に支障をきたす。
→石木ダムができれば、水源に余裕が生まれ工事ができる。
数年前から水道局は、このような説明に力を入れてきました。それは、「将来水需要が増えるので石木ダムが必要」という説明は、もう通用しなくなったからです。(水需要の実績値は減少の一途)
議会でも当時の谷本水道局長がこのように答弁しています。(2018年12月)
戦前のダムについては空襲時にダムの図面が焼失したと言われており、現在、詳しい図面が残されておらず、ダムがある場所のもともとの地形が不明でございます。どこまでが堆積土砂で、どこからがもともとの地盤であるかがわからないため、万が一地盤を損傷してしまいますと、そこから水が抜け、ダムに水がたまらなくなる可能性や、下流に何らかの被害が生じるおそれがございます。そのようなことから、一度ダムの水を空にして、地形や地質の調査を行ってから慎重に浚渫作業を行う必要がございます。
2023年1月、「佐世保の水源対策勉強会」に対する水道局事業部水道施設課長の回答も同様でした。
本市のダムのほとんどは戦前や終戦直後に建設されているため、もともとの地形やその地質状況が把握できていません。その中で経年的に堆砂が蓄積されているため、元の地形がわからない中、水を貯めた状態で重機による浚渫を行うと、貯水池沿いの地山の安全性が担保出来ません。そのため、ダムを空にして必要となる対策を施した上での堆砂の除去を検討しています。
ところが、その無いはずの図面が有った!のです。正確には、図面が掲載された資料を発見したのです。
その資料の表紙がこちらです。
佐世保市教育委員会が2016年に発行した山の田ダム(1908年竣工)の調査報告書で、ダム堰堤と取水塔の設計図でしょうか、細かな図面が表紙を飾っています。
裏表紙には、設計図の他に、部品(ボルト等)の個数や重さなどの一覧表も見えます。
本文には様々な図面が・・・
図版目次はこちら。
素人にはよく分らないので専門家に見ていただきました。
専門家A氏:すごい、大発見ですね。貯水池の元の地形は、図6-2と6-7でわかると思います。元の地形がわからないと貯水池の底に穴をあけてしまい水漏れするので浚渫できないというのはまったく理解できないです。現地に行ったとき、取水塔から取水された水をコントロールするバルブについて、昔のものはさび付いて動かないので新たなバルブで対応しているとの説明があったと思っていますので、取水設備の更新・改修が必要ということも理解できません。
専門家B氏:まずもって、図面が消失して存在しないということが嘘であるということが明らかになりましたね。この報告書にはかなり詳しい図面が載っているので、山の田ダムおよび水道施設の設計図がすべて揃っているものと思われます。また、図面があろうがなかろうが、ダムができる前の原地形を多少削ったところで、水漏れが起こることなどあり得ません。貯水池の水は地表の土砂で保っているのではなく、その下にある岩盤が水を止め、水漏れを防いでいます。ですので、後から溜った堆積土砂の下にある地山を少々削ったところで貯水池の水をためる機能に何の影響も及ぼしません。
お2人のコメントも含めて「石木ダム勉強会」で報告したところ、皆もびっくり!
え?どういうこと?
図面は焼失したというのは嘘だったの?
なぜ隠す必要があるの?水道局は浚渫工事をしたくない?
石木ダムが必要という根拠の一角が崩れるから?
あえて水道局の立場に立って代弁するなら、全部焼けてしまったというわけではないが、ほとんど残っていないという意味だった、のかもしれません。
こちらは「佐世保市水道局蔵」と書かれた図面です。
こちらは、おそらく裏表紙に書かれていた防衛省防衛研究所蔵の図面でしょう。
確かに佐世保市水道局蔵のものは掠れて見にくいですし、数字等が読み取れないのかもしれません。
しかし、防衛研究所には、明瞭な設計図等が多数保存されていたのです。それを佐世保市教育委員会が掲載しているのです。水道局が本気で山の田ダムの浚渫や補修改修をしたいと思うなら、防衛研究所から図面を入手すればいいではありませんか。
いずれにしても、図面は存在しているのです。この事実を知った私たちは、佐世保市民に伝えたいと思いました。どうすれば広く伝えることができるか話し合いました。
これまでの経験でチラシ配りなどではごく少数にしか伝えられないし、SNSに発信にしても信憑性を疑われるかもしれないし・・やはり、新聞テレビ等、報道機関に頼るのがいいのではないか。
記者の皆さんなら、広い人脈や知識を駆使して、あちこちに取材し、この資料の重要性や、これまでの水道局の説明との関係性など、適切に伝えてもらえるのではないか。
ちょうど再評価に関する要請書提出の件で1月9日に記者会見を予定していたので、その席で発表しよう、ということになりました。
ところが・・・
記者の皆さんはあまり驚くこともなく、質問も、これをなぜ経営検討委員会に送ったのかとか、水道局には確認したのかとか・・予想外の反応でした。案の定、当日や翌日のTV新聞で、この件を報じたところはありませんでした。
(1人だけ、この資料を貸してほしいと持ち帰った記者がいましたが)
そう言えば、宮本さんの講演で、県の嘘(川棚川流域に当時雨量計がなかったから佐世保のデータを使ったと説明していたが、実は雨量計は有った)が明らかになったときも、それを報じたのは1社だけでした。
私たちが考える「知るべき&知らせるべき情報」と、記者さんたちの考えるそれとは、かなりズレがあるようです。このズレは年々大きくなっているように感じるのは気のせいでしょうか?
だとしても、幸い今は誰もが発信できる時代です。
マスコミが伝えなければ、私たちで伝えるしかありません。
この図面発見!が重要な情報だと感じた方は、拡散していただければ有り難いです。
皆さんのご協力をお願いします。