「条例改正」は石木ダム実現のため?

昨日(6/25)午後、佐世保市議会都市整備委員会で【佐世保市上下水道事業経営検討委員会条例】の改正案、いえ、改悪案が提出されました。

●どこが改悪なのか?

第2条の所掌事務の中に「国土交通省所管公共事業の事業評価」を明記したことです。

●何故それが問題なのか?

国土交通省は長引く大型公共事業について、5年に1度の「事業再評価」を義務づけています。かつては必要だった事業でも、時の経過と共に社会情勢の変化により必要性が失われていないか?無駄な事業となっていないか?あるいは技術革新により新たな代替案が生まれていないか?見直し、場合によっては休止や中止の判断をするためです。

しかし、その判断は事業者自身ではなかなか決断が難しいので、その実施要領の中で

「再評価に当たって事業評価監視委員会を設置し、意見を聴き、その意見を尊重するものとする」と義務づけています。

ところが、佐世保市は前々回の再評価からは再評価監視委員会を設置せず、佐世保市上下水道事業経営検討委員会(略称=経営検討委員会)に諮問してきました。

この経営検討委員会は水道ビジョンの策定に大きく関わっていますが、そのビジョンには石木ダムの建設が不可欠で早期完成を目指すことが明記されているのです。

つまり、同委員会に諮問しても、結論は石木ダム事業「継続」しかあり得ない。「休止」や「中止」という選択肢はあり得ない。そんな委員会に諮問することはどう考えてもおかしいし、時間とお金の無駄だと思われます。

そこで私たち市民は、再評価制度の趣旨や目的に沿った評価監視委員会の設置を議会に請願したり、水道局に要請したりしてきました。

結果はいつも拒否でしたが、それでも公開の場で声を届け、行政の手法の間違いを指摘することはできました。

ところが、このように「公共事業の評価は経営検討委員会で審議する」と条例で制定すれば、それが錦の御旗となり、質そうとしても門前払いされます。

こうやって行政は自分たちの都合のいいように事を運んでいくものなんですね。

しかも、残念なことに、この条例案が提示されても、議員の中から異論は出ず、淡々と通過していきました。

佐世保市民として本当に情けなくなりました。

ところで、その経営検討委員会の6/9の議事要旨が水道局のHPに掲載されています。

https://www.city.sasebo.lg.jp/suidokyoku/suisou/documents/gijiyousi.pdf

とんでもない提案です。

どういうことかというと…

水道料金値上げについて水道局は、値上げ幅を2つ提示し、

①58%の値上げ=経営が安定するが市民の負担が大きい。

②28%の値上げ=市民の負担を小さくするため企業債の残高比率を今以上に増やし、上限を収入の600%とまでとする。

と説明しました。

つまり②案は今以上に借金に依存し、将来世代にツケを残そうとするやり方です。今でさえ500%を超えていて、同規模自治体の中では最悪レベルなのに…。

ちなみに長崎市の企業債残高比率はR5年度実績で約103%です。

もちろん、かと言って、58%値上げ案を支持しているわけではありません。無駄な事業費を削って支出を抑えるべきだと言いたいのです。

今回の値上げは、今後10年間に必要となる石木ダム関連事業費321億円を捻出するためでもあるのですから。

財政の健全化を目指すのが経営検討委員会の役目ではないかと思うのですが、このような委員に委ねていては佐世保市水道の未来は不安がいっぱい…

そして、このような委員会に石木ダム事業の再評価を委ねることは、どう考えても許されません!

来年度、佐世保市水道料金値上げ!

6月10日の長崎新聞社会面トップ記事の見出しは、佐世保市の「水道料金28%値上げ提案」でした。

https://www.nagasaki-np.co.jp/kijis/?kijiid=d4e536389de443bc9eddcf9ad3e703b8

昨年、石木ダム事業費が1.5倍に増額された時からいずれそうなるだろうとは思っていたので、ついに来たかという感じですが、具体的な上げ幅は全く予想できていませんでした。

記事によると、値上げ案が提案された佐世保市上下水道事業経営検討委員会では、「値上げ自体はやむを得ないが、上げ幅を抑える検討をするよう」水道局に要請したそうです。

しかし、値上げ案の資料を読んでみると、

https://www.city.sasebo.lg.jp/suidokyoku/suisou/documents/zaiseikeikaku_honnpen.pdf

標準的な事業経営を目指すなら58%の値上げが必要で、しかしそれでは今の世代への負担が大きいので、企業債を目一杯活用し(=借金を増やし)て、なんとか28%に押さえる案を提示したようです。

また、新聞記事によると、「10年後には現行から2倍近くに値上げする必要があるとのシミュレーション結果も出て」いるとのこと、恐ろしや~

現行の水道料金はというと・・・既に全国平均に比べかなり高いのです。

総務省による調査(水道料金地域別価格物価ランキング)によると、2025年4月時点で、佐世保市は全国81都市(都道府県所在地+人口15万人以上の市)の中で第3位の高さでした。

https://www.jpmarket-conditions.com/3800/?page=ranking

81都市の平均は2,865円で、佐世保市は4,195円。

1位は青森県の八戸市の4,961円ですが、佐世保市が28%値上げすれば5,370円となり、ダントツ1位です。

なぜ今それほど値上げしなければならないのでしょう?

佐世保市の説明はこうです。

老朽化したダムや浄水場、水道管など施設の更新、補修は待った無しの状況で、そのための事業費として今後10年間に959億円が必要となるが、水道会計の現状はとても厳しく、今年度予算では経常収支比率が96.19%、つまり「赤字になる見通し」である。

事業費捻出のためには料金値上げは避けられない。

では、いくら上げればいいのか?

標準的な経営を目指す(企業債残高比率を400%に押さえて借金を減らす)方針でいけば、水道料金は58%増となるが、それではあまりにも市民への負担が大きいので、
企業債の比率を600%までとする(今まで以上に借金を増やす)方針でいけば28%増となる。水道局としては市民負担の平準化と最小化を優先して、28%案でいきたい。

この説明資料を見る限り、値上げ止む無しか・・28%に押さえてくれてありがとう~みたいな気にさせられそうですが、よくよく考えてみましょう。

企業債残高=借金が、今でもかなり多いのに、給水収益の600%まで依存を拡大するということは、今後は借金返済に追われるということです。これまでは異常な低金利が続いていましたが、物価高に転じた今、金利の上昇は必至で、ますます経営悪化に繋がるのではないでしょうか。

そうなったときは、一般会計から補填する?でも、それは税金であり、やはり市民の負担です。

あるいは民営化しようとするかも…?それは絶対に止めてほしい。必要不可欠なライフラインはあくまでも公営であるべきです。市バスが民営化された結果、減便されたり路線が廃止されたり…そのデメリットを私たちはいま痛感しています。

では、58%値上げ案を支持する?いえいえ、そもそも、今後10年間に959億円が必要だという、その数字の見直しこそ必要です。

水道会計が赤字に転落しようとしているのは、料金収入が減り続けているからです。
料金収入が減っているのは、水需要が減り続けているからです。
水需要が減っているのは、人口が減り続けているからです。

今後も人口は減り続けるのに、今さら新たなダムが必要でしょうか?

借金まみれになって、次世代にツケを押しつけて、そこまでして本当にダムが必要なのか、今こそ私たち市民一人一人が真剣に考えましょう。

先日、ダムの専門家の方がおっしゃっていました。

全国的にいま水道事業は経営が厳しくなっている。人口減少と水道管の老朽化で収支のバランスが取れなくなったから。そんな中で、新しくダムを造って水源確保しようとしている自治体は佐世保だけではないだろうか。

過去の高度成長の時は水不足だったからダムによる水源開発の計画がたくさん有ったが、人口減少で水需要が減り始めてほとんどの自治体は撤退した。撤退できずにダムが完成した自治体のいくつかは、一滴も水を取水せず管理費だけ払っていると。

未だにダムにしがみついている佐世保は異常であると。

長い間そこに住み続けていると、その異常さになかなか気付かなくなるものですよね。ダムにしがみついているのは市だけでなく、私たち市民も同じです。公営企業としての佐世保市水道の未来は私たち市民の問題。当事者として、料金値上げ問題を今後も注視していきたいと思います。