石木ダム問題の今

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工事差止訴訟 270人が上告



川原住民の皆さんと支援者計270人は、10月21日の石木ダム工事差止控訴審判決を不服として、最高裁に上告しました。

正確には10月29日(金)付の上告申立書が11月1日(月)に福岡高裁へ届いたということで、最高裁に届くのはまだまだ先のことです。

一審、二審と負け続け、最高裁がその判決をひっくり返してくれる可能性はかなり小さいだろうという現実は受け止めながら、それでも私たちは上告しました。

それは、泣き寝入りしたくないから。憲法に保障された私たちの人権を守るためには、人権侵害されている当事者と、それを間近で感じている者が声をあげ訴え続けなければ、人権侵害が許されてしまうから。

また、諦めたくないから。もう1つの石木ダム訴訟(事業認定取消訴訟)のように今回も最高裁は上告を退けるかもしれない。それでも、最高裁が受理する可能性がゼロではない以上、私たちは諦めない。最後まで可能性を追い続けます。

諦めないことの大切さを控訴審判決が教えてくれたました。

法廷の内外で私たちは、覚書について声をあげてきました。その声が判決文の中で活かされていたのです。今日は、その声をご紹介します。

その1.
2021年6月18日、石木ダム工事差止控訴審で地元の石丸勇さんが意見陳述。その中で石丸さんはこう述べています。

「思えば、石木ダム建設計画は、長崎県が当初から県民と住民をだまし続けながら進めて来た事業だったのです。それは石木ダムの歴史からも明らかです。
事の始まりは、1962年に地元や川棚町に無断で現地調査と測量を行いました。
1972年にはダム建設のための予備調査を地元に依頼し、「予備調査はダム建設に直接つながらない」と説明しながら、地元住民が不安と不満を表すと「地元の了解なしではダムは造らない」「一人でも反対があるとダムは造らない」などと言葉巧みに住民をなだめました。「予備調査の結果、建設の必要が生じたときは、改めて書面による同意を受けた後着手する」旨の「覚書」を交わして住民を信用させ地元を予備調査に同意させたのです。時の権力者は長崎県知事久保勘一、住民説得に自信があったのでしょう。「覚書」の精神は守られるはずでした。」

しかし、その後の経緯は、次の通り。
1982年 県警機動隊を導入しての強制測量。(高田勇知事)
2009年 強制収用に道を開く事業認定申請。(金子原二郎知事)
2015年 4世帯の農地を強制収用。(中村法道知事)
2019年 川原住民の全ての土地と家屋を強制収用(同上)

49年前の久保知事が住民と交わした覚書は、本人を含む4人の知事全てが無視をして、事業計画を強引に前に進めてきたのです。
長崎県政には、「約束を守る」というごく当たり前のモラルが欠如しているようです。

その2.
10月の控訴審判決に向けて、私たちは8月からハガキ運動に取り組みました。

何千通というハガキが福岡高裁に届いたはずです。中には、ひとこと欄にこんなことを書きましたよ!と知らせてくださる方もいました。
その中のお1人、福岡市のOさんは一言欄にこう書いて送ったそうです。

「こうばるの皆さんのふるさとと暮らしを守ってください。住民との覚書を反故にして工事を強行する長崎県の姿勢は、決して許されるものではありません。一刻も早い工事差止を切に願います。」

佐世保市のMさんも、こう書いて投函したそうです。

「県営の石木ダムは県民のために造られるはずです。住民=県民の信頼を裏切り、覚書違反のまま建設を進めるなら、それは公共事業とは言えません。まずは約束を守り住民と話し合う、そのためにも工事の差止が必要です」

その3.
ハガキは個人によるメッセージですが、公正な判決を求める声は各団体からもあがりました。その数72団体。要請書送付団体
その中には、やはり、覚書について言及している要請文もありました。
要請書(石木川の清流とホタルを守る市民の会)

「…という覚書を締結しています。しかし、今日においても、長崎県はこの覚書を無視し、約束を守っていない。さらに、中村長崎県知事は、このまま工事を進め家屋等の行政代執行も排除しないと明言していますが、現憲法下において、家族が居住する土地・家屋を行政代執行した例はありません。これを実行するとなると…」

このように、いろんな人が、覚書を無視し続ける県のやり方は許せないという想いを声に出し始めました。それがきっと裁判官に届いたのだと思います。

司法にしろ行政にしろ、弱き者の声はなかなか届きにくい。
その現実に慣らされた私たちは諦めがちになりますが、やはり、諦めてはいけない。

「約束は守りなさい」という当たり前のことを、言い続けていいんだ、言い続けるべきなんだと、今回の判決文を読んで感じました。

そして、覚書には触れていませんが、裁判官の良心に響いたであろうと思われるメッセージもいくつもありました。
裁判官だけでなく、私たち自身の心にも沁みました。その一部をご紹介します。

要請書(長崎高等学校教職員組合)
要請書(言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会)
要請書(よみがえれ長良川実行委員会30団体)
要請書(八ッ場あしたの会)
要請書(ラムサール・ネットワーク日本)
要請書(水源開発問題全国連絡会)

ぜひご一読ください。

これらのメッセージに私たちは大きな勇気をいただきました。

今回の上告人は270人ですが、その後ろから沢山のエールが聞こえてくるようです。

私たちは皆さんとともに、最高裁へも公正な判断を求め続けます。

福岡高裁、初めて覚書に言及!

2021年10月21日(木)の昼下がり。
石木ダム工事差止控訴審判決の1時間前。

福岡高裁門前には、こんなに多くの市民が駆けつけてくれました。

いざ高裁へ。



14時30分。開廷

森冨義明裁判長:では、判決を言い渡します。

主文
1 本件各控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

わずか数秒で終わり。
結果は予想通りとはいえ、
このようなやり方に私たちの落胆と悔しさは倍加する。

判決理由の説明もなく、
先月申請した弁論再開への返答もなく、
ただ機械的に主文の2行を読み上げただけ。
冷たい。冷た過ぎる。

コロナ禍の今、これで開廷する意味があったのか?
リモートで十分ではないか。
いや、判決文の送付だけでも事足りる。
傍聴席には、はるばる岐阜県から飛行機に乗ってやってきた原告もいるというのに・・

そんなことを思いながら福岡高裁を後にし、すぐ近くの報告集会会場に向かいました。

報告集会では、まず初めに弁護団事務局の平山弁護士から、判決内容についての説明がありました。

控訴審判決文(写真)

平山弁護士:まず、弁論再開の申し立てについては今日まで何の返答もなかったし、今日も触れられなかった。

判決について一言で言えば、内容の薄いものだった。
実質17ページの判決文で、しかもほとんどが事実の羅列であり、高裁の判断が示されたのはわずか4ページ。それも私たちが主張した平穏生活権に対しては、「主観的」「抽象的」「不明確」などと評価し、工事差止の根拠とはならないとした。これは一審の判決とほぼ同じ。

ただ、私が着目したのは最後の部分。覚書についてこう書かれている。
「3郷は長崎県知事を信頼し、川棚町長の協力を確信して、本件覚書に調印することを約束・・・そうであるにもかかわらず、未だ、本件事業につき地元関係者の理解が得られるには至っていない・・・県を始めとする本件事業の起業者には、今後も、本件事業につき地元関係者の理解を得るよう努力することが求められる」と。

覚書の存在が判決を左右するものではないと言いながらも、わざわざ判決文に記述されている。個人的には今回の判決で最も重要なところだと思う。

続いて、
馬奈木弁護団長:私が注目したのは受忍限度論

受忍限度論とは、被害と公益を秤にかけ比較衡量する。
そしてまず我慢しなさい、その我慢が一定の限度を超えたら損害賠償しますよ、お金をもらっても我慢できないというところまできたら止めてあげます、という恐ろしい理論。その論理がこの判決で採用されている。

私たちは四大公害訴訟を通して、人が生存し生活する権利は秤にはかけられない守るべきものと考え、それを認めさせてきたと思っていた。しかし、それは私の幻想だったのかもしれない。原発訴訟では経済的効果と生活権を秤にかけるのが当たり前のようになってきた。このような流れをどう変えていくか。

また、仮に受忍限度論で裁くにしても、この裁判では肝心の公益性の大きさが示されていない。石木ダムでこんなに大きな利益が得られるよという説明もなく、被害は大したことではないので我慢しなさいという、論理破綻の判決である。

しかし、どんな判決が出ようと、社会通念こそが大事。こんなダムは要らないという県民の声、こんな事業はおかしいという国民の声、それが社会通念となるよう頑張っていきましょう。

続いて原告を代表して地元住民の方の感想です。
岩下和雄さん:私以外の住民は今日も現場で座り込みをしている。今日の判決に少しは期待していた(新たな証拠を提出していたので)が、この結果に腹立たしさを覚える。

裁判所はなぜ本当のことを審理しようとしないのか。行政の言いなりだ。
私たちは最高裁に上告する。そして、その結果がどうであれ、石木ダムは必要ないと県に訴えていく。今後とも皆さんのご協力をお願いします。

(会場から大きな拍手)

司会者
石木ダムは地元の方だけの問題ではありません。私たち長崎県民はもとより、ここにいらっしゃる福岡県民の方の税金も使われています。人口減少社会において無駄な公共事業を許し続けていいのかという全国的な課題だと思います。これからも共に闘っていきましょう。

このあと記者団からの質問に入りました。

六倉記者(長崎新聞)
この判決は一審の長崎地裁佐世保支部の判決を支持したものと言えるのか?
・今回も利水・治水に対する判断はほとんど言及されなかったのか?
・そして、覚書に対する言及はこれまでの判決ではなかったのか?
以上3点について伺いたい。

平山弁護士
・人格権が工事差止の理由にならないという一審の判決を基本的に踏襲している。
・利水や治水の観点から石木ダムの必要性についての言及はない。それは事業認定取消訴訟で扱われるものとして区分している。
・過去の判決においては、事実経過の中で触れられることはあったが、裁判所の見解が示されることはなかった。

山口記者(西日本新聞・福岡):判決で覚書に言及されたことについて、岩下さんはどう思われたか?

岩下さん:話し合いをしろとは書かれていないが、地元の理解は得られていないと書かれているので、県はそれを真摯に受け止めて、必要性についての話し合いに応じてほしいと思う。

馬奈木弁護士:つまり、裁判所は県に対し「説明義務を尽くしていないよ」と言っている。以前私が関わったし尿処理場に関する裁判で、裁判所は違法との判決を出した。それは、いくら必要な公共事業であっても住民との合意形成が大事だ。そのためのアセスメントを実行し、その結果を説明すべきだったが、それをやっていないから違法だと。しかし、今の裁判所は違う。説明不足を認めながら、でも差止の理由にはならないと堂々と述べている。残念だ。

山口記者(NBC長崎放送):覚書は、いつ誰と誰が交わしたものか?

平山弁護士:昭和47年7月29日に、地元住民(川原郷・岩屋郷・木場郷の各総代)と長崎県知事が、川棚町長を立会人として交わしたもの。同時に川棚町長と3郷の間での覚書もある。これは、県が覚書を破ったときには川棚町は住民と共に県と闘うと書かれている。

山口記者:
それを効力があると裁判所は認めたのか?

平山弁護士:
効力があると思うからこそ、「理解を得るよう努力することが求められる」と記述されていると理解していいのではないか。

原口記者(朝日新聞):裁判所は人格権を認めているのか?認めた上で受忍限度の範囲内と言っているのか?

平山弁護士:控訴人としては人格権を主張しているが、裁判所は、その内容が抽象的なので差し止め請求の理由にはならないと言っている。

この後、会場からの質問や意見が出されました。
ほとんどの方が意見や情報提供で、質問はお1人だけでした。

福岡市民:今年8月豪雨の記録により県の治水計画が間違っていたことが明らかになったと思うが、それを最高裁への上告理由にすれば勝てるのでは?と素人なりに感じた。その見込みはどうなのか?

馬奈木弁護士:残念ながら、その観点でひっくり返せるとは思えない。
最高裁で唯一ひっくり返せるとしたら、地元の皆さんの要らないという声が目に見える形で出てくること。例えば県知事選で、石木ダムは要らないという人が勝てば民意が見えるし、その人が知事になれば、行政の裁量で石木ダムを止めることができる。

裁判で勝てばダムは止まると思ってはいけない。同時に負けたら終わりだとも思ってはいけない。裁判を通じて、行政がおかしいことをやっているよということを社会的に明らかにする、それが裁判の目的である。

以上、報告集会でのやりとりをまとめながら改めて実感したのは、覚書の力です。

今回の判決の最重要ポイントは、紛れもなく、覚書について初めて判決の中で裁判官の意見が述べられたことです。

覚書:久保知事と

覚書:竹村町長と

この2つの覚書の存在を知った誰もが驚きます。
① 知事は住民に対し、「今回はあくまでも調査だけ。ダム建設の必要が生じた時は協議の上、書面による同意を受けた後着手する」と約束し、
② そこに立ち会った川棚町長は、「県が約束を破った場合は、川棚町が全力を挙げて工事を阻止する」と約束していたのです。

住民はその約束を信じて調査に同意したのに、その約束は完全に反故にされたまま工事だけを推し進めているのが現実です。

こんなこと許されるの?と誰もが思いますよね。
約束は守らなくちゃ!
でも、これまでの裁判官は誰もその当たり前のことに言及しなかった。今回が初めてです。
やっと社会の常識が判決文の中で表明された!

判決結果を左右するには至らなかったけど、この事実は大きいと私は思います。

「住民の理解を得るよう努力すること」
これは実は今まで何度も目にしたフレーズなのです。

その1)2012年4月26日の「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」で、「石木ダムに関しては、事業に関して様々な意見があることに鑑み、地域の方々の理解が得られるよう努力することを希望する。」(議事要旨より)との付帯意見が付きました。

その2)2012年6月11日、国土交通相が石木ダム検証結果として事業の継続を認めましたが、同時に「地元の理解を得る努力を希望する」と県に通知しました。

その3)2015年10月14日、長崎県公共事業評価監視委員会が知事に提出した意見書には、石木ダムについて「反対地権者の疑問点について説明を継続し、円満な解決が図られるよう最大限努力することを求めたい」と書かれていました。

つまり、補助金を出している国からも、第三者委員会からも「住民の理解を得る努力」を既に求められてきていたのですが、ついに昨日、司法の場でも求められたということです。

それにしても、なぜ今回の判決で、このような、県への要望が出されたのでしょう?
それは裁判官に聞いてみないとわからないし、聞いても答えてはくれないでしょうが、もしかしたら・・・と、私は勝手に想像しています。

今回の判決前に日本中の支援者が声をあげてくれました。
北から南からたくさんの方が福岡高裁の担当裁判官宛てにハガキでメッセージを送ってくださいました。

少なくとも3000通以上。
私たちが印刷所に発注したハガキが3000枚で、欲しいという方にのみ配布したのですが、それが全て底をつき、自分で印刷して出した人もたくさんいましたから。

そして、個人だけでなく、団体としても、公正な判決を求める要請書が次々と送られました。そこには、心に残るメッセージがいくつもありました。(後日公開する予定です)
いただいたコピーを見ながら、どうかこの文書を裁判官が読んでくれますように!と願わずにはいられないようなものが・・

そして多くの方が、裁判官に、良心に沿った判決を!と訴えていました。

きっと読んでくださったのですね!
主文には反映されなかったけれど、判決文の中でそれを書いてくださったのだと信じたい。

良心に沿って考えると、やっぱり約束違反は見過ごせないな~
せめて一言触れておかねばと。

私たちも努力しましょう。
この事実を多くの人に伝えましょう。
そして、県に求めていきましょう。

石木ダムの必要性を住民にしっかり説明してください、と。

説明無くして理解は得られません。
理解とは一方的な説明では得られません。
相手の疑問にも丁寧に答えてやっと得られるものです。
丁寧に説明したつもりでも1回では理解できないことはたくさんあります。
2回でも3回でも相手が納得するまで説明する。
そうして初めて努力したことになるのです。

その努力もしないで強制収用など、本当はあってはならないことだったのです。
が、今からでも遅くないので、理解を得るための努力を始めてください。

弁護団と私たち7団体による声明文はこちらです。

控訴審判決声明

 

みんなの声を裁判所へ

こんにちは。

2021年10月21日(木)は長崎県石木ダム工事差止訴訟控訴審の判決日です。

私たちは、現在、「裁判所にみんなの声を届けよう!」というハガキ運動をやっています。



書き方はとても簡単。

おもて面に自分の住所と名前を書きます。

ハガキの裏面に一言メッセージを添えて63円切手を貼って投函します。

私はとてもストレートに書きました。



私は、石木ダム予定地の中に暮らすイラストレーターです。

39年、ここで暮らしています。

病気のため、自宅を離れられません。

工事の音がうるさくて自殺しそうです。

わたしを殺さないでください。

この言葉をみんなにも伝えようと思います。




このハガキ運動に参加したい人おられましたら、

データをメールで添付して送ります。

ご希望の方は、石木ダム訴訟原告団事務局

ishiki-hotaru@buz.bbiq.jp

までご連絡ください。


こうばるほずみ

石木ダム工事差止訴訟控訴審、結審

6月18日 雨の中の門前集会。石木ダム訴訟では初めてのことです。

皆、片手に傘、もう片方の手には横断幕やメッセージボード。
傘を打つ雨音に邪魔されながらも、石丸さん(こうばる住民)や弁護団長の話に耳を傾けていました。



石丸さん:前回同様、今日も地元からやってきたのは私だけです。いま私たちは月曜日から土曜日まで毎日、工事現場で抗議の座り込みをやっているので、現場を離れることができません。そういうわけで、大事な裁判に今回も私1人しか来られませんでした。福岡の方には毎回たくさん集まっていただき、本当に感謝しています。今後ともよろしくお願いいたします。



馬奈木弁護団長:私はもう50年ほど裁判に関わっています。1990年代頃までの裁判所なら、同じ判決を出すにしても証拠調べはきちんとやった。なぜなら裁判とは議論を尽くすところだから。ところが近年の裁判所はその役目を果たしていない。石木ダム事業認定取消訴訟の結審の時、裁判長は「もうこれ以上お話を聴く必要は無い」と言った。この言葉を私は忘れない。裁判官が聞く耳を持たなければ裁判の意味は無い。結審にあたって今日の裁判長は何とおっしゃるか、私は注目しています。

14:30、開廷。
裁判長は、弁護団に何か2,3確認した後、弁論を許可。

まず、高橋弁護士から、利水について提出した準備書面の要旨が述べられました。
21.06.10-控訴審J7要旨(高橋)

裁判長:ではこれで弁論は終結ということで、終結にあたっての意見陳述をどうぞ。

高橋弁護士:その前に、新たな証拠や証人申請をしておりましたが・・?

裁判長:それについては、いずれも必要のないものと裁判所は判断しました。

門前集会での馬奈木弁護団長の話を聞いて、みんな注目していたのでしょう。「えー!なんで?」「森富義明裁判長、お前もか・・」という声に出せない思いが、傍聴者の表情に浮かんでいました。(原告席に居た私からは傍聴席の人の顔が見えていました)

そして、この後は流れ作業のように、次の意見陳述へと移りました。

石丸勇さん(石木ダム建設予定地こうばる住民)
R3.6.18意見陳述書(石丸勇)

この素晴らしい陳述に誰もが心の中で頷きながら聴いていたと思いますが、実際に声に出す傍聴者がいました。

「そうです!」という声が、高橋弁護士の時にも1回発せられ、石丸さんの時には3回も。裁判長は1回だけ「傍聴人は発言しないように!」と注意しましたが、その後はもう何も言いませんでした。

そして、石丸さんの陳述後、傍聴席から大きな拍手・・・。
これにも無反応の裁判長。

魚住弁護士
2021.6.18意見書(魚住)

陳述後、またもや法廷に響き渡る拍手。
裁判長からは注意無し。
諦め?もしや・・共感?

など妄想が一瞬脳内を過りましたが、
陳述が終わるやいなや、

裁判長:では、これで弁論を終結します。
判決は10月21日午後2時半。101号法廷。
以上です。

と、無表情に淡々と述べ、退席。
あああああ・・・・「イチケイのカラス」は、やはりここにはいなかった。

<報告集会>
福岡県弁護士会館2階大ホールにて。





いつものように、事務局の平山弁護士から、前回期日(3月25日)から今日までの経緯と、今日の法廷でのやり取りについての説明がありました。


そして、判決期日を伝え、それまでの4ヶ月間私たちに何ができるか、共に考え協力していこうと呼びかけられました。

続いて、陳述者からの発言です。



高橋弁護士:今回陳述したのは、佐世保市がおこなった2019年度の再評価がいかに問題だらけであったかを述べた準備書面7を要約したものです。その準備書面はほぼ丸々遠藤さん(水源開発問題全国連絡会共同代表)が書かれたもので、大変分かりやすくまとめてあります。よかったらそちらも是非読んでいただければと思います。
差止め控訴審J7



魚住弁護士:この裁判に関わって初めての意見陳述です。私は、なぜ川原の人たちが訴訟という手段に出たのか、それを3つの観点(立憲民主主義、住民自治・団体自治、将来世代)から言わせてもらいました。例えば、将来世代の観点で言うと、アメリカインディアンの中には7世代先のことを考えて物事を決めようという考えがあります。こういう視点の大切さを盛り込んだつもりです。



石丸控訴人:伝わったかなと少し不安でしたが、最後に皆さんから拍手をいただいて、よかったなと思いました。私は県が石木ダムを進める上で、いかに私たちを騙しながら、世間を誤魔化しながらやってきたかを伝えたかった。それから、県は私たちを追い出せないまま堰堤を造ろうとしています。堰堤ができ水を溜めれば私たちは水没させられるのです。また、それに抵抗しようとすると、かつての強制測量の時のような流血の事態にもなるでしょう。そういう現状も伝えたかったので陳述書に盛り込みました。

質疑応答
Aさん:石丸さんの陳述の中に、国交省の有識者会議で「石木ダムに関しては、事業に関して様々な意見があることに鑑み、地域の方々の理解が得られるよう努力することを希望する」という付帯意見が付けられたことが書かれていますが、当時は民主党政権だったと思います。その後、自民党政権になってから、この付帯意見はどのようになったのか事実経過がわかれば教えていただきたい。

石丸さん:民主党政権の時にダム検証が行われ、石木ダムは検証の結果「事業継続」となったけれど、「地域の方々の理解が得られるよう努力すること」という付帯意見が付きました。ダム検証そのものは悪いことではないが、やり方がまずかった、失敗だったと思います。あれで石木ダムも、お墨付きを得た形になり、事業認定にも繋がっていったので。

Aさん:近々知事と話し合うための協議がなされようとしているようですが、これは本体工事に進むための布石のようにも感じられます。皆さんのお考えを聞かせて頂きたい。

石丸さん:県の言う話し合いはポーズだと私たちも思っています。今日午前、地元では記者会見をやりました。それは私たちの真意を伝えるためです。県が予定した明日の事前協議を結果的に私たちは断りましたが、工事を中断しなければ話し合う環境にはならないということを伝えるためでした。県は私たちが話し合いを拒否しているという形に持って行こうとしていますが、話し合う環境を作ろうとしない県の方こそ話し合う意思はないのだということです。

Bさん:石丸さんの陳述書には、石木ダムの当初の目的は針尾工業団地の水源確保のためだったと書かれています。私は以前、針尾工業団地の調査(ここにはどのような業種が適しているかという調査)に関わっていました。そのとき言われたのは、ここには水が無い、それを前提に考えてほしいと。私たちは石木ダムなど全然聞いていない。今それを知って非常に悔しく思っています。

Cさん:魚住弁護士の陳述書の中に「川原の住民である控訴人等には、佐世保市議会議員、佐世保市長を選出するための選挙権それ自体が認められていないのです。すなわち、住民自治・団体自治の本質的部分である、選挙権それ自体が保障されてはいないのです」とありますが、そこの意味がよくわからないのですが・・・。

魚住弁護士:石木ダムは長崎県と佐世保市の共同事業です。こうばる住民は川棚町民なので佐世保市長を選ぶ権利はありませんよね。権利が与えられていない自治体の政策によって追い出されるのは問題だと言っているのです。

Cさん:佐世保市のダムを川棚町に造るのに、川棚町の許可は要らないのですか?

高橋弁護士:要らないと思います。そのために土地収用法があるので。

Cさん:では、市が他所の自治体に造るのに、その自治体の許可は要らないのですね?

高橋弁護士:川棚町は川棚川の洪水被害の軽減のために石木ダムを造るということになっているので、川棚町も認めているわけです。

馬奈木弁護士:制度的にはその通りだが、被害を受ける住民が本気で被害を止めようとすれば、やり方はある。自分の権利は自分で守る。川棚町議会が変われば町も変わる。例えば条例を作るとか。以前、産廃問題でそういう条例を作ったこともあります。制度が間違っていれば正しい制度に作り直すとか、そういう方法もあるということを、あえて付け加えておきます。

Dさん:佐世保市は石木ダム計画の言い出しっぺなので自ら止めることはしないだろう。一方、川棚町は県や佐世保市の言いなりになっているが、町民はまた違うと思う。町議会への働きかけなどについて石丸さんはどのように考えておられるか、聞きたい。

石丸さん:こうばる住民としては、とにかく今は座り込みで精一杯。他のことをやる余裕はない。町民の会の方で、何か考えて取り組んでいるようだが・・

Eさん:これまで何度も現地に行っていますが、それは不定期で、人数も成り行きで、あまり力にはなれなかったと思う。これからは組織的にやっていきたい。例えば月曜日なら行けるとか、金曜日なら行けるとか、そういう人を集めて計画的にやりたい。そうすれば本当の支援ができると思う。行けそうな人はぜひ私まで声をかけてください。

など嬉しい提案も飛び出しましたし、
他にも様々な貴重なご意見も聴くことができました。
そして最後に弁護団長の馬奈木弁護士がまとめてくださいました。


反対するには、反対するだけの理由があります。
本来あるべき姿、それは、

政策はみんなの合意のもとに進められていくべきもの
みんなが納得してやっていくものです。
いわれもないことを強制される筋合いはありません。
断固として拒否しよう。
そして、合意を作ろう。
そのために、力を合わせて頑張ろうではありませんか。

第3回工事差止控訴審 こうばるからは1人だけ

石木ダム工事差止控訴審の3回目。
門前集会で、控訴人を代表して挨拶したのは、「こうばる」住民の岩本宏之さん。

いつも挨拶する岩下和雄さんの姿はありません。岩下さんだけでなく、この裁判の当事者である「こうばる」の皆さんの顔が見えない・・。皆さんは今頃、石木ダム工事の現場で抗議行動の真最中だから。



岩本さん:いつものように貸切バスで皆と来る予定でしたが、今日は私1人でやってきました。最近、工事のやり方が強引になってきたので、抗議を休むわけにはいかないのです。
以前は夕方業者が帰るのを確認して自分たちも引き上げていましたが、それを監視カメラで確認して、業者が戻ってきてまた作業するようになったので、最近は三交代で朝から晩まで抗議を続けています。
昨日も早朝の6時から工事を始めていました。
今日は意見陳述の機会を頂きましたので、この苦しい現状を訴えたいと思います。
皆様のご支援よろしくお願いします。

大きな拍手の後、皆で集合写真を撮りました。



今日も福岡市民の皆さんがたくさん集まって下さいました!

さて今回は3回目の審理ですが、裁判長が交代したので、こちらからあらためて意見陳述をおこないました。
・権利性について鍋島弁護士の意見陳述 陳述要旨(鍋島弁護士)
・利水について高橋弁護士の意見陳述  陳述要旨(高橋弁護士)
・治水について緒方弁護士の意見陳述  陳述要旨(緒方弁護士)
・住民の想いについて岩本さんの意見陳述 陳述要旨(岩本宏之さん)
・裁判所に求めることについて平山弁護士の意見陳述 陳述要旨(平山弁護士)

その後、裁判長は今後の予定について検討。まずは控訴人に意見を求めました。

高橋弁護士:私たちは県と佐世保市の反論を待って、さらなる反論をしたいと思っていたが、締め切りをかなり過ぎて提出されたため、できなかった。反論の機会を与えて頂きたい。

県の代理人弁護士:控訴人の主張はこれまでに十分尽くされている。前回私たちが出した反論も特に新しい内容ではない。反論の必要はない。今日で結審して頂きたい。

佐世保市の代理人弁護士:県と同じである。結審して頂きたい。

しかし、新裁判長(これまでの矢尾渉裁判長から、森富義明裁判長に交代)は、「提出が遅れたことは事実なので、1回だけ控訴人に反論の機会を与える」と述べ、協議の結果、次回期日は、6月18日14時半~となりました。




今回の報告集会会場は、福岡高裁から2~3分の場所にある福岡市科学館6階のサイエンスホールです。

たいへん広いのでソーシャルディスタンスが十分確保でき、コロナ禍でも安心でした。

初めに、これまでの経過と今日の法廷でのやり取りについて、いつものように平山弁護士からの報告があり、その後、陳述された5人の方からのコメントが続きました。

鍋島弁護士:土地収用法自体に問題がある。同法で保障するのは財産的価値だけであり、平穏生活権や人格権など憲法で保障されている基本的人権が保障されていない。一審では権利性が無いとして棄却されているので、控訴審では、この権利性について丁寧に訴えていきたい。

高橋弁護士:私が強調したかったのは、佐世保市の水需要予測が万が一の災害に備えて過大に設定されていること。いつ起きるかわからない天災に備えて13世帯を追い出すというのはおかしいでしょう?ということ。裁判官以外の皆さんにも、そこをしっかり伝えたい。

緒方弁護士:石木ダムがあっても治水効果は少ないだけでなく、想定外の雨が降ったときのリスクを控訴審では訴えてきた。貯水量には限りがあるので、それ以上の雨量の場合は、一気に4倍以上の水を下流に流すことになる。

治水をダムに頼るのは、もう古い考え方ではないか。欧米ではダムの撤去が進んでいるが、日本ではまだ1つしか実現していない。今後の目指すべき方向として皆さんにも共有して頂けたら嬉しい。

平山弁護士:この訴訟の取りまとめ的な話をさせてもらった。せっかくの機会なので裁判官の心に何か爪痕のようなものを残したかった。

1つは、取消訴訟との違い。事業認定取消訴訟で最高裁の判断が示されたが、それとこの工事差止訴訟は無関係であることを訴えた。

もう1つは、住民の想い。先日の人権交流集会での発言や記録映像を通して、半世紀に亘る闘いの重みをあらためて知った。今この時も説明要求運動のため、自分達が起こした裁判の場に出てくることもできなくなっている。この現実を裁判官にしっかり伝えたかった。少しでも裁判官の心に残っていることを願う。

岩本宏之さん:昭和37年(1962年)に県が町にも地元にも断りなく、業者に委託して測量調査を実施した。その時私はアルバイトとして働いたが、バイト料は1日500円だった。当時の相場は300円だったので、よく覚えているが、このように私は60年近くも石木ダム問題に関わってきている。

昭和46年12月、予備調査の説明会のとき、県は石木ダムの目的は利水であり、治水は国から補助金をもらうために加えたと説明。なぜ水が必要なのかとの問いには、「針尾の工業団地(約150ha)を造成したが水が無いので企業が来ない。企業が集まれば一日22,000㌧の水が必要になる。また、人口が増えれば市民の水需要も増える」と説明した。しかし、そこは今ハウステンボスとなり、一日3,000㌧もあれば十分。人口も当時の予測よりずいぶん減っている。石木ダムはもう必要ないはず。

いまの現地の状況だが、付け替え道路の第1工区を完成させようと県は工事を強行している。我々が座りこんでいる140m区間もだんだん狭められてきている。

そして、この区間が終わったら、付け替え道路工事はまだたくさん残っているのに、県は本体工事に着工すると言う。我々への脅しだと思う。しかし、私たちが出て行くことは無い。行政代執行されるまで頑張って住み続ける。

毎日30~40名が座りこんで頑張っている。県内だけでなく、佐賀や福岡からも応援に来てもらって、本当に助かっている。今後ともご支援をよろしくお願いしたい。(会場から大きな拍手)

質疑と意見交換

福岡市民:石木ダムの治水面で受益者となる川棚川下流域の町民の声が聞こえてこないが、皆さんはどう思っておられるのか?

岩本さん:栄町など過去に被害のあったところは堤防より低い地域で、大雨が降ると水が溜まる。その水で浸水被害が起きている。いわゆる内水被害であり、川の水が溢れてということではないので石木ダムとは関係ない。行政は内水対策を進めるべき。しかし、町民の多くは口を開こうとしない。推進団体もあるが自主的に動いているようには見えない。

N新聞社のM記者:私も下流域に住んでいるが、周りの方に石木ダムについて聞いても皆さん遠慮する。こうばるに知り合いもいるし、とてもじゃないけどダム造ってくれとは言えないが、水害対策はしてほしい、と言われる。

大雨が降った時に川の水位は低いのに、下水がボコボコ溢れそうになっていることはよくある。内水対策はやってほしいと私も思う。それは石木ダムでは防げないのだが、町民の方の中にはダムができたらそれも防げると思っている人は多くいるようだ。

佐賀県民:国土交通省は流域治水などまともなプロジェクトもやっているのに、なぜここでは石木ダムに拘るのか?佐世保に米軍施設があるからではないか?

福岡市民:米軍基地はあるが、それほど使うわけではないだろう。国交省の治水対策は、ダムなど建造物を造ることが主流。田んぼダムは農水省がやっていること。省庁横断で治水を考えることが大事。またダムの危険性を下流域の人にもっと伝えるべきではないか。

緒方弁護士:石木ダムの危険性については、この問題に関わっている人の共通認識には至っていないので、今そこを強調するべきではないだろう。また、国交省の言う流域治水はダムを除外するものではない。ダムだけでなく他の方法も考えましょうという程度。彼らがやりたいのは土木工事。総合治水は形だけだと思う。

佐世保市民:佐世保の過大な水需要予測の要因は様々あげられるが、その中で米軍の水需要がことさら大きな要因となってはいない。予測値として、過去の最大値を持ってきたりしてはいるが、全体から見れば要因としては小さい。

福岡市民:裁判長が代わったことにより、新たな証人申請や現地視察などができないか?

高橋弁護士:難しいと思う。裁判長の経歴から考えても、また、次回が結審と聞こえるような言い方だったので、実現は中々難しい。

馬奈木弁護団長:確かに可能性は少ないが、証人や現地視察などを求める努力はすべきと思う。裁判界全体の流れを見ると必ずしも全てが悪いわけではない。原発訴訟では、国を負けさせた判決も有り、しかも、その裁判官が栄転した事例もある。

ダムをなぜ造るのか。金儲けのためである。長崎県や佐世保市は誰を儲けさせたいのか?我々はそこも見ていかねばならない。

とんでもない話ですねー
誰かの金儲けのために13世帯を犠牲にするなんて!
13世帯の家も田畑も取り上げて、人々を追い出し、
先祖の汗と涙が浸み込んだ豊かな大地を水底へ沈める・・・
それは同時に、集落の歴史や文化も水泡に帰してしまうこと。

エリートと評判の新裁判長。
彼が本物のエリートなら、そのような大罪を長崎県や佐世保市に犯させないでほしい。弱い民を救ってほしい。(‘◇’)ゞ

工事差止控訴審第2回 福岡の皆さん、ありがとう!


12月10日、石木ダム工事差止訴訟第2回控訴審。福岡高裁前に集まった人の3分の2は福岡県民!地元こうばる住民9名を含む長崎県民はわずか26名でした。
それは、その日も現地では工事現場での座り込みが行われていたからです。県は「地元の方と話し合いがしたい」と言いながら、最近は隙あらば工事を促進しようと前のめりになっているので、現場を空っぽにするわけにはいかなかったのです。


その穴を埋めるように、福岡市民県民の方がたくさん駆けつけてくださいました。(佐賀県からも3名参加)

しかし、今回もコロナ対策で法廷内に入れる人は限られています。マスコミ席や特別傍聴席を除くと一般傍聴席は、34席でした。

14:30定刻に開廷。
まず、提出された書面や証拠説明書などの確認がありました。

2020.12.8 長崎県準備書面1

2020.10.30 佐世保市準備書面1

2020.12.4 準備書面2(権利性) (当方)

2020.12.3 準備書面3(治水) (当方)

その後、こちらからは、2人の弁護士による意見陳述を行いました。

2020.12.10意見陳述(鍋島弁護士)

鍋島弁護士は、こうばる住民が侵害されている権利の実態は、福島地裁や仙台高裁が認めた「平穏生活権」と同様のものであると訴えました。つまり、自ら選択した生活の本拠において平穏な生活を営む権利は、日常的な幸福追求をする上で欠かせないものだということです。
ダムができてしまい、人々の家や田畑、こうばるの自然がダムに沈んでしまったのちに、「やはり石木ダムは要らなかったね」と認められたとしても、失われてしまった人々の生活や、自然や文化は元には戻りません。回復不能な損害なのです。

2020.12.10意見陳述(緒方弁護士)

緒方弁護士は、近年の豪雨災害を検証すれば従来のダム偏重の治水対策では対応できないこと、また、時としてダムが被害を拡大していることを指摘し、総合治水や流域治水への転換を求めました。そして、1つの案として「田んぼダム」の施策を採用した場合、川棚川流域で、石木ダムの洪水調節容量を上回る貯水能力を確保でき、しかも、その費用はわずか1~2億円で済むという驚きの試算を披露。
<このように、今やダムによる治水は、治水手段として既に不合理なものとなっているのです。不当な人権侵害を行うこととなる本件事業による工事を即時に差し止めるべきです。>

裁判長から今後の方針を問われ、

県と佐世保市は、こちらの準備書面2(権利性)について反論したいと述べ、こちらからは、佐佐世保市の準備書面1(水需要予測)について反論したい。また、治水については専門家による主張や証拠を提出したいので時間がかかる旨を伝え、次回期日の延期を求めました。

それについて裁判長が被告側の意見を求めたところ、県・佐世保市ともに受け入れましたが、佐世保市の代理人は「仕方がないが、次回で終わってほしい」(結審してほしい)と苦々しく付け加えました。

そんなこんなで、次回期日は2月を取消、結局、3月25日(木)14:30~と決まり、閉廷となりました。

その後、弁護士会館に移動し、4階大会議室で報告集会。

いつものように平山弁護士からの説明(前回期日から今日までの書面のやりとり、今日の法廷でのやり取り、今後の予定)の後、意見陳述した2人の弁護士から感想や補足説明がありました。

まず、鍋島弁護士。

前回、権利侵害についてもう少し具体的に説明してくださいとの宿題を与えられ、仙台高裁の判例を参考にした。そこには、福島の人々が原発事故によって奪われたもの(電気・水道・交通・病院などの生活インフラ、職場・学校・親戚付き合いなどのコミュニティ、祭りや行事などなど)があげられ、それが認められた。その要素を1つ1つこうばるにも当てはめて、それらが、原発ではなくダム建設によって奪われていくことを説明した。私としては説明し尽くしたと思っているが、裁判官にはわかっていただけただろうか?被告側は反論すると言っているので、それを見て、また反論していきたい。

続いて、緒方弁護士。

治水に関しては田篭先生と私で書いた。

かつては10年か20年に1回程度だった甚大な豪雨災害が、最近は毎年どこかで発生している。石木ダムがあれば、そのような被害が回避できるのか?と問いたい。逆に被害が拡大する恐れさえある。

50年前の計画にいつまでもしがみつくのではなく、新しい対策が必要ということで、田んぼダムについて紹介した。

例えば、三条市では約1000haの田んぼで200万㎥の貯水を可能にしたが、その費用はわずか1億円だった。川棚町と波佐見町の耕地面積は約1100haなので、220万㎥溜められる。石木ダムに匹敵する貯水量だ。185億円かけてダムを造るか、1億円で田んぼダムを広げるか、普通は安い方を選ぶのでは?

お2人の説明の後、会場からの質問や意見が次々に出されました。

意見:田んぼダムのような先進事例を学ぶべきだ、川棚川のこれまでの水害は内水氾濫が原因で石木ダムを造っても解決しない、ゲンジボタルやオジロサナエ(トンボ)などの貴重な生物への影響は県も認めている、環境の面からも止めるべきだ。

Q:県が準備書面の中で早く裁判を終息させてほしいと言っているが、その根拠は?

A:行政処分について最高裁の判断が既に出されている(石木ダム事業認定は妥当だった)ので、ダムの必要性については既に決着していると言いたいのだろう。

Q:以前出されていた現地視察の件はどうなったのか?

A:これについては裁判所からの回答はまだなく、こちらからも今回は何も述べていない。

Q:治水に関して反論が無いということは、こちらの主張が認められたということにはならないのでしょうか?

A:残念ながらそうはならない。反論する必要もないくらい馬鹿馬鹿しい主張だと、法廷でのやりとりの意味はそういうこと。そして、今さらそういうことを言うなよ、そういうことはもっと早く主張しろという意味もあるだろう。

と回答したのは弁護団長の馬奈木弁護士。続けて・・・


しかし、この裁判で一番大事なのは権利の問題。こうばるの皆さんの生活を守る、権利を守るということは、自分の権利を守ること。自分の生活を守りたければ、こうばるの皆さんの権利を守らなければならない、ということを私は繰り返し申し上げたい。

Q:今日の法廷で被告側の代理人が次回の期日で審理を終わらせよと言っていたが、見通しは?

A:確かに双方の主張は双方出し尽くすかもしれないが、それだけでは不十分だとして、我々は現地視察や証人による証拠調べなどを求めている。裁判所が我々を負けさせようと思えば、認めないだろう。次回でそれは分かる。

最後に控訴人を代表して、岩下さんからの挨拶。

私たちは自分たちの権利を守るために闘っている。このダムは必要性のないダムだと50年前から訴えている。50年前は佐世保では今後17万㌧の水が必要になるから石木ダムを造りたいと言っていた。今は多い時で7万㌧です。当時の予想より10万トンも減っている。それなら要らないじゃないか。それをなぜ裁判所も認めないのか?

私たちはいま毎日寒い中現場で座り込みを続けている。精神的にも限界に来ている。早く裁判に勝ってダムを止めたい。皆さんの力を貸して頂きたい。よろしくお願いします。

その言葉に会場からは一段と大きな拍手が響きました。



最高裁決定に対する声明

2020年10月8日、最高裁は私たちの上告を棄却しましたが、私たちの想いは、こうばる住民の方々の決意同様、微動だにしておりません。

石木ダムは必要のない事業であり、そのために13世帯の生活の場を奪うことは、どう考えても間違っています。
これを許すことは、私たちの身にもいつ降りかかってくるかもしれない人権侵害の種を蒔くことになります。

私たちは石木ダム計画が撤回されるまで闘い続けます。



 

10月14日、弁護団をはじめ、県内7団体が共同で声明文を提出しました、
ここに転載いたします。

     最高裁決定に対する声明

石木ダム建設絶対反対同盟
石木ダム対策弁護団
石木川の清流を守り川棚川の治水を考える町民の会
石木川まもり隊
水問題を考える市民の会
石木川の清流とホタルを守る市民の会
石木ダム建設に反対する川棚町民の会
いしきを学ぶ会

 令和2年10月8日,最高裁判所において,石木ダム事業認定処分取消請求事件の上告を棄却し,かつ、上告受理申立を受理しない旨の決定がなされた。
 本事件は,石木ダム建設予定地とされている川原(こうばる)地区の住民をはじめとして,川棚町民・佐世保市民等他101名の当事者が,長崎県及び佐世保市の事業認定申請を国土交通省九州地方整備局が認可した事業認定処分に対して,それが違憲・違法であるとして,その取り消しを求めたものである。
 石木ダム事業がダムありきの不必要な事業であること,かかる違法な事業により,川原地区で今も生活している13世帯約60名の生活・生業・社会を破壊することは絶対に許されないことは,私たちが繰り返し裁判所内外で主張してきたところである。それにもかかわらず請求を棄却した最高裁判所は、全く必要性がなくかつ著しく人権を侵害する事業を強行しようとしている起業者である長崎県・佐世保市、及びそれを容認して事業認定をした国の違法な行為を追認したものであり、極めて不当な決定と言わざるを得ない。たとえ裁判所が本件事業の取消を認めなかったとしても、本件事業が,社会通念に照らして必要性のない事業であることは明らかであり、このような不当決定はかえって、石木ダム事業が違憲・違法な事業であるという私たちの確信を一層強めるものである。
 これまで川原地区の居住者は,皆,石木ダム事業によって人生を翻弄されてきた。このような権利侵害の状態を継続することは絶対に許されないし,ましてや住民らを強制的に排除することはなおさらである。
 今回の最高裁判所の不当決定を受けて,私たちは改めて,違憲・違法な石木ダム事業に対し、今後も反対運動を続けていく決意を強くした。
 そこで、九州地方整備局に対して,事業認定庁として判断を自主的に見直すよう求めるとともに,起業者である長崎県及び佐世保市に対して,石木ダム事業計画を撤回するよう求めるものである。
 私たちの石木ダム計画が撤回されるまで闘うという決意は一連の裁判所の判断によって何ら揺らぐものではなく,その実現に向けてこれまでと同じく行動を続けることをここに宣言する。

取消訴訟、上告棄却



長崎新聞 10月13日



 

最高裁、石木ダム国事業認定取り消し棄却 住民「それでも闘う」

(西日本新聞2020/10/13 6:00) https://www.nishinippon.co.jp/item/n/653737/

石木ダム予定地

長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設を巡り、反対する住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は住民側の上告を退ける決定をした。8日付。住民側敗訴とした一、二審判決が確定した。

同町川原(こうばる)地区の石木ダム建設予定地で暮らす原告は、最高裁の決定に憤りと落胆をにじませながら、反対運動を継続する思いを口にした。

「川原地区13世帯の人権はどうでもいいのかしら。現場を一度も見ることなく決定するなんて」。岩永みゆきさん(59)は納得がいかない表情。川原房枝さん(79)も「主張を聞いてもらって判断が下されると思っていた。少しだけ望みを持っていたので心外」と残念そうに話した。

住民は長崎県と佐世保市に工事差し止めを求める訴訟も起こしたが、今年3月の一審判決で請求棄却されるなど敗訴が続いている。

「八方ふさがりたい…」。岩下秀男さん(73)は言葉を詰まらせたが「それでも闘い続けることに変わりはない」と言い切った。

予定地の住民の土地や建物は土地収用法の手続きを経て、2019年に国が所有権を取得。県の行政代執行による強制収用も可能となった。住民が毎日のように座り込んでいる場所の近くでは、本体着工に向けた県道付け替え工事が進む。

「今回の結果を受けて県側が勢いづくかもしれないが、こちらは絶対に動かない。座り込みは続ける」。岩本宏之さん(75)は淡々とした口調で、固い意思を示した。

一方、中村法道知事は「ダム建設事業の公益上の必要性について、理解が得られ、早期にご協力いただけるよう、努力を続けたい」とコメントした。 (岩佐遼介、徳増瑛子)

 

 

石木ダム「事業認定取り消し訴訟」住民敗訴確定

(NBC長崎放送2020/10/13(火) 11:58配信)https://news.yahoo.co.jp/articles/dd9a74949adf7a4d13e11c3d5ffb32e1566799a2

(映像あり)

石木ダム建設予定地に住む住民らが国を相手に土地の強制収用の根拠となっている「事業認定」の取り消しを求めていた裁判で最高裁判所は住民側の上告を退けました。この裁判は、国が石木ダムを土地収用法に基く「事業」と認定したことに対し住民側が「佐世保の水道水は足りていて川棚川の洪水対策も河川改修で対応できるためダムは必要ない」などとして「事業認定」の取り消しを求めていたものです。裁判では一審、二審とも利水面・治水面でのダムの必要性を認め建設によって得られる公共の利益は損失よりも大きいとして住民らの請求を棄却。判決を不服として住民側が去年12月に上告していました。最高裁第一小法廷は今月8日付で上告を退ける決定を行い住民側の敗訴が確定しました。なお、住民らはこれとは別にダム工事そのものの中止を求める裁判も起こしていて、今月から福岡高裁で控訴審が始まっています。

 

 

長崎・石木ダム訴訟で住民側敗訴確定 最高裁上告退ける

(毎日新聞2020年10月13日 西部朝刊)https://mainichi.jp/articles/20201013/ddp/041/040/003000c

長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設を巡り、反対する住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は住民側の上告を退ける決定をした。8日付。住民側敗訴とした1、2審判決が確定した。

石木ダムは佐世保市の水不足解消や、川棚町の治水を目的に計画。国は2013年に事業認定し、反対住民らが15年に提訴した。1審の長崎地裁は18年7月に請求を棄却し、2審の福岡高裁も支持した。

1、2審はいずれも利水・治水面でダムの必要性を認めていた。

 

最高裁、上告棄却!

10月8日付で、最高裁は私たちの上告を棄却しました。


つまり私たちは石木ダム事業認定取り消し訴訟で敗訴が確定したのです。

なぜ…

私たちの訴えとは、「必要性のないダム建設のために住民の土地を奪う事業認定は違法であるので取り消してほしい」というものです。
一、二審の判決は「このダム計画は不合理とは言えず、住民の不利益よりも公共の利益の方が大きいので事業認定は正しい」でした。

そこで私たちは最高裁に上告しました。
法の番人と称される最高裁なら、国の最高法規である憲法に照らして、一二審の過ちを見抜き、石木ダム事業の違法性を指摘し、国民の権利を守ってくれるのではと期待していましたが、みごと裏切られました。

正直くやしいです。残念です。
しかし、この不当な決定に私たちが屈することはありません
この事件を担当した最高裁第一小法廷の5人の裁判官にあたったのが不運だったと諦めるしかありません。

私たちが拠って立つのは憲法です。
憲法は、国民一人ひとりが、住むところや職業を選ぶ権利、自分の財産を守る権利、幸せを追求する権利を保障しています。
しかし、石木ダム事業認定によって、こうばる住民のこれらの権利が侵害されるのですから、事業認定は取り消されるべきです。

ところが、裁判所は、それらの権利は「公共の福祉に反しない」限りであって、石木ダムは公共の福祉に大きく寄与するので、事業認定は間違っていなかったと判断しました。一審も二審も最高裁も。

しかし、そう判断するならば、本当に石木ダムが必要なダムだという立証が必要です。

ところが、一審では事業計画に関わった県の職員(治水)や佐世保市の職員(利水)や国側証人の大学教授(利水)などに尋問をしましたが、いずれも住民を追い出してまで必要なダムだという根拠は示せませんでした。無いよりはあった方がいい。計画流量や計画給水量の算出においても「不合理とは言えない」という程度です。

二審では一審のやり取りを踏まえて、さらに新たな資料や意見書も提出して、住民側の大学教授への証人尋問を要求しましたが、それは受け入れられず…つまり、ダムの必要性についての科学的検証はまだなされていなかったのです。

石木ダムが無ければ、川棚川流域住民が大きな洪水被害に晒されるとか、石木ダムが無ければ佐世保市民が水不足で生活に支障が出ているとか、だから石木ダムは必要だと証明されて初めて「石木ダムの公益性は高い」「石木ダムに反対して出て行かないことは、公共の福祉に反する」となるはずです。

それが立証されなければ、公共の福祉に反しないことになり、反しないのに土地を強制収用する事業認定は憲法違反の疑いがあるわけです。

だからこそ、最高裁には石木ダムの必要性についてしっかり検討してほしかったのですが…
最高裁の決定は、内容に踏み込むことなく、門前払いでした。

「上告は、判決に憲法の解釈の誤りがあること、その他憲法の違反があることを理由とするときに、することができる」(民訴法312条)が、本件はそれに該当しないとして。

それで務まるのでしょうか?
憲法の番人」が…

最高裁という番人が頼りなければ、私たち一人ひとりが番人になりましょう。
私たちの権利と憲法を守るために!

先ほど私たち(県内7団体と弁護団)による声明文を出しました。
こちら→20.10.14-最高裁決定を受けた声明

工事差止訴訟控訴審第1回口頭弁論

長崎新聞 2020年10月9日https://this.kiji.is/687190331494728801

石木ダム建設差し止め2審始まる




長崎県川棚町で進められる、石木ダムの建設に反対する住民などが、長崎県と佐世保市に建設の差し止めを求めた裁判の2審が、福岡高等裁判所で始まり、住民側は「私たちの生活はそんなに軽いのか。切り捨てないでほしい」と訴えました。

長崎県と佐世保市が川棚町に建設を進めている石木ダムをめぐり、建設に反対する住民などは洪水被害により安全が侵害され、ふるさとでの生活が奪われるなどとして、ダムの建設工事などの差し止めを求める訴えを起こし、1審の長崎地方裁判所佐世保支部は、「安全が侵害されるおそれは認められない」などとして訴えを退け、住民側が控訴していました。

8日、福岡高等裁判所で2審の裁判が始まり、住民の1人が「ここで暮らし続け、次の世代に引き継いでいく人生をダムの建設に踏みにじられる。私たちの生活はそんなに軽いのか。切り捨てないでほしい」と意見を述べ、改めて、自分たちの住む場所を決める権利を主張しました。

石木ダムの建設をめぐっては、国に対して、事業の認定を取り消すよう求める訴えが1審、2審ともに退けられ、住民側は最高裁判所に上告しています。

 


「人生が踏みにじられた」石木ダム訴訟、住民が意見陳述



長崎県佐世保市が建設を進める石木ダムをめぐり、住民らが関連工事の差し止めを求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が8日、福岡高裁(矢尾渉裁判長)であった。住民らは工事について、故郷で暮らす「人格権」を侵害するものだと主張し、県と市は控訴棄却を求めた。

原告は、ダムで水没する長崎県川棚町の川原地区の住民13世帯や支援者ら403人。一審・長崎地裁佐世保支部判決は、人格権は内容や範囲が不明確で、差し止めの根拠にならないとして請求を棄却した。

この日は住民の岩下すみ子さん(71)が意見陳述し、地区の自然豊かな四季の情景を織り込んだ歌の歌詞を読み上げた。「私たちの人生がダム事業に踏みにじられ、何十年も重ねてきた暮らしが強制的に排除されようとしている。13世帯を少数者だとして切り捨てないで」と訴えた。

石木ダムは佐世保市に水を供給するとともに、周辺の川棚川流域の水害を防ぐことを目的とする多目的ダム。1975年に建設が決まったが、住民らの反対運動でダム本体は着工していない。住民らが国に事業認定の取り消しを求めた別の訴訟では昨年11月、福岡高裁が住民側の訴えを棄却。住民側は上告している。(山野健太郎)


石木ダム建設控訴審住民側差し止め訴え 福岡高裁で初弁論



西日本新聞  https://www.nishinippon.co.jp/item/n/652603/




 3月の一審長崎地裁佐世保支部判決は、住民側が訴えた「良好な環境で生活する権利」などは、「工事差し止めの根拠にならない」として請求を棄却した。

住民側代理人の鍋島典子弁護士は意見陳述で、「住民の主張をどう理解し、いかなる理由で判断したのか、理解に苦しむ」と批判。その上で「控訴審では住民が主張する権利を適正に評価し、(工事による)侵害行為の違法性を判断してほしい」と求めた。

石木ダムの用地は土地収用法に基づき、2019年に所有権が国に移り、家屋などの強制撤去が可能な状態になっている。住民らが国に同法の事業認定取り消しを求めた訴訟は同年11月に福岡高裁が控訴を棄却し、住民側が上告している。 (森亮輔)

 


「ここで暮らし続けたい」 石木ダム工事差し止め控訴審 口頭弁論で住民 /長崎


 川棚町に建設が計画されている石木ダムの工事を巡り、水没予定地の住民らが建設主体の県と佐世保市を相手取り工事差し止めを求めた控訴審の第1回口頭弁論が8日、福岡高裁(矢尾渉裁判長)であった。住民の岩下すみ子さん(71)が意見陳述し「この場所に仲間とともに暮らし続けたい」と訴えた。

 県と市側は答弁書を提出し、いずれも控訴棄却を求めた。

 石木ダムは同市の水不足解消と治水を目的に建設が計画され、2013年には土地収用法に基づく国の事業認定を受けた。用地の強制収用が可能となったが、13世帯が住み続けている。住民側は「利水や治水両面でダムの必要性はなく、不要な事業で故郷を奪われるのは人格権の侵害だ」などと主張している。

 川棚町川原(こうばる)地区で40年以上暮らす岩下さんは、豊かな自然や土地を守り続けてきた先祖への思いに触れた上で、「私たちの人生がダム事業に踏みにじられ、何十年もの間重ねてきた暮らしが強制的に排除されようとしている。13世帯を少数者だとして切り捨てないでほしい」と述べた。

 1審の長崎地裁佐世保支部は今年3月、「差し止めを求めうる明確な実態を有しない」として原告の請求を棄却した。【宗岡敬介】



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