『北方(HOPPOH)』という文芸誌の185号(2021.10.31発行)に、「石木のタブノキ」という詩が掲載されました。
そう、あのタブノキ。石木ダム付け替え道路工事現場にあった大きなタブノキ。引き千切られ、引っこ抜かれて、打ち捨てられたあのタブノキを悼む詩です。
作者は石木川まもり隊のU・Mさん。
座り込み現場に集う私たちの想いを詩ってくれました。
ぜひ、じっくり読んでみてください。
石木のタブノキ
石木の人々の通い路に、タブノキが二本寄り添って大きくなりました。
大きなタブノキとそれより小ぶりのタブノキは、
数百年の風雪に耐えて、大きく枝葉を伸ばし、巨樹となりました。
夏には大きな葉を茂らせて人々に憩いの木陰を作り、
さまざまな草花や鳥や昆虫たちは、
タブノキと共に生命を育くんできました。
炎天下での座り込みの日々、
涼を求める人々を木陰に誘い、
涼しい薫風で私たちを慰め一息つかせてくれたタブノキよ。
無用で無駄な石木ダム建設という目的のために、
タブノキと共に営んできた動植物の生命サイクルはまた断ち切られました。
凄まじい暴力。
大きく豊かに茂っていたタブノキの枝葉、そして3メートルを超える幹は、
ユンボで無残に打ち砕かれて身ぐるみはがされました。
それでも大きく根を張っていたタブノキはびくともしませんでした。
でも、
二百年以上、大地に踏ん張っていたタブノキは、
再び力任せのユンボで大地からはぎとられ、傍らに打ち捨てられました。
バーミヤンの仏像がタリバンによって破壊された時、
タリバンは世界中の人々から野蛮なイスラム教条主義者として糾弾されました。
バーミヤンの仏像を毀棄したタリバンと
タブノキをねじり伐り倒した人々と何が違うのでしょうか。
タブノキの精霊が嘆き哀しんでいます。
タブノキは告発しています。
断ち切られた生命連鎖の報復を受けるまで気づかないのかと。