専門用語は分からない?

12月7日は、長崎県川棚町において、石木ダム説明会(第4回)があり、知事が市民委員会委員の質問に回答しました。私も委員の一人として参加してきました。

質問はこれまでの3回の委員会で明らかになったことについて、知事はどう思うかということを宮本博司委員から専門用語を使わずに説明して回答を求めました。

すなわち、実際の計測データがないので、お隣の佐世保市に降った雨が川棚川全流域に降ったと仮定した計画であったことや、再評価の際に現在の河道状況ではなくて、当初計画時の河道状況で便益計算を行い、これらのことを再評価委員会にも報告せずに再評価を行い、B/C(費用対効果)は妥当であるとの結論を出させたことなどが明らかになっています。

これに対して知事は「専門用語は分からない」「適切に手続きは進んだと理解している」の繰り返しです。こんな分かりやすい説明に「分からない」を繰り返すなんて、心の中で「あんた、何が分からないよ!」と叫んでいました。また、やさしい説明に「専門用語」が本当に分からないのであれば、過去3回の議事録も目を通さず、担当者から報告も受けてないことを明らかにしたようなものです。それで、人の生活を奪う事業を進めているなんて信じられません。また、今後も住民に丁寧に説明をしていくと言われても、何も知らないのに、何を説明していくのでしょう?

本当にダムが必要なほど長崎県が困っているなら、きちんとしたデータを示して理解を求めるために住民の下に通うべきです。そのやり方が住民に透けて見えているのだと思います。水が必要だという佐世保市民、治水対策が必要だという下流の人たち、せめて皆さんにはこんな問題点知ってほしいと思いました。

私の方からは、ダムが治水対策にはならず、かえって水害を招くということを住民の皆様に知ってほしいとプレゼンさせてもらいました。皆さんに問題提起をしたかったので、知事には回答は求めませんでした。

つる祥子(市民委員会委員・環境カウンセラー・自然観察指導員熊本県連絡会会長)

  • こちらは、同じく市民委員会委員の今本博健さんの投稿

石木ダム不要 知事は判断を

大石知事出席も主張は平行線 石木ダム建設巡り説明会

2025/12/08  長崎新聞

反対住民らも傍聴した説明会。市民委の意見に回答する大石知事ら=川棚町公会堂

長崎県と佐世保市が東彼川棚町で進めている石木ダム建設事業を巡り、県は7日、反対派市民団体への説明会を中組郷の町公会堂で開き、大石賢吾知事が出席した。市民団体側は治水効果は疑問だとして計画の見直しを求めたが、大石知事は「(ダム事業は)法令・手順にのっとって進めてきた。ダムの必要性の議論は終わっている」と事業の正当性を改めて強調し、双方の主張は平行線に終わった。
 今年4月以降、事業に反対する市民団体「市民による石木ダム再評価監視委員会(市民委)」へ県が3回開いた「技術的な疑問に対する説明会」を踏まえ、市民委の質問に大石知事が答える形で進行。ダムの水没予定地で暮らす川原地区の反対住民ら約150人が傍聴した。
 傍聴後、建設に反対する住民の岩下すみ子さん(77)は取材に、「若い知事は気持ちを理解してくれると期待したが、裏切られた。説明会出席は選挙(知事選)前のパフォーマンス」と切り捨てた。
 2032年度までのダム完成を目指す県は、来年度中に本体工事の発注が必要としており、反対住民らが監視のために設置した「団結小屋」が本体工事の支障になるとして、行政代執行による撤去の可能性を示唆している。

長崎県知事が石木ダム建設反対住民と3年ぶりに対面…「ダムの必要性を議論する状況にはない」

2025/12/08  読売新聞

長崎県と佐世保市が川棚町で進めている石木ダム建設事業で、大石知事は7日、同町で開かれた説明会に出席し、建設に反対する地元住民と対面した。大石知事が反対住民と公式に会うのは、2023年1月以来約3年ぶり。

 説明会では、住民側の市民団体から「気候変動の影響を踏まえて計画を見直さないのか」と問われ、「見直す状況にないと認識している」と回答。ダムの必要性について検証する場を設けるように求められた際には、「必要性について議論する状況にはない。地元の理解を得る努力を続けていく」と述べた。

 石木ダムは、佐世保市の渇水対策などを目的としたダム。1975年度に事業採択されたが、反対住民との対立で工期の延長を繰り返している。2032年度の完成を目指す県は、来年度中に本体工事の契約を発注する必要があるとしているが、建設予定地に残る小屋が工事の支障となる可能性がある。

石木ダム、県が説明会 反対住民ら「根拠なき事業」 地元で11年ぶり

2025/12/8 毎日新聞

YAHOOニュース(NIB長崎国際テレビ)
石木ダム建設事業 反対住民向け説明会に150人 知事「必要性を今議論する立場にない」

石木ダム建設事業 反対住民向け説明会に150人 知事「必要性を今議論する立場にない」《長崎》(長崎国際テレビ) – Yahoo!ニュース

県と佐世保市が川棚町で進める石木ダム建設事業を巡る動きです。 県は7日、反対する住民や市民団体向けの説明会を開きました。

NIB長崎国際テレビ

川棚町で開かれた石木ダム建設事業に関する説明会。 事業の検証を求める市民団体の質問に、大石知事が応じる形で行われ、会場には水没予定地で暮らす反対住民を含む約150人が詰めかけました。

NIB長崎国際テレビ

市民団体側はダムの治水効果への疑問点や、裏付けとなるデータの不足を指摘しましたが、大石知事は事業の正当性を主張し議論は平行線に終わりました。 (大石知事) 「必要性については県として今議論する立場にないと。我々にできる説明はこれからも丁寧にやっていきたい」 (反対住民 岩下 すみ子さん) 「何回来た、何回来たという格好ばかり。そういう対応には納得していないから会わない。聞けば聞くほどいらないダム」 石木ダム建設を巡っては去年、事業計画が見直され、県は工期を7年延長し、完成予定を2032年度としています。

石木ダムの疑問に答える公開説明会!

ようやく県による公開説明会が実現しました!

県が行なった石木ダム再評価では検証されていない15のポイントがあるとして、それに対する説明を求めたのです。

しかし、なかなか返事はいただけず… 11月に2回目の説明要請。そして、議会でも「市民委員会にきちんと対応すべき」との声が上がり、徐々に交渉が始まり、途中いろんな紆余曲折がありましたが、4月20日、ようやく8ヶ月ぶりに実現したのです。

県側、市民委員会側、双方関係者の実現したいという強い思いと、粘り強い交渉の賜物であり、それを認めた知事や土木部長にも敬意を表します。もちろん、県が県民の疑問に答えるのは、事業者としても行政としても当然のことなのですが…。

当日は報道席も全て埋まりました。

新聞、テレビニュースの見出しの共通点は「11年ぶりに説明会」というフレーズでした。

例えば、

「石木ダム11年ぶりに地元説明会 県は治水の正当性強調」(長崎新聞)

「石木ダム事業で11年ぶり説明会 反対派住民ら参加」(朝日新聞)

「石木ダムの建設巡り 長崎県が11年ぶり地元説明会」(NHK)

「予定地住民は反論『石木ダム建設事業』県が11年ぶりに地元説明会」(NIB)

というように。

メディアも、このような公開説明会を心待ちしていた証でしょうか?
あるいは、県の地元への説明が足りないと感じていた証でしょうか?

NBCだけは少し違っていて、

「石木ダム防災機能に関する地元説明会 計画反対の住民も参加」

というタイトルで、内容も議論の中身にフォーカスして伝えていました。

このニュース映像に写る傍聴者の真剣な表情を見ただけでも、この説明会の意義の大きさが伝わってくるようです。

主催者である県によって議事録or速記録などが公開されることを願いつつ、3時間近くに及んだやりとりの要点をまとめてみます。

<はじめの挨拶>

中尾土木部長:本日はお忙しい中、会場まで足をお運びいただきましてありがとうございます。今日は、「市民による石木ダム再評価監視委員会」からご指摘いただいております技術的疑問点等について、県の方から説明させていただきます。できる限り丁寧な説明に努めてまいりますので、宜しくお願いいたします。

西島市民委員会委員長:本日こうやって対話の場をつくっていただき、ご尽力いただいたお一人お一人の皆様に感謝申し上げます。また、今日は本当に多くの方々にお集まりいただき、ありがとうございます。 石木ダムは50年前の計画ですが、この間にはいろんな社会の変化がありました。技術発展により解決してきた問題もありますが、逆に50年前にはなかった新しい問題というのも起こってきています。それは、水害対策の問題でもあり、まちづくりの問題でもあり、さまざまな人の意見をどのように意思決定に反映させていくかというような民主主義の問題でもあると思っております。今日は技術的問題、難しい問題ではありますが、なるべく分かりやすく、皆さんが置いてけぼりにならないように進行に努めていきたいと思っておりますので、ぜひ宜しくお願いいたします。

<治水について>

その後しばらくやり取りがあり、進行役の西島委員長から「計算できるのであればしていただきたい」として持ち帰りとなりました。

                                                   

● 川棚川水系の計画雨量を算定するのになぜ佐世保の雨量計を使い続けるのか?

● 雨量から流量を算出する「流出計算モデル」の検証は適切になされたのか?

● 山道橋地点と石木ダム地点の洪水ピーク時刻が同一なのはなぜ?

● 計画雨量を算定する際に、昭和42年7月に佐世保で観測された降雨パターンを川棚川水系の全ての地点で一様に当てはめるのは、おかしいのではないか?

●石木川合流地点より上流は1/30、下流では1/100と計画規模が異なるので、1/100の降雨があると上流で氾濫するが、そのことが計画流量に反映されていない。計画流量は過大ではないか?

<地質について>

● 地質の透水性が心配されるが、対策工事に膨大な費用がかかるのではないか?

● 貯水池周辺からの漏水が懸念されるが、大丈夫か?

<費用対効果について>

● ダム完成後の便益は、現在の河川状況を基に算定すべきではないか?

ということで、残った質問事項は次回に持ち越しとなりました。
環境のことや現地こうばるの方からのご質問、そして持ち帰り事項などなど、聴きたいこと、聴くべきこと満載です。
次回も、両者の率直で真摯な議論が聴けますよう、期待しています。
次回日程はこちらです。

    日時=6月1日(日)13:00~16:00
    会場=川棚町中央公民館講堂

時間帯も会場も前回と同じです。

最後になりましたが、この日の主な出席者をご紹介します。

県=中尾土木部長、飯塚土木次長、小川河川課長、岩永企画監、
  森河川課ダム班、村川石木ダム事務所長他数名。
市民委員会=西島委員長(弁護士)、宮本副委員長(元建設省防災課長)、
  今本博健(京都大学名誉教授:河川工学=オンライン参加)、
  公募委員2名、事務局6名

質問者=宮本委員
説明者=岩永企画監
司会進行=森(県側)、西島(市民側)

石木ダム計画の疑問に県が答えます!

県の主催と聞くと、一方的な事業者目線の説明会をイメージする方も多いと思いますが、今回はそうではありません。

「市民による石木ダム再評価委員会」が昨年8月に提出した様々な疑問に、県河川課が8ヶ月も経ちましたが、ようやく真摯に答えようとしています。

市民委員会の専門家が、石木ダムに関する技術的な疑問、ここはどうなっているのか?と具体的に挙げたポイントごとに、丁寧に答える(はず)説明会です。

これまで県は、司法の判断が出ているからもはや議論の段階では無いとか、13世帯には説明を尽くすが、その他の県民にはその必要は無いとして背を向けてきました。それがようやく事業者として、説明責任を果たそうという姿勢を見せてくれました。

民主主義政治としては当たり前のことですが、それがなかなか通用しない今の世の中、県にとっては大きな決断だったと思います。特に石木ダムに関しては事業者よりも推進派議員の圧力が強く、苦労されたのではないかと想像します。

河川課長、土木部長、知事の決断に敬意を表します。

ぜひ市民委員会の質問に説明が尽くされますよう。それは住民・県民への理解に繋がるはずです。

関心とお時間のある県民の方は、ぜひ会場に足をお運びください。誰でも傍聴できます。

日時=4月20日(日)13時~16時
会場=川棚町中央公民館講堂

山の田ダムの図面発見!

こちらは、2018年9月に発行された「水道局だより臨時号」。

この古い取水バルブの写真、佐世保市民の方はご存じでは?広報誌や市政チャンネルで度々紹介されていた山の田ダムの錆び付いたバルブです。

このように佐世保のダムは古い。
→補修工事や堆積土砂の浚渫工事が必要。
→でも、今はできない。なぜなら、戦前のダムは図面が残っていない。
→元の地形が分らないのでダム湖を空にしなければ工事ができない。
→ダム湖を空にすると水源不足となり、給水に支障をきたす。
→石木ダムができれば、水源に余裕が生まれ工事ができる。

数年前から水道局は、このような説明に力を入れてきました。それは、「将来水需要が増えるので石木ダムが必要」という説明は、もう通用しなくなったからです。(水需要の実績値は減少の一途)

議会でも当時の谷本水道局長がこのように答弁しています。(2018年12月)

2023年1月、「佐世保の水源対策勉強会」に対する水道局事業部水道施設課長の回答も同様でした。

ところが、その無いはずの図面が有った!のです。正確には、図面が掲載された資料を発見したのです。

その資料の表紙がこちらです。

佐世保市教育委員会が2016年に発行した山の田ダム(1908年竣工)の調査報告書で、ダム堰堤と取水塔の設計図でしょうか、細かな図面が表紙を飾っています。

裏表紙には、設計図の他に、部品(ボルト等)の個数や重さなどの一覧表も見えます。


本文には様々な図面が・・・

図版目次はこちら。

素人にはよく分らないので専門家に見ていただきました。

お2人のコメントも含めて「石木ダム勉強会」で報告したところ、皆もびっくり!

え?どういうこと?
図面は焼失したというのは嘘だったの?
なぜ隠す必要があるの?水道局は浚渫工事をしたくない?
石木ダムが必要という根拠の一角が崩れるから?

あえて水道局の立場に立って代弁するなら、全部焼けてしまったというわけではないが、ほとんど残っていないという意味だった、のかもしれません。

こちらは「佐世保市水道局蔵」と書かれた図面です。

こちらは、おそらく裏表紙に書かれていた防衛省防衛研究所蔵の図面でしょう。
確かに佐世保市水道局蔵のものは掠れて見にくいですし、数字等が読み取れないのかもしれません。

しかし、防衛研究所には、明瞭な設計図等が多数保存されていたのです。それを佐世保市教育委員会が掲載しているのです。水道局が本気で山の田ダムの浚渫や補修改修をしたいと思うなら、防衛研究所から図面を入手すればいいではありませんか。

いずれにしても、図面は存在しているのです。この事実を知った私たちは、佐世保市民に伝えたいと思いました。どうすれば広く伝えることができるか話し合いました。

これまでの経験でチラシ配りなどではごく少数にしか伝えられないし、SNSに発信にしても信憑性を疑われるかもしれないし・・やはり、新聞テレビ等、報道機関に頼るのがいいのではないか。

記者の皆さんなら、広い人脈や知識を駆使して、あちこちに取材し、この資料の重要性や、これまでの水道局の説明との関係性など、適切に伝えてもらえるのではないか。

ちょうど再評価に関する要請書提出の件で1月9日に記者会見を予定していたので、その席で発表しよう、ということになりました。

ところが・・・
記者の皆さんはあまり驚くこともなく、質問も、これをなぜ経営検討委員会に送ったのかとか、水道局には確認したのかとか・・予想外の反応でした。案の定、当日や翌日のTV新聞で、この件を報じたところはありませんでした。
(1人だけ、この資料を貸してほしいと持ち帰った記者がいましたが)

そう言えば、宮本さんの講演で、県の嘘(川棚川流域に当時雨量計がなかったから佐世保のデータを使ったと説明していたが、実は雨量計は有った)が明らかになったときも、それを報じたのは1社だけでした。

私たちが考える「知るべき&知らせるべき情報」と、記者さんたちの考えるそれとは、かなりズレがあるようです。このズレは年々大きくなっているように感じるのは気のせいでしょうか?

だとしても、幸い今は誰もが発信できる時代です。

この図面発見!が重要な情報だと感じた方は、拡散していただければ有り難いです。

皆さんのご協力をお願いします。

ものは言い様?

今日の西日本新聞 長崎・佐世保版に「石木ダム 論点溝深く」という見出しの記事が掲載されました。


深い溝とは、行政と識者の見解の相違のことです。

著作権の関係で記事そのものは転載できませんが、
先月、佐世保市で開催された石木ダムについての講演会。その講師(元国交省河川局防災課長・宮本博司氏)が示した石木ダム計画に関する様々な疑問点の中から、4つの論点について、記者が行政に取材し、両者の見解をまとめてくれました。

講演を聴いた私たち県民の多くが知りたかった内容です。

その一部を紹介すると、    


例えば、雨量計の存在の有無です。

川棚川治水計画の前提要件となる平均雨量を算定するのに、なぜ県は川棚川流域の雨量ではなく、遠く離れた佐世保市内のデータを使ったのか?

裁判のとき「昭和22~60年、川棚川流域に雨量計がなかった」からと説明していたが、実際は有った!こんな嘘は治水計画の根幹に関わることで許されない。

というのが、元国交省で全国のダムの査定をしていた専門家の見解ですが、それに対する県の見解はこうです。

裁判で確かにそう説明したが、これは表現が適切ではなかった

はあ?! 有るものを無いと言ったのは「不適切」だった・・で済むのですか?
いやいや、真っ赤な「嘘」でしょ?

ものは言い様?

上波佐見と川棚の雨量観測資料の存在については裁判所に証拠として提出している。「うそをついた」というのは当たらない。

これも県の見解ですが、この説明は藪蛇でしたね。観測資料を提出していなければ、雨量計の存在は知らなかった。嘘をつくつもりはなかった、と言い逃れることもできたかもしれませんが、資料提出している以上、知っていたのは明白。
「有ったのは知っていた」のに「なかった」と説明したのは「嘘」以外の何ものでもありません。

また、ダムを建設する場所として、専門家の宮本氏は、

石木川は川棚川の下流部の支流で、こういう位置にダムを造ると、本流のピーク水位を高める恐れがあるので、反って危険。なぜなら、ダムが無ければ、下流部の支流は本流の水位がピークになる前に海に流れていくが、ダムで流れを止めていると、本流がピークになるころ、支流でもダムで止めきれなくなって大量の水が流れてくることによって、本流の水位がより上がってしまう。ダム建設場所の選定が根本的に間違っている。

と指摘。これに対する県の見解は、

本流が溢れないように河川を改修し、支流から流れ込む量を調節するためにダムを設ける。流域全体でさまざまな治水の手法を考え、石木ダムと河川改修の組み合わせが最適だと判断した。

と、説明。前段の流域治水は一般論としていいと思いますが、その後の「石木ダムと…が最適」という判断は何の答にもなっていません。

川棚川の河川改修とダムの組み合わせが最適だと判断したとしても、なぜ石木川のような下流の支流にダムを造ろうとするのか、それが間違っていると指摘されたのだから、なぜ石木川を選んだのかの説明が必要なのに、それには全く答えていない。

もしかしたら、答えられなかった?間違っていたと認めたくはないけど、でも、正当だと主張する根拠も見当たらないので、一般論で逃げようとした?

そんな邪推をされたくなかったら、やはり、堂々と県民や専門家の前で、しっかり説明してくださいね。河川課のみなさま!

知事の訪問に住民が応じない理由

「地元住民の声を聞こうともしない知事と会って話すことなどありません」
この張り紙は、こうばる住民が抗議の座り込みをしているテントに張られたもので、知事へのメッセージです。

「大石知事が11ヶ月ぶりに現地訪問」「住民側が拒否」「面会実現せず」
このような文言をテレビや新聞で目にした県民の皆さんは、どのように思われたでしょう。

・せっかく知事が訪問しているのになぜ拒否するの?
・張り紙には「住民の声を聞こうともしない知事」と書かれているけど、知事は声を聞きに来たのではないの?聞こうとしているんだから応じればいいのに…
・どちらも話し合いを求めているみたいだけど、どちらも相手が応じないと言っていて、さっぱりわからない。

こんなふうに感じた人も少なくなかったのではないでしょうか。
これまでの経緯をよく知らない方がそう思うのは当然かもしれません。
この機会に、これまでの経緯について、ぜひ関心を持ってください。事実を知れば、なぜこのような事態に至っているのか、ご理解いただけると思います。

昨年3月長崎県知事に就任した大石賢吾知事は、対話を重視する姿勢を示し、4月には住民と共にこうばるを散策し、「ふるさとは尊い」と語りました。
そのような知事に希望を感じた住民の皆さんは、8月と9月の2回、知事との話し合いに応じました。応じたと言うより、それは住民の皆さん自身の希望でもあったのです。

前知事中村知事には住民の方から何度も話し合いを求めていましたが、実現しませんでした。今度の知事ならちゃんと話を聴いてくれ、意見交換ができそうだ、そんな期待感が芽生えていました。

しかし、実際の話し合いは、これまでと同じで、県は県の論理で石木ダムの必要性を説明するだけで、住民の本当の疑問には答えようとしなかったのです。

例えば、治水面で言えば、県が想定する100年に1回の大雨が降ったとき、川棚川の山道橋付近では毎秒1400㎥/秒の水が押し寄せてくる。そうすると堤防から水が溢れ流域の家は浸水被害を被る。それを回避するためには、上流の野々川ダムで80㎥/秒、石木ダムで220㎥/秒の流量を減らす必要がある。

と県は説明するのですが、そもそも100年に1回の大雨というのが、降水量だけでなく、雨の降り方に様々なパターン(短時間でドバーッと降るとか、1日中満遍なく降り続くとか)があり、本当に1400㎥/秒の流量となるのか?これは過大すぎるという専門家の見解もあるのです。治水計画の基本となる数値が間違っていたら、ダムの必要性そのものが揺らぎかねないので、根拠が示されるまでは納得できませんよね。

また、利水面でも疑問はたくさんあって、住民側から多くの質問が出されたのですが、その話し合いの場に佐世保市が参加することはなく、県の職員が佐世保市の主張を代読するというごく形式的なものに終りました。

これでは話し合いの意味が無い。県や市の一方的な主張だけでなく、治水や利水の専門家も交えて公開の場でしっかりと議論したい、意見交換をしたいと住民の皆さんは求め続けているのですが、県はそれにはどうしても応じません。

それどころか、先日(12月5日)の県議会では、「我々としましては、今この時点においてダムの必要性を議論する段階ではないと考えております」との知事の答弁を聞き、住民の方はがっかりされました。

知事(=県)が求めている話し合いは、生活再建のこと。つまりダム建設が前提の話し合いであり、ダムの必要性について話し合いたいとの住民の要望は全く無視しています。
だから、「地元住民の声を聞こうともしない」と書かれてしまったのです。

知事、佐世保市長、あなた方には説明責任があります。
もう何回も説明したと言われるでしょうが、形だけの説明を何度やっても責任を果たしたことにはなりません。ダムのために犠牲を強いられる立場の住民側が納得する形の説明が必要です。
それは、公開の場で、地元住民だけでなく専門家も交えた、公正な議論の中で行なわれる説明です。

県も市も二言目には「ダムの必要性については司法の判断が出ている」と責任転嫁しますが、あれは「石木ダムの事業認定を取り消さなくてもよい」「石木ダム工事を差し止めなくてもよい」という判断に過ぎません。行政自らが改めて事業評価を行ない、石木ダム建設の是非を決めることに何ら問題はありません。

事業の見直しに遅すぎるということはありません。
大石知事と宮島市長の勇気ある行動を待っています。

石木ダム 手抜き工事宣言!?

12月5日の県議会、土木部長の答弁を聴いて驚いた。
それって、「手抜き工事宣言」ですか?

一般質問で、堀江ひとみ議員は、こう切り出した。
「石木ダム事業における測量設計費、30億円の予算に対し既に49億円使っていますね。予定額の1.6倍も使われた理由は何ですか」

土木部長は初め「事業の長期化に伴い、技術基準等の改定による設計業務、新たな調査手法を用いての地質の調査解析など、追加費用が発生していることから増額となっています」と答えた。

堀江議員は1974年(昭和49年)の石木川の河川開発調査結果を持ち出し、「一部に大きい透水箇所や湧水箇所が見受けられた」とあるが、この地質問題の調査が長引き費用が膨らんでいるのではないか?と質すと、

土木部長:ダムに水をためると水圧がかかります。地盤に亀裂が入っていると水圧でそこを水が抜けていく可能性があるので、その基礎処理工を今後していく必要があります。その範囲をどのぐらい対策をしなければいけないのか、それがまだつかめておりませんので、それを掴むための地質調査を進めているところです。

堀江議員:その地質調査はまだ終わっていないので、測量設計費にかかる費用は、これからもかかるってことでしょう?

土木部長:はい。増える可能性を持っております。ただ、その測量設計費が当初の予定より増えていることにつきましては、働き方改革ですとか、資材の高騰などいろんな影響がありますので、工事の進め方など検討していきたいと思っております。

堀江議員:資材高騰などで測量設計費が増えれば、総事業費もこれから増えるということですよね?

土木部長:いえ、建設費に係る予算のコストダウンなどに努めて、総額で収まるように、まずは努力して、令和7年度完成という姿勢も変えることはなく、工事の進め方などを検討してまいりたいと思っております。

堀江議員は来年度が石木ダムの再評価の年であることを確認した上で、再評価のあり方についても質した。

堀江議員:石木ダム事業の費用便益比B/Cは、再評価のたびにどんどん小さくなっています。2007年=1.43、2011年=1.27、2019年=1.21と。もしも今回費用が大幅に増えれば、1を下回る可能性もある。そうなると、石木ダム建設の意義そのものが問われることになる。それだけに、今回の再評価は重要であり、公正な資料に基づき、中立な委員によりなされるべきです。しかし、その再評価を行なう長崎県公共事業評価監視委員会は、県が選んだ委員によって、県が用意した資料を基に検討しています。事業評価のあり方として、専門家も交えた石木ダム事業に特化した委員会を設置する考えはありませんか?

土木部長:県公共事業評価監視委員会は技術分野を含め、様々な分野の専門家から構成され、幅広い視点でご意見をいただいています。また、令和2年には事業の必要性を認める司法判断が確定しており、石木ダムに特化した委員会を設置する考えはございません。

堀江議員は、県民の間から、石木ダム事業については特化した委員会を持つべきという声が寄せられているので、今一度検討してほしいと要望し、知事への質問に移った。

堀江議員:昨年9月以降、知事と反対住民との話し合いは途絶えたままです。信頼関係を築くために、工事を中断して話し合いをする考えはありませんか?

知事:昨年9月以降、話し合いには応じていただいておりませんので、職員が毎月お話し合いのお願いを続けております。今後もご理解いただけるように努力はしていきたいと思います。

堀江議員:ご理解をいただく努力というのは何を指しているのですか?今回補正予算で提案されている石木ダム基金のことですか?住民との対話を模索するのではなくて、反対地権者を協力感謝金で事業推進に変えようと考える、その知事の姿勢が問われているのですよ。

知事:基金については、生活再建に向けた支援や地域振興策に関して準備するものです。理解を得る努力については、私も話し合いを望んでいますが、住民の方からは「ダムの必要性を議論をしなければ、話し合いには応じることができない」ということでした。我々としましては、今この時点においてダムの必要性を議論する段階ではないと考えておりますので、そこの理解が得られてないものと思います。

この日の土木部長や知事の答弁で分ったことをまとめると、

1.ダムの必要性を見直す時期は過ぎた。今はダム完成に向け前進あるのみ。地元の方とはダム完成後の生活再建について話し合いたい。

2.石木ダム建設予定地の地盤には透水性の高い箇所がある。

3.その対策処理工事をするために地質調査を継続中で、その費用は今後も増えるだろう。

4.地質調査費は測量設計費に含まれており、測量設計費は既に予算額の1.6倍も使っているが、増額の原因は地質調査だけでなく、人件費や資材の高騰もある。

となれば、人件費や資材の高騰による予算増は測量設計費に限ったことではないので、当然本体工事費も増額となり、総事業費はいかほどになるのか…と誰もが心配になる。ところが土木部長は、

5.建設費のコストダウンに努めて、総事業費は予定額の285億円で収めたい。

6.工期も変更せず、令和7年度完成とする。

とおっしゃっている。

言い換えれば、「測量設計費に使い過ぎちゃって、さらにまだお金がかかりそうなので、建設費を削ります~」ってこと?
どうやって削るのか?

石木ダム事業費内訳書の資料を見ると、測量設計費は昨年度末時点で約19億円オーバーしている。まだ増えるとのことなので、最低でも20億円は増えるとして、では、工事費86億円から20億円削るのか?だとしたら23%ものコストダウン!

人件費や資材費が高騰している中でそのような大幅な減額はあり得ない。あり得るとしたら手抜き工事しかない。鉄筋を10本打つべきところを8本にするとか、コンクリートを10t使うところを7tにするとか、10人で作業すべきところを6人でやっつけるとか…

また、工期も変更しない(令和7年度までに完成)とのことだが、現在の行程表では、ダム本体工事を令和6年度までに完成し、令和7年度は試験湛水をやって水圧に耐えられることや漏水がないことなど全てのチェックを終える、その完成予定が7年度である。

まだダム本体は影も形も見えていないのに、あと1年と4ヶ月足らずでダム本体を完成させるというのか?

「石木ダムは手抜き工事で建設します!」と宣言しているようなものだ。

手抜き工事の結果、何が起きるのか?
ダム湖からの水漏れであったり、堤防のひび割れであったり、そのひび割れが地震の揺れで大きくなり、ついには決壊したり・・・などという可能性に繋がる。被害を被るのは下流域の川棚町民。

ハテ?
石木ダムは川棚町民の安心安全のための公共事業ではなかったのか???

市長からの回答…まるで判じ物

今日の西日本新聞にも掲載されていますが、佐世保市内の4団体が市長との対話を再要請しました。

なぜ再要請したかと言うと、何回読んでも市長の回答文書が意味不明だったからです。

経緯はこうです。

7月10日、4団体、石木ダムについて市長との直接対話を要請。
20230710宮島市長への面談要請書

7月31日、市長、4団体に回答。
20230731市長からの回答

8月15日、4団体、市長へ直接対話を再要請。
20230815市長への質問と再要請

 

私たちのの要請事項は単純明快「石木ダム建設について私たち市民との直接対話の場を設けてください」でした。

それに対する回答文書は「石木ダム建設推進の立場を踏まえ、大石賢吾知事と歩調を合わせつつ、状況に応じて適切に判断しながら対応してまいりたいと考えております」でした。

 

これでは、対話の場を設けるとも設けないとも書かれてなくて、どう理解してよいのやら…。

読めば読むほど、まるで判じ物のようでした。

 

「大石賢吾知事と歩調を合わせつつ」やるのなら、市長も知事と同じように私たち4団体と「対話します」となるはずなのに、そのようには書かれていない。また「対話をしません」とも書かれていない。

「状況に応じて適切に判断しながら対応」すると書かれているだけ。具体的にどういう対応をなさるのでしょう?

状況に応じて…いろんな状況があると思いますが、いま市長は市民団体から対話を求められている状況です。

その状況に対する適切な判断とはどうあるべきか、もしや迷っておられるのでしょうか?それで、対話するともしないとも答えられない?

迷う必要はないと思います。

なぜなら、知事は「皆様のお考えを佐世保市に届けることも重要なことだと思います。市の方でもしっかりお答えされると思いますので、よろしくお願いいたします」と私たちにお願いされたのですから。

私たちはその知事の意向も踏まえて今回の要請を行なったのです。

私たちの要請を断ることは、知事と歩調を合わせるどころか、知事の意向に背くことになるのではないでしょうか?

そして、ご自身の政策(市民との対話を深化させ市民目線の市政実現)にも逆行し、市民の期待を著しく損なう結果になってしまうでしょう。。。

 

 

生活再建に向けた基金創設!?

7月20日、大石知事は佐世保市の宮島市長とトップ会談。少子化対策をはじめ、医療提供、IR誘致、石木ダム等々の課題について非公開で意見を交わした。

その後の会見で判明したこととして、注目の石木ダムについて毎日新聞が詳しく報じている。 記事によると、両者の共通認識(石木ダムは必要不可欠)を踏まえた上で、大石知事から次のような提案が示された。

●建設予定地住民の生活再建に向けた基金を創設する。

●基金は県・佐世保市・川棚町が対象で、連携し協議する。

●建設反対住民については理解を求める努力を継続する。

 宮島市長はこれまで通り「県と連携し取り組んでいく」と話したと書かれているので、知事の提案通り、基金創設に向かうのだろう。

ちょっと待った!これでは本末転倒ではないか。

住民の皆さんが求めているのは、お金ではない。ダムの必要性についての真摯な話し合いと公正な検証だ。

かけがえのない故郷への愛着と誇り、守り続けてきた先祖への感謝と継承責任。これらを乗り越える必要性を示して欲しいのだ。

それには応じないで、生活再建のためと称して目の前にお金をぶら下げるとは、住民を貶める発想だ。

長崎県や佐世保市の考える解決策とは所詮そんなものなのか…

住民の皆さんにとっての幸せはお金では買えない。だからこそ半世紀も闘い続けているのに、その想いが何故未だに理解できないのか不思議でならない。

今日の長崎新聞を知事や佐世保市長も読んだだろうか?

石木ダム工事のため、半分近くの田んぼが破壊されてしまったKさん。ショックと悔しさを乗り越え、子や孫や親戚の人と力を合わせ、残った田んぼに今年も稲を植えた。

その孫は「ばあちゃんがここを守っている。できるかぎり続けていきたい」と語り、Kさんは「秋の稲刈りもみんなで集まりたい」と願ったそうだ。

Kさんの幸せ、こうばるの皆さんの幸せを奪うほどの必要性が本当に石木ダムにあるのか。

まずはそれに向かい合うこと。

住民の皆さんの疑問に真摯に答え、説明責任を果たすこと。

その結果ダムの必要性が理解されたなら、その後で生活再建の話、お金の話などをするべきだ。順番が逆になると、お金が欲しくてダム建設を容認したと誤解する人々も少なくないだろう。

誇り高きこうばる住民にとっては、ますます容認し難くなる。

それが予想できないなら、半世紀に及ぶ闘いで県は何も学んでこなかったことになる。

予想できて、敢えて打ち出したのなら、その意図は何なのか…