3月6日あいにくの雨の一日。
それでも、約160人の傍聴人が集まりました。
関係自治体から約30人、
地元住民と5人の専門家(治水・利水・環境)で約40人との新聞報道でした。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/230230
ということは、合計230人!
私たちが用意した資料は200部でしたから足りないはずです。
あわてて住民席から回収し、傍聴者に渡したりしましたが、それは嬉しい誤算でした。
初めに県から、石木ダム建設事業の検証について、
これまでの検討の場で「検討」してきた内容についての説明が30分弱ありました。
続いて、この日の最大の目的である地権者の意見発表です。
初めに口火を切ったのは、やはりI・Kさん。
1972年の予備調査の時から、県や町に騙され続け、裏切られ続けた歴史を披露しました。
また、アメとムチを使って地域の融和を破壊し、親族を分断された悔しさを語り、
なぜ自分たちが佐世保の水の犠牲にならなければいけないのか。
いま現に生活できている水があるのに、それ以上余分に欲しいというのなら、
自分たちのところに造ればいいではないか!と、声を震わせました。
次にマイクを持ったのは、I・Sさん。
彼女はお嫁に来て間もなくの頃の、強制測量のときの恐怖を語りました。
鉄人28号のような機動隊が大勢来て、男も女も子どもも年寄りも闘った、
まさに戦場のようだった…と。
(前列の有識者の皆さんも涙・・・)
終わりのないダム計画に私たちはいつまで苦しまなければならないのか!
あなたたち職員は2〜3年で代わるけど、私たちは代われないのです!
私たちは川原から絶対出て行きません!
と、訴え、大きな拍手がわきました。
次は、I・Iさん。
彼は、国や県の借金の話から始めました。
私たち国民・県民がどれほど莫大な借金を抱えているか。
破たん寸前の借金を抱えながら、なぜダムを造り続けようとするのか?
2009年末、長崎新聞の県民アンケートによると、石木ダムが必要と答えた人は、約14%。
2割にも満たない人しか希望していない事業に、公益性があると言えるのか。
しかも、県は540万ものお金を「石木ダム建設対策費補助金」という名目で、
既に移転した人々へ支払い続けている。
いわゆる見返り、飲ませ、喰わせ、タクシーチケット、土産付き視察旅行などなど。
傍聴者の皆さん、あなたの税金ですよ、納得いきますか?しかたなかですか?
すごい説得力でした。I・Iさんを再発見した感じでした。
次に手を挙げたI・Kさんは、ダムが自然に及ぼす影響について語りました。
県内の雪浦ダムや熊本の荒瀬ダムの事例を具体的に紹介してくれました。
ダムができると洪水はなくなる、観光客が増える、電気代は安くなるetcと言われたけれど、
現実は逆だった。
洪水被害は酷くなり、観光客が増えるどころか、アユ漁が衰退して人口は4分の1に減ってしまった。
昨年ダムの撤去が決まって、ゲートを全開してからは、清流が戻り始め、貝やウナギ漁も復活。
ダムは百害あって一利無し!と言いきっておられるとのこと。
傍聴者も真面目に聴きいってました。
続くIさんは、代替案のコストへの疑問(採石場跡地利用の場合の残土処分費が高く見積もられている)を提示し、最後のSさんは、こんなでたらめな検証検討案を誰が書いたのか?
自分たちがこれまで訴えてきたことは何も検討されてないではないかと追及しました。
この6人の皆さんの話はどれも信頼に値する深い説得力を持って、傍聴者の心に届きました。
ヤジ・拍手は禁止との注意書きを配布しているにもかかわらず、司会者も制止できず、
度々拍手の嵐が起こりました。
つづいて、ようやく専門家による石木ダムの検証が始まったのは、すでに開始から半分以上の予定時間が過ぎてからでした。
京都大学名誉教授の今本先生は河川工学と防災工学がご専門で、
素人には難しい言葉やグラフを提示しながらも、要所要所では噛み砕くように話して下さいました。
長年ダムに関わってきて、その経験から自信を持ってこのように話されました。
日本中のあらゆる川にダムを造り続けて、もう造るべき適地は残っていない。
今造ろうとしているダムは適当でない場所にあり、石木ダムも然りだということです。
最後に今本先生が伝えたいとおっしゃった言葉がこれでした。
治水に関して、水源連の嶋津氏からもパワーポイントを使って具体的な意見が出され、
その後、県側と今本先生・嶋津氏・遠藤氏の激しい議論が展開されました。
続いて、利水に関する話。佐世保市民としては興味津々で聴きました。
このように、実績値と予測値の大幅なかい離を示され、佐世保市水道局はどう説明するのでしょう?
こちらは、平成19年度の渇水時期(減圧給水実施)に、不安定水源から、
20,000〜30,000トン近い水が取水されていたことを示すグラフです。
このまとめに対して佐世保市水道局の答えは、
水需要予測が実績と大きく離れていることは感じているが、それは今経済が落ち込んでいるから、
今は普通ではないのだ。景気が回復したら必ず水需要も伸びる。
これから工業団地や外国航路やハウステンボスや様々な需要拡大の計画があり…
などの説明に会場からも「絵にかいた餅だね〜」と失笑が漏れました。
また、佐世保市議の山下氏は、利水の転用など検討したのか?
佐々川の流量を何故調べなかったのかなどと迫りました。
しかし県は、佐々川にも新たな水利権を確保できる余裕は全くないと突っぱねました。
最後に環境カウンセラーで、川棚川水系整備計画検討委員会の副委員長でもあった川内野さんは、
今回の環境影響評価は、石木ダム建設事業を進めるための「アワスメント」でしかないと結論付けました。
環境「アセスメント」ではなく「アワスメント」
つまり、自分たちに都合のいいように合わせるという意味なんだそうです。
な〜るほど。ぴったりですね。
環境だけでなく、治水も利水もアワスメントそのもの・・そのように感じた人は多かったと思います。
新聞・TV等の報道では、「平行線」という見出しばかりでしたが、
傍聴席の反応はそうでもなかったですよ。
今まで、気持ち的に反対してたけど、現実的にも造る必要はないらしいということがわかったので、
自信を持って反対と言えるので嬉しいという感想などいただきました。
ユーチューブへのアップができましたら、またお知らせいたします。