第1回 市民による石木ダム再評価監視委員会

大雨警報発令中の7月15日、いよいよ第1回「市民による石木ダム再評価監視委員会」開催です。

委員の中には悪天候で辿り着けないことを心配して前泊された方も…。

足下の悪い中、会場には約50人の傍聴者。


開会のあいさつをする「石木ダム事業の公正な再評価を求める市民の会」共同代表の深澤 奨さん 
市民による石木ダム再評価監視委員会 第1回 事務局のあいさつ (youtube.com)

いよいよ開始です。

まず始めに委員長の西島さんから、始めの言葉。
・公正な再評価とはどういうものか
・過去の県による石木ダム再評価は公正だったか?
・今回の再評価を公正なものにするためにはどのような資    料や説明が必要か?等々について、これから専門家委員に解説してもらいますと。市民による石木ダム再評価監視委員会・委員長のあいさつ (youtube.com)

 

ここで 、この「市民による石木ダム再評価監視委員会」の委員の皆さんを紹介します。委員紹介・市民による石木ダム再評価監視委員会04

 

まず初めのテーマは、治水です。
はじめに今本委員、続いて宮本委員の順に話していただきます。

今本博健委員:粗度係数の見直しが必要

今本・治水説明資料20240715

自然の河川は凸凹ガタガタしているので、不等流計算によって水位を算出する。その際に必要なのが「粗度係数」だが、長崎県が設定した粗度係数には大きな疑問がある。何故なら、その算定に必要な洪水観測を一度も行なっていない。

さらに、河川改修により粗度係数は減少しているはずで、その妥当な係数を使えば、石木ダムが無くても、水位は堤防を越えないか、超えるとしてもごく僅かで、その部分の堤防を高くすることで対応できる。

石木ダムのように必要性の乏しいダム計画をこれ以上長引かせてはならない。今度こそ県の評価委員は真剣検討し、結果出しいただきたい。再び「継続」いうのであれ私達議論してほしい学者して専門家して使命議論してほしい。
市民による石木ダム再評価監視委員会・今本博健氏 (youtube.com)

 

宮本博司委員:長崎県の治水計画に信無し

宮本・治水説明資料20240715

川棚川流域平均雨量の求め方がおかしい。流域内の複数地点の実際の雨量データを用いて平均値を算出すべきなのに、県は「過去の実績データの相関から、佐世保の雨量の0.94倍」としている。

何故そんなことをするのか?県は裁判でこう説明している。「川棚川流域には昭和22年から昭和60年まで雨量計がなかった。だから、佐世保の雨で計算しました」と。

しかし、データはあった! 昭和22年から、川棚町役場と上波佐見にデータがあった。昭和49年からはさらに波佐見に2箇所ある。(裁判で嘘を言った!?)川棚川流域の平均雨量を佐世保の0.94と定義づけるのは全く不合理です。

この雨量を基に洪水計算をするのですが、そのときに流出モデルを作ります。このモデルを実際に降った雨で検証する必要があります。それを検証するためには、まず基準点の山道橋と、それから石木ダム地点での流量観測が必須です。ところが、石木ダム地点の流量観測のデータが無いんです!

ダム地点と基準地点の洪水ピーク時間が一致することになっているが、それはあり得ない。この小さな石木川流域に降った雨と、その8倍もある川棚川流域に降った雨が同時に到達するはずがない。仮にピーク時が2時間ずれれば、石木ダムがなくても安全に流れます。

川棚川河川整備計画では、石木川合流点よりも下流は100年に1回の大雨に対応し、上流は30年に1回の大雨に対応することになっている。そうすると、たとえば100年に1回の雨が流域全体に降った場合、上流では30年に1回の雨にしか対応できないので水が溢れる。そうすると、基準点の山道橋には1400tも流れてくるわけがない。

このように、長崎県の治水計画は全く信用できない。こういった点について今まで全く議論されてこなかったことがおかしいし、今回はきっちり説明していただきたい。

今本委員:宮本さんにちょっと伺います。長い間、宮本さんは建設省でダムを造るかどうかの審査をされていた。今もしそういう立場にいたら、石木ダムをどう審査されますか?

宮本委員:私も今まで何百というダム計画を作ったり見たりしてきましたが、これほどあきれる計画はないですね。さきほど、「県は昭和21年から60年までは川棚川流域内に雨量計がなかったと言っていたが、実は昭和22年から2箇所あった」と言いました。昭和23年に大きな洪水があったんですが、実はその時、その2箇所の平均雨量と佐世保の雨量とを比較して分析してるんです。ということは、知らなかったんじゃないんです。知っていて、わざわざ佐世保の雨を使ってるんです。これは、うっかりミスではなく、虚偽です。で、私がこういう説明を受けたなら…「蹴飛ばすぞ」と言いますね。本当に。それほど酷いですね。
市民による石木ダム再評価監視委員会・宮本博司氏 (youtube.com)

~~~会場が笑いに包まれたところで10分間の休憩~~~


委員長:
では、利水について富樫さん、お願いします。

富樫幸一委員:水需要予測は捏造?
       慣行水利権は安定水源!

02富樫・利水説明資料20240715

 

2012年の水需要予測はあまりにもひどかったが、2020年の予測もかなり操作されています。
人口が減っているのに平均給水量を横ばいにし、負荷率を操作することで一日最大給水量を大きくしています。近年の負荷率は90%前後なのに、予測では平成11年度の80.3%を採用している。これは、やってはいけない操作です。

石木ダムで新規水源を開発した場合、ダム本体よりも関係施設の建設費の方がはるかに大きいので、水道事業会計にとって大きな負担となり、料金の値上げを迫られます。人口減少、給水量の減少を考えれば、ダウンサイジングこそが必要です。

佐世保市は慣行水利権の扱いについて一般的な解釈とは異なる説明をしています。慣行水利権は河川法以前から認められた権利ですが、市は水源としてカウントせず、保有水源量を意図的に減らし、その結果石木ダムが必要と主張しています。

ところが、市が不安定と定義した三本木、四条橋、岡本の3つの水源は互いに補完し合っており、2007年度(渇水年)でも平均15,000m3/日~20,000m3/日程度の取水を続けていました。

現計画(石木ダム建設、河川自流水依存の慣行水利権放棄)を進めるなら、大規模渇水時にダムは役に立たないので、最も頼りになる河川自流水からの取水ができなくなり、渇水被害は今よりも厳しくなるでしょう。
以上です。
市民による石木ダム再評価監視委員会 利水の課題について (youtube.com)

 

 

谷委員(公募):慣行水利権とはどのようなものですか?

 

富樫委員:明治時代に河川法ができる前から既に取水が認められていた権利です。既得権ですね。許可水利権と同等の権利です。むしろ安定水源と言うべきです。

委員長:市は水利権水源が足りないから石木ダムが必要だと言ってるわけですが、そこには慣行水利権はカウントされてないってことですか?

富樫委員:そうです。佐世保市は慣行水利権を不安定な水源として扱っているので。しかし、それは学会では通用しない。慣行水利権も水源としてカウントするのがスタンダードです。

委員長:谷さんは佐世保市にお住まいですが、一人当たりの水の使用量が今後増えるという市の予測についてはどう感じていますか?

谷委員:家庭では節水タイプの機器が増えているし、もともと佐世保市民は節水意識が高いし、水道料金のことも考えると、今後使用量が増えていくという予測は不自然に思います。

委員長:ありがとうございます。
では、次は地質の問題について、宮本さん、お願いします。

 

宮本委員:ここはダムの適地ではない!

宮本・地質説明資料20240715

石木ダムの下流約100メーターぐらいのところに、今は既に埋め戻されているが、深さが50メーターぐらいの採石後の大きな穴がありました。

透水性を示すルジオン値とは、岩盤の中に水を押し込んだときに、どれだけ水が漏れるかということです。赤い表示は20を超えることを示していて、それは漏水が非常に多いということです。それがこのダムサイトには結構たくさん存在しています。

通常ダムよりも漏水対策費が格段に高くなることは間違いない。この漏水対策費が適正に計上されるかどうか、これが一つのポイントだと思います。

それ以上に気になるのが地下水位です。ダム湖周辺の地下水がダムの最高水位よりも低い場合には、ダム湖の水がダム湖の外に漏水するんです。

私が昭和53年に建設省に入ったときに、私は上司から言われました。「ダムをどこに造るかを判断するときに、まず真っ先にチェックしなきゃいかんのは、地下水位がダムの最高水位より高くなってるということが絶対条件だよ。これが低かったら、いくら漏水対策しても貯水池から水が漏れるから、絶対そんなとこにダムを造ったら駄目だよ」と教えられました。

これが、石木ダムの地質断面図です。常時満水位というのは、ここまで水道の水を溜めますよという位置です。この赤い線が地下水位線です。こんなに低い。これは致命的です。ダムの技術者ならダムサイトとしては選定しません。

ただし、貯水池の周りを全部漏水対策すれば可能かもしれませんが、そのときには膨大なお金がかかります。今のまま突き進んだら、そういうことになります。これは今までの裁判でも全く指摘されてないけれども、非常に重要なポイントです。
市民による石木ダム再評価監視委員会 地質の問題について (youtube.com)

 

委員長:ありがとうございます。続いて、つるさん、環境について説明してください。

つる詳子委員:生物保全に対する長崎県の石木は半世紀前のまま!

02つる・環境説明資料20240715

 

川辺川流域の10分の1くらいしかないところに、こんなに多くの鳥類や魚類が!見間違いじゃないかと思うくらいびっくりしました。ところが県が保全を検討しているのは植物9種、底生動物3種、昆虫4種だけ!

鳥類で言えば、貴重な種が32種いるのに環境保全措置が必要な種はゼロ。それでいいのか?とりわけ猛禽類の存在を軽視している。生態系の頂点に居る猛禽類の棲息は、川原の平野地に多くの小動物が棲んでいる証。その平野部がダム湖となって失われればどうなるか…

また、石木川には25種の魚がいて、2008年時点では、その中にシーボルトが持ち帰ったと言われる15種が全て入ってました。ところが22年には13種がレッドリストに入っている!

ダム建設と河川整備計画はセットです。ダムができたところは、どんどんコンクリート化されていくんですよ。そのことによって生き物は住処を失いどんどん減っていきます。

生物保全に対する長崎県の意識は50年前のままであり、SDGsの理念からも完全に外れている。石木ダムは即刻中止しないと将来に必ず禍根を残すと思います。
市民による石木ダム再評価監視委員会 環境の問題について (youtube.com)

谷 委員:たいへん興味深く聴かせていただきました。住んでいるのは人間だけでは無い。鳥や魚や、微生物であっても同じ生きものとして共存共生しています。移植すればいいという問題ではないと思う。私は自然のサイクルを大事にしたいです。

 

委員長:次に石木ダム事業全体として捉えた場合の課題について、宮本さんお願いします。

宮本委員:費用対効果の算出は捏造?

資料 宮本・全体説明資料20240715

ダム事業治水利水一体なった事業あり、それを切り離して再評価するのは理解できない。2つの目的に合わせて、ダムの規模や、水没面積や、事業費が決まるのだから、総合的に検討しなければ正しい評価はできない。

事業費が変われば、費用対効果も代わるが、そのB/Cの算出方法がおかしい。

県は氾濫被害の解析をするときに、昭和50年当時の河道の状態で解析している。(当時の流下能力は毎秒587㎥だったが、現在は毎秒1130㎥の水を流すことができる)今の状態で計算しなければダムの効果はわからない。

また、100年に1回の大雨(1日に400mm)が降ると、石木ダムで7.3億円の被害軽減ができると言うが、雨の降り方9パターンのうち、そう言えるのは1つのパターンだけ。あと8つのパターンでは被害が出ない。つまり石木ダムの年平均被害軽減額は、7.3億円÷9で、わずか8000万円だけで、ダムの便益を過大に算定している。

利水はもっと酷い。佐世保市の説明では、2年後の令和8年には給水制限が年間293日もあると想定し、年間被害額は40億円という。あまりにも酷すぎるB/C算定。石木ダム計画は治水も利水も、ダムを造るための「捏造計画」としか思えない。

今回の再評価では、評価監視委員会でこれらのことをきっちり審議し、県はしっかり説明していただきたいと願っています。
市民による石木ダム再評価監視委員会 事業費・工期延長、費用便益比への影響などについて (youtube.com)

 

委員長:ありがとうございます。評価の判断指標の1つに「地元意向」いうものあるます今日は地元川原(こうばる)からも来ていただいてますので、お願いします。

岩本宏之さん:地元住民として伝えたいこと

こうばるは静かな中山間の集落で、初夏にはカエルの合唱、ホタルの乱舞、夏には町内外の子どもたちが石木川で遊ぶ、かけがえのない場所です。私達はここに住み続ける権利があります。

石木ダム事業の本当の目的は佐世保市の利水のためであり、治水(川棚川の洪水対策)は、国の補助金をもらうための付け足しです。

昭和47年、予備調査をするため、県が地元と交わしたの覚書の第4条には「調査の結果、建設の必要が生じたときは、改めて地元と協議の上、書面による同意を受けた後に着手するものとする」となっていますが、その約束はまるで無かったかのように、調査終了後の翌年、県は事業に着手しました。

あれから半世紀、この間、佐世保は平成6年の大渇水で断水が続きましたが、それ以降、断水は一度も起きていません。人口も減り、水需要も減り続けています。

すると県は、川棚川の治水が重要だと言い出しました。しかし、石木ダムでは近年各地で起きている想定外の豪雨には対応できません。ダムを造れば安心安全ということは絶対にありません。

ダムの必要性について知事と話し合おうとしても、「裁判の判決が出ているから話し合う必要は無い」と言われます。

私たちが抗議の座り込みを始めて14年になります。私たちはいつまでこの

行動を続ければいいのでしょう。このままでは蛇の生殺しです。

これまでに県は9回の工期延長を繰り返してきました。今回の再評価で継続となれば10回目です。また何年延ばすのか、また事業費を何百億円増額するのかわかりませんが、県の評価監視委員会は、県が示す資料を鵜呑みにするのでは無く、自分の目で現地を見て欲しい、住民の声を聞いて欲しい、費用対効果など時間をかけて審査し、自身の判断をしめしていただきたい。
市民による石木ダム再評価監視委員会 地元の意向 (youtube.com)

 

委員長:岩本さん、ありがとうございました。それでは、これで、まとめに入りたいと思います。

今日の委員会で明らかになったことを、市民委員会からの提言という形で提出し、県の委員会に公正な評価を求めていくということにしたいと思います。その柱の部分を確認しておきます。

一つは、今回チェックシートであげたような具体的な問題点、これをきちんと明らかにしてほしいという評価ポイントですね。

それから、そういうポイントについて判断するに際しては、やっぱりダム問題の専門家のサポートを得てほしいということ。やはり専門家だからこそわかる、読み込めることというのがあると思います。(鳥取県の中部ダムのケースなど参考にして欲しい)

それからもう一つ、石木ダム事業の特殊性(このままいけば、行政代執行=県職員が県民のに家や土地やふる里を奪うという、誰にとっても辛い状況に至ってしまうという特殊性)をふまえた上での慎重な審議が必要だということ。

このようなことを求めていくとうことでよろしいでしょうか?ありがとうございます。では今日の委員会はこれで締めさせていただきます。
市民による石木ダム再評価監視委員会 まとめ (youtube.com)

 

委員の皆様、傍聴の皆様、長時間たいへんお疲れ様でした!

みんなの思いが、長崎県公共事業評価監視委員会の皆様にも伝わりますように!!

オンライン署名にぜひご協力ください!

石木ダム建設は説明不足。長崎県は一度立ち止まり、
公開討論会を開いてください。(Change.org)

ほかにも、こうばるを守るためやっていただけることがあります。

→あなたにできること

「第1回 市民による石木ダム再評価監視委員会」への1件のフィードバック

  1. 令和元年度第 2 回長崎県公共事業評価監視委員会の議事録を読み返してみましたが、
    審議時間たったの1時間半、そのほとんどが県側の説明に費やされ、「有識者」委員の質問も本質を突くものはありませんでした。「監視」とは名ばかりの、事業を継続させるための形ばかりの委員会、と評されても仕方ないでしょう。
    今回の、市民による再評価監視委員会では、専門家の委員のみなさんから具体的なデータを基に様々な問題点が指摘され、宮本委員からは「石木ダム計画は治水も利水も、ダムを造るための「捏造計画」としか思えない」と断定されています。
    県があくまでも「継続」を主張するのであれば、「捏造計画」ではないことを証明するきちんとした反論をすべきだと思います。

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