石木ダム共有地権者、長崎県と佐世保市に『覚書』履行を要請

あまり知られていないが、石木ダム建設予定地には共有地が2ヶ所存在する。
半世紀にわたりダム建設に反対し、ふるさとを守り続けている川原住民を支えたいと思う人たちが、1つは2009年に、もう1つは2013年に住民の方の山林の一部を共同で所有することにした。

その共有地権者の中の84名が長崎県知事と佐世保市長へ要請書を提出した。代表の遠藤保男氏が横浜から来県し、6月6日に県庁、7日に佐世保市役所を訪れ、担当者に手渡した。その要請書はこちら。
石木ダム事業起業者への要請:長崎県へ
石木ダム事業起業者への要請:佐世保市へ

その趣旨は「覚書の遵守」、つまり「石木ダムの必要性について川原住民との話し合い」を実行するようにということ。

 
8日の朝日新聞の記事がこの要請の目的をしっかり伝えているので、一部抜粋させていただくと、

覚書は1972年7月、県が石木ダムの予備調査を始める前に住民側と結んだ。「建設の必要性が生じたときは、協議の上、書面による同意を受けた後着手するものとする」と明記。久保勘一知事(当時)と、住民の代表3人が署名押印した。ただ、県は3年後の75年、事業に着手。2021年9月に本体工事を始めた。 

6日に県庁を訪れた共有地権者らが県に指摘したのが、この覚書の「不履行」だった。

「石木ダム建設絶対反対同盟を支援する会」の遠藤保男代表は「同意していないのに収用地での工事が強行されている」と指摘。地権者の松本美智恵さんは「県と地元の対立の原点がこの覚書の反故だ」と語った。 

覚書は、住民らがダム関連工事の差し止めを求めた訴訟で論点の一つになったことがある。21年の二審・福岡高裁判決は、覚書があるにもかかわらず、地元の理解が得られていないと指摘。「今後も理解を得るよう努力することが求められる」と見解を示し、県に合意形成の必要性を説いた。 

事業主体の県はどう考えているのか。県土木部の担当者は取材に対し「覚書は今も有効で、履行している」と述べ、覚書に違反する手続きはとっていないとの認識を示した。長年、説明会の開催や戸別訪問などで事業への理解と協力を得る努力を続けてきたとしている。 

 覚書は今も有効で、履行している?!
なんと不可解な回答だろう。

「覚書を履行している」のが本当なら、住民がダム建設に同意した文書が存在するはずで、それを提示して欲しい。

それが存在しないならダム建設は諦めているはず。しかし、現実は同意文書もなく、ダム建設は進めている。

どうして「履行している」などと言えるのだろう?

一方、「覚書は今も有効」とのこと。よかった!

では、これからも覚書について、私たちはしっかり県に問い続け、履行を求め続けよう。(*’▽’*)


マスコミ各社のオンライン記事はこちら。

NBC長崎放送:石木ダム建設反対の市民団体 知事との話し合いを要請
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/nbc/530101?display=1

KTNテレビ長崎:石木ダム建設は必要ない」市民団体が話し合いの場を要請
https://www.ktn.co.jp/news/detail.php?id=20230607008

朝日新聞:石木ダム「地元の了解なしにつくらない」半世紀前の「覚書」はいま https://digital.asahi.com/articles/ASR6774P6R67TOLB00C.html?iref=pc_photo_gallery_bottom

毎日新聞:「知事と話し合う場を」石木ダム反対、市民団体が要請書 https://mainichi.jp/articles/20230607/ddl/k42/040/379000c


オマケの写真と呟き。ここは水道局庁舎内。要請のための会場確保を待っているところ。

1週間前に代表本人から要請書を提出に行くので会場を確保しておいて欲しいと電話で依頼していたにもかかわらず、会議室はみな埋まっていて確保できなかったとのことで、その会議が終わるまで約1時間も待たされた。

遠来の代表はじめ参加者の多くが70代前後の高齢者ばかり。宮島市長は就任会見で、「対話を重視した市政をつくりたい」と語っていたはずだが???

今 こうばるで何が起きているのか

言い換えれば、県は今こうばるで何をやっているのか、ということ。
この事実を多くの県民に知ってほしい。そして考えてほしい。
これが許されることなのかどうか。

田畑への土砂搬入

田への水路破壊(上:水が流れている 下:石や土で水路を埋めてしまった)

川の破壊

墓石も土砂に埋まりそう

3月22日午後、長崎県は川原(こうばる)住民3世帯の方の田んぼに、重機でいきなり土砂を搬入し、イノシシ除けの防護柵を撤去し、用水路まで破壊しました。「来週は田植えのための田起をしようと思っていた矢先だったのに…」と皆さんは肩を落とし、他の住民の方々と共に、県に抗議しました。

・強制収用した土地だからといって、予告無しに何をやってもいいのか?

・田畑を破壊するのは生活基盤の破壊だ。

・私たちに「耕作するな」と言うのは「生活するな」と言うのと同じだ。

・防護柵はイノシシ除けに私たちが設置したもので私たちの所有物。無断撤去はできないはず。

しかし、県は謝罪するどころか反論しました。

・皆さんには2月の時点で既に「事業用地内での耕作など」しないよう求めた文書を送付済みである。

・我々は県民の安心安全のため石木ダム工事を工程通り進める必要がある。

 

県や佐世保市など起業者(行政)の主張はいつもそうです。

・石木ダムは県民の安心安全のために必要であり、早く完成させねばならない。

・我々は土地収用法などの法に則って手続きを進めている。

 

法に則っていれば全てOKなのでしょうか?

法律の中には古くて時代に合わなくなったものもあるし、時の権力者によって都合良く解釈されたり、改悪された法律もあります。

法律は絶対ではありません。
全ての国民にとって則るべき最高法規は憲法です。
長崎県のやり方は憲法に照らしてどうなのでしょう?

憲法29条は「財産権は、これを侵してはならない」と明記した後で、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる」とも規定しています。

石木ダムの場合がまさにそうだ。川原の方の私有地が石木ダムという公共事業のために必要だ。だから正当な保証金を支払って収用したのだから憲法にも沿っている。と、長崎県や佐世保市は主張しています。

が、その主張が正当なものであるとは、どうしても思えません。

理由その1.
石木ダムは本当に「公共のため」と言えるのか、そこに大きな疑問があるからです。もし現時点において公共性の低いものであれば、当然見直しが必要であり、そこを住民の方は問い続けているのに、行政側はそれに応じません。「司法の判断が出ている」とか「議論する段階は過ぎた」とか、第三者から見ればまるで検証することから逃げているかのです。

その2.
「公共事業は法に叶い、理に叶い、情に叶うものでなければならない」(下筌ダム反対運動の室原知幸氏の言葉)は、今や国交省のお役人が大切にしている言葉のようですが、長崎県のやり方は情を逆撫でしてばかりです。

当初の久保知事は覚書(住民の了解無しにはダム建設は行わない)を無視したまま事業に着手し、次の高田知事は機動隊を導入して強制的に測量し、その次の金子知事は話し合いをするためだと県民を欺き事業認定申請を行いました。

だからこそ石木ダム工事差止控訴審の判決文の中には「地元関係者の理解が得られるよう努力することが求められる」と書かれていました。(2021年10月:福岡高裁)

半世紀前に計画された石木ダムは今や必要性が欠如した賞味期限切れ事業なのですが、仮に石木ダムが本当に公共の役に立つ事業であったとしても、川原住民にとってはかけがえのない故郷、家や田畑、コミュニティを奪われるのですから、犠牲を強いられることへの反発があっても当然です。その認識があれば、起業者(県)は住民の理解が得られるまで何度でも話し合い、真摯に対応し続けるはずです。

しかし、長崎県の対応はそうではない。予告もなく水路を破壊したり田畑へ土砂を投入したり…そんな乱暴なやり方では、理解を得る可能性はますます失われるばかりです。

その3.
本当に法に則っているのか?ここにも疑問があります。
確かに県は川原住民の土地を強制収用し、明け渡し期限から既に3年が過ぎています。住民が明け渡さない場合は行政代執行して工事をすることができます。しかし、その行政代執行法によると、その手続きは次のように規定されています。

第3条第1項「代執行をなすには、相当の履行期限を定め、その期限までに履行がなされないときは、代執行をなすべき旨を、予め文書で戒告しなければならない第2項「義務者が、前項の戒告を受けてもその義務を履行しないときは、当該行政庁は、代執行令書をもつて、代執行をなすべき時期、代執行のために派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積額を義務者に通知すると。

今回の場合、そのような戒告文書も代執行令書も何も届けられずに、いきなりでした。代執行法違反の代執行だったのではないでしょうか?

また、行政代執行の実務(金沢河川国道事務所 用地第二課)によると、「戒告がなく,又は戒告が効力を生じていないにも関わらず代執行令書を発行しても,それは無効であり,代執行そのものも無効となる」と書かれています。用水路や田畑、イノシシ防護柵など全て元通りに戻すべきではないでしょうか。

また、『土地収用法の解説と運用Q&A』のQ463に対する回答欄にはたとえ占有者が無権原で収用地の占有を継続しているのであっても、無断で工事施工することはできない」と書かれています。

つまり長崎県は、土地収用法にも行政代執行法にも違反して強引に工事を進めているようです。

このような横暴な県のやり方を許しているのは私たち県民の無関心です。新聞やテレビが報じても、自分には直接関係ないことだからとスルーしてしまいがちですよね。それでいいのでしょうか?

昨日、長与町議の八木さんがツイッターで呟いておられました。

私の石木ダム反対活動に「長与町議は長与のことだけやれ」と言った人がいましたが、県税国税も投入されていて誰にも無関係ではない事業だし、何より長崎県が行っている以上、県内どの市町で同じ強制排除が起きても不思議ではなく、他町だからと許す人は自分の身に起きた時にも文句言えないですよ。

ホントにその通りだと思います。
他者への人権侵害を見て見ぬふりしていたら、いつか自分にもそのようなことが起きるかもしれない。自分だけでなく、家族や友人たちにも。そんなの困る!イヤだ!と思うか、自分の周りでは起こらないさと思うか、そこが要です。後者が多い現状では圧政も許されてしまいます。

もし自分が大切にしているものを権力によっていきなり壊されたり奪われたりしたら?そのとき自分一人で何ができるだろうと考えてみる。そんな想像力の有無が未来のあり方を左右するのではないでしょうか。
だから、私はこの問題に無関心ではいられないのです。

先月、佐世保で開催されたシンポジウムで斉藤幸平さん(哲学者で『人新世の資本論』)は語っていました「いつも犠牲になるのは少数派の弱者で、それを放置し続けた結果、公害や貧困、人種差別、気候変動等々さまざまな社会問題が山積してしまっている。これをなんとかするには、一人でも多くの人が共事者(当事者にはなれないけれど、関心を持って共に考える人)になることが必要だ」と。

忖度や同調圧力が蔓延し、自分の意見が持てなくなったり声があげにくくなったり…そんな時代だからこそ、少しだけ勇気を出して、佐世保市民にとって身近な公共事業『石木ダム問題』について、それぞれが関心を持ち、考えてみませんか。

そして、考えるためには、現場に足を運ぶことが一番です。
自分の目で見て感じてほしい。
いま川原で何が起こっているのか。
まずはそこから。

 

鯉のぼりと看板「緑のダムで!!治水も利水も 石木川ホタルの光 永遠に」

石木ダムアンケート 佐世保市議選立候補予定者の答は?

県議選が終わったばかりですが、佐世保市ではもうすぐ市長選挙と市議会議員選挙が始まります。
立候補予定の皆さんは石木ダム事業についてどう考えているのでしょう?

どうしても気になる佐世保市民の有志15名が「石木ダムに関するアンケート実行委員会」を結成し、調査を実施しました。

その結果はこちらに公開されています。
Facebook『石木ダムどう思う?アンケート』

アンケート用紙 ’23市議選立候補予定者アンケート
アンケート結果 市議選アンケート結果一覧表
アンケート結果のグラフ 市議選アンケート結果グラフ

まず、こちらのグラフをご覧ください。
市長選に立候表明しているお2人が、どちらも回答されなかったという事実。
これには、有権者の1人として、また、このアンケート実行委員の1人として、たいへん残念に思いました。

宮島氏も橋之口氏も、お二人とも石木ダム建設推進なので争点にならないのはわかっています。しかし、市民の世論は二分している中で市民の多額の税金や水道料金を投じる事業です。
なぜ石木ダムが必要なのか、疑問に思っている市民にご自身のお考えを伝えようとは思われなかったのでしょうか。

一方、市議選の方は、アンケート用紙を受け取った39人中、19人の方から回答が届きました。
約半数の方がアンケートに応じてくださったのは前回に比べると大変喜ばしいのですが、回答者の6割が無記名というのは、これまた、残念で、嬉しさも半減といったところです。

前回の市議選のときは石木川まもり隊がアンケートを実施しました。立候補予定者41人中9人の方が回答されたので、回答率は22%でした。今回は39人中19人が回答され、回答率は49%、大きく改善されました。

しかし、名前を記して回答された方について見てみると、前回は全員記名されていたので22%そのままですが、今回は39人中8人なので21%となり、ほとんど同じです。皆さんはこの結果をどう受け止めますか?

佐世保市議になろうという高い志のある方でも、石木ダムについて名前を出して意見を表明しにくい事情や雰囲気が議会や支持者の中に漂っているのでしょうか?立候補予定の皆さんは、そこを忖度して表明することができないのでしょうか・・・

さて、中身の方で私が気になったのはこちら。

ここ10年で水不足を実感しているか?との質問には、10人が実感していると答えました。
が、その中身はというと、

四半世紀前の大渇水のことだったり、最近の節水を呼びかける広報に接してそう感じたとか、IRや企業誘致のためには水が必要という意見だったりが大部分で、自分自身が水不足で困ったというような事例は皆無でした。
また、水不足を実感している人の中にも、石木ダムではなく、カタールのように海水淡水化による水源確保を考えている方がいたのは驚きでした。

水不足を実感していると答えた人の大部分が、Q.3の質問に「佐世保市の水需要予測は合理的である」と答えていました。

その水需要予測のグラフはこちらです。

右肩下がりの実績値に対して予測はいつも右肩上がり。予測は5~6回出されてきましたが、全て大外れ。それでも合理的な予測だと認める議員が多ければ、行政は安心ですよね。

このように、水不足かどうかも、将来の水需要も、行政の説明に賛同される方が多数派を占めながらも、石木ダム計画の「見直しが必要ない」と答えた人は7人です。回答者の37%であり、全体の18%に過ぎません。

さらに、石木ダムのためなら「行政代執行も仕方ない」と思う人は6人で、全体の15%に過ぎませんでした。

また、私が注目したのは、佐々川についての質問です。
知っているか否かにかかわらず、ほとんどの人が記述欄にコメントしています。

コメントを読むと、水利権の転用に賛同している人が6人、否定的なコメントが5人ですが、否定する根拠は「難しいと思う」とか「取水は困難と聞いています」など。
中には「転用可能な水利権は存在しないという事実(司法判断)は知っています」とのコメントもありましたが、そのような司法判断は出ておりません。何か勘違いなさっているようです。

皆さんが「存在しない」と聞いているのは県の説明だと思いますが、存在するかどうか現時点では不明です。その判断の根拠となる流量調査を今まさに県はやっている最中なのですから。まだ6年ほどかかるそうです。

「知らなかった」と答えた4人中2人は「今後も検討していくべきだ」「有効な手段の一つと考える」とコメント。

私たちは、このような議員を求めています。
石木ダムに限らず、何事も、行政の説明を鵜呑みにせず、
市民の声に耳を傾け、議会に届け、行政をチェックし、
佐世保の未来を切り開いていくために大いに議論して欲しい。

残念ながら、今の市議会は、そんな理想とはほど遠いのが実情です。
今回の調査で、立候補予定の現職議員の方にアンケート用紙を送ろうとしても、佐世保市議会のHPには、住所も電話番号もメールアドレスなども掲載されておらず、連絡の取りようがありません。
しかたなく議会事務局に持参して、なんとか届けることができました。

県議会のHPには、議員の住所や電話番号、議員HPのURLまで掲載しています。
雲泥の差ですね。

佐世保市議の皆さんは、まるで市民との対話を拒否しているようで、悲しくなりました。

今回のアンケートにお答えくださった皆さんには、ぜひ当選していただき、議会改革に乗り出していただくことを期待しています。

そして、石木ダムの賛否に関わらず、石木ダムについて市民と大いに対話していただきたい。
市議は市民の声を託された人なのですから。

ほんとうの豊かさとは何か

もうすぐです!

もうすぐ、斉藤幸平さんが佐世保にやってきます。そして「分岐点 佐世保の未来~ほんとうの豊かさとは何か」というテーマで講演されます。

『人新世の資本論』という素晴らしい著書を生み出した斉藤さん。気候危機を前にして、やっと見えてきた道標。水や電力、医療や教育などを公共財として民主的に管理するコモンという考えについて、じっくりお聴きしたいですね。

また、水ジャーナリストの橋本淳司さんには「40年後の水と未来」というテーマで語っていただきます。こちらも新しい情報盛りだくさんで、とても楽しみです。

私たちは、どんな佐世保の未来を創りたいのか・・一緒に考えてみませんか?

参加ご希望の方は、こちらまでお申し込みを。インターネットをやっていない方は、電話でも受け付けます。
(090-6171-5810)

さあ、佐世保で斉藤さんのお話が聴けるなんて、後にも先にも最後かもしれませんよ。ぜひお聴き逃し無きように!

坂本龍一さんを偲んで

3月28日、坂本龍一さんが亡くなった。音楽家としてだけでなく、人としての生き様に共感する多くの人々から、その早すぎる死を悼む声が新聞、テレビ、ネット上に溢れている。

私たちもその1人。石木ダム問題を考える「いしきをかえよう」の運動に賛同してくれた坂本さんが現地こうばるに足を運んでくれたのは、2018年3月25日のことだった。

この日午前、こうばる住民の案内で石木川のほとりを散策。

「川原のうた」の看板に足を止めた坂本さん。

川原公民館にて。住民の説明でダム反対運動の写真を眺める坂本さん。

午後、長崎市平和会館ホールにて、トークセッションに参加した坂本さん。坂本さんの左で手を上げているのは司会の津田大介さん。右側の笑顔の男性はパタゴニア日本支社長(当時)の辻井隆行さん。

このときの坂本さんの言葉で心に残っているのは、

一番下の子が生まれたとき、彼が二十歳になった時どういう世界になっているのだろうと思うと怖くなった。僕らが享受している自然とか水とかそういうものを、後の世代に残さないと大人として恥ずかしい。環境資源は有限だから、使えばなくなる、僕らは100年前、200年前に比べるとずいぶん豊かな生活をしている。その豊かな生活のために未来の資源を奪っている。残していく使い方を考えねば。

 ノスタルジーというと失ったものを振り返るのだけれど、そうではなく、未来にそれを投射する、こっちの方がいいと選んでいく。ほたるあふれる石木川を未来に残していこう、目指していこう、と僕らの意識をかえていくことが大事だと思う。

今日は早起きして、途中かなり眠たかったけど、現地に行けて本当によかった。また、ホタルの季節に帰ってきたい。

 

坂本さん、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。

あとふた月足らずでホタルの季節です。今年はきっと帰って来てくださいね。私たちは飛び交うホタルの灯りを眺めながら、貴方の言葉を思い出し、貴方の気配を感じることでしょう。

 

(2018年3月25日の詳細はこちら。坂本龍一さん「ホタルの季節に帰ってきたい」  : 石木川まもり隊 (ishikigawa.jp)

石木ダムについて県議選候補者に聞きました

今日、長崎県議会議員選挙が告示され、9日間の選挙戦がスタートしました。

定員46人に対し、16の選挙区から66人が立候補しました。

皆さんは既に誰に投票するか決めていますか?

深刻な人口減少対策や子育て支援など多くの候補者が熱く語っていますが、なかなか聞こえてこない石木ダム問題。いったい候補者はどう考えているのでしょう?

そこで、私たち7団体は前回同様に石木ダムに関するアンケート調査を実施しました。

その結果をこれから公表いたします。ぜひ参考にしていただければ有り難いです。

 

①アンケート項目 立候補予定者へのアンケート用紙

②回答結果の集計一覧表 アンケート結果一覧表

③設問ごとの回答結果 アンケート結果 設問ごと

 

特に③をみれば、石木ダムに対する各人の考え方が分かるだけでなく、県政全体に対する思いも垣間見えてくるようです。

例えば、こちら。石木ダム事業の見直しが必要か不要かの判断ですが、

それは、石木ダムについての県民の思い(ダム計画について行政の説明が不十分)を知っているかどうかの答えと、かなり符合しています。

つまり、県民の思いを知っている候補者の多くが、見直しが必要だと答え、知らない候補者の多くが、見直しは不要と答えています。

また、 住民を実力で排除する行政代執行についての見解を記述していただいたのですが、これについては、全く同じ文章が2つあって、びっくり!でした。WHY?

最後に、こちらの設問に答えるだけでなく、自由記述をお願いしたところ、7人の方がびっしりと書いてくださいました。



立候補前のお忙しい中、ご回答いただいた皆様には深く感謝しています。

一方、60名に送付しましたが、44名の方がご回答いただけませんでした。実に73%もの方が無回答。

県民の問いかけに応えようとしない候補者の皆さんは誰のための政治をするおつもりなのでしょうか?

とても残念です。

 

ご回答いただいた方が善戦されることを期待します。

 

 

測量の約束

2月28日から始まった山の上での座り込みが続いていました。



昨日のニュースやブログを見て、数人の方から問い合わせや激励の電話等をいただきました。

朝日デジタル
長崎県の石木ダム、強制収用の土地で工事開始 反対住民は座り込み:朝日新聞デジタル (asahi.com)

テレビ長崎
石木ダム「収用地」で長崎県が初の工事|ニュース|KTNテレビ長崎

毎日新聞
長崎・石木ダム 13世帯住民座り込み 収用地で県が工事着手 | 毎日新聞 (mainichi.jp)

その他全ての新聞、テレビが報じています。それは、①強制収用した土地での初めての工事、②住民と県との久しぶりの衝突という、マスコミにとっては関心度の高いできごとだったからでしょう。



しかし、それだけではない。公共事業の進め方として本当にこれでいいのかという疑問を記者さんたちも持たれたのではないでしょうか?

 

重機の前で座り込む住民。それを見守る支援者。住民は何に抵抗しているのか?支援者は何に共感しているのか?

買受権が発生するかどうかなどではない。住民との約束を平気で破る、行程表通りに工事を進めるためには住民の意向や理解などはどうでもいいというやり方への怒り。その怒りが予想できない県への苛立ち。

今日(3月2日)の新聞記事です。

反対住民の石丸勇さん(73)によると、2月24日、県側に収用地と私有地の境界について疑念があると訴えると、測量をする旨の回答があったという。だが28日朝に測量できないと伝えられ、「約束したことをほごにされた」と憤った。これに対し、県石木ダム建設事務所は「(測量をする旨の)話をしたのは事実」と認めた。ただし、確定した収用地の図面変更はできないことも伝えたという。その後、内部で検討した結果、測量はできないと判断したとしている。

まず第一に、約束は守るべき。
第二に、守れないときは、その理由を説明すべき。
第三に、一度確定したといっても、間違いがあれば正すべき。間違いがあったかなかったかを確かめもせずに、決まったことだからと問答無用とするのは時代錯誤も甚だしい。確定判決がでても再審請求ができるのだから。断固拒否するのは、もしや自分たちの間違いを隠したいから?なんて疑念さえ持たれてしまいますよ。

そんな空気が県にも伝わったのか・・・?今日の午後、本庁から土木部の職員がやってきて、Hさんの土地の測量をやり直すことを告げたそうです。

もしかしたら、対話を重視する知事の指導があったのかな?

これで3日間にわたる緊迫の座り込みは終了しました。明日からはまた平常の静かな抗議行動に戻ります。

住民の皆さん、支援者の皆さん、お疲れ様でした。

それにしても、「約束を守る」という当たり前のことを果たしてもらうのに、これほど体を張った行為に出なければならないということが、そもそもおかしいですよね・・・(^_^;)

工事を止めろ!約束を守れ!

石木ダム収用地で初工事 長崎県、買受権との関連否定 | 長崎新聞 (nordot.app)

「工事を止めろ」一時騒然 石木ダム収用地初着工 反対住民、体張り抵抗 | 長崎新聞 (nordot.app)

ここに報じられているように、住民の皆さんが怒っているのは、県のやり方に対してです。

収用されずに残っている住民の方の土地に先週いきなり重機が入りました。住民の方が抗議した結果、図面に引かれた境界線について県と住民との認識の相違が判明したので、測量のやり直しを求め、それについて改めて話し合う約束になっていたそうです。

ところが、その話し合いがなされないまま、いきなり「これから工事を始めます」と言われても納得できるわけがありません。

「調べてもらえないのは歯がゆい」「地元の同意を得てから建設するという内容で県と交わした1972年の覚書が守られていない」と憤るのは当然です。

県は「収用裁決が済んでいるので新たな測量には応じない」との考えのようですが、このような一方的な公共事業の進め方は半世紀前と全く変わっていないのですね。残念です。



この日はたまたま千葉県から自然観察にやってきていたNPO法人の方々もこの光景を目の当たりにして、衝撃を受けておられました。


その後、周辺を視察中に、伐採された樹木の墓場に遭遇。



引き抜かれ、うち捨てられ、朽ち果て、白骨化した樹木の残骸から



なんと、緑の小枝が・・・!

逞しいいのち。自然界はやはり持続可能な世界ですね。

利水も治水も自然環境を破壊するのではなく、共存する方向に早くシフトしてほしい。県も佐世保市も国も。

川棚町の皆さん、佐世保市の皆さん、長崎県の皆さん、一度こうばるに足を運んでみませんか。

ここで何が行われているのか。それは決して、皆さんに無関係なことではありません。

不思議な貯水率のお話

佐世保市水道局は1月5日に記者会見を開き、南部水系『下の原ダム』の貯水率が急速に低下しているとして、渇水対策本部を設置したと発表。このままでは2月上旬には給水制限が懸念されるので、南部の皆様、自主的節水を!と呼びかけました。

https://www.city.sasebo.lg.jp/suidokyoku/suisou/documents/tiras3i.pdf
この時点での南部貯水率=55.7%

その後51.4%まで低下しましたが、1月13日~15日にかけて58mmの雨が降り、20日時点では57.3%まで回復しました。

しかし、その日、水道局長は再び会見を開き、このままでは2月23日に南部の貯水率は30%を下回る可能性がある。また、北部の小佐々地区も2月27日には30%を切ると予測。長崎新聞によると「市中心部では渇水の心配はないという」とのことでした。


同じ水道料金を支払いながら、ある地域住民には不安を与え、節水を求め、別の地域住民には安心してよいと言い・・・なんとも釈然としません。

もしかしたら、そんな市民の声があちこちから上がったのか?
水道局は1月23日に市議会で南部格差と渇水についての説明を行いました。
その資料がこちらです。
資料1.南北格差対策について

https://www.city.sasebo.lg.jp/suidokyoku/suisou/documents/nannboku.pdf


資料2.渇水状況について
https://www.city.sasebo.lg.jp/suidokyoku/suisou/documents/kassui.pdf

これらの資料は水道局のホームページにも公開されていて、市民への情報提供と丁寧な説明に対しては職員の方に感謝しますが、しかし、不明なことも多いし、読めば読むほど不思議な話です。

1.この南北格差は26日時点で32.5%ですが、1月15日時点では38%にも達していました。このような極端な格差は今年が初めてのことなのか、これまでも時々おきていたことなのか、知りたいですね。

2.これまでも時々みられていた現象であれば、格差是正対策として実施されてきた4つの対策(南北融通施設、小森川の取水堰、川棚川暫定豊水水利権、下の原ダム嵩上げ)だけでは不十分だったということです。なぜ別の対策を講じようとはしなかったのでしょう?(石木ダムが完成すれば解決するから?しかし、これまで9度も工期延長になった事業です。いつ完成するかわからないものを待ち続け、できるはずの対策が検討されていなかったのではないか?という疑念が生じます)


3.資料1の8pによれば、4つの対策実施の結果南北格差の「解消は図られた」「今年は南北融通を通年フル稼働しているので、南部の方が一人当たりの水源が多くなっている」と書かれていますが、そんな馬鹿な・・。それが事実なら、南部市民はよほど水をたくさん使っている?無駄遣いしている?ということになります。

考えられるのは、ここに積み上げられた川棚川の暫定豊水分が取水できていなかったのではないか?南部の給水人口は近年急増していますが、その実績値は反映されているのでしょうか?(最近市民の1人が、南部の人口と世帯数の推移を求めたところ、「人口、世帯数の集計は、南部と北部を分けていないため不明です」との回答でした。矛盾していますね)

4.水道局は格差の原因をあくまでも「地域間の降水量の格差によるもの」と主張していますが、果たしてそうでしょうか?
今月になってからの降水量を比較すると、北部115.0mmに対して南部62.5mm。確かに大差ありです。でも佐世保市の1月の平均降水量(過去30年間の平均値)は、63.4mmです。北部が多かったのは事実ですが、南部は例年並みだったと言えます。

もしかして、一番新しい下の原ダムの底に穴が開いていたりして・・?
なんて・・もちろん冗談ですが、そんなブラックジョークも浮かぶほど、不思議な不思議なダムの貯水率のお話です。

水がピンチです?!

新年早々、水道局のホームページには不安を煽る言葉が躍っていました。



以下、2023年1月5日付の「緊急情報」をそのまま転載します。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

水がピンチです!【水道局渇水対策本部の設置について】

本年は、本市の11月の降水量が少なく、12月に入ってもまとまった降雨がないなど、市内各地のダムの貯水率等の回復は低下している状況にあり、川を流れる水の量も大きな回復は見せておらず、特に、南部水系(下の原ダム)のダムの貯水率は急速に低下している状況にあります。

1月4日現在、中部水系(市内5ダム平均)の貯水率83.2%と80%を上回っている状況にあるものの、南部水系(下の原ダム)の貯水率は55.7%と60%を下回っている状況にあり、今後もしばらくは、まとまった降雨が見込まれない予報となっているなど、早期の貯水率の回復は見込めない状況です。

このような状況から、令和5年1月4日付で、南部水系の渇水レベルを「4:節水対策」に、北部水系小佐々地区の渇水レベルを「3:重点警戒」に引き上げるとともに、水道局内に「佐世保市水道局渇水対策本部」を設置し、必要に応じた渇水対策を講じることといたしました。

南部水系の地域にお住まいの皆様におかれましては、うがい、手洗いなどの感染症予防に留意いただきながら、まずは蛇口の開け閉めをこまめにするなど、普段の生活や業務に支障のない範囲で節水にご協力いただきますようお願いいたします。

なお、今後、本格的に節水のお願いをする場合など、随意お知らせをしてまいりますので、ご理解、ご協力の程よろしくお願いいたします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

さて、ここに出てくるレベル3とかレベル4というのは、「佐世保市渇水対策マニュアル」の改定版(先月の企業経済委員会で案として紹介されたばかり)に記されているものです。

レベル4のところには、このように書かれています。

 

◆レベル4(自主節水)

≪状態≫ 長期予測において渇水の兆候が顕在化し、かつ、短期予測においても季別毎の貯水率指標値を 満足しない状態が継続し改善の見通しがない渇水の初期の状態。

なお、南部水系においては、下の原ダムの貯水率が季別毎の指標値を下回り、かつ、継続的な 安定給水が確保できない状態。

≪主な行動≫水道局長を本部長とした、水道局渇水対策本部を設置し、節水広報大口需要者への節水依頼等による自主節水により配水量を抑え、渇水の進行を遅らせる対策をとり、その効果を的確に把握し、次に必要な渇水対策の検討を行う。また、河川管理者と、井戸・溜池放流等の取水、特別取水、新規緊急水源等の協議・実施準備を行う

 

早めに手を打つことは重要ですが、市民や企業に節水を呼び掛ける前に、水道局はやるべきことをやったのでしょうか?

レベル4に至る前の前、レベル2のところには、こう書かれています。

 

◆レベル2A(長期警戒)

≪状態≫長期的な予測に基づき渇水の兆候が捉えられた初期の状態。

≪主な行動≫水道局内に渇水対策準備会議を設置し、渇水情報の共有化を図りつつ、今後の渇水の進行に備え、佐世保地区(中部水系/南部水系)の南北格差の解消に努める。併せて、継続的な安定給水に向けて、河川管理者との情報共有を実施する。

 

改定前のマニュアルでは、レベル1の段階で、「南北格差の緩和に努める(南北融通施設の稼働開始)」と書かれています。この施設は、平成6年の大渇水後に建設されたもので、平成9年に完成しています。

しかし、この施設が活用されているとは、どうしても思えません。

先の緊急情報の中で示されていたように、「1月4日現在、中部水系の貯水率は83.2%で、南部水系の貯水率は55.7%で、その差は27.5にも上ります。

格差解消のために造った施設を、なぜ使わないのでしょう?

これを使って格差が是正されれば、全体で70%代となり、渇水対策本部の設置とはならないでしょう。

市は、広報に「2年に1度は渇水の危機」なんて書いたけど、平成30年度以降はその危機が無かったので、今年度はどうしても危機を創出したかった?なんて穿った見方もでてきます。

心外!と怒りの声も聞こえてきそうですが、それなら何故せっかく建設した南北融通施設を稼働させないのでしょう?

いくら施設を建設しても使わないなら宝の持ち腐れです。

もしも、使っているのに効果が出ないのなら(融通できる量が少な過ぎるとか?)、原因を調べ、対策を講じるべきです。(送水管を大きくするとか?)

そのような検証や対策も行わずして、「渇水だから節水を!」と呼びかけ、危機感を煽り、「だから石木ダム!」と喧伝するのは止めていただきたい。

 

今は電気も水も融通し合う時代です。

東京電力がひっ迫しているときは、東北電力や北陸電力から送電してもらっているように水道水も、そうすべきです。

実際、福岡県には「北部福岡緊急連絡管」という広域水道管があり、大都市圏である福岡市と北九州市が緊急時に水道水を融通し合える体制になっています。

 

同じ佐世保市内でありながら、北部と南部の貯水量の格差を放置しているのは解せないし、その結果、南部の貯水率を著しく低下させ、市民に不安を与えているのは水道行政の怠慢と言われても仕方ないのではないでしょうか。

佐世保市水道局の真摯な対応を求めます。