石木ダム 手抜き工事宣言!?

12月5日の県議会、土木部長の答弁を聴いて驚いた。
それって、「手抜き工事宣言」ですか?

一般質問で、堀江ひとみ議員は、こう切り出した。
「石木ダム事業における測量設計費、30億円の予算に対し既に49億円使っていますね。予定額の1.6倍も使われた理由は何ですか」

土木部長は初め「事業の長期化に伴い、技術基準等の改定による設計業務、新たな調査手法を用いての地質の調査解析など、追加費用が発生していることから増額となっています」と答えた。

堀江議員は1974年(昭和49年)の石木川の河川開発調査結果を持ち出し、「一部に大きい透水箇所や湧水箇所が見受けられた」とあるが、この地質問題の調査が長引き費用が膨らんでいるのではないか?と質すと、

土木部長:ダムに水をためると水圧がかかります。地盤に亀裂が入っていると水圧でそこを水が抜けていく可能性があるので、その基礎処理工を今後していく必要があります。その範囲をどのぐらい対策をしなければいけないのか、それがまだつかめておりませんので、それを掴むための地質調査を進めているところです。

堀江議員:その地質調査はまだ終わっていないので、測量設計費にかかる費用は、これからもかかるってことでしょう?

土木部長:はい。増える可能性を持っております。ただ、その測量設計費が当初の予定より増えていることにつきましては、働き方改革ですとか、資材の高騰などいろんな影響がありますので、工事の進め方など検討していきたいと思っております。

堀江議員:資材高騰などで測量設計費が増えれば、総事業費もこれから増えるということですよね?

土木部長:いえ、建設費に係る予算のコストダウンなどに努めて、総額で収まるように、まずは努力して、令和7年度完成という姿勢も変えることはなく、工事の進め方などを検討してまいりたいと思っております。

堀江議員は来年度が石木ダムの再評価の年であることを確認した上で、再評価のあり方についても質した。

堀江議員:石木ダム事業の費用便益比B/Cは、再評価のたびにどんどん小さくなっています。2007年=1.43、2011年=1.27、2019年=1.21と。もしも今回費用が大幅に増えれば、1を下回る可能性もある。そうなると、石木ダム建設の意義そのものが問われることになる。それだけに、今回の再評価は重要であり、公正な資料に基づき、中立な委員によりなされるべきです。しかし、その再評価を行なう長崎県公共事業評価監視委員会は、県が選んだ委員によって、県が用意した資料を基に検討しています。事業評価のあり方として、専門家も交えた石木ダム事業に特化した委員会を設置する考えはありませんか?

土木部長:県公共事業評価監視委員会は技術分野を含め、様々な分野の専門家から構成され、幅広い視点でご意見をいただいています。また、令和2年には事業の必要性を認める司法判断が確定しており、石木ダムに特化した委員会を設置する考えはございません。

堀江議員は、県民の間から、石木ダム事業については特化した委員会を持つべきという声が寄せられているので、今一度検討してほしいと要望し、知事への質問に移った。

堀江議員:昨年9月以降、知事と反対住民との話し合いは途絶えたままです。信頼関係を築くために、工事を中断して話し合いをする考えはありませんか?

知事:昨年9月以降、話し合いには応じていただいておりませんので、職員が毎月お話し合いのお願いを続けております。今後もご理解いただけるように努力はしていきたいと思います。

堀江議員:ご理解をいただく努力というのは何を指しているのですか?今回補正予算で提案されている石木ダム基金のことですか?住民との対話を模索するのではなくて、反対地権者を協力感謝金で事業推進に変えようと考える、その知事の姿勢が問われているのですよ。

知事:基金については、生活再建に向けた支援や地域振興策に関して準備するものです。理解を得る努力については、私も話し合いを望んでいますが、住民の方からは「ダムの必要性を議論をしなければ、話し合いには応じることができない」ということでした。我々としましては、今この時点においてダムの必要性を議論する段階ではないと考えておりますので、そこの理解が得られてないものと思います。

この日の土木部長や知事の答弁で分ったことをまとめると、

1.ダムの必要性を見直す時期は過ぎた。今はダム完成に向け前進あるのみ。地元の方とはダム完成後の生活再建について話し合いたい。

2.石木ダム建設予定地の地盤には透水性の高い箇所がある。

3.その対策処理工事をするために地質調査を継続中で、その費用は今後も増えるだろう。

4.地質調査費は測量設計費に含まれており、測量設計費は既に予算額の1.6倍も使っているが、増額の原因は地質調査だけでなく、人件費や資材の高騰もある。

となれば、人件費や資材の高騰による予算増は測量設計費に限ったことではないので、当然本体工事費も増額となり、総事業費はいかほどになるのか…と誰もが心配になる。ところが土木部長は、

5.建設費のコストダウンに努めて、総事業費は予定額の285億円で収めたい。

6.工期も変更せず、令和7年度完成とする。

とおっしゃっている。

言い換えれば、「測量設計費に使い過ぎちゃって、さらにまだお金がかかりそうなので、建設費を削ります~」ってこと?
どうやって削るのか?

石木ダム事業費内訳書の資料を見ると、測量設計費は昨年度末時点で約19億円オーバーしている。まだ増えるとのことなので、最低でも20億円は増えるとして、では、工事費86億円から20億円削るのか?だとしたら23%ものコストダウン!

人件費や資材費が高騰している中でそのような大幅な減額はあり得ない。あり得るとしたら手抜き工事しかない。鉄筋を10本打つべきところを8本にするとか、コンクリートを10t使うところを7tにするとか、10人で作業すべきところを6人でやっつけるとか…

また、工期も変更しない(令和7年度までに完成)とのことだが、現在の行程表では、ダム本体工事を令和6年度までに完成し、令和7年度は試験湛水をやって水圧に耐えられることや漏水がないことなど全てのチェックを終える、その完成予定が7年度である。

まだダム本体は影も形も見えていないのに、あと1年と4ヶ月足らずでダム本体を完成させるというのか?

「石木ダムは手抜き工事で建設します!」と宣言しているようなものだ。

手抜き工事の結果、何が起きるのか?
ダム湖からの水漏れであったり、堤防のひび割れであったり、そのひび割れが地震の揺れで大きくなり、ついには決壊したり・・・などという可能性に繋がる。被害を被るのは下流域の川棚町民。

ハテ?
石木ダムは川棚町民の安心安全のための公共事業ではなかったのか???